腓骨神経麻痺の障害部位|総・深・浅腓骨神経をどう見分ける?

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腓骨神経麻痺の障害部位は「低下」と「温存」を組み合わせて絞る

腓骨神経障害を疑ったあとに必要なのは、背屈低下だけで判断せず、総腓骨神経・深腓骨神経・浅腓骨神経のどこが主に障害されているかを整理することです。局在推定では、低下した筋力や感覚だけでなく、「外反は保たれている」「第1趾間の感覚は保たれている」といった温存所見も重要な手がかりになります。

この記事では、下垂足や腓骨神経麻痺を評価するPT・OT・STなどの医療従事者向けに、運動・感覚・温存所見から障害部位を絞る考え方を整理します。このページで中心に答えるのは、腓骨神経障害を疑ったあとに、総・深・浅腓骨神経のどこを考えるかです。脳卒中などの中枢性病変との鑑別、L5神経根障害との詳細比較、圧迫解除やリハの進め方は別記事へ分け、本記事では枝レベルの局在推定に集中します。

結論:総・深・浅腓骨神経は「障害される機能」と「保たれる機能」で見分ける

腓骨神経の障害部位を考えるときは、1つの所見だけで決めず、背屈・母趾伸展・足趾伸展・外反と、足背・第1趾間の感覚を組み合わせてみます。特に重要なのは、異常所見だけでなく「何が保たれているか」を同時にみることです。

たとえば、背屈と母趾伸展が低下していても外反が保たれていれば、総腓骨神経より深腓骨神経側を考えやすくなります。反対に、背屈・足趾伸展・外反がまとめて低下していれば、より近位の総腓骨神経障害を疑いやすくなります。浅腓骨神経単独障害では、外反や足背感覚が中心で、背屈や母趾伸展は保たれやすい所見です。

腓骨神経麻痺の障害部位。総腓骨神経・深腓骨神経・浅腓骨神経の見分け方を、低下しやすい機能、感覚の手がかり、保たれやすい機能で比較した図版。
図:総腓骨神経・深腓骨神経・浅腓骨神経は、低下所見だけでなく温存所見も手がかりにすると整理しやすくなります。
総腓骨神経・深腓骨神経・浅腓骨神経の局在を考えるポイント
疑う部位 低下しやすい機能 保たれやすい機能 感覚の手がかり 臨床での読み方
総腓骨神経 足関節背屈、母趾・足趾伸展、足部外反 足部内反 足背+第1趾間 深・浅の両枝を含む近位病変を考える
深腓骨神経 足関節背屈、母趾・足趾伸展 足部外反 第1趾間 外反が保たれていれば深腓骨神経側を考えやすい
浅腓骨神経 足部外反 足関節背屈、母趾伸展、第1趾間感覚 足背の大部分 単独障害では背屈低下が前面に出にくい

総腓骨神経障害は背屈・足趾伸展・外反がまとまって低下しやすい

総腓骨神経は腓骨頭・腓骨頸部付近を走行したあと、深腓骨神経と浅腓骨神経に分かれます。そのため、分岐より近位で障害されると、深腓骨神経領域の背屈・足趾伸展と、浅腓骨神経領域の外反が同時に低下しやすくなります。

このとき、後脛骨筋による内反は腓骨神経支配ではないため、内反が比較的保たれやすいのが1つの手がかりです。感覚では足背の広い範囲に加えて、第1趾間の感覚低下も伴いやすくなります。

総腓骨神経障害を考える所見の組み合わせ
確認項目 みたい所見 局在推定の意味
足関節背屈 低下 深腓骨神経領域を含む
母趾・足趾伸展 低下 深腓骨神経領域を含む
足部外反 低下 浅腓骨神経領域も含む
足部内反 比較的保たれる 腓骨神経単独の可能性を考える手がかり
感覚 足背+第1趾間で低下 深・浅両枝の領域を含みやすい

背屈低下だけを見て総腓骨神経障害と決めるのではなく、外反まで一緒に落ちているかを確認すると、深腓骨神経単独障害との違いが分かりやすくなります。

深腓骨神経障害は「どの高さで障害されたか」まで考える

深腓骨神経は前脛骨筋、長母趾伸筋、長趾伸筋など前方区画の筋と、第1趾間の感覚に関わります。したがって、背屈や母趾・足趾伸展の低下、第1趾間の感覚異常は深腓骨神経を考える手がかりになります。

ただし、深腓骨神経障害=必ず下垂足ではありません。病変がどの高さにあるかで所見は変わります。

近位の深腓骨神経障害

比較的近位で深腓骨神経が障害されると、前脛骨筋や長母趾伸筋などへ向かう運動枝が影響されるため、足関節背屈や母趾・足趾伸展が低下しやすくなります。一方で、浅腓骨神経支配である長・短腓骨筋が保たれていれば、足部外反は比較的保たれます。

遠位の深腓骨神経障害

足関節付近より遠位で障害された場合には、前脛骨筋などへの運動枝がすでに分岐していることがあるため、背屈が保たれながら、第1趾間のしびれや足背部の痛みが前面に出ることがあります。図版の注記どおり、遠位障害では背屈が保たれることがあるため、背屈が正常だから深腓骨神経を完全に除外する、とは考えません。

深腓骨神経障害で整理したいポイント
確認項目 みたい所見 読み方
足関節背屈 低下することがある 近位障害では重要な所見
母趾・足趾伸展 低下しやすい 深腓骨神経を疑う中心所見
足部外反 保たれやすい 浅腓骨神経が保たれているかを確認する
第1趾間感覚 低下しやすい 感覚の手がかりになる
病変の高さ 近位か遠位か 遠位障害では背屈が保たれることがある

浅腓骨神経障害は外反と足背感覚が中心になる

浅腓骨神経は長腓骨筋・短腓骨筋などの外反筋に運動枝を送り、足背の大部分の感覚に関わります。そのため、浅腓骨神経単独障害では、足部外反の低下と足背感覚の異常が中心になります。

一方で、足関節背屈や母趾伸展は深腓骨神経領域なので、浅腓骨神経単独障害では保たれやすい所見です。第1趾間感覚も深腓骨神経領域であるため、保たれていれば浅腓骨神経側を考える材料になります。

浅腓骨神経障害で確認する所見
確認項目 典型的な方向 判断ポイント
足部外反 低下しやすい 長・短腓骨筋の出力をみる
足関節背屈 保たれやすい 深腓骨神経領域が温存されているかをみる
母趾伸展 保たれやすい 深腓骨神経領域が温存されているかをみる
足背感覚 低下しやすい 足背の大部分の左右差を確認する
第1趾間感覚 保たれやすい 深腓骨神経との切り分けに使う

ここでの注意点は、浅腓骨神経単独障害を典型的な下垂足として扱わないことです。背屈低下が前景にある場合は、総腓骨神経や深腓骨神経、あるいはL5神経根などの可能性を改めて考えます。

感覚は第1趾間と足背を代表点にするが、感覚だけで確定しない

感覚評価では、第1趾間を深腓骨神経、足背の大部分を浅腓骨神経の代表点として確認すると整理しやすくなります。ただし、感覚分布には個人差があり、患者さんの訴え方にも幅があります。感覚所見だけで障害部位を決めず、必ず運動所見と合わせて解釈します。

感覚所見を局在推定に使うときの考え方
部位 主に関係する神経 使い方 注意点
第1趾間 深腓骨神経 背屈・足趾伸展所見と組み合わせる 正常でも深腓骨神経障害を完全には否定しない
足背の大部分 浅腓骨神経 外反所見と組み合わせる 足背全体の曖昧な訴えだけで決めない

記録では「感覚低下あり」だけで終わらせず、どの部位に左右差があったかを残すと再評価しやすくなります。

腓骨神経の分布で説明しにくいときは、無理に枝へ当てはめない

局在推定では、「どの腓骨神経か」を選ぶことだけでなく、そもそも腓骨神経障害だけで説明できるかを確認することが重要です。たとえば、内反まで明らかに低下している、腰殿部から下肢にかけて放散痛がある、腓骨神経の分布を超えた感覚障害がある場合には、L5神経根障害なども含めて再検討します。

このページでは詳細な比較までは扱いませんが、腓骨神経の枝へ無理に当てはめないこと自体が重要な判断です。L5との使い分けは、記事末の関連記事で確認してください。

記録は「低下・温存・感覚分布」をセットで残す

「腓骨神経麻痺あり」だけでは、次回評価で何が変化したのか、多職種へ何を共有したいのかが伝わりにくくなります。局在推定では、低下所見と温存所見を対で残すのが実務的です。

腓骨神経障害の局在を共有する記録例
考える方向 記録例
総腓骨神経を疑う 右足関節背屈・母趾伸展・足部外反が低下。足部内反は比較的保たれる。足背〜第1趾間に感覚鈍麻あり。
深腓骨神経を疑う 右足関節背屈・母趾伸展が低下。足部外反は保たれる。第1趾間に感覚鈍麻あり。
浅腓骨神経を疑う 右足部外反が低下。足関節背屈・母趾伸展は保たれる。足背に感覚鈍麻あり、第1趾間は左右差なし。
腓骨神経だけでは説明しにくい 右足関節背屈・母趾伸展に加え足部内反も低下。腓骨神経領域外にも感覚異常あり。L5神経根障害を含め再検討。

局在推定で避けたい判断

腓骨神経麻痺の局在推定でよくある失敗
失敗 起こりやすいこと 対策
背屈低下だけで判断する 総腓骨神経と深腓骨神経の違いが残らない 外反・感覚所見も合わせてみる
感覚だけで枝を決める 分布の個人差や訴えの曖昧さに引っ張られる 運動所見とセットで解釈する
深腓骨神経なら必ず下垂足と考える 遠位障害を見落とす 病変の高さを意識する
腓骨神経だけで説明しようとする L5神経根障害などを見落とす 腓骨神経分布に合わない所見があれば再検討する

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 総腓骨神経と深腓骨神経は何をみると分けやすいですか?

大きな違いは、外反が一緒に低下しているかです。背屈や母趾伸展の低下に加えて外反も低下していれば総腓骨神経を考えやすく、外反が比較的保たれていれば深腓骨神経側を考えやすくなります。

Q2. 深腓骨神経障害でも背屈が保たれることはありますか?

あります。遠位の深腓骨神経障害では、前脛骨筋などへの運動枝がすでに分かれていることがあり、背屈が保たれながら第1趾間の感覚異常や足背部の症状が前面に出ることがあります。

Q3. 浅腓骨神経障害だけで下垂足になりますか?

浅腓骨神経単独障害では、外反低下や足背感覚異常が中心で、足関節背屈や母趾伸展は保たれやすい所見です。明らかな下垂足がある場合は、総腓骨神経や深腓骨神経、L5神経根障害なども考えます。

Q4. 感覚はどこを最初に確認するとよいですか?

代表点としては、第1趾間と足背の大部分を確認すると整理しやすくなります。ただし、感覚だけで確定せず、背屈・足趾伸展・外反などの運動所見と合わせて判断します。

次の一手


参考文献

  1. Lezak B, Massel DH, Varacallo M. Peroneal Nerve Injury. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2026 Jan-. Updated February 25, 2024. NCBI Bookshelf
  2. Baima J, Krivickas L. Evaluation and treatment of peroneal neuropathy. Curr Rev Musculoskelet Med. 2008;1(2):147-153. doi:10.1007/s12178-008-9023-6. PubMed
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著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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