脳卒中リハのテクノロジー活用|VR・ロボ歩行・刺激・テレリハの使い分け

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脳卒中リハの「テクノロジー活用」総論| VR・歩行ロボット・ニューロモデュレーション・テレリハの使い分け

脳卒中リハのテクノロジーは、「最新機器を入れること」自体が目的ではありません。現場で効かせるコツは、①ねらい(何を伸ばすか)②用量(反復量をどう稼ぐか)③安全(中止基準)④橋渡し(生活への汎化)の順に、機器を“戦略の中に置く”ことです。本記事は、VR/歩行ロボット/上肢×ニューロモデュレーション/テレリハを、同じ物差しで整理し、子記事へ迷わず回遊できる形にまとめます。

まずは 5 分フロー|「目的 → 量 → 安全 → 橋渡し」で機器を選ぶ

迷ったときは、機器名から入らずに目的(アウトカム)から逆算します。次の順番を固定すると、機器が増えても運用がブレません。

  1. 目的を 1 つに絞る:上肢(把持・操作)/歩行自立/バランス(転倒回避)/ ADL /在宅継続など
  2. 反復量のボトルネックを特定:介助量?疲労?注意?痛み?時間?人手?
  3. 安全設計を先に決める:転倒/循環/疼痛/酔い(VR)/禁忌(刺激)など
  4. 通常リハへ橋渡し:機器で稼いだ反復を、生活課題へ汎化する設計を置く
  5. 短い再評価:同じ条件・同じ指標で “小さく回す”

使い分け早見|「誰に・何を・どう増やすか」で整理する

4 つの手段を、臨床の判断に直結する形で横並びにします。ポイントは“何を増やす装置か”を言語化することです。

脳卒中リハのテクノロジー使い分け(目的・強み・注意)
手段 主なねらい 強み(増やせるもの) 注意(止まりどころ) 子記事
VR 上肢/バランス/歩行の課題反復、参加 反復回数・フィードバック・継続 酔い・ふらつき・代償が増える VR の運用(安全・処方テンプレ)
歩行ロボット 歩行自立の獲得(特に非歩行〜要介助層) 歩行量(反復・標準化) 橋渡し不足で生活歩行に汎化しない ロボット歩行(適応・プロトコル)
ニューロモデュレーション( tDCS / rTMS 等) 上肢の随意運動立ち上げ、学習の効率化 反復の“効き”を上げる前処置/同時併用 刺激だけが主役になる/禁忌・中止基準 上肢×ニューロモデュレーション実務
テレリハ 在宅継続、フォロー、アクセス改善 継続・自己管理・生活場面での練習 安全確保・見守り・記録がないと回らない (準備中:在宅×脳卒中の運用)

選び方のコツ|「反復を止めている原因」から逆算する

臨床での選択は、病名や機器の好みよりも、反復量を止めているボトルネックで決まります。代表的なパターンを先に固定します。

  • 介助量が多く歩行反復が稼げない:歩行ロボットで量を確保 → 通常リハで屋内外へ橋渡し
  • 上肢の随意運動が立ち上がらない:前処置(刺激)+成功の反復(課題練習)で効率化
  • 飽き・注意低下で反復が続かない:VR でフィードバックと継続性を作る(代償管理は必須)
  • 通院・人手・時間が壁:テレリハでフォローしつつ、在宅の練習設計と記録を固定

運用の型|「準備 → 反復 → 再評価」を全手段で共通化する

機器が違っても、セッション設計は同じ型に揃えると強いです。今日のねらいを 1 つに絞り、反復(成功回数)を数え、短い再評価で次回の難度調整に繋げます。

共通テンプレ:1 セッションの型(脳卒中リハ)
ブロック 目安 やること コツ 最低限の記録
準備 5–10 分 疲労・疼痛・循環・安全(転倒/禁忌)確認、今日のねらいを 1 つ 「今日は到達精度」など 1 行で言語化 開始前の状態(疲労・痛み)
反復 15–30 分 成功しやすい難度→少し上げる、失敗が続く前に戻す 反復回数と “質(代償)” を両方見る 回数/成功率/中断理由
再評価 2–5 分 同条件で短くチェック(例:所要時間・代償・ふらつき) 次回の難度調整メモを残す 次回の設定(上げる/下げる)

現場の詰まりどころ|読ませるゾーン(ボタン無し)

機器導入で止まりやすいのは「目的が曖昧」「安全設計が弱い」「記録がない」の 3 つです。ここは “立て直しの最短導線” だけ置きます。

よくある失敗へ
回避の手順 / チェックへ
・関連(同ジャンル):ガイドライン 2025 を現場テンプレに落とす

よくある失敗(止まりどころ)

  • 機器が目的化:「やった感」はあるが、評価と接続しない
  • 反復が数えられない:回数・成功率・代償が記録されず、難度調整ができない
  • 安全設計が後回し:VR の酔い、歩行ロボの転倒リスク、刺激の禁忌が曖昧
  • 橋渡し不足:機器内で改善しても、ADL/屋内外歩行に汎化しない
  • 担当者でブレる:セッションの型がなく、再現性が取れない

回避の手順 / チェック(最小セット)

  1. ねらいを 1 つ:上肢・歩行・バランス・参加のどれを伸ばすか明確化
  2. 反復の “数” と “質” を決める:回数/成功率+代償(例:健側優位・体幹代償)
  3. 中止基準を先に宣言:酔い/ふらつき/痛み/強い不安/禁忌疑いは即中断
  4. 橋渡し課題を 1 つ用意:機器の後に生活課題(短い)を必ずセット
  5. 再評価は短く同条件:同じ指標・同じ条件で “小さく回す”

子記事の使いどころ|目的別に最短で飛ぶ

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. どれを最優先で導入すべきですか?

機器の優先順位は、患者さんの “目的” と “反復を止めている原因” で決まります。歩行反復が介助量で止まるなら歩行ロボット、上肢の随意運動が立たないなら前処置(刺激)+課題反復、継続が止まるなら VR、通院や時間が壁ならテレリハ、という順で考えるとブレません。

Q2. VR は高齢者でも安全に使えますか?

使えますが、酔い・ふらつきが出ると継続が止まります。最初は非没入型(モニタ)や座位、短時間から始め、酔い・不安・頸部痛などの中止基準を先に決めておくと安全性が上がります。

Q3. 歩行ロボットは「誰に効きやすい」ですか?

臨床では、発症早期〜回復期で “歩行自立前(要介助)” の層に組み込みやすいです。ロボットで稼いだ歩行量を、通常リハで屋内外・ ADL へ橋渡しする設計が効果を分けます。

Q4. 刺激( tDCS / rTMS )は刺激だけやればよいですか?

刺激は主役ではなく、反復課題練習の “効き” を上げる補助です。刺激の前後に、成功しやすい難度に調整した課題反復を必ずセットし、短い再評価で次回の設定に繋げると運用が安定します。

Q5. テレリハは何から始めるのが現実的ですか?

いきなり全部を遠隔化するより、週 1 回の遠隔フォロー+在宅練習(記録固定)から始めると回ります。安全(座位中心・見守り)と、所要時間・成功率・代償の記録を固定すると、調整がしやすくなります。

次の一手|運用を整える → 共有の型 → 環境の詰まりも点検

教育体制・人員・記録文化など “環境要因” を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。

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参考文献

  • Laver KE, Lange B, George S, et al. Virtual reality for stroke rehabilitation. Cochrane Database Syst Rev. 2025;6(6):CD008349. DOI: 10.1002/14651858.CD008349.pub5 / PubMed: 40537150
  • Mehrholz J, Kugler J, Pohl M, Elsner B. Electromechanical-assisted training for walking after stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2025;5(5):CD006185. DOI: 10.1002/14651858.CD006185.pub6 / PubMed: 40365867
  • Laver KE, Adey-Wakeling Z, Crotty M, Lannin NA, George S, Sherrington C. Telerehabilitation services for stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2020;1(3):CD010255. DOI: 10.1002/14651858.CD010255.pub3 / PubMed: 32002991

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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