老研式活動能力指標( TMIG-IC )の 13 項目を、現場でそのまま使えるチェック表にまとめました。採点( 0–13 点 )と運用のコツ、ほかの尺度との使い分けを最短ルートで確認できます。印刷にも対応しています。
使い方(先に結論)
回答は「はい= 1 ・いいえ= 0 」、合計は 0–13 点です。素点は 手段的自立( 0–5 )/知的能動性( 0–4 )/社会的役割( 0–4 ) を併記します。研究実務では固定の公式カットオフはなく、目的や対象に応じて 9–11 点前後を“運用目安”として用いる報告があります。施設の対象とアウトカムに合わせ、院内の運用閾値(例: 10 点)を明示すると実務が安定します。
判断は必ず併用で行います。生活の複雑性は本指標、生活機能の広がりは Lawton IADL、基本動作は BI / FIM を参照し、ADL / IADL の使い分けガイドと合わせて“できる/している”の乖離を補正します。
TMIG-IC 13 項目チェック表(そのまま使用可)
院内配布・家族説明にそのまま使える簡易版です。回答は直近 1–2 か月の生活を想起してもらい、合計点と領域別素点を記録します。再評価は週次など同条件で行うと変化が追いやすくなります。
生活の複雑性は本指標、実行状況の裏付けは Lawton IADL や BI / FIM を併読し、退院支援カンファレンスでワンシート化すると共有が円滑です。
| 項目 | はい | いいえ | 
|---|---|---|
| バスや電車を使って一人で外出できる | □ | □ | 
| 日用品の買い物ができる | □ | □ | 
| 自分で食事の用意ができる | □ | □ | 
| 請求書の支払いができる | □ | □ | 
| 銀行・郵便の出し入れができる | □ | □ | 
| 年金などの書類が書ける | □ | □ | 
| 新聞を読んでいる | □ | □ | 
| 本や雑誌を読んでいる | □ | □ | 
| 健康に関する記事や番組に関心がある | □ | □ | 
| 友人の家を訪ねることがある | □ | □ | 
| 家族や友人の相談にのることがある | □ | □ | 
| 病人の見舞いができる | □ | □ | 
| 若い人に自分から話しかけることがある | □ | □ | 
採点:はい= 1、いいえ= 0(合計 0–13 点)。領域別素点も併記しましょう。
評価・記録のコツ(OK / NG 比較)
ミスを減らすだけで再現性が上がり、退院支援や外来フォローの意思決定が揃います。下の 3 点をチームで共有し、カルテのテンプレートにも反映しておくと実務が安定します。
特に「回答期間の統一」「領域別素点の記録」「再評価条件の固定化」は効果が大きいポイントです。評価者間で言い回しを揃えるフレーズ集も用意しておくとさらに精度が高まります。
| シーン | OK | NG | 
|---|---|---|
| 回答期間 | 直近 1–2 か月の生活で回答 | 昔の最良時や一時的悪化で回答 | 
| 素点の扱い | 領域別素点を併記し介入に反映 | 合計点だけで判断 | 
| 再評価 | 週次で同条件・同時間帯で再施行 | 評価間隔・条件がバラバラ | 
他尺度との使い分け(最短フロー)
① 入院早期に TMIG-IC を実施 → ② BI / FIM で基本動作を確認 → ③ 生活の複雑性は Lawton IADL で裏づけ → ④ 週次で再評価し、家事模擬訓練・金銭管理訓練・社会参加の課題へ展開します。
地域包括ケアでは、ケアマネ共有用の 1 ページ書式に TMIG-IC の合計点と領域別素点、Lawton のボトルネック、BI / FIM の要点をまとめると、退院後の支援計画が立てやすくなります。
よくある質問
Q. 認知症の方にも使えますか?
A. 自己申告の限界を考慮し、家族・介護者の補足情報や観察評価を併用します。必要に応じて Lawton IADL と BI / FIM を併読します。
Q. カットオフは何点ですか?
A. 公式固定値はありません。研究では 9–11 点前後が運用されます。施設の対象・アウトカムに合わせて院内の運用閾値(例: 10 点)を決めてください。
参考文献
- Koyano W, Shibata H, Nakazato K, Haga H, Suyama Y. Measurement of competence: reliability and validity of the TMIG-IC. Arch Gerontol Geriatr. 1991;13(2):103–116. PubMed / DOI
- Imamura H, et al. Relationship of living arrangement with the decline in higher-level functional capacity in community-dwelling older adults. Environ Health Prev Med. 2020;25:58. Link
- Iwasa H, et al. Development of the Japan Science and Technology Agency Index of Competence (JST-IC). Psychogeriatrics. 2015;15(4):211–219. PMC
- Taniguchi Y, et al. Trajectories of higher-level functional capacity and related factors among community-dwelling older Japanese. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2019;74(2):211–218. Link
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