車椅子シーティングの全体像:まず「崩れ方」と「目的」をそろえる
臨床で迷いやすいのは「何を直すか」より先に、観察・採寸・調整がバラバラに進むことです。この記事では、最小限の評価→調整→再評価を 1 枚に集約し、院内で共有しやすい手順に落とし込みます。
PT キャリアの全体像(5 分フロー)を見ておく※臨床の意思決定が詰まるときは、まず「目的(食事・移乗・駆動など)」を 1 つに絞ると進めやすいです。
車椅子シーティングは「良い姿勢を作る」だけでなく、①安全(転落・誤嚥リスク)、②活動(移乗・食事・駆動)、③皮膚(発赤・疼痛・湿潤)を同時に底上げするための手段です。
最初にやるべきことは、難しい採点ではありません。崩れ方(骨盤→体幹→頭部→足部)と主訴(困りごと)を揃え、最小限の採寸と調整メモを残して、同じ課題で再評価する──この流れを固定します。
評価・調整の記録シート(PDF)
車椅子シーティングの「最小評価セット → 調整 → 再評価」を 1 枚にまとめた印刷用 PDF です。院内共有や申し送りに使いやすい形にしています。
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このシートの使い方(3 ステップ)
目的(主訴)を 1 つに絞る → 最小評価 → 調整 → 同じ課題で再評価を、毎回同じ順番で回すのがコツです。多くの現場で「評価はできたが、次に何を変えるかが曖昧」になりやすいため、記録の型を先に固定します。
書き方は簡単です。①基本情報、②クイックチェック、③観察と採寸、④調整メモ(前→後)、⑤再評価(同じ課題)を埋めるだけです。数字よりも、前後比較が残ることを優先してください。
最小評価セット:まずは「ここだけ」
時間がないときは、下の 4 つだけで十分スタートできます。ここを飛ばすと、調整の方向性がブレて「何を直したのか」が残りません。
| 項目 | 見るポイント | 記録のコツ | 次の一手(例) |
|---|---|---|---|
| 主訴(目的) | 食事/移乗/駆動/疼痛/皮膚など | 1 つに絞って書く(複数なら優先順位) | 「食事が疲れる」など、課題ベースで再評価する |
| 観察(崩れ方) | 骨盤→体幹→頭部→足部の順で正中性 | 左右差/後傾/側屈の“方向”を残す | 骨盤が崩れるなら座面条件から疑う |
| 採寸(最低限) | 座幅・座奥行・下腿長(足台高) | 数字は厳密でなくても、再現可能に | 座奥行が合わないなら大腿支持を調整 |
| 皮膚・痛み | 坐骨/仙骨/大腿後面、発赤、NRS | 部位と時間(いつ赤いか)を書く | 剪断が疑わしければずり落ち対策を優先 |
調整の考え方:変更点は「前→後」で残す
調整は「とりあえずクッション変更」より、何を変えたかを言語化して残す方が再現性が上がります。シートの“調整メモ(前→後)”は、申し送りの質を上げるための欄です。
よく使う調整は、座面(高さ/奥行/座角)、背支持(高さ/角度)、骨盤・体幹支持(ベルト等)、クッション、ティルト/リクライン運用です。変更は 1 回に 1〜2 点に絞ると、前後差が見えやすくなります。
現場の詰まりどころ/よくある失敗
一番多い失敗は「評価と調整が同時進行で、何が効いたか分からない」ことです。次の 3 つを意識すると、同じ時間でも結果が安定します。
| 詰まりどころ | 起きること | 対策(このシートの使い方) |
|---|---|---|
| 目的が増える | 食事も移乗も駆動も…で判断が散る | 主訴を 1 つに絞り、同じ課題で再評価する |
| 変更点が多い | クッションも背角も足台も一気に変えて不明 | 調整は 1〜2 点まで。「前→後」を必ず書く |
| 記録が残らない | 次の担当者が同じところで迷う | 簡易でも“再現できる記録”に寄せる。教育・相談の準備が不安なら、院内の動き方を整える前に面談準備のチェックリストで棚卸ししておくと、詰まりが減ります。 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
どこまで厳密に採寸すればいいですか?
最初は“再現可能な範囲”で十分です。座幅・座奥行・下腿長(足台高)の 3 つだけでも、調整の方向性が揃います。再評価で違和感が残る場合に、追加で細かい採寸や座角の検討に進むとスムーズです。
調整の優先順位はありますか?
目安は「安全(転落・誤嚥)→皮膚(発赤・疼痛)→活動(移乗・駆動)」です。ただし主訴が明確な場合は、主訴に直結する要素から 1〜2 点だけ変えて前後比較する方が判断しやすいです。
ずり落ちが強いとき、最初に見るのはどこですか?
骨盤後傾の“きっかけ”を探します。座奥行・座角、足台高、体幹支持の不足などが重なることが多いので、まずは観察で「どの方向に崩れるか」を書き、座面条件から順に検討します。
次の一手
- 姿勢・バランス評価のまとめ(座位の観察ポイントを整理するときに便利)
- IAD と褥瘡の違い(比較・使い分け)(皮膚トラブルの見立てに)
- ROM 測定の運用プロトコル(関節制限が座位に影響するケースの整理に)
参考文献
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


