WMFT(Wolf Motor Function Test)とは?
WMFT は、上肢の運動能力を時間計測タスク(15課題)と機能的能力(FAS 0–5)で評価するパフォーマンステストです。臨床では FMA-UE(運動障害寄り)や ARAT(活動能力寄り)と併用し、回復経過と介入効果を多面的に追います。
構成・採点・所要時間
構成 | 内容 | 採点 | 備考 |
---|---|---|---|
時間タスク | 日常動作 15 課題(秒) | 上限 120 秒。未完了は 120+ と記録 | 代表値は中央値で集計する運用が一般的 |
FAS(0–5) | 全 17 項目の機能的能力 | 0=使用不可 ~ 5=正常 | 動作品質と独立性を評価 |
所要時間の目安は15–30 分(初回はセットアップ含め長めに見積もり)。
セットアップ(再現性の肝)
- 椅子・テーブル高:数値で記録し、再評価時に同一化。
- 物品配置:位置と向きを固定(床にテープ目印)。
- 姿勢:体幹・肩の位置を一定に保つ(必要なら簡易ガイド印)。
- 記録様式:時間=秒(未達は 120+)、FAS=0–5、備考に代償や痛みをメモ。
実施ルール(簡潔版)
- 時間上限:各タスクは最大 120 秒。未完了は 120+ と記録。
- 再試行:外的要因で明らかな無効試行のみ再試行可。
- FAS 0–5:0=使用不可/1=重度障害/2=中等度障害/3=軽度障害(達成するが遅い・非滑らか)/4=ほぼ正常(わずかな欠点)/5=正常。
- 安全:肩痛や疲労の増悪を避け、必要に応じて休憩・中止。
採点のコツ(FAS/時間)
- 速度 vs 品質:「達成はしたが極端に遅い・ぎこちない」は FAS=2~3。
- 独立性:補助手の不要性、姿勢保持の自立度を明確に観察。
- 代償:体幹の過度な側屈・肩の過挙上など顕著な代償は減点要素。
- 記録の統一:120 秒超を121ではなく「120+」で統一。
よくあるミス/中止基準(早見表)
場面 | OK(推奨) | NG(避ける) | 中止・再評価 |
---|---|---|---|
セットアップ | 高さ・配置を固定して記録 | 毎回配置が変わる | 痛み増悪・バイタル逸脱 |
採点 | 120 秒上限・120+ の運用 | 上限を超えて計測 | 理解困難・疲労蓄積 |
安全管理 | 監視・転倒対策・動線確保 | 無監視・急激な負荷 | 肩痛悪化で中断 |
WMFT 記録シート(A4・印刷用|自作ワークシート)
以下は配点構造と記入欄のみを備えた自作ワークシートです(項目の逐語掲載は行いません)。
WMFT スコアシート(A4・印刷用)を開く
WMFT セットアップ&セッション記録(A4・印刷用)を開く
運用プロトコル(導入の最短ルート)
- FMA-UE と ARAT を同日に実施。
- WMFT は速度・品質・独立性の視点を補完。時間は中央値運用を明記。
- アウトカム(FMA-UE、ARAT、WMFT〈時間・FAS〉、MAL 等)を初回で合意し、2 週ごとに見直し。