SPPB の評価方法|手順・採点・記録

評価
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SPPB とは(目的と使いどころ)

SPPB( Short Physical Performance Battery )は、立位バランス・歩行速度・ 5 回立ち上がりの 3 項目で下肢機能をみる評価です。合計は 0–12 点で整理でき、フレイル、移動能力低下、退院前後の変化、通所・外来での経時比較まで、幅広く使えます。

この評価の強みは、単に「歩ける / 歩けない」を見るのでなく、どこで止まっているかを分解できることです。バランスで止まるのか、歩行速度で止まるのか、立ち上がりで止まるのかを分けて読むと、介入の優先順位が決めやすくなります。

要点早見( 3 項目・合計・向く場面)

SPPB は「総合点を見る評価」ですが、実務では合計点だけで終えないことが重要です。まずは 3 項目のどこが低いかを把握し、そこから原因仮説と次の一手をつなげます。

再評価では、距離・椅子高さ・補装具・見守り位置・合図を固定してください。ここが揃うだけで、前後比較の精度がかなり上がります。

SPPB の構成( 3 項目)と記録の要点
項目 主に見ているもの 記録する値 臨床での読み方
立位バランス( 0–4 点) 支持基底面内で保てるか 姿勢ごとの保持可否・保持時間 感覚依存、恐怖、静的安定性の手がかり
歩行速度( 0–4 点) 移動能力・効率 4 m 歩行の所要時間(最速値) 速度低下の程度、屋内外移動の余裕を推定
5 回立ち上がり( 0–4 点) 下肢筋パワー・姿勢制御 5 回の所要時間 大腿四頭筋、体幹前傾、足部位置の影響をみる
合計( 0–12 点) 下肢機能の総合像 3 項目の合算 総合点より「どの項目が止まったか」を優先して読む

スコア記録シート( PDF )

院内記録にそのまま使える SPPB スコア記録シート( A4 ・ PDF )です。評価条件をそろえて再評価したいときに使いやすい形にしています。

SPPB スコア記録シート( A4 ・ PDF )を開く

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印刷は A4 /ヘッダ・フッタ非表示を推奨します。再評価は 同一条件(距離・椅子・補装具・指示・見守り)で比較してください。

自動計算ツール( HTML )

SPPB の採点をすばやく確認したいときは、自動計算ツール( HTML )も使えます。立位バランス、 4 m 歩行、 5 回立ち上がりを入力すると、各項目と合計点を自動で整理できます。

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ツールは入力補助として便利ですが、最終的な運用は原法と施設ルールの確認が前提です。再評価では、記録シートとセットで条件差も残しておくと解釈しやすくなります。

実施の手順(迷わない最短フロー)

SPPB は、手順が曖昧だと点数だけが動いて中身が読みにくくなります。原法ベースでそろえるなら、立位バランス → 歩行速度 → 5 回立ち上がりの順に固定して回すのが無難です。

臨床では、始める前に「今日はどの条件で測るか」を決めてから入ると、記録と再評価が安定します。

  1. 安全確認:転倒リスク、疼痛、めまい、見守りの要否を確認します。
  2. 条件固定:歩行距離、椅子高さ、補装具、靴、見守り位置、開始合図を決めます。
  3. 立位バランス:両脚立位 → semi-tandem → tandem の順で確認します。
  4. 歩行速度:通常は 4 m を 2 回測定し、速い方の値を採用します。
  5. 5 回立ち上がり:肘掛けなし椅子で、腕を使わずに 5 回の所要時間を測ります。
  6. 採点と解釈:各項目を 0–4 点で採点し、最後に「止まった項目 → 原因仮説 → 次の一手」を 1 行で残します。

採点(原法の目安と運用の考え方)

SPPB は原法の代表的な閾値があるため、まずはその形を知っておくと迷いません。ただし、現場では距離や環境がずれることがあるため、最優先は同一条件での継時比較です。

とくに歩行速度は距離変更の影響を受けやすいので、施設ごとに測定距離を固定してください。距離の使い分けを整理したい場合は、4 m ・ 6 m ・ 10 m の違い【比較】を先にそろえると運用しやすくなります。

SPPB|原法ベースの採点早見(代表例)
項目 0 点 1 点 2 点 3 点 4 点
立位バランス side-by-side を 10 秒保持できない side-by-side 10 秒可、semi-tandem 10 秒不可 semi-tandem 10 秒可、tandem 3 秒未満 tandem 3.00–9.99 秒 tandem 10 秒
4 m 歩行 実施困難 > 8.70 秒 6.21–8.70 秒 4.82–6.20 秒 < 4.82 秒
5 回立ち上がり 実施困難 / > 60 秒 ≥ 16.70 秒 13.70–16.69 秒 11.20–13.69 秒 ≤ 11.19 秒
合計点の読み方と次の一手の考え方
見方 臨床での考え方 次の一手の例
合計点だけを見る 経時比較はしやすいが、介入テーマがぼやけやすい チーム共有の要約には使う
内訳まで見る どこが止まっているかが分かり、介入に直結しやすい バランス低下なら静的安定性、歩行低下なら速度戦略、立ち上がり低下なら筋パワーと動作戦略を優先
再評価で比較する 変化の意味は条件固定の質に左右される 補装具・距離・椅子・見守り位置を同じにする

現場の詰まりどころ(よくある失敗と対処)

先に確認したい項目がある場合は、採点早見手順歩行・バランス評価の総論から見ると迷いにくくなります。

SPPB がブレる原因と、再現性を上げるコツ
詰まりどころ 起きやすい状況 対処 記録のコツ
距離が毎回違う 病棟や通所でスペースが変わる 4 m を基本にテープで開始・終了位置を固定する 距離、助走、補装具を必ず残す
椅子高さが違う 場所ごとに椅子が異なる 同じ椅子を使うか、高さを必ず記録する 肘掛けの有無、座面高、足部位置を書く
安全配慮で条件がぶれる 見守りや接触ガードの入り方が毎回違う 介助の定義を施設でそろえる 見守り / 接触 / 軽介助を言葉で残す
点数だけ共有して終わる カンファで内訳が落ちる 「低かった項目 → 原因仮説 → 次の一手」を 1 行で残す 例:「立ち上がり低下 → 前傾不足+下肢筋力低下 → 足位置調整+反復練習」

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 再評価の間隔はどれくらいが良いですか?

A. 病期や介入量で変わりますが、まずは 2 週〜 4 週など施設で基準を決めると運用が安定します。急性期は短め、生活期はやや長めにしつつ、同一条件で比較できる頻度を優先してください。

Q2. 杖や装具を使ったまま測っていいですか?

A. 安全が最優先です。使う場合は、毎回同じ杖・同じ装具・同じ靴で測り、記録に明記してください。条件が変わると前後比較の意味が弱くなります。

Q3. 自動計算ツールだけで採点を決めて大丈夫ですか?

A. ツールは入力補助として便利ですが、測定条件の統一と原法の確認が前提です。補装具、距離、椅子、見守り条件が違う場合は、合計点だけで判断せず記録シートに条件差も残してください。

Q4. まずどの項目から介入すべきですか?

A. 合計点よりも、いちばん低い項目から入る方が早いです。バランス低下なら静的安定性、歩行低下なら速度と耐容能、立ち上がり低下なら筋パワーと動作戦略を優先します。

Q5. カットオフは固定で使っていいですか?

A. 原法の目安はありますが、距離や条件が違うと解釈がずれます。まずは 同一条件での継時変化を軸にし、そのうえで集団や目的に応じて補助的に使うのが安全です。

次の一手(評価 → 介入へつなぐ)

運用を整えたあとに、職場環境の詰まりも点検しておきましょう

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チェック後の進め方を見る( PT キャリアガイド )


参考文献

  1. Guralnik JM, Simonsick EM, Ferrucci L, Glynn RJ, Berkman LF, Blazer DG, Scherr PA, Wallace RB. A short physical performance battery assessing lower extremity function: association with self-reported disability and prediction of mortality and nursing home admission. J Gerontol. 1994;49(2):M85-M94. https://doi.org/10.1093/geronj/49.2.M85
  2. Pavasini R, Guralnik J, Brown JC, di Bari M, Cesari M, Landi F, Vaes B, Legrand D, Verghese J, Wang C, et al. Short Physical Performance Battery and all-cause mortality: systematic review and meta-analysis. BMC Med. 2016;14(1):215. https://doi.org/10.1186/s12916-016-0763-7
  3. Tamura S, Miyata K, Igarashi T, Iizuka T, Otani T, Usuda S. Minimal clinically important difference of the short physical performance battery and comfortable walking speed in old-old adults with acute cardiovascular disease: a multicenter, prospective, observational study. Disabil Rehabil. 2023;45(6):1079-1086. https://doi.org/10.1080/09638288.2022.2052978

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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