ALSFRS-R(改訂 ALS 機能評価スケール)とは?(この記事の結論)
ALS の評価がバラつくと、説明も介入も “毎回ゼロから” になります。 臨床の整理に役立つロードマップを見る ※評価→優先課題→介入→再評価の “型” を持つと、進行性疾患ほど臨床が安定します。
ALSFRS-R( Amyotrophic Lateral Sclerosis Functional Rating Scale–Revised )は、ALS の機能低下を「日常生活の困りごと」として 0〜48 点で追えるスケールです。四肢や球麻痺だけでなく、呼吸に関わる要素も含めて経時変化を記録できるため、多職種で “同じ言葉” で状態を共有しやすいのが強みです。
この記事では、ALSFRS-R を現場で 5 分で回す手順、点数の読み方(合計点/領域/変化量)、よくある失敗と対策をまとめます。ALS 全体の評価の進め方(呼吸・嚥下・ AAC ・姿勢を含む全体像)は、親記事の ALS リハの評価まとめで整理しています。
ALSFRS-R でわかること(評価の目的)
ALSFRS-R の目的は、病状を “正確に当てる” ことよりも、機能低下の位置(どこが落ちたか)と速度(どれくらいのペースか)を可視化して、次の打ち手を決めることです。たとえば、同じ合計点でも「呼吸が落ちた」のか「上肢が落ちた」のかで、優先順位は大きく変わります。
臨床では、①合計点に加えて、②領域(球麻痺/上肢/下肢/呼吸)と、③経時変化(前回との差)をセットで見ます。これだけで、説明の筋が通り、介入のブレが減ります。
いつ・誰が・どのくらいの頻度で使う?
ALSFRS-R は、病棟・外来・訪問のどこでも使えます。ポイントは、「同じ条件(タイミング・聞き方)で繰り返す」ことです。評価者が変わっても、条件が揃っていれば比較がしやすくなります。
| 場面 | 頻度の目安 | 合わせて見ると良いこと | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 病棟 | 入院時/週 1 回/退院前 | 呼吸・嚥下の赤信号、介助量の変化 | 入院前後で “生活の違い” を注釈 |
| 外来 | 受診ごと(例: 1〜3 か月) | 呼吸症状、体重、活動量の変化 | 前回からの変化点を 1 行で残す |
| 訪問 | 月 1 回+変化時 | 食事場面、介助者負担、環境変化 | “できた/できない” の条件(時間帯・疲労)を残す |
評価の手順( 5 分で回す型)
ALSFRS-R を短時間で回すコツは、「前回から変わった所を先に押さえ、最後に合計を確認する」ことです。最初から全項目を同じ熱量で聞くと、時間が伸びやすく、重要な変化が埋もれます。
| 手順 | やること | 狙い | 失敗しやすい点 |
|---|---|---|---|
| ① | 前回の記録を見て “下がりそうな領域” を当てる | 時間短縮と見落とし防止 | 前回が古い/条件が違う |
| ② | 変化が疑わしい領域から聞く(呼吸は早め) | 赤信号の早期発見 | 疲労や時間帯で答えが揺れる |
| ③ | 残りを “確認モード” で埋める | 抜けを作らない | 聞き方が毎回違う |
| ④ | 合計点より先に “落ちた領域” を 1 行で要約 | 次アクションが決まる | 合計点だけで説明してしまう |
スコアの読み方(合計点・領域・変化量)
合計点はわかりやすい指標ですが、臨床では「どの領域が落ちたか」が重要です。たとえば、移動が同程度でも、呼吸関連が落ちた場合は介入強度や姿勢調整の優先度が変わります。
進行速度の目安として、研究ではΔFS(デルタ FS )が使われます(例:( 48 − 現在の ALSFRS-R )÷ 罹病期間(月))。ただし、臨床では計算そのものよりも、「前回からの変化」と「生活上の影響」をセットで記録する方が意思決定に役立ちます。
現場の詰まりどころ:よくある失敗と対策
| よくある失敗 | なぜ起きる? | 対策(結論) | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 合計点だけで説明してしまう | 短時間でまとめたい | 合計+ “落ちた領域” を 1 行で残す | 球麻痺/上肢/下肢/呼吸のどれが変化? |
| 回答が毎回ブレて比較できない | 条件(時間帯・疲労・介助)が違う | 条件を 1 行注釈(朝/夕、介助者変更など) | 「いつ・誰と・どんな状況で」 |
| 呼吸の変化に気づくのが遅い | ADL 低下に目が行きやすい | 呼吸関連は “先に” 確認する | 夜間苦痛、起坐呼吸、咳の弱さ |
| 評価はしたが、次の一手が決まらない | 点数が情報の “ゴール” になる | 変化→優先課題→次アクションを 1 セットで書く | 次回までの “やること 1 つ” |
記録の型:再評価で “比較できる” 文章にする
ALSFRS-R は、点数の羅列だけだと次に繋がりにくいので、「変化(事実)→影響(生活)→次アクション(介入)」の順で 2〜3 行にまとめるのが実用的です。
| 書く要素 | 例(書き方) | コツ |
|---|---|---|
| 変化(前回比) | 前回より呼吸領域が低下(夜間苦痛が増加) | 領域名+ 1 事実で十分 |
| 生活への影響 | 入浴後に息切れが強く、休憩が必要 | 場面を 1 つに絞る |
| 次アクション | 運動負荷を調整し、呼吸症状の観察項目を家族と共有 | “次回まで 1 つ” にする |
よくある質問(FAQ)
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ALSFRS-R は誰が評価するのが良いですか?
基本は誰が行っても構いませんが、同じチームで “聞き方” と “条件の書き方” を揃えると比較しやすくなります。評価者が変わる場合は、時間帯・疲労・介助者などの条件を 1 行注釈に残すだけでもブレが減ります。
合計点が同じなら状態は同じと考えて良いですか?
合計点が同じでも、落ちた領域が違えば臨床上の意味は変わります。たとえば呼吸領域の低下は、介入強度や姿勢調整の優先度に直結します。合計点に加えて “変化した領域” をセットで見てください。
点数が下がったとき、まず何をしますか?
最初に安全(呼吸・嚥下)の確認です。次に、生活上いちばん困っている場面を 1 つに絞り、次回までのアクションを 1 つ決めます。評価は “次の一手” を決めるための道具として使うと迷いません。
ALSFRS-R 以外の指標も必要ですか?
ALSFRS-R は全体像を掴むのに強い一方で、呼吸・嚥下・ AAC ・姿勢などは別の観察が必要になることがあります。現場では、ALSFRS-R を軸にしつつ、必要な領域だけ追加評価するのが効率的です。
参考文献
- Cedarbaum JM, Stambler N, Malta E, et al. The ALSFRS-R: a revised ALS functional rating scale that incorporates assessments of respiratory function. J Neurol Sci. 1999;169(1-2):13-21. DOI:10.1016/S0022-510X(99)00210-5 / PubMed
- Bakker LA, Schröder CD, van Es MA, et al. Assessment of the factorial validity and reliability of the ALSFRS-R: a revision of its measurement model. J Neurol. 2017;264(7):1413-1420. DOI:10.1007/s00415-017-8538-4 / PubMed
- Kimura F, Fujimura C, Ishida S, et al. Progression rate of ALSFRS-R at time of diagnosis predicts survival time in ALS. Neurology. 2006;66(2):265-267. DOI:10.1212/01.WNL.0000194316.91908.8A / PubMed
- Roche JC, Rojas-Garcia R, Scott KM, et al. A proposed staging system for amyotrophic lateral sclerosis. Brain. 2012;135(Pt 3):847-852. DOI:10.1093/brain/awr351 / PubMed
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- Miller RG, Jackson CE, Kasarskis EJ, et al. Practice parameter update: the care of the patient with amyotrophic lateral sclerosis: multidisciplinary care, symptom management, and cognitive/behavioral impairment. Neurology. 2009;73(15):1227-1233. DOI:10.1212/WNL.0b013e3181bc01a4 / PubMed
- Van Damme P, Al-Chalabi A, Andersen PM, et al. European Academy of Neurology (EAN) guideline on the management of amyotrophic lateral sclerosis. Eur J Neurol. 2024;31(6):e16264. DOI:10.1111/ene.16264 / PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
おわりに
ALSFRS-R は、安全の確認→変化の把握→優先課題を 1 つに絞る→小さく介入→再評価のリズムに乗せると、点数が “次の一手” に繋がります。記録と面談準備のチェックをまとめて整えるなら、面談準備チェックと職場評価シートは こちら(ダウンロード)に置いています。


