KTバランスチャート(KTBC)の使い方

栄養・嚥下
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KTバランスチャート(KTBC)とは?

KTバランスチャートは、嚥下関連の 13 項目を 1〜5 点で俯瞰し、経口摂取の安全性・食形態の最適化・介入の優先順位を多職種で共有する実用ツールです。本記事では著作権に配慮し、公式の評価基準の具体的な文言は掲載しません。代わりに、初めてでも運用できるよう「観察の着眼点/採点の考え方(安全な書き方)/介入のコツ」を整理しました。索引:栄養・嚥下ハブ評価ハブ

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実施対象者

嚥下機能低下が疑われる方(高齢者、脳血管障害、神経筋疾患、頭頸部がん術後、フレイル/サルコペニアなど)に広く有用です。目的は ①安全管理(誤嚥・窒息の予防) ②食形態・一口量・姿勢・とろみの最適化 ③多職種での情報共有 です。全体像は栄養・嚥下ハブも参照してください。

実施手順(概要:評価基準の具体文言は掲載しません)

  1. 事前準備:座位安定(骨盤・体幹・頭頸部)、覚醒・疲労・呼吸状態の確認、義歯適合、口腔清潔。
  2. 観察 → 試行:安全な形態・少量から開始。むせ/湿性嗄声/咳嗽/残留感/呼吸の乱れを連続観察。
  3. 13項目の採点:各項目を 1〜5 点で俯瞰(下の「項目別ガイド」を参照)。
  4. 共有・計画:低スコア項目=重点介入。食形態・姿勢・口腔ケア・栄養・訓練を合意形成。
  5. 再評価:体調・薬剤・義歯・疲労など条件変動に合わせて定期再評価。

学習や臨床体制づくりの流れはこちらも参考になります(本文インライン導線)。

項目別ガイド(観察の着眼点/採点の考え方/介入のコツ)

※ 各項目名をタップ(クリック)すると解説が開きます。もう一度タップで閉じます。最初の 1 件のみ展開しています。

1. 食べる意欲
  • 観察:食事開始への反応、促しへの反応、一口目までの時間、中断の有無。
  • 採点の考え方自発的に開始し持続できるほど高評価。促しが必要/中断頻発は低め。眠気・抑うつ・痛みなど背景要因も併記。
  • 介入:時間帯の最適化、疼痛コントロール、嗜好の活用、環境調整(騒音・匂い・姿勢)。
2. 全身状態
  • 観察:バイタル・SpO2・疲労度・覚醒レベル・体温・脱水徴候。
  • 採点の考え方覚醒・循環・呼吸が安定し、食事耐性があるほど高評価。発熱・低酸素・せん妄は低め。
  • 介入:水分・休息、薬剤タイミング、食事時間の調整、離床量の調整。
3. 呼吸状態
  • 観察:呼吸数、努力呼吸、湿性ラ音、食事時の息苦しさ、咳嗽の有無・タイミング。
  • 採点の考え方安定した呼吸で食事中に乱れなし=高評価。食直後のSpO2低下や咳嗽連発は低め。
  • 介入:休息挿入、ペーシング、形態の易嚥化、吸引体制、呼吸リハ併用。
4. 口腔状態
  • 観察:残渣、乾燥、舌苔、義歯の適合・疼痛、開口量、口唇閉鎖。
  • 採点の考え方清潔・湿潤・義歯適合・閉鎖良好=高評価。疼痛・不適合・乾燥・残渣増は低め。
  • 介入:口腔ケア、保湿、義歯調整、口唇閉鎖訓練、舌運動。
5. 認知機能(食事中)
  • 観察:指示理解、ペース管理、注意の持続、食具の正しい使用。
  • 採点の考え方指示なしで手順を保ち危険行動がない=高評価。食具の誤用・詰め込みは低め。
  • 介入:視覚的プロンプト、段階化、食具選定、見守り密度の調整。
6. 咀嚼・送り込み
  • 観察:咀嚼効率、一口量、保持、食塊形成、送り込み遅延。
  • 採点の考え方適正一口量で食塊形成〜送り込みが滑らか=高評価。口腔内残留や長時間の咀嚼は低め。
  • 介入:一口量調整、きざみ→ソフト→ミキサー等の段階化、舌・頬圧の促し。
7. 嚥下
  • 観察:嚥下反射の立ち上がり、嚥下回数、咳嗽、湿性嗄声、複数回嚥下の必要。
  • 採点の考え方1回で明瞭・安全に通過し事後の湿性嗄声なし=高評価。咳嗽や複数回嚥下が常態は低め。
  • 介入:頸部屈曲など姿勢戦略、とろみ付与、リスク高は専門検査へ。
8. 姿勢・耐久性
  • 観察:座位保持、頭頸部アライメント、疲労による崩れ、食事時間の許容。
  • 採点の考え方頭頸部正中を保ち持続できる=高評価。後屈・側屈・早期疲労は低め。
  • 介入:体幹・骨盤サポート、ヘッドサポート、休憩挿入、姿勢再セット。
9. 食事動作
  • 観察:スプーン操作、皿位置、リーチ、手の震え、食具の選択。
  • 採点の考え方自立して安定操作=高評価。強い介助・頻回こぼしは低め。
  • 介入:柄付きスプーン、高縁皿、軽量化、皿の位置調整。
10. 活動(離床・覚醒)
  • 観察:食前の活動量、覚醒度、日内変動、離床時間。
  • 採点の考え方適度な覚醒と集中が保てる=高評価。起こした直後の眠気・夕方の疲労は低め。
  • 介入:食前の軽い覚醒刺激、食事時間の前後調整、昼寝調整。
11. 摂食状況レベル
  • 観察:経口摂取の範囲・頻度・必要支援、非経口栄養の併用状況。
  • 採点の考え方自立的な経口摂取の割合が高いほど高評価。一時中止や限定的摂取は低め。
  • 介入:再開基準の明確化、段階的再導入、モニタリング計画。
12. 食物形態
  • 観察:現行形態の適合度(むせ・残留・疲労)と一口量、組み合わせ。
  • 採点の考え方現行形態が安全かつ効率的=高評価。形態変更で改善余地が大きい場合は低め。
  • 介入:きざみ・ソフト・ミキサー・ゼリー等の段階化、とろみの粘度調整。
13. 栄養
  • 観察:食事摂取量、体重変化、脱水リスク、補助食品の利用。
  • 採点の考え方必要量に達する摂取が継続=高評価。体重減少・食思不振の持続は低め。
  • 介入:エネルギー密度の高い食品、補助飲料、回数分割、栄養士と目標設定。

スコアの読み方と優先順位づけ

低スコアの典型パターンと優先介入の例
パターン 見えやすいサイン 優先介入の例
口腔系の問題 残渣、乾燥、義歯痛、閉鎖不全 口腔ケア、保湿、義歯調整、口唇・舌訓練
嚥下期の問題 湿性嗄声、複数回嚥下、咳嗽 姿勢戦略、とろみ付与、専門検査の検討
耐久性・姿勢の問題 後屈・側屈、早期疲労、食事時間延長 支持具・体位調整、休息、短時間分割
認知・動作の問題 ペース乱れ、食具誤用、詰め込み 段階化、プロンプト、食具選定・配置調整

臨床体制や学習の流れはこちらも参考になります(本文内インライン導線)。

臨床ワークシート(評価文言なし・印刷可)

本ブログ制作の非公式ワークシートです。公式の評価基準の具体的な文言は含みません。必要に応じて印刷・記入してお使いください。

FAQ

※ 各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

どのくらいの頻度で再評価しますか?

状態変動の大きい時期(発熱、体調変化、薬剤調整、入退院直後)は毎食〜毎日、それ以外でも週 1 回程度の定点観測を推奨します。重大サイン(窒息・誤嚥疑い)は即時中止と再評価が原則です。

合計点だけで判断してよいですか?

いいえ。合計点は傾向把握の一助に過ぎません。低スコア領域の特定と対策(姿勢・口腔・嚥下・認知・栄養など)を優先します。

動画やチェックリストの併用は?

短時間の動画(姿勢・咀嚼・嚥下後の声質など)は多職種共有に有効です。個人情報に配慮した記録・保管ルールを整備してください。

注記・権利表示

「KTバランスチャート」「KTBC」は特定非営利法人口から食べる幸せを守る会の登録商標です。本記事は臨床運用の解説を目的とし、公式の評価基準の具体的な文言や図表の転載は行っていません。評価基準の確認は出版社等の公式資料をご参照ください(例:配布資料・書籍・研修テキスト等)。

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