NIHSS の評価方法( 11 項目を 10 分で回す手順)
NIHSS は「順番・声かけ・時間規定」を固定すると、短時間でも再現性が出ます。まず全体像 → 使い分け → 記録の型の順にそろえると運用が安定します。
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関連:評価ハブ
関連:重症度スケールの使い分け
NIHSS (National Institutes of Health Stroke Scale)は、急性期脳卒中の神経学的重症度を「共通言語」でそろえるスケールです。
本記事は「 NIHSS の評価方法(手順の固定化)」に焦点を当て、 10 分前後で回し切る型(順番・声かけ・保持角度・時間規定)を整理します。合計点だけでなく、どの項目で点が付いたか(内訳)を根拠メモと一緒に残すと、次の一手が揃います。
ダウンロード(A4 記録シート PDF)
院内共有や再評価に使いやすいように、A4 1 枚で「固定 6 点+採点 11 項目+再評価メモ」をまとめた記録シートを用意しました。
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自動計算ツール(合計点を自動計算)
入力すると合計点が自動で更新されます。未入力は 0 として計算します(範囲外は範囲内に丸めます)。
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評価前の準備(環境・前提)
点数のブレは「患者差」より「条件差」で起きやすいです。まずは環境・体位・補助具を揃え、再評価でも同条件に寄せます。
鎮静・疼痛・せん妄などで実施が難しい場合は、無理に埋めず検査不能の理由を記録し、次回の条件(時間帯・姿勢・鎮痛の有無)を先に決めておくと運用が安定します。
| カテゴリ | 確認事項 |
|---|---|
| 環境 | 静かな環境、十分な照明。家族や同席者には見守りのみ依頼。 |
| 補助具 | 眼鏡・補聴器・義歯など普段の補助具は装着可(成績を上げるための過度な補助は不可)。 |
| 体位 | 上肢:座位 90° または 仰臥 45°、下肢:仰臥 30° を取れる体位を準備。 |
| 鎮静・疼痛 | 鎮静・強い疼痛・せん妄は採点に影響。必要なら保留や注記(「検査不能の理由」を明記)。 |
| ベースライン | 失語・認知症・視聴覚障害など既存の障害を所見に明記(「発症前から」か「急性増悪」かを区別)。 |
評価方法(採点手順: 10 分で回す型)
NIHSS は「順番どおりに回す」設計です。順番が崩れると、疲労や学習効果で点が揺れやすくなります。
施設内で差が出やすいのは、 5・ 6(運動)と 9・ 10(言語・構音)です。ここだけでも声かけ・角度・時間を固定すると、経時比較が一気に楽になります。
- 説明 → 同意 → 体位調整:検査の流れを簡潔に伝え、普段の補助具を装着。
- 実施順: LOC → 注視 → 視野 → 顔面 → 上肢 → 下肢 → 失調 → 感覚 → 言語 → 構音 → 無視(原則の順序)。
- 採点:初回のパフォーマンスで採点(やり直しで「ベスト」を取らない)。
- 注記:検査不能の理由(疼痛・理解困難・既存障害など)を明記。
| テーマ | 要点 |
|---|---|
| 誘導 | 過度な練習・ヒントは不可。指示は最小限・統一文言で。 |
| 補助 | 検査を容易化する補助は不可。普段の補助具は装着可。 |
| 時間 | 上肢保持 10 秒、下肢保持 5 秒など規定時間を守る。 |
| 区別 | 失語(理解・表出)と構音障害(発話の明瞭度)を分けて採点。 |
| 内訳 | 合計点だけでなく、どの項目が高得点かを臨床に反映(例:無視が強い→転倒・逸脱対策)。 |
11 項目の要点(早見表)
| # | 項目 | 点数レンジ | 判定のカギ |
|---|---|---|---|
| 1 | 意識レベル(反応・質問・命令) | 0–3・ 0–2・ 0–2 | 覚醒、見当識、命令の遂行(失行・失語の影響に留意)。 |
| 2 | 注視 | 0–2 | 共同偏視の有無(追視で判定)。 |
| 3 | 視野 | 0–3 | 同名半盲・全盲(顔向け反応・瞬目も参照)。 |
| 4 | 顔面麻痺 | 0–3 | 対称性・随意運動(額・歯の露出・頬)。 |
| 5 | 上肢の運動 | 0–4 × 2 | 90°(座位)/ 45°(仰臥)で 10 秒保持のドリフト。 |
| 6 | 下肢の運動 | 0–4 × 2 | 30°(仰臥)で 5 秒保持のドリフト。 |
| 7 | 四肢運動失調 | 0–2 | 協調運動(指鼻・踵膝)、麻痺による制限は除外。 |
| 8 | 感覚 | 0–2 | 刺激の左右差・減弱。 |
| 9 | 言語(失語) | 0–3 | 呼称・復唱・理解。構音障害とは独立。 |
| 10 | 構音障害 | 0–2 | 発話の明瞭度。義歯・口腔状態の整備。 |
| 11 | 消去現象/半側空間無視 | 0–2 | 二重同時刺激での消失。視野欠損と区別。 |
合計点の読み方と臨床活用
合計点は「重症度の概算」として便利ですが、介入は項目内訳で決まります。点数が同じでも、失語/無視/意識の比重でリスクは変わります。
早期リハでは「安全な刺激量」と「再評価のタイミング」を先に決め、条件(体位・角度・声かけ)を揃えて比較できる状態を作ると運用が安定します。
| 合計点 | 目安 | 臨床メモ |
|---|---|---|
| 0 | 症状なし | 再評価・画像所見と統合して判断。 |
| 1–4 | 軽症 | 失語・無視などは点数の割に ADL 影響が大きいことに注意。 |
| 5–15 | 中等症 | 合併症予防と早期離床の優先順位を、全身状態とセットで検討。 |
| 16–20 | 中等–重症 | 体位管理・シーティング・呼吸循環への影響を重視し、刺激量と再評価条件を固定。 |
| 21–42 | 重症 | 全身管理が最優先。誤嚥・褥瘡・拘縮予防をチームでバンドル化して共有。 |
現場の詰まりどころ(判定で迷いやすいポイント)
- よくある失敗
- 回避手順
- 関連:評価ハブ(運用の型)
よくある失敗(点数が揺れる原因)
| 失敗 | 起きる理由 | 見落としやすいサイン | 回避 |
|---|---|---|---|
| 順番が前後する | 疲労・学習効果で後半の反応が変わる。 | 「さっきより良い/悪い」が短時間で揺れる。 | 原則の順序で固定し、再評価も同順で回す。 |
| 声かけが人で違う | ヒント量が変わり、初回反応が別物になる。 | 評価者が変わると点数が動く。 | 短い統一文言に寄せ、誘導は最小限に。 |
| 時間規定を短縮する | 「保持できた」判定になりやすい。 | ドリフトが出る前に終了。 | 上肢 10 秒/下肢 5 秒を厳守する。 |
| 失語と構音を混同 | “話せない” を 1 つにまとめてしまう。 | 内容は合うが不明瞭、または明瞭だが意味不明。 | 9(言語)=内容、 10(構音)=音で切り分ける。 |
| 既存障害を無視する | 発症前の情報が不足しやすい。 | 以前からの難聴・認知症で “できない”。 | ベースラインを所見に明記し、変化分を追う。 |
回避手順(チームで揃える 5 つ)
| 手順 | そろえる条件 | 記録ポイント |
|---|---|---|
| ① 体位を固定 | 座位 90°/仰臥 45°/下肢 30° を揃える。 | 実施体位と支持(枕・柵)を明記。 |
| ② 声かけを統一 | 短い文言で、誘導は最小限。 | 指示の反応(理解・遂行)も所見に残す。 |
| ③ 時間規定を厳守 | 上肢 10 秒/下肢 5 秒。 | ドリフトの出方をメモして比較材料に。 |
| ④ 初回で採点 | やり直しで “ベスト” を取らない。 | 再試行した場合は理由を注記。 |
| ⑤ 検査不能は理由を書く | 鎮静・疼痛・せん妄・既存障害など。 | 次回の条件(時間帯・鎮痛の有無)を合わせる。 |
FAQ(よくある質問)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. ベースラインの失語・認知症がある場合、 NIHSS はどう考えればよいですか?
A. 既存障害の影響を所見に明記したうえで、可能な範囲で発症前からの変化を採点します。慢性失語があり会話はもともと単語レベルでも、「呼びかけへの反応が乏しくなった」「ジェスチャーが減った」などの変化があれば、 1(意識レベル)や 9(言語)の解釈に反映します。
Q2. 意識障害と失語が重なっているとき、どこまで NIHSS で評価できますか?
A. まず「覚醒度」(自発開眼・呼びかけへの反応・追視の有無)から 1(意識レベル)を決め、そのうえで「理解・表出の障害」として 9(言語)を評価します。呼名への反応や視線の追従があれば、「全く反応なし」とは分けて採点します。
Q3. 複数職種で NIHSS を使う場合、どこをそろえると良いですか?
A. 「声かけの文言」「姿勢・保持角度」「時間規定」「補助具の扱い」の 4 点を運用ルールとして文章化し、全職種で共有するのがおすすめです。特に 5・ 6(運動)と 9・ 10(言語・構音)は、少しの違いで点数が変わりやすいため、経時比較の信頼性が上がります。
次の一手(運用を固める)
NIHSS は「点数」より「条件が揃った経時比較」が価値です。まずは評価の位置づけ(いつ・何のために)を揃え、次に “使い分け” で過不足を減らすと、運用が回りやすくなります。
- A(全体像):脳卒中リハの評価項目(病期別フロー)
- B(すぐ実装):脳卒中の重症度スケールの使い分け
参考文献
- Brott T, Adams HP Jr, Olinger CP, et al. Measurements of acute cerebral infarction: a clinical examination scale. Stroke. 1989;20(7):864–870. doi: 10.1161/01.STR.20.7.864 / PubMed: 2749846
- National Institute of Neurological Disorders and Stroke. NIH Stroke Scale. NINDS / NIHSS PDF: PDF
- Powers WJ, Rabinstein AA, Ackerson T, et al. Guidelines for the Early Management of Patients With Acute Ischemic Stroke: 2019 Update to the 2018 Guidelines. Stroke. 2019;50(12):e344–e418. doi: 10.1161/STR.0000000000000211 / PubMed: 31662037
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


