SARAとは?運動失調を8項目・40点で評価する尺度です
SARA(Scale for the Assessment and Rating of Ataxia)は、運動失調の程度を8項目・合計0〜40点で評価する臨床尺度です。歩行・立位・座位・構音・四肢協調を評価し、得点が高いほど運動失調が重いことを示します。
臨床では、合計点だけでなく、8項目それぞれの得点、左右差、評価条件、観察所見を記録することが重要です。特に四肢協調の4項目は左右を別々に採点し、左右平均を合計点に反映するため、計算方法を理解しておく必要があります。
この記事では、SARAの評価方法、8項目の配点、左右平均の計算例、採点時の判断境界、記録シートPDF、自動計算ツール、再評価の進め方を整理します。評価を始める前に、正式な採点基準と安全上の注意点も確認してください。
SARAの8項目と配点|合計40点
SARAは歩行8点、立位6点、座位4点、構音6点、四肢協調4項目が各4点の合計40点満点です。四肢協調の4項目では左右を別々に評価し、各項目の左右平均を得点として採用します。
次の表は8項目の構成と配点を整理したものです。具体的な点数の判定には、原著または正式な評価票に記載された教示・採点基準を使用してください。
※スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。
| 項目 | 配点 | 評価内容 | 記録のポイント |
|---|---|---|---|
| 1.歩行 | 0〜8点 | 歩行の安定性、方向転換、継ぎ足歩行など | 支持の必要性、補助具、介助、ふらつき |
| 2.立位 | 0〜6点 | 立位保持、足幅、継ぎ足立位など | 支持基底面、姿勢動揺、支持の必要性 |
| 3.座位 | 0〜4点 | 支持のない座位での姿勢保持 | 体幹動揺、手支持、保持時間 |
| 4.構音 | 0〜6点 | 発話の明瞭性、構音障害の程度 | 聞き取りやすさ、発話の変化 |
| 5.指追い試験 | 0〜4点 | 動く目標への到達精度 | 左右別、測定障害、目標からのずれ |
| 6.指鼻試験 | 0〜4点 | 目標到達時の振戦 | 左右別、企図振戦の程度 |
| 7.手の回内・回外反復運動 | 0〜4点 | 交互運動の速さと規則性 | 左右別、所要時間、リズムの乱れ |
| 8.踵脛試験 | 0〜4点 | 下肢運動の正確性と滑らかさ | 左右別、軌道逸脱、接触の途切れ |
| 合計 | 0〜40点 | 高得点ほど運動失調が重い | |
各項目の得点は、0点が運動失調を認めない状態に対応し、点数が高くなるほど障害が強い方向を示します。ただし、項目ごとに評価条件と点数の定義は異なります。共通の介助量や動作速度だけで一律に点数を決めることはできません。

SARAの計算方法|四肢協調は左右平均を使います
SARAの合計点は、歩行・立位・座位・構音の4項目の得点と、四肢協調4項目それぞれの左右平均を合計して算出します。
四肢協調では、左右の得点をそのまま両方加算するのではなく、各項目で左右平均を計算します。この計算方法を間違えると、40点満点の正式なSARAスコアになりません。
左右平均の計算式
四肢協調の各項目は、次の式で算出します。
各項目の得点 =(右側の得点 + 左側の得点)÷ 2
たとえば、指追い試験が右2点・左3点の場合、SARAに加える指追い試験の得点は2.5点です。
SARA合計点の計算例
以下は計算方法を説明するための仮想例です。実際の患者の得点や重症度区分を示すものではありません。
※スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。
| 項目 | 右 | 左 | 合計に加える得点 |
|---|---|---|---|
| 歩行 | ― | ― | 4点 |
| 立位 | ― | ― | 3点 |
| 座位 | ― | ― | 1点 |
| 構音 | ― | ― | 2点 |
| 指追い試験 | 2点 | 3点 | 2.5点 |
| 指鼻試験 | 1点 | 2点 | 1.5点 |
| 回内・回外反復運動 | 2点 | 2点 | 2点 |
| 踵脛試験 | 1点 | 2点 | 1.5点 |
| 合計 | ― | ― | 17.5点 |
この例では、歩行・立位・座位・構音の合計が10点、四肢協調4項目の合計が7.5点となり、SARA合計点は17.5点です。
四肢協調の左右平均によって0.5点刻みの得点が生じるため、SARAの合計点が小数になることは計算間違いではありません。
SARAの評価前に確認する6つの条件
SARAを再評価に使用する場合は、正式な実施方法を守ったうえで、体調、補助具、環境などの条件を記録します。前回から得点が変化した場合に、運動失調そのものの変化と測定条件の違いを区別しやすくするためです。
ただし、条件をそろえることと、正式な評価課題を独自に変更することは別です。原法で指定されている教示、姿勢、動作条件、採点基準を優先してください。
※スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。
| 確認項目 | 確認内容 | 記録例 |
|---|---|---|
| 内服・体調 | 服薬時刻、眠気、めまい、疲労、体調変化 | 午前評価、眠気なし |
| 補助具・介助 | 杖、歩行器、装具、支持物、介助の有無 | 歩行器使用、見守り |
| 環境 | 歩行場所、床面、履物、評価スペース | 病棟廊下、運動靴 |
| 正式な実施条件 | 教示、動作速度、姿勢、試行方法 | 正式な評価票に沿って実施 |
| 休息・中断 | 休憩の有無、疲労、安全上の中止理由 | 課題間に座位休息あり |
| 採点根拠 | 点数の根拠、左右差、特徴的な動作 | 方向転換時に側方動揺が増加 |
再評価で重要なのは、同じ条件を記録することに加えて、正式な評価手順から逸脱していないかを確認することです。条件が異なる場合は、得点差の解釈に注意が必要です。
SARAの採点手順|8項目の実施と判断境界
SARAは、歩行、立位、座位、構音、指追い試験、指鼻試験、手の回内・回外反復運動、踵脛試験の8項目で構成されます。
採点は、正式な評価票に示された課題と判定基準に従います。臨床では安全性を確認しながら実施し、点数と合わせて観察所見を残してください。
歩行・立位・座位|支持の必要性と姿勢保持を確認する
歩行では、歩行の安定性や方向転換、継ぎ足歩行などを評価します。立位では支持基底面や姿勢保持、座位では体幹の安定性を確認します。
採点では、補助具や介助の有無が判定に関わる項目があります。補助具を使用したから一律に減点する、介助者がいるから独自の点数を付ける、といった判断は避けてください。正式な基準に沿って判定します。
転倒の危険が高い場合は、得点を確定するために危険な課題を強行しないことが重要です。実施できなかった理由と評価できた範囲を記録してください。
構音|発話の明瞭性を評価する
構音では、発話の明瞭性や構音障害の程度を評価します。単純な発話速度だけで点数を決めるのではなく、正式な採点基準に示された状態に照らして判断します。
発話内容、聞き取りやすさ、構音の崩れ方などを補足しておくと、再評価時に得点の変化を確認しやすくなります。
指追い試験|目標からのずれを確認する
指追い試験では、検者が提示する目標に対する到達運動を評価します。主に目標からのずれを確認し、左右別に採点します。
検者の目標提示方法や試行条件が変わると、得点の比較が難しくなります。正式な教示と課題条件を確認して実施してください。
指鼻試験|企図振戦を確認する
指鼻試験では、指を目標へ近づける際の振戦を評価します。指追い試験と同じように見えても、評価する現象と採点基準は異なります。
目標からのずれだけで指鼻試験の点数を決めず、原法で定められた企図振戦の判定基準を使用してください。
回内・回外反復運動|速さと規則性を確認する
手の回内・回外反復運動では、交互運動の遂行を評価します。所要時間と運動の不規則性が採点に関わるため、単に速く動かせたかどうかだけでは判断できません。
左右を別々に評価し、正式な課題条件に沿って判定してください。
踵脛試験|下肢運動の滑らかさを確認する
踵脛試験では、下肢の協調運動を評価します。踵を脛に沿わせる運動中の接触の途切れや軌道の乱れなどを確認します。
左右別に評価し、正式な基準に従って得点化します。筋力低下、疼痛、関節可動域制限などが課題遂行に影響している場合は、運動失調による所見と区別して記録してください。
採点時の重要事項:SARAは正式な教示・採点基準に沿って実施してください。安全上の理由などで実施していない項目を、独自に0点として扱わないことが重要です。正式な基準で遂行不能と判定できる状態と、課題そのものを実施していない状態は区別します。
SARA記録シートPDF
SARAは、点数だけでなく評価条件、各項目の得点、観察した根拠、前回との差、次回の優先課題を一緒に残すと、再評価で使いやすくなります。
以下のA4記録シートは、公式の設問文を転載せず、臨床で必要なスコアと観察所見を1枚にまとめられる構成です。
SARA記録シートをプレビューする
記録シートは採点と経過記録を補助するものであり、正式な評価票の代わりにはなりません。項目別の判定基準は原著・正式資料を参照してください。
SARA自動計算ツール
SARAは、四肢協調の4項目を左右別に採点し、その平均を合計点へ反映します。手計算では左右平均や0.5点の扱いでずれが生じることがあるため、自動計算ツールを使うと集計結果を確認しやすくなります。
歩行、立位、座位、構音と、左右別の四肢協調4項目を入力すると、SARA合計点、歩行・姿勢領域、四肢協調領域、前回との差、得点が高い項目、記録文を表示します。未入力がある場合は合計点を確定しない仕様です。
- 歩行、立位、座位、構音の得点を入力します。
- 指追い試験、指鼻試験、手の回内・回外反復、踵脛試験を左右別に入力します。
- 左右平均、合計点、領域別得点を確認します。
- 前回SARAがある場合は、0〜40点の0.5点刻みで入力します。
- 必要に応じて体調、補助具、介助量、環境、観察所見を記録します。
スマートフォンで記事内の操作がしにくい場合や、入力画面を大きく表示したい場合に使用してください。
記事内でSARA自動計算ツールを表示する
SARAは高得点ほど運動失調が重い方向を示しますが、合計点だけで重症度や介入方針を断定する尺度ではありません。項目内訳、評価条件、補助具、介助量、移動手段、ADL場面を合わせて解釈してください。
SARAの解釈|合計点と項目別得点を組み合わせる
SARAの合計点は、運動失調の程度を把握するために役立ちます。ただし、臨床では合計点だけでなく、どの項目の得点が高いか、前回からどの項目が変化したかを確認することが重要です。
たとえば、歩行・立位の得点が高い場合は移動能力や転倒リスクに関連する問題を確認し、四肢協調の得点が高い場合は到達動作や巧緻動作、ADL場面での影響を確認します。
ただし、SARAの項目別得点だけで介入方法が決まるわけではありません。筋力、感覚、関節可動域、認知機能、姿勢制御、生活上の問題などを合わせて評価します。
SARAのMCIDは1.5点?研究結果の読み方
小脳性運動失調を対象とした研究では、複数の算出方法を統合したSARAの最小臨床的重要差(MCID)として1.5点が提案されています。
ただし、この値をすべての疾患、病期、評価間隔、患者に共通する判定基準として使用することは適切ではありません。
実際の臨床では、次の点を合わせて確認してください。
- 前回と同じ条件で評価できているか
- 合計点の変化がどの項目に由来するか
- 補助具や介助量が変化していないか
- 歩行、移動、食事、書字などの生活機能が変化しているか
- 対象患者に研究結果を適用できるか
1.5点は研究に基づく参考値であり、個々の患者の改善・悪化を単独で確定する基準ではありません。
SARAの記録例
記録例(仮想例)
SARA合計13.5点。前回12.0点。歩行・立位項目で得点増加。歩行器使用、見守り。方向転換時の側方動揺が増加。四肢協調の得点は前回と同程度。前回と同じ時間帯・履物で評価。病棟歩行時の介助量も確認し、次回再評価する。
この例では、合計点が1.5点増加していますが、その数値だけで臨床的に重要な悪化と断定しません。歩行・立位の変化と生活場面での影響を照合することが重要です。
SARAでよくある失敗と対策
SARAでは、評価条件の違い、左右平均の計算間違い、採点基準の解釈の違いなどが、再評価時の比較を難しくすることがあります。
※スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。
| 詰まりどころ | 主な原因 | 対策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 前回と得点が合わない | 補助具、履物、体調、介助条件が異なる | 前回の評価条件を確認する | 変更した条件を明記する |
| 四肢協調の合計が合わない | 左右の得点をそのまま合算している | 4項目それぞれで左右平均を計算する | 右・左・平均を確認する |
| 歩行課題が危険 | 転倒リスクが高い | 安全確保を優先し、危険なら中止する | 実施できた範囲と中止理由 |
| 指追いと指鼻の採点を混同する | 評価する現象の違いが曖昧 | 項目別の正式な採点基準を確認する | 測定障害と企図振戦を区別する |
| 反復運動を速さだけで評価する | 不規則性を確認していない | 所要時間と運動の規則性を確認する | 左右別の遂行状況 |
| 得点だけを記録する | 採点根拠が残っていない | 特徴的な所見を1行追加する | ふらつき、左右差、動作の乱れ |
| 得点差だけで改善と判断する | 評価条件や生活機能を確認していない | 項目別得点とADLの変化を照合する | 移動手段、介助量、生活場面 |
SARA再評価の進め方|同じ条件で経時変化を確認する
SARAを経時的に使用する場合は、評価条件をそろえ、合計点、項目別得点、観察所見を比較します。
再評価の頻度は疾患、病期、介入目的、施設の運用によって異なります。すべての患者に共通する一定の評価間隔があるわけではありません。
- 評価条件を確認する:内服、体調、補助具、履物、環境、介助条件を確認します。
- 正式な方法で8項目を評価する:安全を確保し、採点基準に従います。
- 左右平均を計算する:四肢協調4項目は左右平均を算出します。
- 合計点と項目別得点を比較する:どの項目が変化したかを確認します。
- 生活機能と照合する:移動手段、転倒、ADL、介助量の変化を確認します。
- 次回の評価条件を記録する:再現したい条件と確認すべき課題を残します。
急な得点悪化がみられた場合は、運動失調の進行だけを原因とせず、感染、薬剤変更、疲労、睡眠不足、新たな神経症状などの可能性も確認します。急性の神経症状がある場合は、尺度の再測定よりも医学的評価を優先してください。
SARA・ICARS・BARSの使い分け
SARA、ICARS、BARSは、いずれも運動失調の評価に使用される尺度ですが、項目数、評価領域、必要な時間、得られる情報が異なります。
SARAは8項目で構成され、比較的簡便に経時評価を行いたい場合に適しています。一方、ICARSは19項目・100点満点で、姿勢・歩行、四肢協調、構音、眼球運動をより細かく評価します。
評価尺度を途中で変更した場合は、異なる尺度の得点を単純換算して比較しないことが重要です。
詳しくは、SARA・ICARS・BARSの違いと使い分けで確認できます。
よくある質問
Q1.SARAは何項目・何点満点ですか?
SARAは8項目・40点満点です。歩行8点、立位6点、座位4点、構音6点、四肢協調4項目が各4点で構成されます。
Q2.SARAは何点から重症ですか?
すべての疾患や病期に共通する単一の点数で重症度を判断することはできません。合計点だけでなく、項目別得点、移動能力、ADL、評価条件を合わせて解釈してください。
Q3.SARAの合計点に0.5点が出るのは間違いですか?
間違いではありません。四肢協調4項目は左右別に採点し、左右平均を使用するため、0.5点刻みの得点が生じます。
Q4.歩行課題が危険で実施できない場合はどうしますか?
転倒の危険が高い場合は、無理に実施しないでください。正式な基準で判定できる状態かを確認し、実施していない場合は未評価項目と理由を記録します。独自に0点を付けることは避けてください。
Q5.SARAの1.5点の変化は改善・悪化を意味しますか?
小脳性運動失調を対象とした研究でMCIDとして1.5点が提案されていますが、すべての患者に共通する判定基準ではありません。評価条件、疾患、病期、項目別得点、生活機能の変化を合わせて判断します。
Q6.SARAとICARSはどちらを使えばよいですか?
比較的少ない項目で経時評価を行いたい場合はSARA、眼球運動を含めて運動失調を詳しく分けて評価したい場合はICARSが選択肢になります。対象疾患、評価目的、必要な情報量によって使い分けます。
まとめ|SARAは8項目の内訳と評価条件が重要です
SARAは、運動失調を8項目・40点満点で評価する尺度です。四肢協調4項目は左右別に採点し、各項目の左右平均を合計点に反映します。
臨床では、正式な採点基準に従うこと、左右平均を正しく計算すること、評価条件と採点根拠を残すことが重要です。再評価では合計点だけでなく、項目別得点と生活機能の変化を合わせて確認してください。
運動失調評価の全体像や、SARAの得点を歩行目標へつなげる考え方を確認したい場合は、以下の記事も参考になります。
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参考文献
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- Sato K, Yabe I, Soma H, et al. Reliability of the Japanese version of the Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA). Brain Nerve. 2009;61(5):591-595. PubMed
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- Petit E, Moulaire P, Subramony SH, et al. SARA captures disparate progression and responsiveness in spinocerebellar ataxias. J Neurol. 2024;271(7):3743-3753. doi:10.1007/s00415-024-12475-1
- Padilla G, Qi Y, Lee S, et al. Minimal Clinically Important Difference of the Scale for the Assessment and Rating of Ataxia. Mov Disord Clin Pract. 2026;13(2):509-514. Epub 2025 Sep 8. doi:10.1002/mdc3.70343
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

