SARAとは?運動失調の評価方法・採点・点数の見方を解説

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SARAとは?運動失調を8項目・40点で評価する尺度です

SARA(Scale for the Assessment and Rating of Ataxia)は、運動失調の重症度を8項目・合計0〜40点で評価する臨床スケールです。歩行、立位、座位、構音、四肢協調をまとめて確認できるため、初回評価と再評価を同じ物差しで比較しやすいのが特徴です。

この記事では、SARAの評価方法、採点の流れ、PDF記録シート、自動計算ツール、解釈のコツ、現場での失敗対策を1ページで整理します。結論として、SARAは合計点だけで判断するより、条件を固定し、項目内訳と根拠メモを残すことで臨床判断に使いやすくなります。

SARAで見ること|合計点と項目内訳を分けて考える

SARAは、運動失調によって動作がどれくらい不安定になっているかを数値化します。合計点が高いほど重症度が高い方向に解釈しますが、実務では合計点だけでなく、どの項目で点が増えているかを見ることが重要です。

たとえば、歩行・立位の点数が高い場合は移動や転倒リスクへの対応が優先されやすく、四肢協調の点数が目立つ場合は到達動作や巧緻動作、ADL場面での誤差修正が課題になります。合計点は全体像、項目内訳は次の介入ターゲットとして使うと整理しやすくなります。

SARAの評価方法と8項目・40点の見方を整理した図解
SARAは合計点だけでなく、項目内訳と評価条件を合わせて見ると、再評価と介入につなげやすくなります。

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SARAの基本構成
項目 評価する主な領域 配点 臨床で見るポイント
歩行 歩行時のふらつき、補助具、介助量 0〜8 移動手段・転倒リスクと合わせて読む
立位 支持基底面、揺れ、支持物への依存 0〜6 足幅、手すり、見守り条件を残す
座位 体幹の揺れ、手支持、保持の安定性 0〜4 背もたれ・手支持の有無を記録する
構音 発話の明瞭度、途切れ、聞き取りやすさ 0〜6 短文と長文での崩れを分けて見る
四肢協調 上肢・下肢の協調性、軌道、リズム 各0〜4 左右差と修正動作を残す

評価前に固定する6点セット

SARAは、疲労、内服、補助具、床環境などの影響を受けやすい評価です。前回と点数が変わったときに「患者さんの変化」なのか「条件の違い」なのかを判断できるように、評価前に条件をそろえます。

最低限、次の6点を固定して記録すると、再評価の比較がしやすくなります。

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SARA評価前に固定する6点セット
固定する項目 確認する内容 記録例
内服・体調 オン/オフ、眠気、めまい、疲労感 眠気なし、午前評価
補助具 杖、歩行器、装具、手すり、介助者数 歩行器使用、見守り
環境 床材、靴、廊下・病室、スペース 廊下、靴あり
歩行条件 通常速度、声かけ、指示内容 いつも通り歩くよう指示
休憩ルール ふらつき、悪心、疲労時の中断基準 疲労時は座位休憩
記録の粒度 点数だけでなく根拠を1行で残す 方向転換でふらつき増

SARA記録シートPDF

SARAは、点数だけでなく評価条件、各項目の得点、観察した根拠、前回との差、次回の優先課題を一緒に残すと、再評価で使いやすくなります。

以下のA4記録シートは、公式の設問文を転載せず、臨床で必要なスコアと観察所見を1枚にまとめられる構成です。

SARA記録シートPDFを開く(ダウンロード)

SARA記録シートをプレビューする

rehabilikun Library|SARAの評価と運動失調を深く学ぶ2冊

SARAの採点や臨床評価を整理したい場合は評価書を、歩行・立位・下肢協調を機能解剖から深めたい場合は下肢・体幹の触診書を組み合わせると、評価から介入までつなげやすくなります。

まず読むなら:PT臨床評価ガイド

SARAを含む理学療法評価について、評価目的、実施方法、結果の読み方をまとめて確認したい人に向いています。


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立位・歩行・下肢協調を、骨指標や筋・関節の位置関係と結びつけて理解したい人に向いています。


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SARA自動計算ツール

SARAは、四肢協調の4項目を左右別に採点し、その平均を合計点へ反映します。手計算では左右平均や0.5点の扱いでズレることがあるため、入力漏れを防ぎながら確認したい場合は自動計算ツールが便利です。

歩行、立位、座位、構音と、左右別の四肢協調4項目を入力すると、SARA合計点、歩行・姿勢領域、四肢協調領域、前回との差、得点が高い項目、記録文を自動表示します。未入力がある場合は合計点を確定しません。

自動計算ツールの使い方
  1. 歩行、立位、座位、構音の得点を入力します。
  2. 指追い試験、指鼻試験、手の回内・回外反復、踵脛試験を左右別に入力します。
  3. 左右平均、合計点、歩行・姿勢領域、四肢協調領域を確認します。
  4. 前回SARAがある場合は、0〜40点の0.5点刻みで入力します。
  5. 必要な場合だけ詳細記録を開き、体調、補助具、介助量、環境、観察所見を入力します。
SARA自動計算ツールを別画面で開く

スマートフォンで記事内の操作がしにくい場合や、入力画面を大きく表示したい場合に使用してください。

自動計算結果だけで重症度を決めない

SARAは高得点ほど運動失調が重い方向を示しますが、合計点だけで重症度や介入方針を断定する尺度ではありません。項目内訳、評価条件、補助具、介助量、歩行距離、移動手段、ADL場面を合わせて解釈してください。

SARAの採点手順|観察、点数、根拠メモの順で残す

採点は、歩行・姿勢→構音→四肢協調の順に固定すると、評価場面が整理しやすくなります。最初に歩行と立位で安全性を確認し、必要に応じて介助者や休憩を調整してから、座位・構音・四肢協調へ進みます。

点数だけを埋めると、再評価時に「なぜその点だったのか」が分かりにくくなります。採点時は、介助量、ふらつきの質、動作の途切れ、左右差を短文で残すのがコツです。

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SARAの観察領域と記録メモ例
領域 配点 観察の観点 記録メモ例
歩行 0〜8 直進、方向転換、補助具、介助量 歩行器+見守り、方向転換でふらつき増
立位 0〜6 足幅、揺れ、支持物への依存 手すり軽接触で安定、足幅拡大
座位 0〜4 体幹の揺れ、手支持、保持の安定性 背もたれを離すと体幹揺れ、手支持あり
構音 0〜6 聞き取りやすさ、発話の途切れ 短文は明瞭、長文で不明瞭化
指追い・指鼻 各0〜4 目標への到達、終末の揺れ、修正の多さ 右側で終末の揺れが増え、修正2〜3回
反復動作 0〜4 速度、リズム、持続性、左右差 右側は後半でリズムが崩れる
踵脛試験 0〜4 軌道のぶれ、滑らかさ、目標からの逸脱 左側で軌道逸脱あり、修正で時間延長

解釈のコツ|合計点だけで判断しない

SARAの合計点は、運動失調の全体像を把握するのに便利です。ただし、臨床で重要なのは「どの項目が変化したか」です。歩行・立位が悪化したのか、四肢協調が変化したのかで、次に優先する介入は変わります。

変化量の目安として、小脳性運動失調を対象とした報告では、複数の算出方法を統合したSARAのMCIDとして1.5点が提案されています。ただし、疾患、病期、評価間隔によって反応性は異なるため、1.5点をすべての患者さんに一律適用するのではなく、条件固定、項目内訳、根拠メモ、歩行距離、移動手段、ADL場面を合わせて解釈します。

記録例:SARA 13.5点。歩行・立位で増点。歩行器使用、見守り、方向転換でふらつき増。四肢協調は前回と大きな変化なし。次回は歩行時の支持基底と方向転換練習を優先。

現場の詰まりどころ|よくある失敗と対策

運動失調は、日内変動、疲労、環境差、内服の影響でスコアがぶれやすい領域です。点数が変わったときにすぐ「改善」「悪化」と決めるのではなく、まずは条件差を確認します。

特に現場で多いのは、補助具や床条件が変わったまま比較してしまうこと、歩行項目を安全に取れないこと、四肢協調が速さ勝負になってしまうことです。原因と対策をセットで残すと、次回の評価が安定します。

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SARA運用で詰まりやすい点
詰まりポイント 起きやすい原因 対策 記録ポイント
前回と点が合わない 補助具、床条件、介助量が違う 条件を固定し、条件差が大きい回は別扱いにする 補助具、介助者数、場所、靴を明記
歩行項目が怖くて取れない ふらつきが強い、環境が狭い 動線を確保し、危険なら中止する 中止理由、代替できた範囲
四肢協調が速さ勝負になる 指示が曖昧で患者さんが急ぐ 正確さを優先する指示に統一する 指示内容、練習の有無
構音の採点が主観的 聞き取り基準が評価者で異なる 短い定型文で確認する 聞き返し回数、長文での崩れ
疲労で後半が崩れる 休憩ルールがない 休憩条件を固定する 休憩回数、実施時間帯

回避の手順|次回の評価を安定させる

  1. 安全を先に決める:歩行動線、補助者、休憩位置、中止基準を決めます。
  2. 順番を固定する:歩行・姿勢→構音→四肢協調の順で毎回そろえます。
  3. 左右を分けて観察する:四肢協調は左右別得点と左右差の根拠を残します。
  4. 根拠を1行で残す:どこで、どのように崩れたかを短文で記録します。
  5. 比較できる回だけ並べる:補助具や体調などの条件差が大きい回は別扱いにします。

再評価の頻度|病期と介入目的に合わせて同条件で比較する

再評価で最優先なのは、同条件で比較することです。再評価の間隔は疾患、病期、入院・外来の体制、介入目的によって調整します。定期評価として運用する場合は、施設内で評価時期をそろえ、入退院、補助具変更、介入方針変更、状態変化の前後で追加評価すると変化を読み取りやすくなります。

急にスコアが悪化した場合は、点数だけで病勢悪化と判断せず、感染、転倒、内服変更、疲労、睡眠不足などのイベントを確認します。必要に応じて、歩行距離、歩数、移動手段、ADL場面の変化も併記します。

よくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。

SARAは何点から重症ですか?

何点から重症と一律に線引きするより、疾患、病期、生活背景、移動手段と合わせて判断します。特に歩行・立位の点数は生活範囲や転倒リスクと関連しやすいため、点数だけでなくADL場面とセットで確認してください。

同じ患者さんなのに毎回点が違います。どうすればよいですか?

まず評価条件の違いを確認します。補助具、床、介助者数、内服、疲労、時間帯がそろっていないと、点数差の解釈が難しくなります。条件が大きく異なる回は、単純に並べず別扱いにしてください。

0.5点のような端数が出るのは間違いですか?

間違いではありません。四肢協調の4項目では左右を別々に採点し、その算術平均を合計へ反映するため、0.5点刻みになることがあります。手計算で迷う場合は自動計算ツールを使うと確認しやすくなります。

歩行項目が危険で取り切れない場合はどうしますか?

無理に実施しません。安全確保が難しい場合は中止し、立位まで、座位までなど実施できた範囲と中止理由を記録します。次回は環境や介助条件を調整して再評価してください。

自動計算ツールの前回差はどう解釈しますか?

前回と今回の評価条件が同等であることを確認してから解釈します。1.5点以上の差はMCIDの報告を参照する目安になりますが、疾患、病期、評価間隔、項目内訳、ADL変化を合わせて判断してください。

ICARSやBARSとはどう使い分けますか?

SARAは8項目で構成され、比較的短時間で経時変化を追いやすい尺度です。より細かく失調症状を分解したい場合はICARS、別の簡便な尺度を選びたい場合はBARSなど、対象疾患、評価目的、必要な詳細度に合わせて使い分けます。

次の一手

SARAは、合計点の上下だけで終わらせず、増えた領域を次の優先課題として扱うと介入につながります。次にどこから詰めるか迷う場合は、運動失調評価の全体像と、SARAスコア別の歩行ゴールを合わせて確認すると整理しやすくなります。


参考文献

  1. Schmitz-Hübsch T, Tezenas du Montcel S, Baliko L, et al. Scale for the assessment and rating of ataxia: development of a new clinical scale. Neurology. 2006;66(11):1717-1720. doi:10.1212/01.WNL.0000219042.60538.92
  2. Weyer A, Abele M, Schmitz-Hübsch T, et al. Reliability and validity of the scale for the assessment and rating of ataxia: a study in 64 ataxia patients. Mov Disord. 2007;22(11):1633-1637. doi:10.1002/mds.21544
  3. Sato K, Yabe I, Soma H, et al. Reliability of the Japanese version of the Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA). Brain Nerve. 2009;61(5):591-595. PubMed
  4. Kim BR, Lim JH, Lee SA, et al. Usefulness of the Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)in ataxic stroke patients. Ann Rehabil Med. 2011;35(6):772-780. doi:10.5535/arm.2011.35.6.772
  5. Petit E, Moulaire P, Subramony SH, et al. SARA captures disparate progression and responsiveness in spinocerebellar ataxias. J Neurol. 2024;271(7):3743-3753. doi:10.1007/s00415-024-12475-1
  6. Padilla G, Qi Y, Lee S, et al. Minimal Clinically Important Difference of the Scale for the Assessment and Rating of Ataxia. Mov Disord Clin Pract. 2026;13(2):509-514. Epub 2025 Sep 8. doi:10.1002/mdc3.70343

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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