UMSARSはPart I〜IVを分けて追うMSAの評価尺度です
UMSARS(Unified Multiple System Atrophy Rating Scale)は、多系統萎縮症(MSA)の症状と障害を、病歴・日常生活、運動所見、自律神経機能、全体障害の4部構成で評価する疾患特異的尺度です。Part Iは0〜48点、Part IIは0〜56点で、Part IIIは血圧・脈拍・症状の記録、Part IVは1〜5の全体障害評価として扱います。
実務では、Part I+IIの合計点だけでなく「どのPartや項目が変化したか」を確認することが重要です。この記事では、各Partの見方、初回・再評価の条件、自動計算ツールと記録シートの使い方を整理します。MSAの診断基準や画像所見の詳細は扱いません。
MSA評価全体の順番から確認する
UMSARSとは|4つのPartと配点を確認する
UMSARSは、MSAの多面的な症状を1つの合計点だけでなく、4つのPartに分けて記録する尺度です。Part IとPart IIは点数化し、Part IIIとPart IVは別枠で扱います。
Part I+IIを合計すると0〜104点になりますが、Part IIIとPart IVはこの合計へ加えません。本記事と自動計算ツールでは、Part I+IIを経時比較のための参考合計として表示し、Part別の変化も必ず併記します。

| Part | 評価領域 | 配点・記録 | 実務で確認すること |
|---|---|---|---|
| Part I | 病歴・日常生活動作 | 12項目、0〜48点 | 過去2週間を中心とした生活上の変化 |
| Part II | 運動機能 | 14項目、0〜56点 | 構音、筋緊張、協調運動、起立、姿勢、歩行など |
| Part III | 自律神経機能 | 血圧・脈拍・症状を記録 | 仰臥位と起立後の循環反応、起立性症状 |
| Part IV | 全体的障害度 | 1〜5 | 自立から全面介助までの全体像 |
Part I+IIの合計点はPart別スコアと一緒に見る
Part I+IIの参考合計は、全体的な変化を短く共有するには便利です。ただし、同じ合計点でも、生活機能が低下した場合と運動所見が悪化した場合では、必要な対応が異なります。
| 見る値 | 分かること | 注意点 |
|---|---|---|
| Part I | 日常生活への影響 | 本人・介助者の回答や生活条件の影響を受ける |
| Part II | 運動所見の変化 | 実施者、補助具、介助量、疲労などの条件をそろえる |
| Part I+II | 病勢の全体的な推移 | 変化した領域までは特定できない |
| Part III | 起立時の循環反応と症状 | Part I+IIの合計には含めない |
| Part IV | 全体的な介助依存度 | 1〜5の独立した段階として記録する |
評価方法|原版に沿って実施条件を固定する
UMSARSを縦断的に使う場合は、採点そのものに加えて、評価時の条件をそろえる必要があります。時間帯、服薬状況、疲労、補助具、介助量、評価場所が変わると、病勢の変化と条件差を区別しにくくなります。
尺度開発時の検証では、UMSARS全体の実施に患者の障害度に応じて30〜45分を要しています。下記の5分フローはUMSARSを5分で採点する方法ではなく、採点結果を確認して次の行動を決めるための手順です。
Part Iは過去2週間の平均的な状態を確認する
Part Iは、原則として本人および介助者への聞き取りにより、過去2週間の平均的な機能を評価します。当日だけ状態がよい、または悪い場合は、その日の印象だけで採点せず、普段の生活状況を確認します。
再評価では、回答者が本人か介助者か、最近の入院・感染・転倒などのイベントがあったかも記録しておくと、点数変化を解釈しやすくなります。
Part IIは実施者と観察条件をそろえる
Part IIは運動所見を診察・観察するため、実施者や評価条件の影響を受けます。可能であれば同じ評価者が担当し、補助具、履物、介助量、休息、課題の順番をそろえます。
評価者が変わる場合は、点数だけでなく「椅子からの立ち上がりで上肢支持を使用」「方向転換で介助を要した」など、採点根拠を短く残します。
Part IIIと通常の起立試験を混同しない
UMSARS Part IIIでは、原版に沿って仰臥位安静後と起立2分後の血圧・脈拍・起立性症状を記録します。Part IIIは点数を合計する項目ではなく、自律神経機能を記録する部分です。
一方、起立性低血圧の診断や離床時の安全判断では、施設の起立試験手順に従い、別の測定時点や中止基準を用いることがあります。UMSARS Part IIIの記録だけで、起立性低血圧の評価を完結させないようにします。
採点後の5分確認フロー
| 順番 | 確認すること | 記録すること | 次の行動 |
|---|---|---|---|
| 1 | 転倒、失神、嚥下、呼吸の変化 | 安全面の変化 | 通常実施、負荷調整、中止・相談を判断する |
| 2 | 時間帯、服薬、疲労、補助具、介助量 | 前回との条件差 | 比較可能かを判断する |
| 3 | Part IとPart II | 生活と運動のどちらが変化したか | 介入・追加評価の対象を絞る |
| 4 | Part IIIとPart IV | 循環反応と全体障害度 | 安全管理と介助方法を見直す |
| 5 | Part別の変化を統合 | 主変化を1文で記録する | 再評価条件と観察項目を決める |
UMSARS自動計算ツール
自動計算ツールでは、Part IとPart IIの小計、Part I+IIの参考合計、Part IVを表示できます。Part IIIは合計へ加えず、仰臥位・起立後の血圧、脈拍、症状を整理する記録欄として使用します。
このツールは採点の集計補助です。項目文や採点基準の全文は収載していないため、評価時は施設で管理している原版・正式資料を併用してください。
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UMSARS記録シートPDF
記録シートでは、Part別スコアだけでなく、服薬・時間帯、体調・疲労、補助具・介助量、評価環境などの比較条件を1枚にまとめられます。初回と再評価で同じ用紙を使うと、点数差と条件差を振り返りやすくなります。
記録シートには項目文や採点基準の全文を掲載していません。採点は原版を参照し、PDFは条件と結果を残すための補助用紙として使用してください。
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結果の見方|合計点より変化したPartを先に確認する
UMSARSの結果は、Part I+IIの合計点を確認したあとではなく、Part別の変化を確認してから統合します。合計点だけでは、日常生活上の問題、運動所見、自律神経症状、介助依存度のどこが変わったのかを特定できないためです。
| 主な変化 | 確認する背景 | 次に検討すること |
|---|---|---|
| Part Iが上昇 | 生活環境、介助量、転倒、嚥下、排泄、起立性症状 | 生活場面の聞き取りと多職種共有 |
| Part IIが上昇 | 失調、パーキンソニズム、疲労、補助具、評価条件 | 動作観察や疾患別の追加評価 |
| Part IIIに変化 | 食事、服薬、水分、臥位時間、起立性症状 | 施設手順に沿った起立試験と安全管理 |
| Part IVが上昇 | 介助が増えた生活動作と時間帯 | 介助方法、福祉用具、環境、支援体制の見直し |
記録は「得点・条件・主変化」を1組にする
再評価記録は、得点だけで終わらせず、条件と変化した場面を1文で併記します。
記録例:Part I 18点、Part II 24点、参考合計42点、Part IV 3。前回と同じ内服後60分・四点杖・見守り条件で実施。Part IIの歩行関連が上昇し、方向転換時の側方動揺と介助量が増加した。
条件が異なる場合は、「前回と単純比較できない」と明記します。点数が上昇していても、感染、疼痛、睡眠不足、薬剤調整などがあれば、病勢進行だけで説明しないことが重要です。
UMSARS運用でよくある失敗
運用で詰まりやすいのは、合計点だけを記録すること、毎回の条件が異なること、UMSARSだけで介入内容まで決めることです。
| 場面 | 避けたい運用 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 初回 | Part I+IIの合計だけを残す | Part I・II・III・IVを別に記録する |
| 再評価 | 時間帯や介助量が毎回異なる | 条件を固定し、変更点は別記する |
| Part III | 数値を他のPartへ加算する | 血圧・脈拍・症状の記録として扱う |
| 解釈 | 点数上昇を病勢進行と即断する | 体調・薬剤・疲労・測定条件を確認する |
| 介入 | UMSARSだけで訓練内容を決める | 変化した領域に応じて追加評価へつなぐ |
UMSARSだけでは不足する領域は追加評価へつなぐ
UMSARSはMSAの病勢と障害を多面的に追う尺度ですが、失調、嚥下、起立性低血圧、歩行・転倒などを詳細に評価する尺度ではありません。UMSARSで変化の入口を捉えたあと、前景に出ている問題へ追加評価を組み合わせます。
嚥下項目は全体的な重症度を捉える一方、咽頭・喉頭機能や嚥下効率の詳細を十分に反映しない可能性が報告されています。むせ、湿性嗄声、食事時間の延長、体重減少などがある場合は、別の嚥下評価や精査へつなぎます。
病型によって運動評価の優先順位が変わるため、失調とパーキンソニズムのどちらが前景にあるかを確認します。起立時症状がある場合は、UMSARS Part IIIだけで完結させず、施設手順に沿った起立試験と安全管理を組み合わせます。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップすると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。
UMSARSの合計点は何点ですか?
Part Iは0〜48点、Part IIは0〜56点で、Part I+IIの参考合計は0〜104点です。Part IIIは血圧・脈拍・症状の記録で、Part IVは1〜5の独立した全体障害評価です。Part IIIとPart IVを0〜104点へ加えないようにしてください。
UMSARSは誰が評価しますか?
施設内で実施者と評価条件を定め、原版に沿って評価します。Part IIには神経学的な診察・観察項目が含まれるため、評価経験のある医療者が担当し、PTなどが補助具、介助量、動作条件を補足する運用が考えられます。再評価では可能な範囲で同じ評価者にそろえます。
Part Iは電話でも評価できますか?
2024年の研究では、電話によるPart Iに高い評価者間信頼性と内的一貫性が示されました。一方、主観的症状にはばらつきが生じる可能性も報告されています。電話で運用する場合は、回答者、質問条件、対面確認が必要な内容を施設内で統一してください。
自動計算ツールだけで評価できますか?
できません。自動計算ツールは得点と記録の整理を補助するもので、項目文や採点基準の全文は掲載していません。正式な評価では原版・施設管理資料を併用し、安全性や症状変動を別に確認してください。
Part IIIだけで起立性低血圧を判断できますか?
Part IIIはUMSARS内の自律神経機能記録です。起立性低血圧の診断や離床可否の判断では、施設の起立試験手順、測定時点、中止基準、症状評価を併用してください。
再評価は合計点とPart別のどちらを優先しますか?
Part別の変化を先に確認し、その後にPart I+IIの参考合計を見ます。合計点は全体的な共有には便利ですが、介入や追加評価を決めるには、生活・運動・自律神経・全体障害のどこが変化したかを確認する必要があります。
次の一手
病型による違いを整理する
起立時症状を詳しく評価する
参考文献
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著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

