【厚生労働省危険因子評価表】褥瘡リスク【入院基本料の算定要件】

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褥瘡対策
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「厚生労働省危険因子評価」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

   

こちらの評価は入院基本料の算定にも関わるものとなっております。そのため、リハビリテーション専門職よりも看護師の方がよく使用しているかもしれません。実際に筆者の勤務する医療機関でも、こちらの評価を実施しているのは看護師になります。重要な評価にはなるのですが、これがどういうものなのかについて良くわかってない方も多いと思います。

  

  • 厚生労働省危険因子評価票って何?
  • 評価方法がよくわからない
  • 入院患者全員評価しないといけないの?

  

こちらの記事を読むことで、上記の疑問が解決できるようにしたいと思います!是非最後までご覧になってください!

リハビリくん
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理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

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褥瘡のリスクアセスメントスケールとは

褥瘡リスクアセスメントスケールは、患者の褥瘡発生リスクを客観的に評価し、予防的ケアの計画立案に活用するツールです。評価結果に基づいて適切な褥瘡予防ケアを実施し、定期的に再評価することで、褥瘡の新規発生や悪化を防ぐことが期待されます。

日本では、日本褥瘡学会が「褥瘡予防・管理ガイドライン」を定期的に改訂しており、最新の第 5 版(2022 年 3 月発行)でも、褥瘡予防にはリスクアセスメントスケールの使用が推奨されています。推奨度は B(根拠があり、行うよう勧められる)とされ、エビデンスに基づく標準的な予防手段として位置付けられています。

本邦で使用される代表的なスケールには、Braden Scale(ブレーデンスケール)、OH スケール、厚生労働省危険因子評価票、DESIGN-R 2020(主に創部評価に用いられるが予防的視点でも活用可能)などがあります。これらは、感覚認知、活動性、栄養状態、摩擦・ずれの影響など、褥瘡発生に関わる多面的要因を総合的に評価します。

高齢社会を迎えた日本では、在宅、施設、急性期・回復期病院などあらゆる場面で褥瘡予防が重要視されており、リスクアセスメントスケールは医療・介護現場で欠かせない標準評価ツールとなっています。

厚生労働省危険因子評価票とは

厚生労働省危険因子評価票は、入院患者の褥瘡(じょくそう)発生リスクを客観的に評価するためのツールです。これは入院基本料の算定要件にも関わるため、医師・看護師だけでなく、理学療法士や作業療法士などのリハビリテーション専門職も共通して理解しておく必要があります。

入院基本料を算定するには、入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策、栄養管理体制の整備が必須とされています。特に褥瘡対策は、平成 24 年度診療報酬改定から算定要件に組み込まれ、危険因子評価の実施が求められるようになりました。さらに平成 30 年度改定では、新たに「皮膚の脆弱性(スキン-テアの保有や既往)」の項目が追加され、皮膚障害の予防に対する重要性が強調されています。

なお、日常生活自立度が J1 ~ A2 の患者は、算定上この評価票の作成義務はありません。つまり、低リスク群については危険因子の評価までは必須ではないという扱いです。

エビデンス面では、日本褥瘡学会の「褥瘡予防・管理ガイドライン」において、高齢者におけるリスクアセスメント・スケールとして推奨度 C1 に分類されています。これは「行うことを考慮してもよいが、十分な科学的根拠は限られている」というレベルであり、臨床判断や施設方針と併せて活用することが求められます。

評価用紙(評価票)

厚生労働省危険因子評価票をダウンロードできるようにしておきました!

評価表が必要な方はこちらからどうぞ☺

評価方法

厚生労働省危険因子評価票は、褥瘡発生リスクを総合的に判断するための 7 項目で構成されています。各項目は「あり・なし」「できる・できない」で評価し、褥瘡予防計画の立案や入院基本料算定の要件確認に活用します。

基本的動作能力

基本的動作能力における「ベッド上:自力体位変換」については、対象者本人の力で、身体に加わった圧力とずれ力に対して有効に体位を変え、軟部組織の血流を改善できるかどうかが判定基準になります。

「イス上:座位姿勢の保持・除圧」については、端座位をとっている時や車椅子に座っている際に、ご自身の力で安定した姿勢を保持することができるのか(座位保持能力)というところが1つの評価ポイントになります。

また、姿勢が崩れたときやお尻が痛くなった時に自力で座り直しを行うことで、良肢位へと戻ったり、痛くなった部分を除圧することで、痛みの解放を行うことができるのかというところが2つめの評価ポイントになります。

これら 2 つのポイントを踏まえて「できる」「できない」を判定していきます。

病的骨突出

どこの部位で判定するのかについては特に記載がないため、基本的には仙骨部で評価すると良いと考えます。

健康な状態では、仙骨の中央部は左右の臀筋や皮下脂肪などが骨の突出部よりも飛び出しており、外力が仙骨部に集中しないようになっています。

しかし、栄養状態の低下や虚弱などによって、仙骨を守る臀筋や皮下脂肪が失われ、凹みがなくなってしまう(お尻の高低差がなくほぼ平らな状態)ことがあります。この状態を病的骨突出と捉え、「あり」と判定します。

関節拘縮

関節可動域制限(関節の屈曲拘縮、伸展拘縮、変形など)が 1 カ所でもあれば「ある」と判定します。

基本的動作能力、病的骨突出、関節拘縮については OH スケールでも同様の評価項目を採用しています。厚生労働省危険因子評価票と OH スケールの評価項目は類似してますので、互いの評価法の理解を深めておくべきでしょう。OH スケールについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【OHスケールを解説についての記事はこちらから

栄養状態低下

何を基準に「低下」とするのかについての詳細な説明がありません。そのため、血清アルブミン 3.5 g/dL 以下を判定基準にするなど何かしら基準を統一させるべきです。

血清アルブミンの値以外では、体重減少率や BMI も栄養状態の低下を判断するうえで有効だと考えられます。

皮膚湿潤(多汗、尿失禁、便失禁)

多汗は多量の汗をかくことを指します。尿失禁は、臀部皮膚が尿でぬれていることを指します。便失禁は便が臀部皮膚についている時間があることを指します。いずれか 1 つでもあれば、皮膚湿潤は「あり」と判定します。

皮膚の脆弱性(浮腫)

「浮腫」については、褥瘡の部分が浮腫というわけではなく、腕や脚、腹部の浮腫を示します。指で押して圧痕が残れば「あり」と判定します。

皮膚の脆弱性(スキン-テアの保有、既往)

気をつけてケアをしていたにもかかわらず、高齢者などの脆弱な皮膚が裂けて創傷ができることがあると思います。

高齢者の脆弱な皮膚を守るために、近年重要視されている言葉が、スキン-テア(皮膚裂傷)になります。

皮膚の脆弱性を認める場合や、過去にスキン-テアの既往がある方は「あり」と判定します。

カットオフ値

厚生労働省危険因子評価票には、数値的なカットオフ値は設定されていません。しかし、7 項目のうち 1 つでも「あり」または「できない」と判定された場合は、褥瘡発生リスクがあるとみなされます。この場合、専任の医師と看護職員が協力し、患者ごとの褥瘡に関する診療計画を立案することが求められます。

この仕組みは、わずかなリスクも見逃さず、早期から予防策を講じることを目的としています。例えば、栄養状態や皮膚湿潤といった要因は短期間で変化することが多く、評価票で「あり」と判定された時点で多職種が連携し、体圧分散・体位変換・スキンケア・栄養改善などを組み合わせた包括的な予防プランを策定します。

このように、カットオフ値を設定しないことで「予防の開始が遅れるリスク」を減らし、軽度の兆候でも計画的介入ができる体制を整えることができます。

評価後の予防計画立案の流れ

褥瘡リスクの評価は、単にスコアをつけるだけで終わりではありません。評価結果をもとに、どのように予防計画を立案し、日々のケアに落とし込むかが重要です。本項では、厚生労働省危険因子評価票の結果を活用し、多職種が連携して具体的な予防方針を決定・実施するまでの流れを整理します。

  1. 評価結果の共有
    • 危険因子評価票の結果は、評価者だけでなく医師・看護師・リハビリスタッフ・栄養士など関係職種全員で共有します。情報はカンファレンスや電子カルテを通じて即時反映させます。
  2. リスク要因の特定
    • 評価項目のうち「あり」「できない」となった要因を抽出し、それぞれのリスク発生メカニズムを明確化します。(例:関節拘縮による体位変換困難、栄養低下による皮膚脆弱性)
  3. 介入方針の決定
    • 看護部門:体位変換スケジュール、皮膚観察、失禁ケア
    • リハ部門:関節可動域改善、筋力強化、座位・立位保持訓練
    • 栄養部門:栄養補助食品の導入、摂取量管理
    • 医師:全身状態の管理、必要に応じた薬物療法
  4. 予防計画の文書化と実施
    • 介入内容・担当者・評価スケジュールを明文化し、日常業務に組み込みます。
  5. モニタリングと再評価
    • 褥瘡の有無やリスク因子の変化を定期的に再評価し、必要に応じて計画を修正します。

理学療法士が関わるポイント

褥瘡予防は看護や栄養管理だけでなく、動作能力の維持・改善を担う理学療法士の関与が不可欠です。評価結果を踏まえ、体位変換や除圧姿勢の指導、関節可動域や筋力の維持、座位・立位バランスの向上など、多角的な介入が求められます。ここでは理学療法士が果たす具体的な役割を整理します。

  • 体位変換動作の指導
    • 患者自身が安全に体位変換できる方法を指導し、介助が必要な場合は介護者の負担軽減方法も提案します。
  • 除圧のためのポジショニング
    • 仙骨部や踵部など圧迫部位への負荷を軽減する姿勢やクッション配置を設計します。
  • 関節可動域・筋力維持
    • 関節拘縮や筋力低下は自力除圧能力の低下につながるため、日常生活動作に直結する運動プログラムを実施します。
  • 座位・立位バランスの改善
    • 安定した座位保持や立位保持を獲得し、座り直し動作の自立を促進します。
  • 福祉用具の選定助言
    • 体圧分散マットレス、クッション、車椅子の座面調整などを多職種と協働して検討します。

理学療法士は、単なる評価者ではなく「予防計画の実働部隊」としての役割を担っています。動作能力を高めることで、褥瘡予防の根本的な解決につながります。

その他の褥瘡リスクアセスメントスツール

褥瘡については「個体の要因」「環境とケアの要因」「共通の要因」が複雑に絡み合って発生に繋がっています。

全ての患者や利用者の褥瘡を予防したいのは、言うまでもありません。漠然と予防ケアを行っていても褥瘡は生じないかもしれませんが、貴重なマンパワーや体圧分散用具を浪費していたのでは看護や介護に限界が訪れてしまいます。

そこで科学的根拠をもとに褥療発生の危険度を予測するために作成されたのがリスクアセスメント・スケールとなります。

ブレーデンスケール

リスクアセスメントスケールの中で最も浸透したのはブレーデンスケールになります。日本褥瘡学会の褥瘡予防・管理ガイドラインでも推奨度Bとなっています。

採点は、活動性ないし可動性が2点以下になった時に始めるとよいとされています。評価の頻度としては、急性期で48時間ごと、慢性期で1週間ごと、高齢者では入院後1カ月は1週間ごと、状態に変化なければ3カ月に1回が適当とされています。

褥瘡発生危険点は、病院で14点以下、介護施設で17点以下を目安にするのが妥当です。少し採点に難しいところがあるため、評価者間で評価結果が一致するためのトレーニングや教育体制も必要になるかと考えられます。

このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【ブレーデンスケールを徹底解説についての記事はこちらから

OHスケール

OHスケールは、日本人特有の褥瘡発生危険要因を基に作成されたものになります。2002年にOHスケールへと改定されました。

危険要因は、①自力体位変換能力 ②病的骨突出(仙骨部) ③浮腫 ④関節拘縮 の4つになります。その合計点で危険度レベル(1〜3点:軽度、4〜6点:中等度、7〜10点:高度)を決め、体圧分散マットレスの適切な選択に繋げます。

非常に簡便で評点をつけやすいですが、個体要因のみを評価していることを理解する必要があります。日本褥瘡学会の褥瘡予防・管理ガイドラインでは、高齢者のリスクアセスメント・スケールとして「推奨度C1」となっています。

このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【OHスケールを解説についての記事はこちらから】評価法のダウンロードもできるようにしてあります!

K式スケール

K式スケールは、前段階要因と引き金要因をYesとNoの2択式で評価します。別名、金沢大学式褥瘡発生予測尺度とも呼ばれ、当時金沢大学医学部保健学科教授の真田弘美先生が開発しました。

在宅版K式スケールは「在宅版褥瘡発生リスクアセスメント・スケール」とも呼ばれ、在宅高齢療養者のために、K式スケールの前段階要因に「介護知識がない」、引き金要因に「栄養」が追加され、在宅版として活用されている褥瘡予防のアセスメント・スケールになります。

K式スケール、在宅版K式スケールどちらも日本褥瘡学会の褥瘡予防・管理ガイドラインでは、高齢者のリスクアセスメント・スケールとして「推奨度C1」となっています。

このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【K式スケールと在宅版K式スケールの評価方法についての記事はこちらから】評価法のダウンロードもできるようにしてあります!

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

厚生労働省危険因子評価票は、褥瘡発生リスクを多角的に評価し、早期予防につなげるための重要なツールです。数値的なカットオフ値はなく、1 項目でも「あり」や「できない」があればリスクありと判断し、多職種による予防計画の立案が必要となります。

評価は基本動作能力や栄養状態、皮膚の状態など 7 項目で行い、結果は医師・看護師・リハビリ・栄養士などで共有します。理学療法士は、体位変換や除圧姿勢の指導、関節可動域・筋力維持、バランス改善、福祉用具選定を通じて、褥瘡予防に実践的に関与することが重要となります。

参考文献

  1. 岡田克之.褥瘡のリスクアセスメントと予防対策.日本老年医学会雑誌,50巻,5号,2013:9,p583-591.
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