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この記事は「疼痛生活障害評価尺度(PDAS)」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。
痛みという症状は皆様がご存知の通り、生活の質を低下させる非常に厄介なものとなります。更に慢性痛というものは、なかなか出口が見えない身体的にも精神的にも辛い症状になります。
国民生活基礎調査によると、「腰痛・肩こり・手足の関節の痛み」に悩む高齢者が多数存在しております。このことから、慢性疼痛を抱えながら生活している高齢者が多く存在することが推測されます。
老年期は加齢に伴う心身の変調や社会的環境など様々な変化への適応が課題となる時期でもあり、心身の変調によってもたらされる慢性疼痛は、生活の継続を阻害する影響要因となると考えられます。
- 痛みの定義について
- 慢性痛の評価方法が知りたい(質問票)
- 疼痛生活障害評価尺度(PDAS)とは?
- 疼痛生活障害評価尺度の結果の解釈について
慢性痛の評価を実施する上で、様々な疑問を抱えることがあると思います!そんな方のために、こちらの記事を読むことで上記の疑問が解決できるようにしたいと思います!是非、最後までご覧になってください!
【簡単に自己紹介】
30代の現役理学療法士になります。
理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。
現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。
臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。
そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。
現在、理学療法士として得意としている分野は「脳卒中」「褥瘡」「栄養」「呼吸」「摂食・嚥下」「フレイル・サルコペニア」についてです。そのため、これらのジャンルの記事が中心となっております。
主な取得資格は以下の通りです
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
慢性疼痛とは
慢性疼痛は 1986 年に国際疼痛学会によって、「治療に要すると期待される時間枠組みを超えて持続する痛みあるいは進行性の非癌生疼痛による痛み」と定義されています。
疼痛と慢性疼痛の線引きは難しいところがありますが、慢性疼痛の持続時間に視点を向けると、一般的に 3 ヶ月以上持続するものが適当であるとされています。
本邦における痛みによる医療費や生産性減少による社会的損失は 2012 年の 1 年間で 1 兆 9,530 億円と報告されています。世界的にも慢性疼痛に悩む人は多く、慢性疼痛に対する医療体制の構築や社会的支援などの対策は急務といえます。
慢性疼痛患者の治療は簡単なものではなく、痛みの原因が特定できないことが多いことから緩和を図りながら痛みに折り合いをつけつつ、活動能力の再獲得と維持を図る取り組みが展開されています。
この活動能力向上を実現させるためには、慢性疼痛に起因した活動能力制限を適切に測定できる疾患特異度尺度が必要になります。
このような背景から 1980 年頃より Disability 全体を包括する尺度の必要性が主張されるようになり、本邦では有村らにより「疼痛生活障害評価尺度(Pain Disability Assessment Scale:PDAS)」が開発され普及しています。
PDAS は Sickness Impact Profile(SIP)、Health Assessment Questionnai(HAQ)を参考にして、慢性疼痛患者の生活障害、特に身体運動の移動能力がどの程度障害されているかを評価する 32 項目の予備尺度を準備し、項目分析にて 20 項目で構成されています。
痛みは多面的に評価することが重要
痛みは常に主観的であるため、客観的な評価は困難となります。そのため、痛みの評価で重要になるのは主観的評価の定量化になります。
痛みは侵害受容性、神経障害性、心理社会的の 3 つに分類されます。痛みの厄介なところは原因がどれか 1 つに限るわけではなく、3 つの要因が様々な割合で併存している可能性があります。
侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛については、薬剤選択において意義がありますが、慢性疼痛において治療における薬剤の役割は必ずしも高くないとされ、むしろ心理社会的因子の評価が重要になると考えられています。
心理社会的因子といっても内容は多岐にわたります。様々な痛みの存在を捉えるには、痛みそのものだけでなく痛みの多面的な評価が必要となります。このような背景から開発されたものが「疼痛生活障害評価尺度(Pain Disability Assessment Scale:PDAS)」のような自己記入式質問票になります。
疼痛生活障害評価尺度(PDAS)とは
疼痛生活障害評価尺度(Pain Disability Assessment Scale:PDAS)は慢性疼痛患者の生活障害、特に身体運動の移動能力がどの程度障害されているかを評価する自己記入式質問票になります。
1990 年代に有村らによって開発された評価尺度になり、腰痛や膝痛を始めとした慢性疼痛患者に幅広く活用されています。
疼痛生活障害評価尺度(PDAS)評価項目
疼痛生活障害評価尺度(PDAS)は 20 項目の質問から構成されています。
開発時は 32 項目の質問を準備していましたが、そこから項目分析を実施した結果、20 項目となっております。
- 掃除機かけ、庭仕事など家の中の雑用をする
- ゆっくり走る
- 腰を曲げて床のものを拾う
- 買い物に行く
- 階段を登る、降りる
- 友人を訪れる
- バスや電車に乗る
- レストランや喫茶店に行く
- 重いものをもって運ぶ
- 料理を作る、食器洗いをする
- 腰を曲げたり伸ばしたりする
- 手を伸ばして棚の上から重いもの (砂糖袋など)を取る
- 体を洗ったり、拭いたりする
- 便座に座る、便座から立ち上がる
- ベッド(床)に入る、ベッド(床)から起き上がる
- 車のドアを開けたり、閉めたりする
- じっと立っている
- 平らな地面の上を歩く
- 趣味の活動を行う
- 洗髪する
疼痛生活障害評価尺度(PDAS)評価方法
全 20 項目の質問に対し、0 ~ 3 点の 4 つの選択肢から最も適したものを選び、回答していきます。
- 0 点:この行動を行うのに全く困難(支障)はない
- 1 点:この行動を行うのに少し困難 (苦痛)を感じる
- 2 点:この行動を行うのにかなり困難 (苦痛)を感じる
- 3 点:この行動は苦痛が強くて私には行えない
得点が低い(MIN:0 点)ほど疼痛がもたらす生活への支障が少なく、得点が高い(MAX:3 点)ほど疼痛がもたらす生活への支障が大きいことを意味しています。
疼痛生活障害評価尺度(PDAS)評価用紙
疼痛生活障害評価尺度(PDAS)の評価用紙は以下の通りとなります。
疼痛生活障害評価尺度(PDAS)の評価表をダウンロードできます。評価表が必要な方はこちらからどうぞ☺
疼痛生活障害評価尺度(PDAS)カットオフ値
疼痛生活障害評価尺度(PDAS)の合計点は最低 0 点、最高 60 点となります。
合計点が低いほど疼痛がもたらす生活への支障が少なく、得点が高いほど疼痛がもたらす生活への支障が大きいことを意味しています。
カットオフ値としては 10 点未満を健常、10 点以上を慢性疼痛という判定になります。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「疼痛生活障害評価尺度(PDAS)」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
こちらの記事を読むことで疼痛生活障害評価尺度(PDAS)ついての理解が深まり、臨床における疼痛管理への一助となれば幸いです。
痛みの中でも、特に心理社会的な痛みの評価の 1 つに HADS という評価方法がございます。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【HADS(評価法)を徹底解説についての記事はこちらから】
参考文献
- 有村達之,小宮山博朗,細井昌子.疼痛生活障害評価尺度の開発.行動療法研究.第23巻,第1号,p7-15.
- 太田晴之,齋藤圭介,原田和宏,京極真.慢性疼痛患者の集学的治療標本における疼痛生活障害評価尺度 (Pain Disability Assessment Scale)の因子構造モデルの検討.日保学誌.Vol.23,No.2,2020,p51-59.
- 太田晴之,齋藤圭介,原田和宏,京極真.慢性疼痛患者の集学的治療標本における疼痛生活障害評価尺度 (Pain Disability Assessment Scale) の因子構造モデルの検討.日本保健科学学会誌.23(2),p51-59,2020.