
当サイト(rehabilikun blog)にお越し頂きありがとうございます。
サイト管理者のリハビリくんと申します。

理学療法士として以下の経験と実績を持つリハビリくんが解説します♪
脳卒中評価の意義、目的

脳卒中とは脳の血管に障害がおきることで生じる疾患の総称になります。脳卒中の後遺症には様々な症状があり、症状については発症する部位であったり、梗塞や出血の程度にもよって異なります。
脳の血流が途絶えた状態が継続されると、脳細胞は酸素や栄養を受けとることができずに機能が障害されます。多岐にわたる症状の一例ですが、以下のような症状が生じることがあります。
- 上手く喋ることができない(呂律が回らない)
- 話したい気持ちはあるが言葉が出てこない
- 他人の言うことが理解できない
- 力はあるのにふらついて歩けない
- 体の片側(または両側)が麻痺する
- 左右どちらか片側に注意が向きにくくなる
- ものが 2 つに見える
- 視野の半分が欠ける
このように多岐にわたる症状が出現する脳卒中に対して、治療やリハビリテーションを効果的に進めていくためには、脳卒中の評価を行うことが重要になります。
脳卒中を評価するためには脳卒中評価スケールを使用する方法が一般的となりますが、評価スケールを使う意義としてはどのような理由があるのか考えていきます。
脳卒中の障害像を把握する
前述したように脳卒中では障害部位やその程度によって、さまざまな症状が出現する可能性があります。
そのため、脳卒中評価スケールの使用により多側面から収集した情報を構築し、障害像把握に導くことが重要になります。
リハビリの方針を決定する
評価結果をもとに、最も効果的なリハビリテーションの実施内容を選択します。患者様ご本人とご家族様と共に、リハビリの目標を明確に設定して、目標に向かってリハビリテーションを進めていく必要があります。
リハビリの効果判定を行う
定期的な評価により、リハビリテーションを行ったことに対する効果判定を行う必要があります。身体機能や活動レベルの変化を定期的にモニタリングし、必要に応じてリハビリの実施内容の調整や目標設定の変更を行います。
情報を伝達するツールとして活用できる
脳卒中のリハビリは急性期、回復期、生活期と発症からの期間で段階分けすることが一般的となります。
どの段階でも ADL の向上や QOL の向上を目的にリハビリテーションを実施することになりますが、急性期から回復期に転院する時や、回復期から在宅や施設に移る時には、脳卒中の経過や障害像を詳細に伝えることが、その後の生活やリハビリに大きく関与します。
その際に頼りになるツールが脳卒中評価になります。信頼性、妥当性が高い評価指標が求められます。
脳卒中治療ガイドライン
「脳卒中治療ガイドライン 2009」によると、リハビリテーションを実施するうえで、脳卒中の病態、機能障害、能力低下(活動制限、日常生活動作(ADL)障害)、社会的不利(参加制約)を評価することのエビデンスレベルがグレード B となっております。
A :行うよう強く勧められる B :行うよう勧められる C1:行うことを考慮しても良いが、十分な科学的根拠がない C2:科学的根拠がないので、勧められない D :行わないよう勧められる
評価スケールには様々な指標がありますが、その中でも汎用され、信頼性・妥当性が検証されている評価尺度を用いることが勧められるとされています。
脳卒中評価にはいくつか種類があり、Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)などの総合評価、Brunnstrom stage などの機能障害評価、Barthel index などの ADL 評価に大別することができます。
その中でも脳卒中の全体像を把握することができる総合評価については、以下の評価指標を使用して評価することのエビデンスレベルがグレード B となっております。
- Fugl – Meyer assessment(FMA)
- 脳卒中重症度スケール(JSS)
- Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)
- NIH Stroke scale(NIHSS)
上記の 4 種の脳卒中総合評価については、いずれもエビデンスレベル B(行うよう勧められる)となっており、脳卒中評価における有用性が示されております。
脳卒中評価スケール おすすめ 5 選
筆者は脳卒中認定理学療法士を取得しており、実際の臨床でも脳卒中患者のリハビリテーションを行う機会が多くあります。
そういった背景もあり、当サイト(rehabilikun blog)でも脳卒中の評価スケールの記事をいくつか投稿しております。
脳卒中評価スケールもさまざまなものがあり、どれを使うのか迷ってしまう人もいると思います。そこで、筆者が診療で使用している脳卒中患者のアウトカム評価として有用な脳卒中評価スケールを 5 つご紹介します。
脳卒中重症度スケール(JSS)
脳卒中重症度スケール(Japan Stroke Scale)とは、脳卒中を発症した患者の急性期における重症度を判定するためのスケールになります。1997 年に日本脳卒中学会によって発表されて以降、急性期の脳卒中診療の場において広く活用されています。
評価項目は全 12 項目となります。4 つめの設問(視野欠損または半盲)については、A か B の 2 件法、そのほかの 11 項目については A から C の 3 件法となります。
カットオフ値は特別定められておりませんが、得点範囲(数値)が最低 – 0.38 最大 26.95 となるため、数値が大きいほど重症度が高いことを示します。
脳卒中重症度スケールについては、他の記事で詳しくまとめています!《脳卒中重症度スケール Japan Stroke Scale:JSS》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
SIAS(脳卒中機能障害評価法)
SIAS とは、Stroke Impairment Assessment Set の頭文字をとってできた略称になります。
SIAS は信頼性および妥当性の検証がなされた脳卒中後の機能障害に関する総合評価指標であり、脳卒中治療ガイドラインにおいても SIAS の使用が推奨されています。
SIAS は「麻痺側運動機能」「筋緊張」「感覚機能」「関節可動域」「疼痛」「体幹機能」「視空間認知」「言語機能」「非麻痺側機能」の 9 つの機能障害により構成されており、評価項目としては合計 22 項目あります。
判定方法については「麻痺側運動機能」についての 5 項目のみ 0 〜 5 点の 6 件法、他の 17 項目については 0 〜 3 点の 4 件法により判定を行います。
いずれも項目も点数が低いほど機能障害の重症度が高く、点数が高いほど機能障害が軽度であることを示します。
SIAS の合計点の得点範囲は 0 〜76 点になり、こちらも点数が高いほど脳卒中による機能障害の重症度が高いという判断になります。
SIAS については、他の記事で詳しくまとめています!《【脳卒中機能評価法:SIASとは?】22の評価項目|総得点76点》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
NIH Stroke scale(NIHSS)
NIH Stroke scale(NIHSS)は「National Institutes of Health Stroke Scale」の略称であり、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血など脳卒中の神経学的重症度を評価することが可能であり、国際的に広く利用されております。

評価項目は 合計 11 項目から構成されており、評価結果に基づいて判定します。各項目は 0 点から 4 点までの範囲で評価されます。総得点は、最低 0 点から最高 42 点までとなり、合計スコアが脳卒中の重症度を示します。
NIH Stroke scale(NIHSS)については、他の記事で詳しくまとめています!《【NIHSS評価項目とカットオフ値】脳卒中・脳梗塞の評価方法とは》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
The Canadian Neurological Scale(CNS)
The Canadian Neurological Scale(CNS)とは、運動機能、精神状態の大項目から構成される標準的神経学的評価になります。
The Canadian Neurological Scale(CNS)の評価項目は、「精神状態」と「運動機能」の 2 つの大項目に分類することができます。
「精神状態」では意識レベル、見当識、従命の 3 つの設問から評価を行います。「精神状態」の得点範囲は 1.0 〜 5.5 点となり得点が低いほど脳卒中の重症度が高いことを示します。
「運動機能」では顔面、両上肢、両下肢の運動機能を評価します。「精神状態」の従命の設問の結果によって、評価方法が「A1セクション(理解力がある人)」と「A2セクション(理解力が欠如している人)」に分類されます。
The Canadian Neurological Scale(CNS)の得点範囲は 1.0 〜 12.0 となり、得点が低いほど脳卒中の重症度が高いことを示します。
カットオフ値は特別定まっておりませんが、脳卒中発症直後から評価することが可能であるため、発症直後の重症度を捉え、その後の重症度の変化を定量的に評価できることは有用であると考えられます。
The Canadian Neurological Scale(CNS)については、他の記事で詳しくまとめています!《【CNS】Canadian Neurological Scale》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
臨床的体幹機能検査:FACT
臨床的体幹機能検査(Functional Assessment of the Coordination of Trunk movement:FACT)は、脳卒中患者の体幹機能を評価するための指標になります。
脳卒中患者において体幹機能の重要性はかねてより指摘されておりました。脳卒中患者に対する評価尺度の SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)や TCT(Trunk Control test)の項目に体幹機能を評価する項目があるものの、体幹機能評価としては十分な評価には至らないのではないかという課題がありました。
そこで、より治療指向的な体幹機能の評価指標として、臨床的体幹機能検査(FACT)が開発されております。
臨床的体幹機能検査(FACT)は、10 項目の評価項目より構成されています。「可能」か「不能」で判定する項目が 8 項目、「両側可能」か「片側可能」か「不能」で判定する項目が 2 項目となっています。採点は各項目の得点を加算していき、得点範囲は 0 ~ 20 点、得点が高いほど体幹機能が高いことを示します。
臨床的体幹機能検査(FACT)については、他の記事で詳しくまとめています!《臨床的体幹機能検査(FACT)とは?脳卒中患者の体幹機能評価尺度》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!この記事では「脳卒中評価スケール」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
脳卒中は脳の血管障害により多様な後遺症が生じる疾患であり、リハビリを効果的に行うには評価が不可欠となります。評価の目的は、障害像の把握、リハビリの方針決定、効果判定、情報共有等があげられます。
主な評価指標としては JSS、SIAS、NIHSS、CNS、FACT などがあり、それぞれ重症度や機能障害、体幹機能を定量的に評価可能になります。信頼性・妥当性のあるスケールを活用することで、適切な介入と経過管理が可能となります。
こちらの記事が、脳卒中評価スケールについての理解を深めることに繋がり、臨床における脳卒中診療に少しでもお力添えになれば幸いです。