こんにちは!リハビリくんです!
この記事では「運動強度を表す単位:METs」をキーワードに記事を書いていきます!
皆さまはMETsについてご存知でしょうか?METsとは、身体活動量を表すために単位になります。安静時を1としたときに、その何倍の強さにあたる運動かを表すことができます。
METs は医療や介護におけるリハビリテーションでも効果的に活用できますが、健康のための運動やダイエットにも使用することができます。
ダイエットといっても、どの程度の運動強度の運動を週に何回程度行うのか曖昧になることがあります。そういった場合に、3 METs以上の運動を1回40分程度、週に3回以上行ってくださいと運動指導ができるようになります。
- METs(メッツ)の概要
- METsの数値はどう決めるのか?
- リハビリテーションのMETsっていくつ?
- METsの計算方法について
- 増量するための攻めの栄養療法を解説!
METsを用いて消費エネルギーの算出、栄養管理を行うときに、様々な疑問を抱えることがあると思います。そんな方のために、こちらの記事をご用意しました。是非、最後までご覧になってください!
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
登録理学療法士
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
【リハビリテーション専門職の転職サイト】
医療従事者となる理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーション専門職は超高齢社会を突き進む本邦において必要不可欠な職種になります。
実際に近年では、理学療法士は 10,000 ~ 11,000 人程度、作業療法士は 4,000 ~ 5,000 人程度、言語聴覚士は 1,600 ~ 1,800 人程度、国家試験に合格しており、順調に有資格者数が増え続けています。
このように世の中から必要とされている反面、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の給与は他業界と比較して恵まれてるとはいえません。「賃金構造基本統計調査」から他業界と比較してみても2022 年度のリハビリテーション専門職の初任給平均額は 239,100 円となっており、満足できるものではありません。
また、給与の問題もありながら、リハビリテーション専門職は業界特有の激しい人間関係という荒波に揉まれながら業務にあたることになります。この人間関係で辛い思いをする人はかなり多いと考えられます。
このように、給与や人間関係、また福利厚生などを含めた恵まれた労働環境で働くためには転職が必要になることもあります。1 年目、すなわち始めての職場が恵まれた環境であればいうことありませんが、必ずしもそう上手くはいきません。
最近では転職サイトにも様々な種類のものがあり、どの転職エージェントを選択するか迷うと思います。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士におすすめしたい転職サイトは、他の記事で詳しくまとめています!《【理学療法士転職サイトランキング】おすすめ5選|リハビリ職の転職》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
METs(メッツ)とは?運動強度を表す単位
2006年に「健康づくりのための運動指針」が改定され、身体活動量を表すために「METs(メッツ)」という単位が使われるようになりました。METsは、安静時を1としたときに、その何倍の強さにあたる運動かを表した単位となります。
また、METsは運動時の酸素消費量を、安静座位時の酸素消費量(3.5ml/kg/min)で割った数値となります。
どのくらいの運動強度なのかを表すことができるのも特徴ですが、METsを活用することにより身体活動による消費エネルギーを算出することもできます。
例えば歩行動作を例にあげると、一概に「歩行」といっても、歩くスピードや歩き方によって身体活動レベルは異なります。歩行におけるMETsは以下のように設定されています。
- ゆっくりとした歩行(時速3.2㎞未満):2.0METs
- 普通歩行(時速4.0㎞):3.0METs
- ゆっくり階段を上がる:4.0METs
- 速歩(時速6.4㎞):5.0METs
- ゆっくりとしたジョギング(時速6.4㎞):6.0METs
- 速く階段を上がる:8.8METs
- ランニング(時速8.4㎞):9.0METs
ランニングの活動強度は 9.0METsなので、安静時に比べて 9 倍の負荷(エネルギー消費)がかかっているということになります。
各身体活動がMETsとしてどの程度の数値となるのかについては、国立健康・栄養研究所が作成した、改訂版「身体活動のMETs表」が参考になるため、興味がある方はご覧になってください。
リハビリとMETs(メッツ)
リハビリテーションといっても行う内容によってMETsは異なります。また、理学療法・作業療法・言語聴覚療法のいずれかによっても異なります。
上述した、国立健康・栄養研究所が作成した、改訂版「身体活動のMETs表」にも歩行やセルフケアなどのADL練習におけるMETsは記載がありますが、リハビリテーションの詳細な1つ1つの訓練におけるMETsまでは記載がありません。
そのため、改訂版「身体活動のMETs表」を参考にしつつ、実行するリハビリテーションの実施内容と対象患者のレベルを考慮してMETsを設定する必要があります。以下にリハビリテーション実施時に生じると考えられる、おおよその目安を記載します。
- ベッドサイドリハ:1.0〜2.0METs
- 運動療法:3.0METs
- ADL練習:2.0METs
- 座位での言語聴覚療法:1.5METs
訓練エネルギー消費量= 1.05 × 体重(kg)× METs × 運動時間(h)
リハビリによる身体活動を考慮した栄養管理
基礎代謝量(基礎エネルギー消費量)とは、心臓を動かしたり呼吸をしたり、生きていくために最低限必要とされるエネルギー量のことを表します。
リハビリテーションを実施する場合、基礎代謝量に加えて、身体活動による消費エネルギーが発生します。
例を出すと、回復期リハビリテーション病棟では最大で1日3時間リハビリテーションを実施する場合があります。運動強度にもよりますが3時間身体活動を行うことは、それ相応のエネルギーを消費するということになります。
また、入院医療においては栄養管理が十分になされていないことを問題点として掲げることができます。実際に、廃用症候群でリハビリテーション依頼のあった患者のうち、約4割が基礎エネルギー消費量以下、約1割が300kcal以下のエネルギー摂取量だったという報告があります。
基礎エネルギー消費量に対し、エネルギー摂取量が下回る状態(エネルギーバランスが負の状態)の患者に積極的に機能訓練を行っても、筋力や持久力はむしろ悪化してしまいます。
廃用症候群の進行予防、機能維持を目的としたリハビリテーションは可能でありますが、長時間の機能訓練やレジスタンストレーニングは禁忌となります。強度の高い訓練を行えば行うほど、エネルギー消費量は増加しますので、それに見合った栄養管理が必要になります。
栄養管理については、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【リハ栄養とは:低栄養のリハビリテーションに必要な栄養と負荷量】
METs(メッツ)の計算方法
機能訓練によるエネルギー消費量は次の式で計算できます。
エネルギー消費量(kcal)=1.05 × 体重(kg)×METs × 運動時間(h)
《体重 60 kgの患者が 4.0 METsの理学療法を 1 時間実施した場合》
1.05 × 60 × 4.0 × 1.0 = 252 kcal
《体重 40 kg の患者が 3.0 METsの作業療法を 2 時間実施した場合》
1.05 × 40 × 3.0 × 2.0 = 252 kcal
このように、機能訓練によるエネルギー消費は見逃すことができません。基礎代謝量が 1400 kcalで 1 日のエネルギー摂取量が 1400 kcalとなっている方が上記で計算したように毎日 252 kcalの身体活動をした場合、エネルギーバランスは負の状態となります。
エネルギー消費量:1400 kcal+ 252 kcal > エネルギー摂取量:1400 kcal
そのため、リハビリテーションを行っている患者様は、エネルギーバランスを考慮した栄養管理が必要になります。これを疎かにすると、機能訓練で体重が減少して、かえって機能が低下する可能性もあります。
リハ以外のエネルギー消費量について
【基礎エネルギー消費量の求め方】
基礎エネルギー消費量とは basal energy expenditure:BEEのことを表します。基礎エネルギー消費量を算出する方法はいくつかありますが、最も有名なものが「Harris-Benedict」の公式を使用した算出方法になると考えられます。
計算の方法は性別によって異なりますので注意が必要です。
- 男性:66.47 + (13.75 × 体重) + (5 × 身長) – (6.76 × 年齢)
- 女性:665.1 + (9.56 × 体重) + (1.85 × 身長) – (4.67 × 年齢)
【総エネルギー消費量(TEE)の求め方】
Harris-Benedictの式からBEE(基礎エネルギー消費量)を求め 、これに活動係数とストレス係数を乗じてエネルギー投与量を決定する方法は、1979 年に Long らが発表したものになります。
総エネルギー消費量(TEE)の算出方法は以下の通りになります。
総エネルギー消費量 = 基礎エネルギー消費量(BEE) × 活動係数(AF)× ストレス係数(SF)
このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【ハリス-ベネディクトの式についての記事はこちらから】
エネルギーを蓄積させるための栄養療法
リハビリテーションを実施しながら体重増加も目指したい場合には、エネルギー蓄積量を考慮した栄養管理が必要になります。
一般的に 1 kgの体重増加に 7500 kcal/月が必要とされています。そのことも含めて栄養管理を行う必要があります。実際の患者を例に出して考えてみます。
症例は肺炎後の廃用症候群により身体機能が低下し、痩せの傾向が進行した 80 歳台女性、体重は 42 kgになります。入院前の体重(45kg)に戻すことを目標としております。
エネルギーバランスについては、総エネルギー消費量が 1300 kcal、リハビリテーションによるエネルギー消費量が 1 日 300 kcalとなっております。合計すると1日のエネルギー消費量は 1600 kcalとなります。
1 kgの体重増加に 7500 kcal/月必要になりますので、1 日に250kcalエネルギーを蓄積する必要があります。そのため、1600kcalに 250 kcalを加え、1日あたり 1850 kcal摂取することで月に1kgの増量を期待することができます。
そのため、3ヶ月間 1日1850 kcalエネルギー摂取することで、入院する前の 45 kgに体重を戻すことが期待できます。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「運動強度を表す単位:METs」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
栄養管理において、リハビリテーション以外でのエネルギー消費量とリハビリテーションでのエネルギー消費量を両方を意識して考えることが重要になります。リハビリテーションでのエネルギー消費量を算出するためには、METsを利用するのが効果的ですので是非活用していただけると幸いです。
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参考文献
- 若林秀隆.リハビリテーション栄養とサルコペニア.外科と代謝・栄養.50巻,1号,2016年2月,p43-49.
- 若林秀隆.リハビリテーションと臨床栄養.Jpn J Rehabil Med.2011,48,p270-281.