6 分間歩行テスト( 6 MWT )の実施手順と評価

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6 分間歩行テスト( 6 MWT )の評価と実施手順|心肺・歩行耐久性を 1 回で把握

評価が回る職場だと、臨床の迷いと残業がまとめて減ります。 PT キャリアガイドで「評価→介入→再評価」の型を 3 分で確認する 面談準備チェック( A4 )と職場評価シートもまとめて使えます。

6 分間歩行テスト( 6 MWT )は、日常生活に近い条件で「どのくらいの速さで・どのくらいの距離を歩けるか」を評価するサブマキシマル運動負荷試験です。特別な機器を用いず、長期フォローでも繰り返し使いやすいため、心不全・ COPD ・間質性肺炎・術後など幅広い症例の運動耐容能評価に用いられます。

一方で、コース長・折り返し・声かけ・中止基準が曖昧だと距離( 6 MWD )の信頼性が下がります。本稿では、現場でそのまま使える「準備・標準手順・中止基準・解釈のポイント」を 1 ページに整理し、リハビリ計画へのつなげ方まで解説します。

6 分間歩行テスト( 6 MWT )とは

6 分間歩行テストは、「決められた直線コースを 6 分間でどこまで歩けるか」をみる簡便な歩行耐久性テストです。アウトカムは基本的に 総歩行距離( 6 minute walking distance: 6 MWD )です。前後の Borg スケールや SpO2、心拍数の変化を合わせてみることで、「どの程度の負荷で・どのくらい苦しかったのか」を定性的に補完できます。

英語名は six-minute walk test、略記は 6 MWT / 6MWT と表記されます。再検査時には、最小臨床重要差( MCID )や測定誤差を踏まえ、距離の変化量+症状(息切れ・下肢疲労)+ SpO2 低下をセットで解釈するのが実務的です。

6 MWT でわかること・他の指標との違い

6 MWT の強みは、日常生活の歩行に近い姿勢・速度で評価できる点です。 CPET など最大負荷試験に比べ生理学的情報は少ない一方で、「廊下を歩くとどれくらいで息切れするか」といった患者の実感に近い評価が得られます。そのため、退院後の活動量設定や在宅目標(買い物距離・外出頻度)の見立てに直結しやすい指標です。

同じ運動耐容能評価でも、 ISWT などは負荷が段階的に上がる一方で、6 MWT は「患者自身が選ぶ最大持続可能速度」で歩行します。歩行様式や補助具も含めて“ふだんの歩き”が反映されるため、距離だけでなく、歩行の質(ふらつき・休憩・歩行補助具の妥当性)まで合わせて観察することが重要です。

準備(環境・物品・前提条件)

コースは屋内の直線 30 mが推奨です。混雑の少ない硬い床を選び、折り返し地点と距離の目印(例: 3 m ごと)を床・壁に表示します。 30 m が確保できない場合は、現実的な距離(例: 20 m )で固定し、経時比較は同条件で行います(コースが短いほど折り返しの影響が増えます)。

準備物は、計時器、ラップカウンターまたは記録表、 Borg スケール、筆記具、軽量パルスオキシメータ(任意)、必要時の酸素ボンベや延長チューブ、緊急時連絡手段(内線・ナースコールなど)です。

開始前は椅子座位で 10 分程度の安静を保ち、安静時 HR ・ BP ・必要に応じて SpO2 を確認します。動きやすい服装・靴を案内し、日常的に使用している杖・歩行器などの補助具は同条件で使用可とします。最近の胸痛・失神・急性心不全増悪などが疑われる場合は主治医と相談し、絶対/相対禁忌に該当しないかを確認してから実施します。

6 分間歩行テストの準備(環境・物品・前提条件) 屋内直線 30 m コースと 3 m ごとのマーカー、必要物品と前提条件をまとめた図。 屋内直線 30 m コース(硬い床・混雑の少ない環境) スタート 折り返し 0 m 3 6 9 12 15 18 21 24 27 30 m ※ 3 m 間隔で床または壁にマーカーを表示 環境 屋内・硬い床 混雑の少ない時間帯 十分な照明・安全確認しやすい位置 物品 計時器・ラップカウンター/記録表 Borg スケール・筆記具 パルスオキシメータ・酸素・連絡手段 前提条件 椅子座位で 10 分安静 安静時 HR / BP / SpO2 を確認 最近の胸痛・失神・心不全増悪は医師と確認

標準手順(やり方マニュアル)

被験者をスタートラインに立たせ、「これから 6 分間歩いていただきます。できるだけ遠くまで、できるだけ速く安全に歩いてください。疲れたら立ち止まっても構いません。再び歩けると感じたら、また歩き始めてください。」と説明します。テスターは横に付き添わず、進行方向とは反対側の側線付近から声かけと安全確認を行います。

タイマーを 6 分に設定し、 1 分ごとに定型文で励ましの声かけを行います。周回するたびにラップ数をカウントし、終了 15 秒前に「まもなく『止まってください』とお伝えします。その場で止まってください。」と予告します。 6 分経過時点で「止まってください。」と指示し、その場で静止してもらい、不完全周回は壁マーカーで距離換算します。合計距離( m )を 1 m 単位で記録し、直後に Borg(呼吸・脚)と最小 SpO2(任意)、自覚症状を記入します。

6 分間歩行テストの標準手順(やり方マニュアル) 6 分間歩行テストの流れ(安静・説明・スタート・声かけ・終了合図・記録・中止基準)を示したフローチャート。 10 分安静(椅子座位) HR / BP / SpO2 を確認 説明・同意 「6 分間できるだけ遠くまで…」 スタート合図 タイマーを 6 分に設定 1 分毎の声かけ 周回ごとにラップ数を記録 終了 15 秒前に予告 「まもなく止まってください…」 6 分で「止まってください」 その場で静止・距離換算 記録 距離+ Borg(呼吸・脚)+ SpO2・症状 中止基準: 胸痛・耐えがたい呼吸困難・ふらつき・著明な冷汗・蒼白などが出現したら即時中止し、 椅子座位で再評価 → 必要時は医師へ報告

標準フレーズ( 1 分ごとの励まし)

声かけは距離に直接影響する要素です。施設でフレーズを統一しておくと、評価者が変わっても結果を比較しやすくなります。以下は ATS / ERS の推奨に沿った「日本語の例」です(施設 SOP に合わせて調整してください)。

6 分間歩行テストの標準フレーズ例(スマホは横スクロールで参照)
タイミング 定型文 ねらい/補足
開始 「できるだけ速く、安全に歩いてください。」 努力水準の統一(最大ではなく“できるだけ速く”)
1 分 「順調です。あと 5 分です。」 過度な減速を防ぐ(声のみ、伴走しない)
2 分 「いい調子です。あと 4 分です。」 ペース維持の励まし
3 分 「順調です。半分まで来ました。」 見通しを持たせる
4 分 「いい調子です。あと 2 分です。」 疲労局面での維持
5 分 「順調です。あと 1 分です。」 最後のひと踏ん張りを促す
終了 15 秒前 「まもなく『止まってください』とお伝えします。その場で止まってください。」 安全な停止と距離算定の準備
終了 「止まってください。」 不完全周回は壁マーカーで距離換算

距離の評価と基準値・ MCID の考え方

6 MWD は年齢・性別・身長・体重の影響を受けるため、絶対値だけでなく予測値に対する割合( % predicted )でみると解釈しやすくなります。重要なのは「数値の良し悪し」よりも、同一条件での変化量です。補助具・酸素流量・薬剤タイミング・コース長・声かけをそろえて、変化が“本物”かどうかを見極めます。

最小臨床重要差( MCID )は疾患や評価場面で幅がありますが、 COPD では 6 MWD の MCID が 25 m 程度、慢性心不全では 36 m 前後とする報告があります。距離の伸びが小さくても、「同じ距離で Borg が軽くなった」「 SpO2 低下が小さくなった」など、負担軽減として意味のある変化も多いため、距離単独で結論を出さない運用が実務的です。

安全管理と中止基準・実施時の注意点

実施中は、表情変化・歩行の乱れ・会話時の息切れなどから症状増悪を早期に察知します。胸痛・耐えがたい呼吸困難・ふらつき・著明な冷汗・顔面蒼白・失神前駆症状などが出現した場合は即時中止し、椅子座位でバイタルを再確認します。必要に応じて医師へ連絡し、その日のリハビリは中止・縮小を検討します。

また、テスターが被験者の横を歩いてペースメーカーになると、距離が過大評価されることがあります。安全確保が必要な場面を除き、伴走せずに観察・声かけを行います。酸素療法中はチューブの引っ掛かりやボンベの転倒にも注意し、開始前に「どの値まで SpO2 が低下したら中止するか」をチームで共有しておくと安心です。

現場の詰まりどころ・よくある失敗

詰まりどころは「測定条件が毎回ズレる」ことです。コース長が変わる、折り返しの仕方が違う、声かけが強すぎる/弱すぎる、酸素流量や補助具の条件が記録されていない――この状態だと、距離の変化が「リハ効果」なのか「測定誤差」なのか判断できません。

  • コース長が短い:折り返しが増えて距離が短く出やすい(経時比較は同条件で固定)
  • 声かけがバラバラ:励ましの強弱で距離が動く(定型文で統一)
  • 伴走してしまう:無意識にペースメーカーになる(原則は側線から観察)
  • 記録が距離だけ:補助具・酸素・ Borg ・ SpO2 がないと解釈が弱い(セットで残す)

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リハビリ計画への活用と記録のコツ

6 MWT の距離は、「良くなった・悪くなった」だけでなく、運動処方づくりにも役立ちます。例えば「 6 分で 240 m 歩ける」なら、屋外歩行や退院後の買い物距離をイメージしながら、 1 回あたりの歩行距離・休憩頻度・見守りレベルを具体化できます。

記録には、距離に加えて「補助具・酸素流量・薬剤タイミング」「前後の Borg(呼吸・脚)」「最小 SpO2 や心拍のピーク」「途中の立ち止まりの有無・理由」をセットで残します。経時的に見返せる形にしておくと、多職種共有と患者へのフィードバックが安定します。

次の一手

参考文献

  1. ATS Committee on Proficiency Standards for Clinical Pulmonary Function Laboratories. ATS statement: guidelines for the six-minute walk test. Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(1):111–117. DOIPubMed
  2. Holland AE, Spruit MA, Troosters T, et al. An official ERS/ATS technical standard: field walking tests in chronic respiratory disease. Eur Respir J. 2014;44(6):1428–1446. DOIPubMed
  3. Beekman E, Mesters I, Hendriks EJM, et al. Course length of 30 metres versus 10 metres has a significant influence on six-minute walk distance in patients with COPD: an experimental crossover study. J Physiother. 2013;59(3):169–176. DOIPubMed
  4. Holland AE, Hill CJ, Rasekaba T, et al. Updating the minimal important difference for six-minute walk distance in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Arch Phys Med Rehabil. 2010;91(2):221–225. DOIPubMed
  5. Täger T, Hanholz W, Cebola R, et al. Minimal important difference for 6-minute walk test distances among patients with chronic heart failure. Int J Cardiol. 2014;176(1):94–98. DOIPubMed
  6. Leung ASY, Chan KKP, Jones AYM, et al. Two 6-minute Walk Tests Are Required During Hospitalisation for Acute Exacerbation of COPD. Cardiopulm Phys Ther J(掲載誌表記は PubMed に準拠). 2015. DOIPubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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よくある質問( 6 分間歩行テスト)

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Q. 6 MWT の読み方は?

A. 日本語では「6 分間歩行テスト」と読みます。英語では “six-minute walk test” と呼ばれ、略記は 6 MWT( 6MWT )や 6 MWD( 6-minute walk distance )などが使われます。

Q. 補助具や酸素は、ふだん通りに使って実施して良いですか?

A. はい。日常生活で使用している杖・歩行器・酸素などは、原則として「ふだん通りの条件」で実施します。そのうえで、補助具の種類や酸素流量を記録し、再検査時も同じ条件で行うと変化量を解釈しやすくなります。

Q. コース長が 30 m 取れない場合はどうすれば良いですか?

A. 30 m が望ましい一方で、スペース制約がある場合は 20 m など現実的な長さで設定し、コース長を固定したうえで経時比較に用いるのが実務的です。コースが短いほど折り返し回数が増え、距離が短く出やすい点に注意します。

Q. 練習テスト(プラクティステスト)は必須ですか?

A. 学術的には学習効果(慣れ)を考慮して 2 回実施するプロトコルがあります。一方で実臨床では時間と疲労の制約があるため、施設の運用として「初回のみ 2 回」「初回は練習を兼ねたベースライン」など方針を統一しておくと、データの扱いが安定します。

Q. 高齢でふらつきが心配な症例でも 6 MWT を行って良いですか?

A. 立位保持が不安定な症例では、事前に短距離歩行で安全性を確認したうえで、「介助者を別途配置」「安全に中止できる椅子配置」などの対策が必要です。重度の心血管リスクが疑われる場合は、主治医と相談のうえで他の評価へ切り替えも検討します。

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