MMSE とは?点数の見方とリハへの活かし方

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MMSE(ミニメンタルステート)とは?点数の見方とリハへの活かし方

合計点より「弱い領域 → 次アクション」に変換できると、介入と申し送りが一気にラクになります。 評価 → 介入 → 再評価の流れを 3 分で復習する( #flow )

MMSE( Mini-Mental State Examination )は、認知機能を短時間でスクリーニングする代表的な検査です。合計点( 0–30 点 )は便利ですが、臨床では合計点だけで判断せず、領域別プロファイルから「当日の介入」に落とすほうが再現性が上がります。

本記事は、領域別プロファイル → 訓練・環境調整・家族教育へ接続する“使い方”に特化します。MMSE を含む認知評価の選び方(補完評価の考え方)は 認知機能評価の選び方(総論) にまとめています。

MMSE リハビリの設計(領域別プロファイル → 次アクション)

合計点は入口です。現場で効くのは「どの領域が弱いか」と「弱い領域が生活でどう困りに変わるか」です。下の表は、所見をそのままリスク → 指示・環境 → 訓練/HEP・家族説明へ変換するための早見です。

※表は横にスクロールできます。

MMSE:領域別の所見から導く推奨アクション(成人・臨床向け)
領域 よくある所見 主なリスク 指示・環境調整 訓練・HEP/家族説明
見当識 日付・場所・時間の取り違え 迷行・転倒、夜間不穏 定位置化・サイン掲示、声かけの短文化 病棟/家屋の導線づくり、見守りのルール化
記銘・遅延再生 新規学習保持が弱い(再認で改善) 指示忘却、HEP 逸脱、服薬ミス 一度に 1 指示+視覚支援、メモ・チェック 間隔反復(短時間×高頻度)、家族の確認役を明確化
注意・計算 持続注意低下、同時処理困難 二重課題中の転倒、見落とし 単課題→二重課題へ段階化、刺激を減らす 低強度有酸素+簡単課題の併用、歩行中の会話ルール
言語(理解/表出) 理解遅延・語想起困難 誤解による拒否、不適切介助 短文・一命令、ジェスチャ、 Yes–No 確認 家族の伝え方練習、カード/選択肢提示
構成・視空間 配置再現の困難・見落とし IADL 低下、物品誤使用 定位置化・ラベリング、段取り提示→模倣→自立 家屋評価、整理整頓ルールの共有(写真化)

領域別:日常生活で出現しやすい支障と対応策

「点数が低い=全部できない」ではありません。弱い領域に合わせて伝え方と環境を整えると、実施できる介入が増えます。ここでは、領域ごとに“困り”を具体化して対応策まで落とします。

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見当識( Orientation )
支障(入院/施設/在宅)
自分の状況がわからず不安が強い/場所・時間・日付の混乱。
安全リスク
迷行・転倒・夜間不穏・逸走。
対応策(環境・コミュニケーション)
日付と時計を目に入る位置に固定。病棟名・部屋番号・トイレ方向のサイン。短文で反復説明(同じ言い回しで統一)。
リハ・HEP
病棟内オリエンテーション練習(写真・簡易地図)。夕方〜夜間で崩れるなら、時間帯に合わせて導線と見守りを再設計。
家族への声かけ例
「今日は ◯ 月 ◯ 日です」「ここは ◯◯ 病院の ◯ 階です」。
記銘・遅延再生( Memory )
支障
新しい予定・指示・服薬を保持できない/ HEP の手順を忘れる。
安全リスク
服薬ミス、受診の失念、家事の手順逸脱。
対応策
一度に 1 指示+視覚支援(写真・手順カード)。予定はホワイトボード+紙で二重化。重要情報は“貼る場所”を固定。
リハ・HEP
間隔反復(短時間×高頻度)。模倣→自立の段階づけ。チェックリスト運用(家族のサイン欄)。
家族への声かけ例
「今は ① 体操、終わったら ② 散歩。迷ったらカードを見ましょう」。
注意・計算( Attention )
支障
同時処理でミスが増える/周囲刺激で気が散る( TV・人通りなど)。
安全リスク
二重課題で転倒、道具操作の見落とし。
対応策
まず単課題環境(静かな場所・刺激を減らす)を作る。歩行中の会話・スマホ操作は“止まってから”にルール化。
リハ・HEP
単課題歩行→短距離・低難度の二重課題へ段階化。低強度有酸素と簡単課題の併用。
家族への声かけ例
「歩いている間は歩くことに集中。話すのは止まってから」。
言語(理解/表出)( Language )
支障
口頭指示の理解が遅い/語想起困難で伝えられない。
安全リスク
誤解による拒否、不適切な介助、誤実施。
対応策
短文・一命令・ジェスチャ・指差し。 Yes–No で逐次確認。反応時間を十分確保。
リハ・HEP
モデリング(見本→模倣)。選択肢提示で負荷を下げる。カードを使って家族の伝え方も統一。
家族への声かけ例
「これをこうして(指差し)。できたら “はい” と教えてください」。
構成・視空間( Visuospatial / Construction )
支障
物の見落とし・誤使用、片付けで混乱する。
安全リスク
IADL 低下、転倒、誤飲・火傷。
対応策
定位置化・ラベリング・色分け。必要物は中央・手前に配置。置き方のルールで「探す」時間を減らす。
リハ・HEP
段取り提示→模倣→自立。片付け手順の写真化。家屋内の動線最適化。
家族への声かけ例
「使い終わったら写真と同じ形に戻しましょう」。

実施オペレーション:誤判定を減らすチェック

MMSE は条件で点が動きます。再評価の再現性を上げるために、実施条件(環境・補助具・説明)を固定して記録します。

  • 感覚:補聴器・眼鏡・照度・騒音を事前確認。痛み・疲労・眠気・薬剤タイミングも影響します。
  • 運動:麻痺で書字・操作が不利になる場合は条件(利き手・補助具・提示位置)を明記します。
  • 言語:失語が疑われる場合、合計点だけで判断せず、理解・表出の臨床像と統合して解釈します。
  • 採点の一貫性:回答猶予、再提示、中断時の扱いを部署内でルール化するとブレが減ります。

変化の判定とフォロー(再評価の目安)

合計点の小さい上下だけで方針を変えると、振り回されやすくなります。目安として、経時変化は誤差を踏まえて 3 点 以上の変化を「変わった可能性が高い」と扱う考え方があります。個人の経過では、合計点だけでなく、領域別プロファイルと生活上の変化(転倒、 IADL、介助量)をセットで判断します。

  • 回復期:週 1 回 を目安(状態変化が大きい時期は前倒し)
  • 外来/在宅:月 1 回 を目安(イベント後や介入更新後は臨機応変)
  • 見るべきセット:合計点+領域別プロファイル+生活の困り(安全・介助量)

ケースで学ぶ:MMSE を“その日の介入”に落とす例

迷いやすいのは「合計点が低い=全部できない」と早合点する場面です。弱い領域に合わせて伝え方と環境を整えると、介入の選択肢が増えます。

左 MCA 病変・非流暢失語:合計点が低くても理解が保たれる場合

短文+指差し+ Yes–No 確認で進行し、模倣 → 自立へ段階化します。家族には「短文・一命令・確認」の型を共有し、誤解による拒否を減らします。

右半球病変・構成低下: IADL の誤使用が前に出る場合

定位置化・ラベリング・動線整理を先行し、段取り提示→模倣→自立へ。歩行は単課題から開始し、短距離・低難度の二重課題へ段階化します。

軽度疑い:合計点が保たれても困りが出る場合

合計点だけで安心せず、二重課題歩行や生活場面の観察を増やします。 HEP は間隔反復など“続けやすい型”にし、家族には視覚支援+チェックで支える仕組みを提案します。

ダウンロード(A4・印刷用)

病棟の申し送りや新人オリエンで使いやすいように、 A4 で確認できる整理資料を用意しています。印刷の目安:A4/余白 10–12 mm/ヘッダ・フッタ非表示。

よくある質問(FAQ)

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MMSE は何点から見直しますか?

合計点だけで決めず、領域別プロファイルと生活上の変化をセットで見ます。目安として、誤差を踏まえた経時変化は 3 点 以上を「変わった可能性が高い」と扱い、介入方針の更新を検討します。

再評価の頻度はどれくらいが目安ですか?

回復期は週 1 回、外来/在宅は月 1 回を目安に、状態と目的で調整します。転倒やせん妄などイベント後、介入内容を大きく更新した直後は前倒しで再評価します。

MMSE だけでリハ目標は立てられますか?

スクリーニングなので、目標設定は生活上の困り(介助量、転倒、 IADL )や観察所見と統合して立てます。合計点は“会話の入口”として使い、領域別の弱さから伝え方・環境・段階づけへ変換してください。

失語や麻痺がある場合、点数の扱いはどうしますか?

失語や運動面の制約は得点に影響します。合計点だけで結論を急がず、実施条件(伝え方、利き手、補助具、提示位置)を明記し、臨床像とセットで解釈します。

参考文献

  1. Folstein MF, Folstein SE, McHugh PR. Mini-mental state. J Psychiatr Res. 1975;12(3):189-198. doi: 10.1016/0022-3956(75)90026-6. PubMed: PMID: 1202204.
  2. Tombaugh TN, McIntyre NJ. The Mini-Mental State Examination: a comprehensive review. J Am Geriatr Soc. 1992;40(9):922-935. doi: 10.1111/j.1532-5415.1992.tb01992.x. PubMed: PMID: 1512391.
  3. Mitchell AJ. A meta-analysis of the accuracy of the mini-mental state examination in the detection of dementia and mild cognitive impairment. J Psychiatr Res. 2009;43(4):411-431. PubMed: PMID: 18579155.

おわりに

MMSE は「安全の確保 → 領域の弱さを言語化 → 指示と環境を整える → 段階づけて介入 → 同条件で再評価」の流れに乗せると、点数が臨床の意思決定に直結します。

評価の記録や申し送りをさらに速くしたいときは、面談準備チェックと職場評価シートも使える マイナビコメディカルのまとめ( #download ) もあわせて活用してください。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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