痛み評価スケールの使い分け【成人・小児・認知症・慢性痛】

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痛み評価スケールの使い分け【成人・小児・認知症・慢性痛】

疼痛評価の全体像から確認する

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痛み評価スケールは、患者の年齢や診断名だけでなく、「本人が痛みを自己申告できるか」と「何を測りたいか」で選ぶと整理しやすくなります。成人の痛みの強さなら NRS、小児で自己申告できるなら FPS-R、自己申告が難しい場合は対象に合った観察尺度が候補です。

さらに、神経障害性疼痛の可能性を整理するなら DN4、慢性痛による生活への影響を知りたいなら BPI や PDAS など、目的に応じた評価を組み合わせます。本稿では、最初に使う尺度と、必要に応じて追加する尺度をどう使い分けるかを、成人・小児・認知症・神経障害性疼痛・慢性痛に分けて整理します。

結論:まず「自己申告できるか」、次に「何を測るか」で選ぶ

痛み評価では、すべての尺度から 1 本だけを選ぶわけではありません。まず本人が痛みを自己申告できるかを確認し、痛みの強さを評価します。そのうえで、神経障害性疼痛の可能性や生活への影響など、追加で知りたい情報があれば目的に合った尺度を組み合わせます。

痛み評価スケールの使い分け早見表
判断すること 対象・目的 尺度候補 位置づけ
自己申告できる 成人の痛みの強さ NRS
VAS / VRS
痛みの強さを定点で追う
自己申告できる 小児の痛みの強さ FPS-R 説明を理解して自分の痛みを選べるか確認する
自己申告が難しい 小児 FLACC など 行動観察から痛みを評価する
自己申告が難しい 進行した認知症など PAINAD / Abbey Pain Scale など 対象に適した観察尺度を選ぶ
追加評価 神経障害性疼痛が疑われる DN4 神経障害性疼痛の可能性を整理する
追加評価 慢性痛の生活影響を知りたい BPI / PDAS 痛みと生活・活動への影響を整理する
痛み評価スケールの選び方を自己申告の可否と評価目的から整理したフロー図。NRS、VAS、VRS、FPS-R、FLACC、PAINAD、Abbey、DN4、BPI、PDASの位置づけを示す
痛み評価スケールの選び方。まず自己申告の可否を確認し、その後に評価したい内容に応じて尺度を選びます。

図版は選択の入口を分かりやすくするために簡略化しています。小児では年齢だけで自己申告尺度と観察尺度を切り替えるのではなく、説明を理解して自分の痛みを伝えられるかも確認します。また、BPI は痛みの強さと生活への干渉の両方を扱うため、NRS を必ず別に追加するという意味ではありません。

3 ステップで選ぶ:最初の尺度と追加評価を分ける

尺度名から選び始めるより、自己申告の可否 → 痛みの強さ → 強さ以外に知りたいことの順で考えると、尺度の役割を混同しにくくなります。

痛み評価スケールを選ぶ 3 ステップ
ステップ 確認すること 次の判断
1 本人が痛みを自己申告できるか 可能なら自己申告尺度、難しければ対象に合う観察尺度を検討する
2 痛みの強さをどう測るか 成人では NRS / VAS / VRS、小児では FPS-R などから選ぶ
3 強さ以外に何を知りたいか 神経障害性なら DN4、生活影響なら BPI / PDAS などを検討する

ポイントは、「患者 1 人につき痛み尺度は 1 つ」と考えないことです。痛みの強さ、神経障害性疼痛の可能性、生活への影響は、それぞれ異なる情報です。必要な情報を明確にしてから尺度を組み合わせます。

成人の自己申告:NRS / VAS / VRS の選び方

成人で自己申告が可能なら、まずは痛みの強さを本人から確認する尺度を選びます。日常臨床では NRS は短時間で繰り返しやすく、病棟・外来・在宅でも共通の形式で運用しやすい選択肢です。

成人の痛みの強さを測る尺度の使い分け
尺度 評価方法 選択を考える場面
NRS 数字で痛みの強さを答える 短時間で継続的に強さを追いたい
VAS 直線上の位置で痛みの強さを示す 視覚的な連続尺度を同じ条件で反復できる
VRS 言葉の段階から痛みの強さを選ぶ 数字より言語カテゴリーの方が回答しやすい

どの尺度を選んでも、再評価で重要なのは同じ尺度と同じ測定条件で比較することです。たとえば「安静時」と「歩行時」の NRS は別の条件なので、記録時に何を測った数字なのかを残します。

小児:自己申告できるなら FPS-R、難しければ観察尺度

小児でも、本人が痛みを理解して伝えられる場合は自己申告を活用することが基本です。FPS-R(Faces Pain Scale-Revised)は、複数の顔から自分の痛みの強さに最も近いものを選ぶ自己申告尺度です。

FPS-R では、顔を「悲しい顔」「泣きそうな顔」など感情として説明するのではなく、痛みの強さを表す顔として選んでもらうことが重要です。年齢だけで使用可否を決めず、説明を理解して自分の痛みを選択できるかも確認します。

年齢、発達、病状などの影響で信頼できる自己申告が難しい場合は、FLACC などの行動観察尺度を検討します。観察尺度は自己申告尺度の単純な置き換えではないため、対象や使用条件を確認し、同じ場面で変化を追えるように運用します。

認知症:診断名ではなく「自己申告できるか」で分ける

認知症があるという理由だけで、最初から観察尺度へ切り替えるわけではありません。本人が質問を理解し、痛みを言葉や簡単な尺度で伝えられる場合は、本人の自己申告を評価に活用します。

一方、認知症が進行して自己申告が難しい場合は、PAINAD や Abbey Pain Scale などの観察尺度が候補になります。表情、発声、身体の動きなどの行動を観察し、ケアや体動の前後で変化を確認します。

ここで注意したいのは、観察尺度のスコアが低いことだけで「痛みなし」と決めないことです。普段との行動の違い、体動やケアに対する反応なども合わせて確認し、必要に応じて多職種で情報を共有します。

神経障害性疼痛:DN4 は「痛みの強さ」とは別に考える

しびれ、灼熱感、電撃様痛などがあり、神経障害性疼痛が疑われる場合は DN4 が評価候補になります。DN4 の役割は、NRS のように痛みの強さを数値化することではなく、神経障害性疼痛の可能性を整理することです。

したがって、「DN4 を実施したから NRS は不要」と単純には考えません。必要であれば、痛みの強さは NRS などで確認しながら、DN4 の結果、痛みの分布、感覚所見、既往などを合わせて解釈します。

慢性痛:BPI / PDAS で生活への影響を見る

慢性痛では、痛みの強さだけを追っても、患者が実際に何に困っているかを十分に把握できないことがあります。その場合は、痛みによる生活・活動への影響を評価する尺度を検討します。

BPI と PDAS の役割
尺度 主に確認すること 使いどころ
BPI 痛みの強さと生活への干渉 痛みと生活影響をまとめて把握したい
PDAS 痛みによる日常生活上の障害 慢性痛によって活動がどの程度制限されているか整理したい

BPI は痛みの強さと生活への干渉の両方を扱うため、評価目的によっては BPI 自体で必要な情報をまとめて確認できます。PDAS は、慢性痛による生活障害をより明確に捉えたい場面で選択肢になります。

たとえば痛みの強さが大きく変わらなくても、歩行、家事、睡眠など生活上の活動が改善していることがあります。慢性痛では、痛みそのものと生活への影響を分けて見ることで、変化を捉えやすくなります。

選んだ尺度は「同じ条件」で再評価できる形にする

尺度を選んだあとに重要なのは、点数だけではなく何を、どの条件で、いつ測ったかを残すことです。同じ尺度を使っていても測定条件が変われば、単純な前後比較が難しくなります。

痛み評価で最低限そろえたい記録
確認項目 記録例 目的
尺度 NRS、FPS-R、PAINAD、DN4、PDAS など 何を使った結果か明確にする
測定条件 安静時、歩行時、移乗時、ケア時など 前回と同じ条件で比較する
測定時点 介入前後、鎮痛前後、翌日など 変化の意味を判断しやすくする
補足情報 部位、行動、生活への影響など 数字だけでは分からない変化を残す

痛みの強さを測る具体的な手順や、NRS・VAS・VRS の基本的な運用は、記事末の関連記事で詳しく確認できます。

痛み評価スケールの記録シート PDF

対象別の使い分けを実際の記録へ落とし込むために、条件、主尺度、補助尺度、代表的な行動、共有事項までを 1 枚で整理できる A4 記録シートを用意しています。

尺度を選んで終わるのではなく、同じ条件で再評価し、多職種で判断根拠を共有するための記録として活用できます。

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よくある失敗:尺度の役割を混ぜない

痛み評価でブレやすいのは、尺度そのものを知らない場合だけではありません。自己申告尺度・観察尺度・スクリーニング・生活影響評価の役割を混同することでも、評価結果を次の判断につなげにくくなります。

痛み評価スケール選択でよくある失敗と修正方法
よくある失敗 何が問題か 判断の修正
認知症だから最初から観察尺度にする 自己申告できる患者の主観的な痛みを拾いにくい まず本人が自己申告できるか確認する
DN4 を測ったので強さ評価をやめる 神経障害性の可能性と痛みの強さを混同する 必要な場合は別の評価目的として確認する
慢性痛を強さだけで追う 生活・活動の改善を捉えにくい BPI / PDAS など生活影響の評価を検討する
毎回違う尺度・条件で測る 前後差を比較しにくい 同じ目的では尺度と測定条件をできるだけ固定する

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

NRS と VAS はどちらを選べばよいですか?

成人で数字による自己申告が可能なら、NRS は日常臨床で反復しやすい選択肢です。VAS や VRS も痛みの強さを測る尺度なので、患者の回答しやすさや施設の運用に合わせて選び、再評価では同じ尺度と条件を維持します。

FPS-R は何歳から使えますか?

年齢だけで使用可否を決めず、説明を理解して自分の痛みの強さを選べるかを確認することが重要です。FPS-R は小児の自己申告尺度として使用されますが、自己申告が難しい場合は対象に合った行動観察尺度を検討します。

認知症なら PAINAD を使えばよいですか?

認知症があっても自己申告できる場合は、まず本人の訴えを活用します。自己申告が難しくなった場合に、認知症の状態や施設の運用に合った観察尺度を検討します。観察尺度の低スコアだけで痛みなしとは判断しません。

DN4 と NRS はどちらか一方でよいですか?

評価する目的が異なります。NRS は主に痛みの強さを数値化し、DN4 は神経障害性疼痛の可能性を整理するために使います。必要な場合はそれぞれを別の情報として評価します。

BPI と PDAS は NRS の代わりになりますか?

単純な置き換えとして考えるより、何を知りたいかで選びます。BPI は痛みの強さと生活への干渉の両方を扱い、PDAS は痛みに伴う日常生活上の障害を評価します。慢性痛では、強さだけでなく生活への影響も確認することが重要です。

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参考文献

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著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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