危険因子評価票の書き方|褥瘡計画への反映・PT記録例【PDF付】

臨床手技・プロトコル
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危険因子評価票は「判定後に看護計画へ反映する」ところまでが重要です

厚生労働省の「褥瘡対策に関する診療計画書」では、危険因子の評価で「できない」または「あり」が1つ以上ある場合、看護計画を立案して実施する形になっています。このページでは、8項目そのものの判定方法ではなく、評価後に何を計画へ反映し、PTはどの情報を具体化して共有するかを整理します。

対象は、危険因子評価票を病棟で運用するPTを中心とした医療従事者です。公式様式で求められること、自施設で決める運用ルール、PTが多職種へ伝える記録内容を分けることで、評価票を「記入して終わり」にせず、患者ごとの対策と再評価までつなげられるようにします。

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結論:評価 → 計画 → 具体化 → 共有 → 再評価で回します

危険因子評価票は、該当項目を確認して終わるものではありません。危険因子を患者ごとの対処へ変換し、計画を実施し、状態変化に応じて見直せる状態にすることが重要です。

厚生労働省の様式では、ベッド上での自力体位変換、イス上での座位姿勢の保持・除圧、病的骨突出、関節拘縮、栄養状態低下、皮膚湿潤、浮腫、スキンテアの保有・既往などを確認します。各項目の具体的な判定方法は、この記事では深掘りせず、評価後の運用に絞ります。

  1. 危険因子を評価する:公式様式に沿って該当項目を確認する。
  2. 必要な計画へ反映する:危険因子のある患者について、患者ごとの対処を計画する。
  3. PT所見を具体化する:姿勢、動作、支持面、移乗、離床などを病棟で再現できる条件へ変換する。
  4. 多職種で実施・共有する:必要な職種が同じ対応を行えるように情報をそろえる。
  5. 状態変化に応じて再評価する:皮膚所見や動作能力、介助方法などの変化を確認し、必要な計画を見直す。

「何がリスクか → 何をするか → どう実施するか → 何を見直すか」が追える状態にすることが、このページで目指す運用です。

公式で決まること・院内で決めること・患者ごとに決めることを分けます

危険因子評価票を院内へ実装するときに最も注意したいのは、厚生労働省が示す事項と、自施設で決めるルール、患者ごとの具体策を混同しないことです。評価する時間や電子カルテ上の記録場所、職種間の連絡方法などは、自施設の体制に合わせて整理します。

危険因子評価票の評価後の流れと、公式・院内・患者ごとの役割分担を示した図版
危険因子評価後は、公式上必要な計画と院内ルール、患者ごとの具体策を分けて整理します。
危険因子評価票で整理しておきたい3つの区分
区分 確認・設定する内容
公式で確認すること 危険因子の評価、該当時の看護計画の立案・実施、患者ごとの褥瘡対策に関する診療計画
院内で決めること 評価するタイミング、電子カルテ上の記録場所、結果の共有方法、職種間の連絡方法
患者ごとに決めること 体位、支持面、座位条件、介助方法、除圧方法、観察項目などの具体策

たとえば「全患者を一律の時間で体位変換する」「すべての患者の座位時間を同じにする」と固定するのではなく、皮膚状態、自力体位変換・除圧能力、支持面、活動性、疼痛などを踏まえて患者ごとに具体策を設定し、その後の状態を確認します。

PTは危険因子を「病棟で再現できる条件」へ具体化します

PTが特に関わりやすいのは、ベッド上での体位変換、座位姿勢の保持・除圧、拘縮、骨突出、移乗や離床に伴う圧・ずれです。褥瘡対策の診療計画そのものをPTだけで作成・評価するのではなく、身体機能と動作の評価結果を、多職種が病棟で再現できる情報へ変換します。

危険因子からPTが共有する情報への変換例
危険因子・所見 PTが確認すること 共有する内容の例
自力体位変換が困難 寝返り能力、介助量、疼痛、使用できる上肢・下肢 自力で可能な方向、必要な介助、保持しやすい姿勢、避けたい姿勢
座位保持・除圧が困難 骨盤・体幹姿勢、座面との接触、自力での姿勢修正能力 座面・足台・背支持の条件、姿勢修正方法、介助が必要な場面
病的骨突出 圧が集中しやすい部位、姿勢との関係、使用している支持面 圧集中を避ける姿勢、クッション等の配置、移乗時の注意点
関節拘縮 可動域、疼痛、姿勢保持を妨げる関節制限 安全に保持できる肢位、無理な矯正を避ける範囲、介助方法
動作時にずれが生じる ベッド上移動、起き上がり、移乗時の身体の滑り ずれが生じる動作、介助位置、福祉用具や介助手順

PTの役割は、単に「ポジショニングを行った」「離床した」と記録することではありません。誰が介助しても同じ条件を再現しやすいところまで具体化することで、評価結果を病棟ケアへつなげやすくなります。

記載例:所見だけでなく対応と確認項目まで残します

「除圧が必要」「ポジショニングを行う」だけでは、実施者によって方法が変わる可能性があります。PTの記録では、現在の問題・具体的な対応・確認する項目が分かる形にすると、多職種で共有しやすくなります。

危険因子評価後のPT記録・共有文例
場面 記録例
ベッド上 自力での寝返りは困難。右側臥位は疼痛が強く保持困難であり、左側臥位では介助後の姿勢保持が可能。骨突出部の皮膚状態を確認しながら、病棟と保持方法を共有する。
車椅子座位 骨盤後傾と前方滑りがみられ、自力での座り直しは困難。座面・足台・背支持を調整し、ずれと皮膚所見を確認しながら座位条件を再評価する。
移乗 ベッドから車椅子への移乗時に殿部の引きずりが生じる。介助位置と移乗方法を変更し、病棟スタッフと手順を共有する。
拘縮 股・膝関節の可動域制限により安定した側臥位保持が困難。疼痛のない範囲で支持物を調整し、無理な矯正を行わないポジショニング方法を共有する。

これらは厚生労働省が示した定型文ではなく、PTが評価結果を多職種へ共有するときの記載例です。患者の状態と自施設の記録方法に合わせて調整してください。

院内運用では「誰が確認し、どこへ残し、何をきっかけに見直すか」を決めます

公式様式だけでは、電子カルテ内の記録位置や職種間の連絡方法までは決まりません。院内では、少なくとも次の4点を共通化しておくと、評価票だけが残って実際の計画につながらない状態を防ぎやすくなります。

  • 誰が評価結果を確認するか:褥瘡対策チームや病棟内の役割分担を明確にする。
  • どこへ記録するか:診療計画書、看護計画、経過記録など、自施設で使用する記録場所を統一する。
  • 誰へ共有するか:看護、医師、PT・OT、管理栄養士、薬剤師など、該当する問題に応じて必要な職種へつなぐ。
  • 何をきっかけに見直すか:皮膚所見、動作能力、栄養状態、支持面、介助方法などの変化を再評価の契機として決める。

「○時間後に必ず再評価する」と一律に固定するより、患者の状態変化を拾い、必要な計画を更新できる仕組みにしておくことが重要です。

よくある失敗は「評価票と実際のケアがつながっていない」ことです

危険因子評価票が適切に記入されていても、患者ごとの計画や実際のケアへ反映されていなければ運用は完結しません。特に、評価後の具体化と計画の見直しが抜けていないか確認します。

危険因子評価票の運用で起こりやすい失敗と見直し方
失敗 問題 見直し方
評価票だけ記入する 危険因子が実際の計画へ反映されない 該当項目と必要な対処・計画を対応させる
全員に同じ計画を書く 患者ごとの危険因子や身体機能が反映されない 危険因子と現在の状態から具体策を決める
「除圧」「体位変換」だけを書く 実施者によって方法が変わりやすい 姿勢、介助方法、支持面など必要な条件を具体化する
変化しても計画を見直さない 現在の状態と記録内容が一致しなくなる 皮膚・動作・栄養・介助方法等の変化を契機に再評価する

院内点検では「評価したか」だけでなく計画と個別性まで確認します

褥瘡対策に関する施設基準の確認では、危険因子評価票が存在するだけでなく、危険因子のある患者について必要な診療計画が作成され、患者ごとの状態に応じた内容になっているかを確認することが重要です。

危険因子評価から計画までを確認する院内チェック例
確認項目 確認すること
危険因子評価 必要な項目が評価され、該当する危険因子を確認できる
診療・看護計画 危険因子のある患者について必要な計画が作成されている
個別性 画一的な文章ではなく、患者の状態に応じた内容になっている
多職種連携 栄養、薬学的管理、身体機能など、必要な領域が該当職種と共有されている
実施・評価 計画した内容の実施状況と、その後の患者の状態を追える
見直し 状態変化に応じて計画を見直した経過を確認できる

このチェック表は、厚生労働省や地方厚生(支)局が配布する監査用チェックリストそのものではなく、公式資料で確認されるポイントを踏まえた院内点検用のたたき台です。実際の施設基準への対応では、適用される最新通知や地方厚生(支)局の資料を確認してください。

評価後の流れを整理するA4記録シート

危険因子評価票の結果から、担当者間の共有、対応内容、再評価までを整理したい場合は、A4記録シートを利用できます。公式の「褥瘡対策に関する診療計画書」を置き換えるものではなく、評価後の院内運用を整理するための補助シートとして使用してください。

よくある質問

危険因子が1つだけ該当した場合も看護計画が必要ですか?

厚生労働省の現行様式では、危険因子評価で「できない」または「あり」が1つ以上の場合に、看護計画を立案して実施する形になっています。該当項目数の多さだけで判断せず、該当した危険因子を患者ごとの対処へ反映します。

危険因子評価後の診療計画をPTが作成・評価してよいですか?

褥瘡対策に関する診療計画の作成・評価は、施設基準上の褥瘡対策チームの役割との整合を確認する必要があります。PTは、体位変換、座位・除圧、拘縮、移乗などの評価結果を具体的な対応として多職種へ共有し、患者ごとの褥瘡対策を支える役割として整理すると分かりやすくなります。

体位変換は一律に2時間ごとと書けばよいですか?

時間だけを一律に決めるのではなく、皮膚状態、自力体位変換能力、体圧分散寝具、活動性などを踏まえて患者ごとに検討します。実施後の皮膚所見や姿勢も確認し、必要に応じて方法や間隔を見直します。

PTの記録には何を書けばよいですか?

「ポジショニング実施」だけでなく、問題となる姿勢や動作、必要な介助、支持面の条件、病棟で確認してほしい項目まで記載すると共有しやすくなります。公式上の診療計画と、PTによる具体的な実務記録は役割を分けて考えます。

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参考文献

  1. 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定 褥瘡対策に関する診療計画書. 2026. 厚生労働省資料を確認する
  2. 東海北陸厚生局. 令和6年度に実施した施設基準等に係る適時調査において保険医療機関に改善を求めた主な指摘事項. 資料を確認する
  3. 日本褥瘡学会. 褥瘡の予防について. 日本褥瘡学会サイトを確認する

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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