PTの栄養スクリーニング運用|10分フロー・GLIM・PDF

栄養・嚥下
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栄養スクリーニングを10分で回す運用フロー

結論:栄養スクリーニングは、結果を出して終わりではありません。入口の確認 → スクリーニング → 陽性後の情報整理 → 多職種への共有 → 再評価日の設定までを一連の流れとして決めておくことが重要です。このページでは、PTが病棟・外来・在宅で栄養リスクに気づいたとき、「次に何を確認し、誰へ何を渡すか」を10分の運用テンプレートとして整理します。

ここで示す「10分」は、GLIMなどが定める公式の所要時間ではなく、rehabilikunblogで整理した実務上の運用テンプレートです。MNA-SF、MUST、MST、NRS-2002など、スクリーニングツール自体の選び方や採点方法は栄養スクリーニングの使い分けで詳しく整理しています。

栄養スクリーニングを10分で回す4ステップの運用フロー
栄養スクリーニングは、入口の確認から陽性後の情報整理、多職種共有、再評価日の設定まで一連の流れとして決めておくことが重要です。
配布用の記録シートも使えます

栄養スクリーニングを「入口 → GLIMへの情報整理 → 初期対応」まで1枚で確認できるA4記録シートです。カンファレンス前の共有や、再評価日の記録にも使用できます。

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栄養スクリーニング後まで止めないために決める4点
段階 確認すること 記録すること
入口 食事摂取状況、体重変化、使用するスクリーニングツール 摂取状況 / 体重推移 / 使用ツール
陽性後 GLIMによる評価へ進むために不足している情報 体重減少 / BMI / 筋量 / 摂取・吸収 / 疾患負荷・炎症
初期対応 PTが確認・調整できる条件と、多職種へ相談する内容 食事時の条件 / 活動条件 / 依頼内容・依頼先
再評価 何を、いつ再確認するか 体重 / 摂取状況 / スクリーニング・栄養評価の再確認日

10分フロー|0〜10分で何を確認するか

  • 0〜3分:最近の食事摂取状況と体重変化を確認します。摂取率や欠食だけでなく、「いつから」「どの程度変わったか」を残します。
  • 3〜7分:施設・部署で採用している検証済みの栄養スクリーニングツールを実施します。
  • 7〜9分:栄養リスクが確認された場合は、GLIMで必要となる表現型基準と病因基準のうち、何が確認できていて何が不足しているかを整理します。
  • 9〜10分:その場で確認・調整できること、他職種へ相談すること、次に確認する日を記録します。

GLIMでは、栄養リスクをスクリーニングしたあと、表現型基準の「意図しない体重減少・低BMI・筋肉量減少」と、病因基準の「食事摂取量減少または消化吸収能低下・疾患による負荷または炎症反応」を評価します。低栄養の診断には、表現型と病因からそれぞれ1項目以上が必要です。

現場で止まりやすい4か所を先に決める

運用で重要なのは、スクリーニングを実施すること以上に、陽性後の行動が担当者によって変わらないようにすることです。特に次の4か所は、部署内で記録方法まで決めておくと共有しやすくなります。

栄養スクリーニング運用で止まりやすい点と対応
止まりやすい場面 問題 その場で確認すること 記録例
食事量が曖昧 「食べている」で終わり、変化を追えない 摂取量、欠食、食べ残す内容、いつから変化したかを具体化する 主食○割 / 主菜○割、欠食○回、3日前から低下
陽性後に止まる スクリーニング結果だけが記録される GLIM評価へ進むうえで不足している情報を整理する 不足:体重推移 / 筋量評価 → 栄養担当者へ共有
栄養と活動が別々 摂取状況を確認せず活動量だけを変更する 食事摂取状況、症状、活動量を同じ記録上で確認する 摂取低下あり。疲労を確認しながら活動時間を調整
再評価日がない その後の体重・摂取量の変化を追えない 使用ツール、病期、状態変化、施設ルールに合わせて次回確認日を決める 次回:○/○に体重・摂取状況を再確認

ツールより先に「誰が・いつ・陽性後どうするか」を決める

栄養スクリーニングを継続して回すには、ツール名だけでなく、対象・担当者・実施時期・陽性後の行動をセットで決めます。担当職種や使用ツールは施設によって異なるため、「PTが必ず実施する」と固定する必要はありません。

NRS-2002、MUST、MNA-SFなどは対象や使用場面が異なります。GLIMでも、まず検証済みのスクリーニングツールを使って栄養リスクを確認する流れが示されています。ツールを部署へ導入するときは、名称だけではなく「いつ実施し、結果をどこへ記録し、陽性なら誰へつなぐか」まで決めます。

部署で固定しておきたい栄養スクリーニングの運用項目
決める項目 確認内容 運用例
対象 誰をスクリーニングするか 入院時 / 初回訪問時 / 状態変化時など
担当 誰が実施・記録するか 施設で定めた担当職種
ツール 対象・場面に適した検証済みツール NRS-2002 / MUST / MNA-SFなど
陽性後 誰へ共有し、何を追加確認するか GLIM評価に必要な不足情報を整理して共有
再評価 どの条件で再確認するか 施設基準 / ツールの推奨 / 状態変化に応じて設定

スクリーニング陽性後はGLIMに必要な情報を整理する

スクリーニング陽性は低栄養の確定診断ではありません。次に行うのは、GLIMによる評価へ進めるように「確認済みの情報」と「まだ不足している情報」を分けることです。

GLIMでは、表現型基準3項目と病因基準2項目を評価します。PTがすべてを単独で診断するのではなく、日常の評価で得られた体重推移、身体計測、食事摂取状況、活動時の症状などを整理し、管理栄養士、医師、看護師などへ共有します。

GLIMへつなぐときに整理する情報
GLIMの区分 確認項目 PTが確認・共有しやすい情報 注意点
表現型 意図しない体重減少 過去の体重、変化量、変化した期間 「期間+変化量」で残す
表現型 低BMI 身長・体重、測定条件 推定値の場合は、推定であることと方法を記録する
表現型 筋肉量減少 下腿周囲長など、施設で採用している筋量評価・代理指標 握力や立ち上がり能力などの身体機能と、筋量そのものを混同しない
病因 食事摂取量減少 / 消化吸収能低下 摂取状況、欠食、食欲、食形態、摂取を妨げる症状 原因が未確定なら事実と仮説を分ける
病因 疾患による負荷 / 炎症反応 疾患、急性増悪、発熱など確認できる臨床情報 必要な検査・医学的判断は担当職種へ相談する

GLIMの筋肉量減少については、BIA、DXA、CT、MRI、超音波などによる評価に加え、対象や状況に応じて下腿周囲長などの身体計測を代理指標として用いる方法があります。採用する評価法とカットオフ値は、対象や施設基準を確認して使用します。

初期対応は「確認・調整・共有」の3つに分ける

栄養リスクに気づいたら、PTだけで栄養介入を完結させるのではなく、その場で確認できること、PTとして調整できること、多職種へ相談することを分けます。これにより、スクリーニング結果が記録だけで止まりにくくなります。

栄養スクリーニング後の初期対応
段階 行うこと 記録例
確認 摂取状況、体重変化、食事中の姿勢・疲労・疼痛・呼吸困難、活動状況を確認する 昼食摂取量低下。食事後半に疲労増加あり
調整 安全性と全体の治療計画を確認したうえで、離床や運動を行う時間帯・量・休息などを調整する 疲労を考慮し、活動を短時間に分けて実施
共有 栄養評価や食事内容の調整が必要な情報を担当職種へ伝える 体重減少・摂取低下あり。栄養担当者へ共有、○/○再確認

補食や栄養量などの具体的な栄養介入は、患者の病態や栄養評価を踏まえて多職種で決定します。PTの記事としては、「補食1回」「立位3回」のような固定処方ではなく、摂取状況と活動量を同時に確認して連携することを共通の型として持つ方が安全です。

再評価は「頻度」より次に確認する日と項目を決める

再評価で重要なのは、一律に「何週間後」と決めることではなく、何を、どの条件で、いつ確認し直すかを記録することです。

再スクリーニングの時期は、使用するツール、施設の運用、病期、栄養状態の変化によって異なります。急激な摂取量低下や体重変化、疾患の増悪などがあれば、予定日を待たずに再確認します。

再評価時に確認する項目
確認項目 見る変化 記録例
体重 前回からの増減と測定条件 ○/○ 48.2kg → ○/○ 47.6kg
摂取状況 摂取量・欠食・食欲などの変化 主食5割 → 8割へ改善
身体所見 施設で追跡している身体計測・活動状況 下腿周囲長などを同じ条件で再測定
次回評価 再スクリーニングまたは栄養評価の予定 次回確認:○/○

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。

スクリーニング陽性のあと、PTは何をすればよいですか?

まず、スクリーニング結果を低栄養の確定診断として扱わず、GLIM評価へ進むために必要な情報を整理します。体重減少、BMI、筋量、摂取・吸収、疾患負荷・炎症について「分かっていること」と「不足していること」を分け、必要な情報を担当職種へ共有します。

握力が低ければGLIMの「筋肉量減少」に該当しますか?

握力は筋力・身体機能をみる指標であり、GLIMの「筋肉量減少」とそのまま同一には扱いません。GLIMの筋量評価にはBIA、DXA、画像評価のほか、対象や状況に応じて下腿周囲長などの身体計測を代理指標として用いる方法があります。施設で採用する評価法と、対象に合った基準を確認してください。

採血やBIAがなくても、栄養スクリーニングは進められますか?

栄養スクリーニングとGLIMによる低栄養診断は分けて考えます。まず検証済みのスクリーニングツールで栄養リスクを確認し、陽性後にGLIM評価へ必要な情報をそろえます。筋量についてもBIAだけでなく、対象に応じて身体計測などの代理指標を検討できます。確認できない情報は推測せず、不足情報として記録します。

再スクリーニングは何週間ごとに行えばよいですか?

すべての患者に共通する「○週間ごと」という周期ではなく、使用ツール、施設の運用、病期、状態変化に応じて設定します。重要なのは、「いつか再評価する」で終わらせず、次に確認する項目と日付を記録することです。摂取量や体重、病態が変化した場合は予定日を待たずに再確認します。

次の一手

栄養スクリーニングを含むリハ栄養全体の進め方を整理したい場合は、リハ栄養の進め方へ戻ります。スクリーニング陽性後にGLIMの診断・重症度判定・記録まで進める場合は、GLIM基準の使い方で確認できます。


参考文献

  1. Kondrup J, Allison SP, Elia M, Vellas B, Plauth M. ESPEN guidelines for nutrition screening 2002. Clin Nutr. 2003;22(4):415-421. doi: 10.1016/S0261-5614(03)00098-0
  2. Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition – A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. PubMed
  3. Jensen GL, Cederholm T, Correia MITD, et al. The GLIM consensus approach to diagnosis of malnutrition: A 5-year update. Clin Nutr. 2025;49:11-20. PubMed
  4. 日本栄養治療学会. GLIM基準について. 公式資料
  5. 日本栄養治療学会. 筋肉量減少の判定に使用する評価法とカットオフ値. 公式資料
  6. BAPEN. ‘MUST’ Explanatory Booklet. PDF
  7. MNA®-SF User Guide. PDF

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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