MMT(徒手筋力テスト)のやり方・評価・書き方| 0–5 基準と標準化フロー

評価
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MMT(徒手筋力テスト)の評価とは?|やり方・書き方まで“再現性”をそろえる

MMT(徒手筋力テスト)は、筋力を 0–5 の 6 段階で評価する基本スケールです。ポイントは「測って終わり」にせず、標準肢位・近位固定・重力条件・抵抗のかけ方をそろえて、経時比較と多職種共有に耐える形で残すことです。痛みや術後制限がある場合は、重力除去位から安全に開始し、無理にグレードを決めない判断も含めて運用します。

本記事は、手順(標準化フロー)と記録(カルテ記載)をセットにして、「誰が測っても同じ結論に寄る」ための型をまとめます。評価全体の整理は 評価ハブ から引けるようにしておくと、他指標との組み合わせも迷いにくくなります。

評価の“型”をそろえると、指導も再評価もラクになります。 理学療法士のキャリアガイドを見る

まずここだけ( 1 分サマリー)

  • MMT は 0–5 の 6 段階評価3 を境に「重力位/重力除去位」で条件を分けます。
  • 抵抗は 遠位に等尺で漸増し 3 秒保持(瞬発的に弾かない)。
  • 近位固定を最優先。代償が出たら判定を急がず、条件をメモします。
  • 左右は交互に 2–3 回、「右 4 /5・左 5 /5」のように左右別で記録します。
  • 痛み・痙縮・循環が不安定なら 重力除去位から始め、必要に応じて別指標も検討します。

グレード( 0–5 )の基準と覚え方| 3 を境に条件が分かれる

MMT は 0–5 の 6 段階で、「重力に抗して動けるか( 3 が閾値 )」・「可動域( ROM )」・「抵抗に耐える強さ」の 3 観点で判定します。新人教育では、まず0→5 の流れを固定し、次に「 3 を境に重力条件が変わる」点を繰り返し確認すると定着が早くなります。

MMT グレードの定義(成人・ 2026 年版)
グレード 重力条件 ROM 抵抗 判定の要点
5重力位全可動域最大最大抵抗でも肢位・運動が崩れない
4重力位全可動域中等度中等度は保持できるが最大で崩れる
3重力位全可動域なし重力に抗して動けるが抵抗は付与しない
2重力除去位全可動域なし重力を外すと全可動域で動ける
1なしなし触知または視認できる収縮のみ
0なしなし収縮を認めない

MMT 評価の原則(やり方の基本)|固定・代償・重力・抵抗をそろえる

MMT の再現性は「筋力」よりも条件設定で決まります。① 標準肢位(毎回同じ姿勢・関節角度)を再現し、② 近位固定(代償を抑える位置)を徹底し、③ 重力条件( 3 以上 = 重力位、 2 以下 = 重力除去位)を守ります。抵抗は遠位部に 等尺で段階的に 3 秒かけ、瞬間的に強く弾くのは避けます。

評価前に自動 → 必要に応じて他動で ROM を確認し、痛み・痙縮が強いときは無理にグレードを確定させません。条件を整えたうえで「どこで崩れたか」を残すと、次回の再評価が速くなります。

MMT 測定手順(標準化フロー 5 ステップ)

  1. 前準備:目的を説明し同意を得る。疼痛・バイタル・術後制限を確認。
  2. セットアップ:筋ごとの標準肢位をセットし、近位部をしっかり固定。
  3. ROM 確認:自動 → 必要なら他動で可動域制限と痛みの出方を把握。
  4. 条件分岐:重力に抗して全可動域が可能かを確認し、 3 以上なら重力位、難しければ 2 以下として重力除去位で実施。
  5. 抵抗付与:遠位へ等尺抵抗を漸増し 3 秒保持。左右交互に 2–3 回行い、最良の反応を採用。

声かけ・採点ルール(統一スクリプト)

声かけを統一すると、患者も測定者もペースをつかみやすくなります。例:「今の姿勢で、できる範囲で動かしてください → ありがとうございます。では押し返してください。 3 秒キープします。」のように、毎回同じスクリプトで進めます。

採点は、① ROM が満たせたか② 重力に抗したか③ 抵抗にどれだけ耐えたかの順に判断します。呼吸を止めないよう声かけし、抵抗は合図からゆっくり増やし、介助は最小限にします。

代表筋の標準プロトコル(姿勢・固定・抵抗)

主要筋の測定プロトコル早見(成人・ 2026 年版)
筋(動作) 標準肢位 近位固定 抵抗の位置 重力除去位の例 判定メモ
三角筋(肩外転) 端座位・肩 90° 外転 肩甲帯(肩峰下周辺) 上腕遠位外側 仰臥位・水平面外転 僧帽筋代償・体幹側屈に注意
上腕二頭筋(肘屈曲) 座位・肘 90°・前腕回外 上腕近位 前腕遠位掌側 台上で前腕滑走(摩擦低減) 回内で腕橈骨筋代償を区別
上腕三頭筋(肘伸展) 背臥位・肩 90° 屈曲・肘伸展 上腕近位背側 前腕遠位背側 側臥位で水平面伸展 肩内外旋の代償を抑制
手関節伸筋(手関節伸展) 座位・前腕回内・手関節 0–30° 背屈 前腕遠位背側 第 2–3 中手骨遠位背側 前腕を台上で滑走 指伸展代償(腱連結)に注意
腸腰筋(股屈曲) 端座位・股 90° 骨盤( ASIS 周辺 ) 大腿遠位前面 側臥位で水平面屈曲 体幹後傾・骨盤挙上の代償
大腿四頭筋(膝伸展) 端座位・膝 90° 大腿遠位 下腿遠位前面 側臥位で水平面伸展 股外旋・体幹後傾の代償
前脛骨筋(足関節背屈) 長座位・足関節 0° 下腿遠位 第 1 中足骨背内側 側臥位で水平面背屈 外がえし過多・長母趾伸筋代償
下腿三頭筋(足関節底屈) 立位カーフレイズ(可能なら) 側臥位で水平面底屈 立位で回数・左右差を補助判断
中殿筋(股外転) 側臥位・股中間位 骨盤外側(腸骨稜周辺) 大腿遠位外側 仰臥位・水平面外転 骨盤挙上・体幹側屈の代償を抑制
ハムストリングス(膝屈曲) 伏臥位・膝 約 90° 大腿近位背側 下腿遠位背側 側臥位で水平面屈曲 股内外旋の代償・共同運動に注意

重力除去位の作り方(やり方のコツ)|“水平面”へ変換して摩擦を減らす

Grade 3 が難しい場合は、重力除去位を正しく作ることが重要です。肩外転・股外転は 側臥位で水平面の動きに変換し、肘屈伸・膝伸展は 側臥位で肢を支持して摩擦を減らします。手関節は 前腕を台に乗せて滑走させると、手技の教育にも使いやすくなります。末梢はタオルをスライダー代わりにして、痛みや疲労を抑えましょう。

禁忌・中止基準と注意点( OK / NG )

MMT 評価の安全管理早見(成人・ 2026 年版)
項目 OK NG / 中止
痛み・炎症軽度痛みは範囲内で調整強い疼痛・術直後・不安定関節は中止
循環安定したバイタル下で実施起立性低血圧・不整脈悪化・胸部症状
神経痙縮は緩徐な誘導で低減誘発で痙攣リスクが高い場合は中止
創部・感染創部は清潔保持・圧回避創部直上への強い抵抗・牽引は避ける
文書化姿勢・固定・抵抗・左右を明記条件未記載での経時比較は避ける

MMT のカルテ記載・書き方(コピペ用)|左右・条件・所見を 1 行で

MMT は「スコア」だけだと再現性が落ちます。左右差・条件・所見まで一行で読めるように書くと情報共有がスムーズです。以下の型をそのまま使ってください。

  • 例 1:大腿四頭筋:右 4 /5・左 5 /5。疼痛 0 /10。姿勢 = 端座位、固定 = 大腿遠位、抵抗 = 下腿遠位へ等尺 3 秒 × 2。ROM 確認済。代償なし。
  • 例 2:前脛骨筋:右 3 /5・左 3 /5。重力位で全 ROM 可、抵抗は付与せず。代償(外がえし)あり → 固定調整後に再評価。
  • 例 3:股外転:右 2 /5。重力除去位(側臥位)で全 ROM 可。疼痛で重力位は未実施。

略号の例:pos(姿勢)、stab(固定)、res(抵抗位置)、GE(重力除去位)などを施設内で決めておくと、記載が短くなっても情報量を落としにくくなります。

現場の詰まりどころ|判定がズレる 5 つの失敗

MMT がブレる典型パターン(原因 → 対策)
よくある失敗 起きること 対策(先にやる順)
近位固定が甘い 関節が逃げてスコアが上下する 固定位置を先に決め、代償が出たら判定保留
抵抗方向がずれる 対象筋ではなく別ラインで勝負になる 運動方向の真逆に抵抗、遠位で等尺を守る
いきなり最大抵抗 反射的に崩れて 4 扱いになりやすい 中等度 → 強へ漸増、 3 秒保持で確認
代償を見落とす “できているように見える” 体幹・肩すくめ・骨盤挙上を先にチェック
疼痛・恐怖が強い 出力が止まり筋力低下と誤認 重力除去位へ切替、疼痛条件を記載して追う

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

MMT は 0–5 の何段階評価ですか?

MMT(徒手筋力テスト)は 0–5 の 6 段階評価です。まずは「 3 を境に重力位/重力除去位が分かれる」ことを押さえると整理しやすくなります。

MMT の“やり方”で最低限そろえたいポイントは?

① 標準肢位、② 近位固定、③ 重力条件( 3 以上 = 重力位、 2 以下 = 重力除去位 )、④ 抵抗(遠位・等尺・漸増・ 3 秒保持)の 4 点です。これを揃えると測定者が変わっても解釈がしやすくなります。

Grade 4 と 5( 4+ / 5- )で迷います。

迷いが出やすい帯なので、判断手順と記載例を別記事にまとめました。MMT 4 と 5 の違い|判定ブレを減らす手順・記載例を先に確認すると、固定・代償・抵抗の整え方まで一気に揃います。

痙縮や痛みが強くて MMT がうまくできません。

無理にグレードを決めず、重力除去位での反応や、疼痛条件を明記して経時で追います。痛みが強い場合は「疼痛で最大抵抗不可」など条件を残すことが、次回の再評価に直結します。

次の一手(次に読む)

参考文献

  1. Hislop HJ, Montgomery J, Connolly B. Daniels and Worthingham’s Muscle Testing: Techniques of Manual Examination and Performance Testing.
  2. Kendall FP, McCreary EK, Provance PG, et al. Muscles: Testing and Function with Posture and Pain.
  3. Bohannon RW. Manual muscle testing: does it meet the standards of an adequate screening test? Clin Rehabil. 2005;19(6):662-667. doi: 10.1191/0269215505cr873oa(PubMed: 16180603
  4. Wadsworth CT, Krishnan R, Sear M, Harrold J, Nielsen DH. Intrarater reliability of manual muscle testing and hand-held dynametric muscle testing. Phys Ther. 1987;67(9):1342-1347. doi: 10.1093/ptj/67.9.1342(PubMed: 3628487

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級
  • 3 学会合同呼吸療法認定士

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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