- MMT(徒手筋力テスト)の評価とは?|やり方・書き方まで“再現性”をそろえる
- グレード( 0–5 )の基準と覚え方| 3 を境に条件が分かれる
- MMT 評価の原則(やり方の基本)|固定・代償・重力・抵抗をそろえる
- MMT 測定手順(標準化フロー 5 ステップ)
- 声かけ・採点ルール(統一スクリプト)
- 代表筋の標準プロトコル(姿勢・固定・抵抗)
- 重力除去位の作り方(やり方のコツ)|“水平面”へ変換して摩擦を減らす
- 禁忌・中止基準と注意点( OK / NG )
- MMT のカルテ記載・書き方(コピペ用)|左右・条件・所見を 1 行で
- 現場の詰まりどころ|判定がズレる 5 つの失敗
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手(次に読む)
- 参考文献
- 著者情報
MMT(徒手筋力テスト)の評価とは?|やり方・書き方まで“再現性”をそろえる
MMT(徒手筋力テスト)は、筋力を 0–5 の 6 段階で評価する基本スケールです。ポイントは「測って終わり」にせず、標準肢位・近位固定・重力条件・抵抗のかけ方をそろえて、経時比較と多職種共有に耐える形で残すことです。痛みや術後制限がある場合は、重力除去位から安全に開始し、無理にグレードを決めない判断も含めて運用します。
本記事は、手順(標準化フロー)と記録(カルテ記載)をセットにして、「誰が測っても同じ結論に寄る」ための型をまとめます。評価全体の整理は 評価ハブ から引けるようにしておくと、他指標との組み合わせも迷いにくくなります。
評価の“型”をそろえると、指導も再評価もラクになります。 理学療法士のキャリアガイドを見る
まずここだけ( 1 分サマリー)
- MMT は 0–5 の 6 段階評価。3 を境に「重力位/重力除去位」で条件を分けます。
- 抵抗は 遠位に等尺で漸増し 3 秒保持(瞬発的に弾かない)。
- 近位固定を最優先。代償が出たら判定を急がず、条件をメモします。
- 左右は交互に 2–3 回、「右 4 /5・左 5 /5」のように左右別で記録します。
- 痛み・痙縮・循環が不安定なら 重力除去位から始め、必要に応じて別指標も検討します。
グレード( 0–5 )の基準と覚え方| 3 を境に条件が分かれる
MMT は 0–5 の 6 段階で、「重力に抗して動けるか( 3 が閾値 )」・「可動域( ROM )」・「抵抗に耐える強さ」の 3 観点で判定します。新人教育では、まず0→5 の流れを固定し、次に「 3 を境に重力条件が変わる」点を繰り返し確認すると定着が早くなります。
| グレード | 重力条件 | ROM | 抵抗 | 判定の要点 |
|---|---|---|---|---|
| 5 | 重力位 | 全可動域 | 最大 | 最大抵抗でも肢位・運動が崩れない |
| 4 | 重力位 | 全可動域 | 中等度 | 中等度は保持できるが最大で崩れる |
| 3 | 重力位 | 全可動域 | なし | 重力に抗して動けるが抵抗は付与しない |
| 2 | 重力除去位 | 全可動域 | なし | 重力を外すと全可動域で動ける |
| 1 | — | なし | なし | 触知または視認できる収縮のみ |
| 0 | — | なし | なし | 収縮を認めない |
MMT 評価の原則(やり方の基本)|固定・代償・重力・抵抗をそろえる
MMT の再現性は「筋力」よりも条件設定で決まります。① 標準肢位(毎回同じ姿勢・関節角度)を再現し、② 近位固定(代償を抑える位置)を徹底し、③ 重力条件( 3 以上 = 重力位、 2 以下 = 重力除去位)を守ります。抵抗は遠位部に 等尺で段階的に 3 秒かけ、瞬間的に強く弾くのは避けます。
評価前に自動 → 必要に応じて他動で ROM を確認し、痛み・痙縮が強いときは無理にグレードを確定させません。条件を整えたうえで「どこで崩れたか」を残すと、次回の再評価が速くなります。
MMT 測定手順(標準化フロー 5 ステップ)
- 前準備:目的を説明し同意を得る。疼痛・バイタル・術後制限を確認。
- セットアップ:筋ごとの標準肢位をセットし、近位部をしっかり固定。
- ROM 確認:自動 → 必要なら他動で可動域制限と痛みの出方を把握。
- 条件分岐:重力に抗して全可動域が可能かを確認し、 3 以上なら重力位、難しければ 2 以下として重力除去位で実施。
- 抵抗付与:遠位へ等尺抵抗を漸増し 3 秒保持。左右交互に 2–3 回行い、最良の反応を採用。
声かけ・採点ルール(統一スクリプト)
声かけを統一すると、患者も測定者もペースをつかみやすくなります。例:「今の姿勢で、できる範囲で動かしてください → ありがとうございます。では押し返してください。 3 秒キープします。」のように、毎回同じスクリプトで進めます。
採点は、① ROM が満たせたか → ② 重力に抗したか → ③ 抵抗にどれだけ耐えたかの順に判断します。呼吸を止めないよう声かけし、抵抗は合図からゆっくり増やし、介助は最小限にします。
代表筋の標準プロトコル(姿勢・固定・抵抗)
| 筋(動作) | 標準肢位 | 近位固定 | 抵抗の位置 | 重力除去位の例 | 判定メモ |
|---|---|---|---|---|---|
| 三角筋(肩外転) | 端座位・肩 90° 外転 | 肩甲帯(肩峰下周辺) | 上腕遠位外側 | 仰臥位・水平面外転 | 僧帽筋代償・体幹側屈に注意 |
| 上腕二頭筋(肘屈曲) | 座位・肘 90°・前腕回外 | 上腕近位 | 前腕遠位掌側 | 台上で前腕滑走(摩擦低減) | 回内で腕橈骨筋代償を区別 |
| 上腕三頭筋(肘伸展) | 背臥位・肩 90° 屈曲・肘伸展 | 上腕近位背側 | 前腕遠位背側 | 側臥位で水平面伸展 | 肩内外旋の代償を抑制 |
| 手関節伸筋(手関節伸展) | 座位・前腕回内・手関節 0–30° 背屈 | 前腕遠位背側 | 第 2–3 中手骨遠位背側 | 前腕を台上で滑走 | 指伸展代償(腱連結)に注意 |
| 腸腰筋(股屈曲) | 端座位・股 90° | 骨盤( ASIS 周辺 ) | 大腿遠位前面 | 側臥位で水平面屈曲 | 体幹後傾・骨盤挙上の代償 |
| 大腿四頭筋(膝伸展) | 端座位・膝 90° | 大腿遠位 | 下腿遠位前面 | 側臥位で水平面伸展 | 股外旋・体幹後傾の代償 |
| 前脛骨筋(足関節背屈) | 長座位・足関節 0° | 下腿遠位 | 第 1 中足骨背内側 | 側臥位で水平面背屈 | 外がえし過多・長母趾伸筋代償 |
| 下腿三頭筋(足関節底屈) | 立位カーフレイズ(可能なら) | — | — | 側臥位で水平面底屈 | 立位で回数・左右差を補助判断 |
| 中殿筋(股外転) | 側臥位・股中間位 | 骨盤外側(腸骨稜周辺) | 大腿遠位外側 | 仰臥位・水平面外転 | 骨盤挙上・体幹側屈の代償を抑制 |
| ハムストリングス(膝屈曲) | 伏臥位・膝 約 90° | 大腿近位背側 | 下腿遠位背側 | 側臥位で水平面屈曲 | 股内外旋の代償・共同運動に注意 |
重力除去位の作り方(やり方のコツ)|“水平面”へ変換して摩擦を減らす
Grade 3 が難しい場合は、重力除去位を正しく作ることが重要です。肩外転・股外転は 側臥位で水平面の動きに変換し、肘屈伸・膝伸展は 側臥位で肢を支持して摩擦を減らします。手関節は 前腕を台に乗せて滑走させると、手技の教育にも使いやすくなります。末梢はタオルをスライダー代わりにして、痛みや疲労を抑えましょう。
禁忌・中止基準と注意点( OK / NG )
| 項目 | OK | NG / 中止 |
|---|---|---|
| 痛み・炎症 | 軽度痛みは範囲内で調整 | 強い疼痛・術直後・不安定関節は中止 |
| 循環 | 安定したバイタル下で実施 | 起立性低血圧・不整脈悪化・胸部症状 |
| 神経 | 痙縮は緩徐な誘導で低減 | 誘発で痙攣リスクが高い場合は中止 |
| 創部・感染 | 創部は清潔保持・圧回避 | 創部直上への強い抵抗・牽引は避ける |
| 文書化 | 姿勢・固定・抵抗・左右を明記 | 条件未記載での経時比較は避ける |
MMT のカルテ記載・書き方(コピペ用)|左右・条件・所見を 1 行で
MMT は「スコア」だけだと再現性が落ちます。左右差・条件・所見まで一行で読めるように書くと情報共有がスムーズです。以下の型をそのまま使ってください。
- 例 1:大腿四頭筋:右 4 /5・左 5 /5。疼痛 0 /10。姿勢 = 端座位、固定 = 大腿遠位、抵抗 = 下腿遠位へ等尺 3 秒 × 2。ROM 確認済。代償なし。
- 例 2:前脛骨筋:右 3 /5・左 3 /5。重力位で全 ROM 可、抵抗は付与せず。代償(外がえし)あり → 固定調整後に再評価。
- 例 3:股外転:右 2 /5。重力除去位(側臥位)で全 ROM 可。疼痛で重力位は未実施。
略号の例:pos(姿勢)、stab(固定)、res(抵抗位置)、GE(重力除去位)などを施設内で決めておくと、記載が短くなっても情報量を落としにくくなります。
現場の詰まりどころ|判定がズレる 5 つの失敗
| よくある失敗 | 起きること | 対策(先にやる順) |
|---|---|---|
| 近位固定が甘い | 関節が逃げてスコアが上下する | 固定位置を先に決め、代償が出たら判定保留 |
| 抵抗方向がずれる | 対象筋ではなく別ラインで勝負になる | 運動方向の真逆に抵抗、遠位で等尺を守る |
| いきなり最大抵抗 | 反射的に崩れて 4 扱いになりやすい | 中等度 → 強へ漸増、 3 秒保持で確認 |
| 代償を見落とす | “できているように見える” | 体幹・肩すくめ・骨盤挙上を先にチェック |
| 疼痛・恐怖が強い | 出力が止まり筋力低下と誤認 | 重力除去位へ切替、疼痛条件を記載して追う |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
MMT は 0–5 の何段階評価ですか?
MMT(徒手筋力テスト)は 0–5 の 6 段階評価です。まずは「 3 を境に重力位/重力除去位が分かれる」ことを押さえると整理しやすくなります。
MMT の“やり方”で最低限そろえたいポイントは?
① 標準肢位、② 近位固定、③ 重力条件( 3 以上 = 重力位、 2 以下 = 重力除去位 )、④ 抵抗(遠位・等尺・漸増・ 3 秒保持)の 4 点です。これを揃えると測定者が変わっても解釈がしやすくなります。
Grade 4 と 5( 4+ / 5- )で迷います。
迷いが出やすい帯なので、判断手順と記載例を別記事にまとめました。MMT 4 と 5 の違い|判定ブレを減らす手順・記載例を先に確認すると、固定・代償・抵抗の整え方まで一気に揃います。
痙縮や痛みが強くて MMT がうまくできません。
無理にグレードを決めず、重力除去位での反応や、疼痛条件を明記して経時で追います。痛みが強い場合は「疼痛で最大抵抗不可」など条件を残すことが、次回の再評価に直結します。
次の一手(次に読む)
参考文献
- Hislop HJ, Montgomery J, Connolly B. Daniels and Worthingham’s Muscle Testing: Techniques of Manual Examination and Performance Testing.
- Kendall FP, McCreary EK, Provance PG, et al. Muscles: Testing and Function with Posture and Pain.
- Bohannon RW. Manual muscle testing: does it meet the standards of an adequate screening test? Clin Rehabil. 2005;19(6):662-667. doi: 10.1191/0269215505cr873oa(PubMed: 16180603)
- Wadsworth CT, Krishnan R, Sear M, Harrold J, Nielsen DH. Intrarater reliability of manual muscle testing and hand-held dynametric muscle testing. Phys Ther. 1987;67(9):1342-1347. doi: 10.1093/ptj/67.9.1342(PubMed: 3628487)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
- 3 学会合同呼吸療法認定士
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


