ICF(国際生活機能分類)とは?
ICF は 生活機能を「心身機能・身体構造(b/s)」「活動/参加(d)」「環境因子(e)」の 3 軸と修飾子で表す枠組みです。臨床では、活動/参加(d)から記載を始めると目標と介入がぶれません(b/s は手段、d は成果)。本ページは、現場で使える記載手順・修飾子の目安・記録テンプレまで 1 枚に集約しました。関連導線:評価ハブ/MMT/握力・歩行速度(AWGS)
まずここだけ( 1 分サマリー)
- d から書く:活動/参加(d)=ゴール、b/s は手段、e は阻害(−)/促進(+)。
- Performance/Capacity:現実環境での実際(Performance)と標準環境でのできる力(Capacity)を別々に修飾子で表す。
- 修飾子 0–4(%目安):0=0–4%、1=5–24%、2=25–49%、3=50–95%、4=96–100%。8=未特定、9=非該当。
- e 因子:阻害要因は exxx.−n、促進要因は exxx.+n で明記(n は強さ)。
- 再評価:MMT・握力・歩行速度などの客観指標をゴールに紐づけ、同一条件で再検。
ICF の構成(b/s・d・e)
領域 | 内容 | コード例 | 臨床での例 |
---|---|---|---|
心身機能・身体構造(b/s) | 生体機能・解剖構造 | b730(筋力)、b280(痛み)、s750(下肢) | b730 二関節筋の筋力低下、b280 膝痛、s750 大腿四頭筋萎縮 |
活動/参加(d) | 課題遂行と社会参加 | d450(歩く)、d410(体位変換)、d540(更衣) | d450 屋内 10 m 歩行、d540 上衣の着脱 |
環境因子(e) | 物的・人的・制度的環境 | e115(製品・技術)、e355(介助者)、e580(制度) | e115.+2 四点杖が有効、e355.+1 家族介助、e150.−2 段差が阻害 |
ICF 記載の基本(書き順とルール)
- d(活動/参加)から決める:最も達成したい ADL/役割を 1–2 項目に絞る(例:d450 歩く)。
- b/s を整理:その d を妨げる機能/構造を列挙(例:b730 筋力、b710 可動性、b280 痛み)。
- e 因子の仕分け:阻害(−)/促進(+)を分け、強さを仮置き。
- 修飾子を割り当て:Performance と Capacity を 0–4(8=未特定、9=非該当)で評価。
- 計画と指標:SMART/GAS 化し、MMT・握力・歩行速度などの再評価指標を紐づける。
Performance と Capacity の違い
Performance は現実の環境(補助具・家族介助・段差など込み)で「実際にしていること」。Capacity は標準化された条件での「できる力」。同じ d コードでも値が違って当然なので、両方を並記して経過を追います。
修飾子(0–4・8/9)と%目安
値 | 意味 | 目安 | メモ |
---|---|---|---|
0 | 問題なし | 0–4% | 支障なし |
1 | 軽度 | 5–24% | 軽い困難 |
2 | 中等度 | 25–49% | 部分的な困難 |
3 | 重度 | 50–95% | 著しい困難 |
4 | 完全 | 96–100% | ほぼ/全くできない |
8 | 未特定 | — | 情報不足 |
9 | 非該当 | — | その人に該当しない |
環境因子(e)の書き分け
- 阻害要因:
e150.−2
(段差が中等度の阻害) - 促進要因:
e115.+2
(四点杖が中等度の促進) - 同一因子が阻害/促進の両面を持つ場合は別々に記載し、強さ(1–4)を明記。
症例の記載例(短文テンプレ)
目標(d): d450(歩く)屋内 20 m、Performance=3→2、Capacity=2 を目標。
b/s: b730(膝伸展筋力)2、b280(膝痛)1。
e: e115.+2(四点杖)、e150.−2(玄関段差)。
計画: 大腿四頭筋レジスタンス・疼痛コントロール・段差アプローチ訓練。
よくある NG / OK
ミス | NG 例 | 対策(OK) |
---|---|---|
d と b/s の混同 | 「歩けない(b730)」と記載 | できていないのは d450。b/s は原因として別に列挙 |
P/Cap 混在 | d450=3 とだけ記載 | P=3, Cap=2 のように両方を書く |
e 因子の符号抜け | e115=2 | 促進は +、阻害は − を明記(例:e115.+2) |
修飾子の根拠不明 | 感覚で 2 にした | %目安や具体行動(距離・時間)で根拠を添える |
記録テンプレ(コピペ用)
「2025-09-29 ICF 記載:d450(歩く)P=3/Cap=2(屋内 10–20 m、四点杖)。b730=2、b280=1。e115.+2(杖)、e150.−2(玄関段差)。計画=下肢筋力訓練・疼痛コントロール・段差訓練。指標=MMT・歩行速度・NRS。」
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参考
- ICF 概説(WHO 資料):Performance / Capacity、修飾子の定義。
- 施設基準・保険書式に合わせて用語・略号は調整してください。