GNRI 運用プロトコル:病棟・在宅で回す手順と記録テンプレ【PT】

栄養・嚥下
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GNRI 運用プロトコル(目的と全体像)

評価は「実施 → 記録 → 解釈 → 次の介入」までが 1 セット。ブレない運用の型から整えます。 PT キャリアガイドを見る(評価を強みにする)

本記事は GNRI( Geriatric Nutritional Risk Index )を病棟・在宅でどう回すかに特化した運用マニュアルです。採血データの取得 → IBW(理想体重)設定 → GNRI 算出 → リスク判定 → GLIM などの診断枠組みへの接続 → 介入と記録、という一連の流れを、チームで共有できるレベルまで具体化します。

GNRI はスクリーニング指標です。点数そのものよりも「いつ測定し、結果をどう次の一手(評価追加・介入・モニタ)につなげるか」が重要です。本稿では、入退院時・定期フォロー・透析・在宅などのタイミングで同じ手順・同じ記録様式を用いて GNRI を回し、診断( GLIM )と介入(食事・運動・疾病コントロール)へ橋渡しすることをゴールにします。

手順(病棟・在宅での標準フロー)

まず最初に、施設(またはチーム)として「測る日」「 IBW 方式」「記録様式」の 3 点を固定します。ここが揃うと、GNRI は毎回 2〜3 分で回せるようになります。

① 事前に決める 3 つ(運用の土台)

  • 測定タイミング:入退院時、長期入院は 1〜3 か月ごと、在宅は外来や訪問リハの節目など(「いつ測るか」を先に固定)。
  • IBW 方式:BMI 22(身長( m )2× 22 )または Lorentz のどちらかに統一(途中で方式を変えない)。
  • 記録様式:値だけでなく「 IBW 方式」「浮腫/炎症の有無」「次アクション」をセットで残す。

② 実施フロー(採血 → 計算 → 判定 → つなぐ)

  1. 採血・身体計測をそろえる:Alb( g/dL )、身長、体重を取得します。あわせて浮腫・脱水・急性炎症の有無を身体所見と CRP などで確認します( Alb は炎症で動くため)。
  2. IBW を確定する:採用方式( BMI 22 / Lorentz )を明記し、経時比較の前提を作ります。IBW の運用を迷いやすい場合は、施設ルール化の観点で IBW の決め方( BMI 22 と Lorentz の使い分け)も参考にしてください。
  3. GNRI を算出する:GNRI = 14.89 × Alb + 41.7 ×( 体重 / IBW )。
  4. 体重 / IBW は 1 を上限にする:体重 / IBW が 1 を超える場合は、1 を上限として計算します(肥満で過大評価されるのを防ぐため)。
  5. リスク判定(共通言語化):一般は 4 区分、透析では 92 を実務目安にして「リスクの有無と程度」を揃えた言葉で記録します(判定表は次節)。
  6. 診断へつなぐ:GNRI でリスクありなら、GLIM などで表現型(体重減少・低 BMI・筋肉量低下)と原因(摂取不良・炎症)を評価し、低栄養の診断や重症度判定へ進みます。
  7. 介入・モニタリング:食事強化、栄養補助食品、運動療法、疾病コントロールを組み合わせ、「 GNRI + 機能指標(歩行・筋力など) 」をセットで追跡します。
  8. チーム共有( NST/看護/リハ/主治医 ):テンプレを共通化し、「値 → 解釈 → 次アクション」の流れを同じフォーマットで残します。

判定表(一般/透析)

GNRI のカットオフは研究により細かな違いがありますが、臨床では下記のような区分を目安にすると運用しやすくなります。大切なのは「区分の言葉」と「次アクション」をチームで揃えることです。

GNRI の 4 段階判定(一般高齢入院・在宅患者の運用目安)
GNRI リスク 推奨される対応(次アクション)
> 98 なし 定期モニタ(食事量・体重・身体活動をフォロー)
92〜98 食事支援や栄養相談を追加し、次回の評価日を決めて追跡
82〜< 92 中等度 NST/多職種で介入を検討(摂取量・炎症・嚥下・活動量を整理)
< 82 高度 積極的介入(経腸・静脈栄養も含めた集中的対応を検討)
透析患者における GNRI の運用目安( 92 を実務基準にする例)
GNRI 評価 対応のポイント
≥ 92 栄養リスクなし(目安) 現状維持を目標に、食事・体液管理・運動療法を継続
< 92 栄養リスクあり(目安) 摂取不足、炎症、体液過剰などの要因を整理し、GLIM や詳細アセスメントへ接続

落とし穴(よくあるミスと対策)

GNRI 運用でつまずきやすいポイントと対策
よくあるミス 何が起きる? リスク 対策 記録ポイント
Alb だけで「栄養状態」を断定 炎症・浮腫・脱水で Alb が動く 低栄養の見誤り/介入の優先度ズレ CRP や身体所見とセットで解釈し、「炎症の影響あり/なし」を明記 CRP、浮腫、急性増悪の有無
体重 / IBW の 1 上限を忘れる 肥満で GNRI が過大評価される リスクの見逃し テンプレに「※ 1 上限」を固定表示し、計算手順を統一 体重 / IBW(上限処理の有無)
IBW 方式が患者ごとに混在 経時変化の比較が崩れる 改善/悪化の判断が不安定 施設標準を 1 つに決め、途中で変えない(例外時は理由も残す) IBW 方式( BMI 22 / Lorentz )
在宅で体重測定条件がバラバラ 小さな変化がノイズに埋もれる 早期変化の見落とし 「曜日・時間帯・服装」を固定し、同じ条件で追う 測定条件(例:朝食前・同じ服装)
GNRI をゴールにして終わる 点数の報告で止まる 介入が回らない GLIM 接続と「次アクション」までテンプレに組み込む 次アクション(評価追加/介入/再評価日)

記録テンプレ(そのまま転記可)

GNRI を施設全体で運用する際は、下記のようなテンプレを共有しておくと便利です。NST ラウンドやリハカンファレンスで、そのまま参照・更新できます。

GNRI 記録テンプレ( 1 名分の記入例)
日付 Alb( g/dL ) 身長( m / cm ) 体重( kg ) IBW 方式 IBW( kg ) 体重 / IBW(※ 1 上限) GNRI 判定 次アクション
2026-01-16 3.4 1.60 / 160 48.0 BMI 22 56.3 0.85 86.1 中等度リスク GLIM 評価と NST 介入を依頼( 2 週間後に再評価)
                      

現場の詰まりどころ

  • 「誰が」「いつ」計算するかが決まっていない:採血結果が出ても GNRI を誰も計算せず、カルテにも残らないケースがよくあります。入院時サマリー作成時や NST ラウンド前など、担当とタイミングを先に固定すると運用が安定します。
  • リハ職が数字だけ見て終わってしまう:GNRI が低いことは認識していても、運動処方や負荷設定に結びつかないパターンです。GNRI が低い患者では「介入前後の GNRI」と「歩行・筋力・持久力」の両方を追うと、チームの共通理解が作りやすくなります。
  • 透析と一般病棟でカットオフが混同される:透析チームは 92 を基準にしているのに、一般病棟スタッフは 98 を基準に話していると、リスクの有無に対する認識がずれます。患者群ごとに「この基準で話す」を先に共有しておくのがコツです。
  • 急性増悪時に GNRI を鵜呑みにする:感染などで Alb が一時的に低下している局面では、GNRI も一時的に悪化します。増悪前・退院前など「どのタイミングの GNRI をベースラインにするか」をチームで揃えると判断が安定します。

多職種での情報整理が追いつかないときは、面談準備チェック( A4・5 分)と職場評価シート( A4 )を使って「確認する項目」を先に固定すると回りやすくなります(無料ダウンロード)。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q. GNRI はどのくらいの頻度で評価するのがよいですか?

A. 急性期では入院時と退院前、長期入院では 1〜3 か月ごとの定期評価が一つの目安です。在宅や維持期では、外来受診や訪問リハの節目など、プランの見直しタイミングに合わせると介入との関係が追いやすくなります。

Q. 身長が正確に測れない場合はどうすればよいですか?

A. 脊柱変形や拘縮で立位測定が難しい場合、過去の身長記録や家族からの聴取、座高などから推定する方法があります。いずれにしても「推定値であること」を記録に明記し、同じ推定方法で経時変化を追うことが重要です。

Q. GNRI が低い患者さんに運動療法を行っても大丈夫でしょうか?

A. 低栄養リスクが高いからといって、必ずしも運動療法を中止する必要はありません。適切な栄養補給と組み合わせた低〜中等度の運動は、筋量・筋力の維持向上に役立ちます。貧血、心不全、感染などの状況を確認し、バイタルと症状を見ながら強度・頻度を個別に調整してください。

Q. GLIM 評価や筋肉量測定ができない環境でも GNRI を使う意味はありますか?

A. はい、あります。GLIM や精密な筋肉量測定ができない場合でも、GNRI をルーチン化することで「誰が見てもリスクが分かる共通言語」を持てます。体重変化や握力、歩行距離など身近な指標と組み合わせることで、介入の優先順位づけや経過観察に十分役立ちます。

次の一手(関連リンク)

参考文献

  1. Bouillanne O, Morineau G, Dupont C, et al. Geriatric Nutritional Risk Index: a new index for evaluating at-risk elderly medical patients. Am J Clin Nutr. 2005;82(4):777-783. doi: 10.1093/ajcn/82.4.777
  2. Cereda E, Pusani C, Limonta D, Vanotti A. The ability of the Geriatric Nutritional Risk Index to assess the nutritional status and predict the outcome of home-care resident elderly: a comparison with the Mini Nutritional Assessment. Br J Nutr. 2009;102(4):563-570. doi: 10.1017/S0007114509222677
  3. Jensen GL, et al. GLIM consensus approach to diagnosis of malnutrition: A 5-year update. JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2025;49(4):414-427. doi: 10.1002/jpen.2756
  4. Yoshida M, Nakashima A, Doi S, et al. Lower Geriatric Nutritional Risk Index (GNRI) Is Associated with Higher Risk of Fractures in Patients Undergoing Hemodialysis. Nutrients. 2021;13(8):2847. doi: 10.3390/nu13082847

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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