
こんにちは!リハビリくんです!
こちらでは「GNRI (Geriatric Nutritional Risk Index)」をキーワードに記事を書いていきます!
リハビリテーションの実施にあたって、短時間で実施することができる栄養スクリーニングの存在は非常に重要になります。しかし、栄養スクリーニングの種類については様々なものがありますので、どの栄養スクリーニングを使用すればいいのかは悩むんでしまうと思います。
その中でも、GNRI (Geriatric Nutritional Risk Index)は、理想体重との比である%IBWとアルブミン値を使用して栄養状態を数値化し、4段階で評価を行うことができます。
現在の体重だけ分かれば、%IBWは計算できますので、非常に簡単かつ有効な栄養スクリーニングといえます。また、Excelなどで数式を組んでしまえば、体重とアルブミン値のみ入力するだけで数値化することができるため、病院や施設のように大人数を評価したい場合にも向いています。
- GNRIとは?
- エネルギーやタンパク質の摂取量が不足した状態:PEMについて
- GNRI の評価方法が知りたい
- カットオフ値はあるの?
栄養評価を実施する上で、様々な疑問を抱えることがあると思います!そんな方のために、こちらの記事を読むことで上記の疑問が解決できるようにしたいと思います!是非、最後までご覧になってください!

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!
最近気になっている資格なのですが、2023年より、日本急性期ケア協会が主催する急性期ケア専門士認定試験が実施されるようです。急性期ケア専門士は急性期ケア・急変対応におけるスペシャリストです。 状態変化の兆候をいち早く察知し、アセスメントから初期対応、 医師への報告など急性期におけるケアの実践を行えることを目指す資格となっています!
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栄養スクリーニングについて
栄養スクリーニングは栄養評価の一側面として捉えることができ、栄養管理の端緒として、栄養不良患者または栄養不良のリスクがある患者を抽出することが目的となります。
一般的には、栄養スクリーニングを行った結果、更に詳細な栄養評価が必要となった対象者に対して、栄養アセスメントが実施される流れになると思います。
栄養スクリーニングでは、効率のよい評価が求められます。そのため、以下に示したような要件を満たした評価ツールが必要になります。
- 妥当性がある
- 信頼性がある
- 入手しやすい情報を利用する
- 実施が容易である
- 低コストである
- 患者に対して非侵襲的な方法である
栄養管理を最も有効に実施するには、全患者に対して、日常的なケアの一環として栄養スクリーニングを行うことが必要になります。
スクリーニングツールとしては、様々な種類のものが現在までに提唱されていますが、高齢者を対象とした栄養スクリーニングで根拠があるGNRI (Geriatric Nutritional Risk Index)について説明していきます。
GNRIを理解する前に:PEMについて
生体を維持するために必要な栄養素が不足することを低栄養と呼びますが、特にエネルギーやタンパク質の摂取量が不足した状態を PEM(Protein Energy Malnutrition)と表現します。
PEM(Protein Energy Malnutrition)について、もう少し説明を加えると蛋白質とエネルギーが不足して、健康を維持するうえで必要な栄養が足りていない状態を指します。特に、食べる量が減少し肉類などの蛋白質が豊富な食べ物を好まなくなる高齢者によく認められます。
主食や主菜を摂る量が減ることや、偏食などによる栄養不足で貧血や体重減少、免疫力の低下が起き、寝たきりや合併症、感染症を招きやすいとされています。
超高齢者社会に突入している本邦において、このPEMをどれだけ防ぐことができるのかというところが1つのポイントになることは言うまでもないと思います。
GNRI が作られた経緯
近年、リハビリテーションにおいても栄養管理の重要性が浸透してきており、様々な栄養スクリーニングや栄養アセスメントが普及しております。
一方、ひとつの指標によってPEMを診断することは難しく、現時点で標準的な評価方法というものは確立しておりません。低栄養の判定において有用といわれる様々な栄養スクリーニングや栄養アセスメントがありますが、それぞれ課題や問題点が指摘されています。
例えば、栄養状態を判断するためにアルブミン値を参考に低栄養の有無や程度を評価する場合があると思います。確かにアルブミン値は栄養状態の判断において大変参考となる指標ではありますが、炎症や水分量の影響を受けるというデメリットがあります。そのため、アルブミン値のみでの栄養状態の正確な判定は難しい場合があると考えられます。
また、65歳以上の高齢者の低栄養リスク把握するための、MNA: Mini Nutritional Assessmentは使用しやすく、多くの医療機関で使用されていると考えられますが、MNA は入院患者よりも介護施設や在宅の高齢者に適した評価方法であり、質問者によるバイアスが入りやすいと言われています。
また、アルブミン値と体重減少の程度によって栄養状態を評価する NRI: Nutritional Risk Indexも有効性が示されております。しかしながら、入院や入所生活における高齢者については、平常時体重を正確に出すことが難しい場合があり、NRIを使用できない場合があります。
そこで考えられた評価法が、体重の変化量の代わりに現体重と理想体重の比を用いて栄養状態を評価する GNRI:Geriatric Nutritional Risk Index になります。
Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI)
GNRIは、理想体重比(%IBW)と血清アルブミン値を用いた高齢者の栄養評価法となります。
GNRIは、外科領域で栄養障害に関連した術後合併症の発生を推定する指標として用いられている Nutritional Risk Index (NRI)を高齢者にも活用できるよう工夫したもので、2つの特徴があります。
1つは、NRIが体重の変化を現在の体重と平常時体重の比である%UBWを用いて評価しているのに対して、GNRIは、高齢者では平常時体重の記憶が定かでないことが多いため、理想体重との比である%IBWを用いていることになります。
2つめは、高齢者では脳血管障害の後遺症や身体的脆弱などによって立位を保持することができなかったり、脊柱や下肢の変形および拘縮によって身長を実測することが困難なことが多いため、IBWの算出に knee-height から求めた身長推定値を用いていることになります。
以上のようにGNRIは、高齢者の身体的特徴を考慮した栄養評価法になります。
GNRI 計算式
14.89 × 血清アルブミン(g/dL)+ 41.7 ×〔現体重(kg)÷ 理想体重(kg)]
理想体重(IBW:ideal body weight)の算出方法は、身長(m)× 身長(m)×22となります。
%理想体重(%IBW)の基準は以下の通りになります。
80~90%:軽度栄養障害の疑い
70~79%:中等度栄養障害の疑い
69%以下 :高度栄養障害の疑い
カットオフ値と結果の解釈
GNRIの計算結果から、栄養状態は以下の4段階で評価されます。

GNRIのカットオフ値の参考になっているのは、アルブミン値と%IBWの値です。実際の患者を想定して計算してみます。
症例1:アルブミン値 3.0 g/dl、%IBW= 0.9
14.89 × 3.0+ 41.7 ×0.9 = 82.2
症例2:アルブミン値 3.8 g/dl、%IBW= 1.0
14.89 × 3.8 + 41.7 ×1.0 = 98.3
症例1についてはGNRI:82.2となるため、中等度リスクあり、症例2についてはGNRI:98.3となるため、リスクなしと判定することができます。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「GNRI (Geriatric Nutritional Risk Index)」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
今回はGNRI (Geriatric Nutritional Risk Index)について述べましたが、その他のスクリーニングツールについては過去の記事でまとめておりますので、こちらの方もご覧になって頂けると幸いです☺️

参考文献
- 百崎良,安保雅博.リハビリテーションにおける栄養スクリーニング.Jpn J Rehabil Med .2017,54,p82-86.
- 藤井俊樹,服部英明,中濱克之,山田裕治.Geriatric Nutritional Risk Indexによる透析患者の予後予測能力について:Body Mass Index あるいは血清アルブミン単独との比較.透析会誌.47( 1 ),2014,p75-84.