目的と前提(適合=安全と自立)
杖・歩行器は転倒リスクの低減と移動の自立を両立させるツールです。選定は「身体機能 × 環境 × ゴール」で決まり、採寸 → 練習 → 見直しのサイクルで最適化します。記事後半にFAQと採寸チェックリストも用意しました。
使い分け早見表(状況→デバイス)
状況/課題 | 杖(T字/四点) | 歩行器(固定/前輪/四輪) | ポイント |
---|---|---|---|
片側下肢の軽〜中等度筋力低下 | ◎ T字杖 | △ | 健側で使用。歩容に合わせ支持周期を指導。 |
両側バランス低下・恐怖感大 | △ 四点杖 | ◎ 固定型 → 前輪型 | 安定性優先。段差/傾斜は固定型が安全。 |
長距離移動・屋外 | △ | ◎ 四輪(ロレータ) | 休憩用シート・買物かご等の付属品も考慮。 |
片麻痺で立脚期が不安定 | ○ 四点杖 | ○ 固定型 | 歩行練習と併せ、FGAで経時評価。 |
パーキンソン病のすくみ足 | △ | ○ 四輪(レーザー付き等) | 安全第一。段差や狭所は介助併用。 |
採寸とセットアップ
- 身長目安:肘屈曲 20–30° となる高さにグリップ。
- ランドマーク:上肢を自然下垂し、橈骨茎状突起(手首のしわ付近)と同高を基準に微調整。
- グリップ:痛みや握力に応じ太さ・形状を選択。
- 歩行器:肘角度 20–30°、キャスター径は段差・屋内外で選択。
練習と評価は目標設定フローに沿って段階化し、ABC・FES-Iで心理面もモニターします。
練習の段階づけ
安全管理の要点
- 先ゴム摩耗のチェック(溝消失は交換)。
- 階段・傾斜は「上がるときは健側先行/降りるときは患側先行」を徹底。
- 夜間は足元灯・センサー灯を併用。
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よくある質問(FAQ)
- 杖の高さはどこで合わせますか?
- 基本は肘屈曲20–30°になるグリップ高。自然立位で腕を下げ、橈骨茎状突起(手首のしわ付近)と同高を基準に微調整します(本文「採寸とセットアップ」)。
- 四点杖とT字杖、どちらが安定しますか?
- 安定度は四点杖>T字杖ですが、歩行速度や段差・狭所での取り回しを考えると、状況に応じた使い分けが安全です(本文「使い分け早見表」)。
- 四輪歩行器(ロレータ)は屋内でも使えますか?
- 可能ですが、狭所・段差が多い環境では固定型/前輪型の方が安全なことがあります。屋外長距離は四輪が有利です。
- パーキンソン病のすくみ足には何が向きますか?
- レーザー等の視覚手がかり付き四輪歩行器が有効な場合があります。段差・人混みは介助併用を基本に、FGAで経時評価を。
採寸チェック(コピペ用メモ)
□ 自然立位で肘角度20–30° □ グリップ→橈骨茎状突起の高さ □ 杖は健側/歩行器は肘角20–30° □ 先ゴム・ブレーキ・脚キャップ点検 □ 屋内外の段差と傾斜を確認 □ 練習:屋内→段差→屋外の順で段階化 □ ABC・FES-Iで心理面も確認