この記事でわかること(結論)
Barthel Index(BI)は、ADL自立度を10項目・合計0〜100点で評価する定番スケールです。
原則は「直近24〜48時間の“実際にしている”遂行を記録」「補助具の使用は自立を妨げない」「見守り・監視は介助扱い」。この3点を押さえると判定のブレが減ります。
※本記事は医療専門職向けの教育目的です。個別の患者評価・治療は施設手順書と主治医の指示に従ってください。
▶ 10項目の配点(早見表)|▶ 各項目の判定基準(原法準拠)|▶ 合計点の解釈|▶ FIMとの違い|▶ 記録テンプレ|▶ FAQ
10項目の配点(早見表)
# | 項目 | 配点 | 要点 |
---|---|---|---|
1 | 食事 | 0 / 5 / 10 | 実際の摂食動作。補助具可。見守り=介助。 |
2 | 整容(洗面・髭剃り等) | 0 / 5 | 顔・歯・髭。セットアップ不要で遂行。 |
3 | 更衣 | 0 / 5 / 10 | 上下衣・ボタン等。装具/義肢の使用可。 |
4 | 入浴/シャワー | 0 / 5 | 浴室内の安全・動作を含む。 |
5 | 排便コントロール | 0 / 5 / 10 | 失禁の頻度・管理。 |
6 | 排尿コントロール | 0 / 5 / 10 | 自己導尿は自立扱い/留置カテ自己管理不可は0。 |
7 | トイレ動作 | 0 / 5 / 10 | 衣服・清拭の完結。 |
8 | 移乗(ベッド↔椅子) | 0 / 5 / 10 / 15 | 身体介助量で判定。見守りは介助。 |
9 | 平地移動(歩行/車いす) | 0 / 5 / 10 / 15 | 補助具可。50yd(約45–50m)が基準。 |
10 | 階段 | 0 / 5 / 10 | 手すり使用可。安全に昇降。 |
※原法の主旨に沿って簡潔化。施設ルールがある場合は補足として併記してください。
各項目の判定基準(原法準拠)
1) 食事
- 10点:自立(盛り付け後、食具等の補助具は使用可)。
- 5点:切る・塗る・セットアップ等に一部介助。
- 0点:食事を食べさせる必要がある/経管等で自力摂食なし。
2) 整容(洗面・歯磨き・髭剃り等)
- 5点:自立。
- 0点:介助が必要。
3) 更衣(上下衣)
- 10点:自立(ボタン・ファスナー可、装具/義肢の使用可)。
- 5点:一部介助。
- 0点:全介助。
4) 入浴/シャワー
- 5点:自立(浴室内安全を含む)。
- 0点:介助が必要。
5) 排便コントロール
- 10点:失禁なしで自己管理。
- 5点:ときどき失禁、または一部介助。
- 0点:ほとんど失禁/自己管理できない。
6) 排尿コントロール(※誤記修正済み)
- 10点:自己管理ができる(自己導尿を含む)。失禁なし。
- 5点:ときどき失禁、または管理の一部に介助。
- 0点:留置カテーテル等で自己管理不可/ほとんど失禁。
7) トイレ動作
- 10点:自立(衣服の操作・清拭まで完結)。
- 5点:一部介助。
- 0点:全介助。
8) 移乗(ベッド↔椅子)
- 15点:自立(補助具可)。
- 10点:軽介助(少しの手助け/口頭指示で可能)。
- 5点:大きな介助(1〜2人の介助が必要)。
- 0点:座位バランス不良でほぼ不能。
9) 平地移動(歩行/車いす)
- 15点:自立。補助具の使用は可(杖・歩行器・装具など)。人の介助なしで50yd(約45〜50m)以上移動可。
- 10点:口頭/身体介助があれば 50yd 以上歩行可。
- 5点:歩行は不可だが、車いすを自走で 50yd 以上移動可(角のターン含む)。
- 0点:歩行・車いす自走ともに 50yd 以上不可。
※見守り・監視は介助扱い=自立には含めません。
10) 階段
- 10点:自立(手すり使用可)。
- 5点:介助または監視が必要。
- 0点:不可。
合計点の解釈(よく使われるレンジ)
- 0–20:全介助(Total dependence)
- 21–60:重度介助(Severe)
- 61–90:中等度介助(Moderate)
- 91–99:軽度介助(Slight)
- 100:自立(Independence)
※研究・施設により境界は多少異なります。施設内の運用基準を明記してください。
Barthel Index と FIM の違い
比較項目 | BI | FIM |
---|---|---|
項目数 | 10項目 | 18項目(運動13・認知5) |
スコア幅 | 各項目 0/5/10/15 等 → 合計 0–100 | 各項目 1–7 → 合計 18–126 |
評価原則 | 直近24–48hの実際の遂行。補助具使用は可。 | 実際の遂行で判定(観察中心、聞き取りも併用)。 |
所要時間・粒度 | 短時間・粗粒度(変化は大きく捉える) | やや長い・細粒度(変化検出に強い) |
適用場面 | 急性期〜回復期のADL全般 | 回復期〜維持期の詳細モニタリング |
記録テンプレ(コピーして使える)
【BI まとめ】合計:75/100 内訳:食10・整5・更10・浴5・便10・尿5・ト10・移10・移動10・階10 根拠:移乗は軽介助(10点)、平地移動は杖で50m独歩(15点ではなく10点→見守りが必要なため) 備考:評価基準=直近24〜48hの実際の遂行。補助具使用は自立を妨げない。見守りは介助扱い。
FAQ(よくある質問)
- Q. 杖・歩行器・装具を使っても「自立」ですか?
- A. はい。補助具の使用は自立を妨げません。ただし人の手助け・見守りが必要なら自立ではありません。
- Q. 車いす自走は何点ですか?
- A. 平地移動で5点(50yd以上を自走)。歩行ができない場合の代替として扱います。
- Q. 「見守り」は自立に入りますか?
- A. いいえ。見守り・監視は介助扱いです。
- Q. 何を基準日に判定しますか?
- A. 原則は直近24〜48時間の「実際にしている」遂行を基準にします。