MDRPI運用ガイド|観察・調整・再評価・共有【PDF】

臨床手技・プロトコル
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MDRPI(医療関連機器褥瘡)とは|まず4ステップで運用する

MDRPI(Medical Device Related Pressure Injury)は、医療関連機器による圧迫などによって皮膚やその下の組織に生じる損傷です。日本褥瘡学会では現在、国内名称を「医療関連機器褥瘡」とし、英語名としてMDRPU・MDRPIの両方を含めています。

実務で重要なのは、MDRPIを疑ったあとに「何を見るか」で止まらず、観察 → 調整 → 再評価 → 共有までつなげることです。このページでは、機器の機能や治療効果を保ちながら当たり方・固定・張力・湿潤などを見直し、再評価まで残す流れを、日次チェックPDFとともに整理します。

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用語のポイント:日本褥瘡学会では、従来の「医療関連機器圧迫創傷」から「医療関連機器褥瘡」へ名称変更されています。本記事では検索時に使われることの多いMDRPIを主表記として併記します。

MDRPIを観察・調整・再評価・共有の4ステップで運用する流れ
MDRPIは、観察だけで終わらせず「観察 → 調整 → 再評価 → 共有」まで一連で回します。再評価の時刻は一律ではなく、機器・皮膚所見・患者状態に応じて設定します。

MDRPI日次チェックシートPDF

観察・調整・再評価・共有を同じ流れで残すには、確認項目を固定しておくと運用しやすくなります。下のPDFは、機器・部位・所見・調整内容・再評価を1枚で確認するための日次チェックシートです。

現場用(1ページ):MDRPI 日次チェックシート


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観察|機器の下と周囲で何を見るか

MDRPIの観察では、機器名と当たり部位を対応させ、機器の下・周囲・固定部を毎回同じ視点で確認します。見えている皮膚だけではなく、安全に確認できる場合は固定部や機器の下も観察します。

代表的な確認項目は、次のとおりです。

  • 機器名と装着部位
  • 発赤や周囲との色調差
  • 圧痕
  • 浸軟や過剰な湿潤
  • びらん、水疱などの皮膚損傷
  • 浮腫
  • 痛み、不快感
  • 機器や固定具のずれ

特に、圧迫を解除しても消退しにくい発赤や色調変化、痛み、圧痕、皮膚損傷を認めた場合は、そのまま同じ状態で装着を続けるのではなく、機器の必要性と装着状態を確認して次の「調整」へ進みます。

機器を外して観察するときの注意:治療や管理に影響する機器は、皮膚確認のために自己判断で外したり緩めたりしません。機器の機能・患者管理に支障がない範囲で確認し、必要に応じて担当職種へ相談します。

粘膜損傷は国内の「医療関連機器褥瘡」と区別する

口腔内、鼻腔内、気道などの粘膜も、医療機器使用中には重要な観察対象です。一方、日本褥瘡学会による本邦の「医療関連機器褥瘡」の定義では、尿道・消化管・気道などの粘膜に生じた創傷は含まれません。

そのため、粘膜に損傷を疑う所見を認めた場合は「MDRPIとして同じ分類に入れる」と単純化せず、機器との関連を確認したうえで、必要な職種へ早めに共有します。

調整|機器機能を保ちながら圧・ずれ・湿潤を減らす

調整は「決められた順番に全部行う」のではなく、原因を確認し、機器の位置・機能・治療効果を損なわない範囲で必要なものを選びます。特に呼吸管理、チューブ、固定具などでは、単純に緩めることが安全とは限りません。

スマホでは表を横スクロールできます。

MDRPIを疑ったときに確認する調整ポイント
確認 見るポイント 対応例 記録すること
必要性 現在もその機器が必要か 不要になっていれば、担当職種と撤去可否を確認する 継続・変更・撤去の判断
サイズ・適合 局所だけに強く当たっていないか 適切なサイズや形状を再確認する 変更前後のサイズや当たり部位
固定 必要以上に強い固定になっていないか 位置と機能を維持できる範囲で固定方法を見直す 固定方法と変更内容
位置 同じ部位へ圧が集中していないか 可能で安全なら位置・支点を変更し除圧する 変更した位置や方向
チューブ・配管 引っ張りや牽引力が生じていないか 余裕を確保し、皮膚への張力を減らす 張力の原因と対応
湿潤 発汗・分泌物などがたまっていないか 皮膚と機器周囲の湿潤を管理する 湿潤の程度と実施した対策

機器を変更・緩和・再配置するときは、メーカーの使用方法や施設の手順を優先し、必要な機能を維持できることを確認します。

予防的ドレッシングは「当てれば安心」ではない

予防的ドレッシングは、医療機器の位置や機能を妨げない場合に、皮膚と機器の接触部で使用を検討できます。ただし、ドレッシングだけで機器の不適合や過剰な張力を解決するものではありません。

また、機器がきつく密着している場合は、ドレッシングを挟むことで厚みが増し、かえって圧が高くなる可能性があります。使用する場合も、ドレッシングの下の皮膚観察を継続し、湿潤や圧の増加がないか確認します。

再評価|調整したら「いつ戻るか」まで決める

MDRPI対策は、調整して終わりではありません。調整後に再評価する時刻またはタイミングを決め、改善・不変・悪化のどれかを確認します。

再評価までの時間をすべての機器で一律に決めることはできません。機器の種類、所見の程度、患者の皮膚状態、浮腫や湿潤、痛みの訴え、施設手順、メーカーの指示などを踏まえて設定します。

再評価では、次の3点を比較すると記録しやすくなります。

  • 改善:発赤・圧痕・痛みなどが軽減している
  • 不変:調整後も所見が残っている
  • 悪化:色調変化、痛み、皮膚損傷などが進行している

不変・悪化の場合は同じ対応を繰り返すだけでなく、機器の必要性、サイズ、固定、位置、張力、湿潤などを再確認し、必要に応じて多職種へ共有します。

記録例

「鼻梁に圧痕・発赤あり。マスクの適合と固定を確認し調整。次回○時に皮膚所見を再評価。改善なければ担当看護師へ共有。」

共有|機器・部位・所見・対応・再評価を伝える

共有では、長い説明より「何が当たり、どこに、何が起き、何をして、その後どうなったか」をそろえることが重要です。PDFの記録欄も、この流れを意識して使います。

申し送りや相談では、次の5点をそろえます。

  1. 機器:何の機器か
  2. 部位:どこに当たっているか
  3. 所見:発赤、圧痕、浸軟、びらん、痛みなど
  4. 対応:何を見直したか
  5. 再評価:いつ確認し、改善・不変・悪化のどれだったか

特に、圧迫解除後も残る色調変化、びらん・水疱などの皮膚損傷、強い痛み、急速な悪化、調整しても改善しない所見がある場合は、早めに担当職種へ共有します。

観察頻度を上げたい条件

MDRPIの観察頻度は全員一律ではなく、皮膚・患者・機器の条件に応じて調整します。国際ガイドラインでは、皮膚状態、発汗、痛みや不快感を感じたり伝えたりしにくい状態、浮腫や体格変化などでは、より注意深い評価が求められています。

スマホでは表を横スクロールできます。

MDRPIで観察頻度を上げることを検討する条件
条件 確認する理由 実務上のポイント
浮腫・体格変化 装着時とフィットが変わる サイズや固定の強さを再確認する
発汗・湿潤 機器下に湿気がたまりやすい 皮膚と機器周囲の湿潤を確認する
痛みを伝えにくい 本人の訴えだけでは早期発見しにくい 皮膚所見と機器の当たり方を直接確認する
皮膚状態に問題がある 機器による負荷の影響を受けやすい 装着部だけでなく周囲も確認する
長時間装着 皮膚・組織との接触時間が長くなる 機器が継続して必要かも含めて見直す

「1日○回」と固定するより、装着時の基準となる皮膚状態を確認し、患者リスクと機器特性に応じて定期的に再評価することが重要です。

MDRPI対策でよくある失敗

よくある失敗は、「観察した」「保護材を入れた」で対応を終え、原因と再評価が残らないことです。MDRPIは機器が継続して必要な場面も多いため、対応後の確認までセットにします。

1. 発赤を見つけても同じ装着状態を続ける

皮膚所見を記録するだけでは負荷は変わりません。機器が必要な場合も、適合、固定、位置、張力、湿潤など、変更できる要素がないか確認します。

2. 保護材だけで解決しようとする

ドレッシングを追加しても、サイズ不適合や過剰な張力が残っていれば原因は解消されません。さらに、密着する機器ではドレッシングの厚みが圧を増す可能性もあります。

3. 調整したが再評価しない

「固定を変更した」で記録を終えず、いつ戻るかまで決めます。改善・不変・悪化を確認することで、次の対応や相談につなげやすくなります。

4. 誰に何を伝えるかが決まっていない

機器・部位・所見・対応・再評価の5点で共有すると、担当が変わっても経過を追いやすくなります。職種ごとに観察が分断されないよう、チームで確認項目をそろえることも重要です。

MDRPIのよくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。

発赤があれば、すぐMDRPIと判断しますか?

発赤だけで一律に断定するのではなく、機器との位置関係、圧迫解除後の変化、圧痕、痛み、皮膚損傷などを確認します。圧迫解除後も消退しにくい色調変化や皮膚損傷を認める場合は、機器の装着状態を見直し、経過を再評価してください。

MDRPIはどのくらいの頻度で観察しますか?

すべての機器に共通する一律の観察間隔ではなく、機器の種類、患者状態、皮膚所見、施設手順、メーカーの指示などに応じて決めます。浮腫、湿潤、皮膚状態の問題、痛みや不快感を伝えにくい場合などでは、観察頻度を上げることを検討します。

MDRPI予防では保護材を先に入れたほうがいいですか?

予防的ドレッシングは、機器の位置や機能を妨げない場合に検討できます。ただし、先に機器のサイズ、適合、固定、位置、張力などを確認することが重要です。密着する機器ではドレッシングの厚みで圧が増す場合があるため、装着後も皮膚を再評価します。

口腔内や鼻腔内の粘膜損傷もMDRPIですか?

国際的なDRPI予防では粘膜も重要な観察対象ですが、日本褥瘡学会による本邦の「医療関連機器褥瘡」の定義では、尿道・消化管・気道などの粘膜に生じた創傷は含まれません。粘膜損傷を疑う場合も機器との関連を確認し、必要な職種へ早めに共有します。

次の一手|褥瘡予防の標準化につなげる

MDRPIだけを個別対応にせず、ポジショニングや日常の褥瘡予防と同じ仕組みの中で管理すると、チームで運用しやすくなります。MDRPIの観察・調整・再評価を整理できたら、次は体位と支持面の調整も確認しておきましょう。


参考文献

  1. 日本褥瘡学会. 医療関連機器褥瘡(Medical Device Related Pressure Ulcer: MDRPU, Medical Device Related Pressure Injury: MDRPI). 日本褥瘡学会用語集. https://www.jspu.org/medical/glossary/
  2. 日本褥瘡学会. 「医療関連機器圧迫創傷」の名称変更について. https://www.jspu.org/medical/mdrpu/
  3. National Pressure Injury Advisory Panel, European Pressure Ulcer Advisory Panel, Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Device-Related Pressure Injuries. In: Haesler E, editor. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. 4th ed. 2025. International Guideline
  4. Kottner J, Cuddigan J, Carville K, Balzer K, Berlowitz D, Law S, et al. Prevention and treatment of pressure ulcers/injuries: The protocol for the second update of the international Clinical Practice Guideline 2019. J Tissue Viability. 2019;28(2):51-58. DOI: 10.1016/j.jtv.2019.01.001
  5. Lee H, Choi S. Protocols and their effects for medical device-related pressure injury prevention among critically ill patients: a systematic review. BMC Nurs. 2024;23:403. DOI: 10.1186/s12912-024-02080-y
  6. Fulbrook P, Butterworth R, Miles S, et al. Incidence and characteristics of device-related pressure injuries in intensive care: a four-year prospective cohort study. Intensive Crit Care Nurs. 2025;86:103955. DOI: 10.1016/j.iccn.2025.103955
  7. National Pressure Injury Advisory Panel. MDRPI Posters. MDRPI Posters
  8. 日本褥瘡学会. 医療関連機器圧迫創傷の予防と管理 ベストプラクティス. PDF
  9. Joint Commission. Quick Safety: Managing medical device-related pressure injuries. PDF

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に、臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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