MDRPI運用ガイド|図解・PDFで流れがわかる

臨床手技・プロトコル
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MDRPI 運用ガイド|観察・調整・再評価・共有を回す

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関連: 褥瘡予防の基本フローポジショニング実務

MDRPI( medical device-related pressure injury )は、医療機器の当たり方や締めすぎ、配管の張力によって、皮膚・粘膜に局所の圧とずれが集中して起こる圧迫損傷です。骨突出部の褥瘡と違い、部位が機器形状に沿って出やすいこと、短時間でも悪化しやすいことが実務上の難しさです。

このページで答えるのは、「どこを見て、何を先に調整し、いつ戻って、どう共有するか」です。深さ分類や治療材の各論を広く扱うページではなく、現場でそのまま使える日次チェック PDF を軸に、観察 → 調整 → 再評価 → 共有の型を最短で回すことに絞って整理します。

配布 PDF(MDRPI 日次チェックシート)

まずは「観察 → 調整 → 再評価 → 共有」を最小手数で回すために、下の PDF を使ってください。印刷して運用すると、見落としと申し送りの抜けを減らしやすくなります。

現場用( 1 ページ ):機器・部位・所見・調整・再評価を 1 枚で残す日次チェックシート

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MDRPI で何が起きているか(なぜ短時間でも悪化する?)

MDRPI は「機器が当たる場所」に、圧(押し付け)+ずれ(滑り)が集中して起きます。皮膚は見た目が軽くても深部でダメージが進むことがあり、粘膜(口腔内・鼻腔内など)は目視しにくいため、発見が遅れるほど手戻りが増えます

そのため基本は、発生後の処置だけでなく早期発見と微調整の反復です。難しい判断を増やすより、「見る場所を固定する」「調整の順番を固定する」「再評価を必ず残す」の 3 つを守るほうが再現性が上がります。

リスクが上がる条件(先に当てはめておく)

MDRPI は「機器の硬さ」だけでなく、患者側の条件で起きやすさが変わります。初回評価で、下の条件に当てはまるほど観察頻度を上げる運用が安全です。

スマホでは表を横スクロールできます。

MDRPI のリスクを上げる条件(観察頻度を上げる目安)
分類 運用のコツ
皮膚の弱さ 高齢、低栄養、浮腫、ステロイド、脱水 同じテンションでも傷む前提で「早く見る」
循環・酸素化 ショック、末梢循環不全、貧血、低酸素 発赤が出にくいことがあるので触って確認
意識・感覚 鎮静、せん妄、麻痺、感覚低下 痛み訴えが頼れないため「所見優先」で回す
湿潤 発汗、分泌物、失禁、口腔内の湿潤 浸軟が早いので乾燥・交換の頻度を上げる
装着条件 長時間装着、固定が強い、ケーブル張力 張力を抜く、固定方向を変える、エッジを減らす

運用フロー(観察 → 調整 → 再評価 → 共有)

判断を増やすと運用が崩れるので、フローは単純化します。今回の PDF もこの順番に並べてあり、チェックと短い記載だけで流れが残る設計です。まずは下の図で全体像をつかんでから、PDF と本文を行き来すると使いやすくなります。

MDRPI を見つけたときの 4 ステップ(観察・調整・再評価・共有)
MDRPI は「観察 → 調整 → 再評価 → 共有」の 4 ステップで回すと、担当が変わっても流れが切れにくくなります。

スマホでは表を横スクロールできます。

MDRPI を 4 ステップで回す最小フロー
手順 ここで見る 最初にやること 記録の一言例
1. 観察 機器、当たり部位、発赤、圧痕、浸軟、痛み、不快、ずれ 機器と部位を固定して、毎回同じ順番で見る 鼻梁に消えにくい発赤、痛み訴えあり
2. 調整 締めすぎ、サイズ不一致、固定方向、配管張力、湿潤 テンション → サイズ → 方向 → 張力 → 保護材の順で直す 固定を 1 段階緩め、右側支点へ変更
3. 再評価 改善、不変、悪化 戻る時刻を先に決めて残す 14:00 再評価予定、不変なら報告
4. 共有 消えにくい発赤、びらん、水疱、粘膜所見、強い痛み 機器・部位・所見・やったこと・再評価を短く伝える 鼻翼発赤不変、張力調整済、医師へ報告

観察のコツ(見る場所を固定する)

見落としの原因は「どこを見るかが人で違う」ことです。まずは頻度上位の部位を固定し、毎回同じ順番で見ます。代表例は、鼻梁・鼻翼・耳介後面・口角・顎下・後頭部などです。機器の形に沿って所見が出るかを意識すると、褥瘡全般との違いがつかみやすくなります。

所見は難しく書かず、発赤(消える/消えにくい)・圧痕・浸軟・びらん・痛み/不快・ずれの最小セットで十分です。迷ったら「消えにくい」「痛い」「濡れている」を拾えば、重症化の前に止めやすくなります。

調整の選び方(“やること”を固定する)

介入は「いきなり全部」より、再現性が高い順に固定します。下の順番で選ぶと、チームで同じ判断になりやすいです。

スマホでは表を横スクロールできます。

MDRPI の調整メニュー(選ぶ順番の目安)
優先 やること 狙い 記録のポイント
1 テンション調整(締めすぎを解除) 圧を下げる 「どれくらい緩めたか」を短文で残す
2 サイズ再評価(当たりが強いなら変更) 局所の集中を減らす 変更前後のサイズ、当たり部位の変化
3 固定方向を交替(左右や支点をずらす) 同一点への負荷を避ける 「右→左」など方向を明記
4 配管の張力を抜く(引っ張りを消す) ずれを減らす 張力の原因(体位・位置)も一言添える
5 保護材・乾燥・交換頻度の見直し エッジと湿潤を対策する 材の種類は書ける範囲で一般名を残す

再評価の型(“時間”を決めて戻る)

調整して終わりにすると、同じ失敗を繰り返します。必ず再評価の時刻を決め、「改善/不変/悪化」を残します。ここが残っていると、夜勤帯や担当交替でも運用が切れにくくなります。

今回の PDF は、観察と調整だけで終わらせないために、再評価と共有の欄を同じ 1 枚にまとめています。書ききれない場合も、相手と要点だけ 1 行で残せば十分です。改善なら継続、不変なら次の調整、悪化なら早めに連携、の 3 択で迷いを減らしてください。

共有の判断(いつ申し送る?)

共有のタイミングを曖昧にすると、結局「様子見」が続きます。次のいずれかに当てはまる場合は、早めに連携する運用が安全です。

  • 発赤が消えにくい(時間を置いても残る)
  • びらん・水疱・皮むけが出た
  • 痛み/不快が強い、または訴えが増えた
  • 粘膜(口腔内・鼻腔内など)で所見が疑わしい
  • 調整しても不変、または悪化

報告は長文より、機器・部位・所見・やったこと・再評価の 5 点で十分です。PDF に沿って書けば、要点が自然に揃うようにしています。

現場の詰まりどころ/よくある失敗

一番多い失敗は、「観察はしたが調整内容と再評価が残らない」ことです。結果として、担当が変わるたびに同じテンションで固定され、悪化してから気づきます。対策は、PDF の記載欄に沿って、選択肢を固定して“短く残す”ことです。

もう 1 つは、機器の固定や皮膚観察が属人化してしまい、新人や他職種が迷って報告が遅れるパターンです。先に見るべき場所と直す順番をそろえるだけでも、運用はかなり安定します。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

発赤があっても、すぐに褥瘡(圧迫損傷)と判断していいですか?

判断は慎重で OK ですが、「消えにくい発赤」「痛みが強い」「湿潤が強い」「びらんがある」場合は、MDRPI の入口として扱うほうが安全です。まずはテンションや張力を調整し、再評価の時刻を決めて戻り、改善しない場合は早めに共有します。

どのくらいの頻度で観察すればいいですか?

機器と患者条件で変わります。鎮静・浮腫・湿潤・循環不全などがある場合は、観察頻度を上げる運用が基本です。実務では「機器の装着直後」「体位変換後」「勤務帯の終わり」など、タイミングを固定すると抜けが減ります。

保護材(当て物)は先に入れたほうがいいですか?

当て物だけで解決しないことが多いので、まずはテンションとサイズ、配管の張力を見直して「当たりの原因」を減らします。その上で、エッジ対策や湿潤対策として保護材を使うと再発が減ります。

粘膜(口腔内・鼻腔内など)はどう扱えばいいですか?

見えにくく進行が早いので、疑わしい所見があれば早めに共有し、可能なら機器の当たり方や固定方法を再検討します。無理にこすらず、観察と連携を優先してください。

次の一手


参考文献

  • Kottner J, Cuddigan J, Carville K, Balzer K, Berlowitz D, Law S, et al. Prevention and treatment of pressure ulcers/injuries: The protocol for the second update of the international Clinical Practice Guideline 2019. J Tissue Viability. 2019;28(2):51-58. DOI: 10.1016/j.jtv.2019.01.001 / PubMed: 30658878
  • Lee H, Choi S. Protocols and their effects for medical device-related pressure injury prevention among critically ill patients: a systematic review. BMC Nurs. 2024;23:403. DOI: 10.1186/s12912-024-02080-y / PubMed: 38886734
  • Fulbrook P, Butterworth R, Miles S, et al. Incidence and characteristics of device-related pressure injuries in intensive care: a four-year prospective cohort study. Intensive Crit Care Nurs. 2025;86:103955. DOI: 10.1016/j.iccn.2025.103955 / PubMed: 39904075
  • National Pressure Injury Advisory Panel. MDRPI Posters. https://npiap.com/page/MDRPI-Posters
  • 日本褥瘡学会. 医療関連機器圧迫創傷の予防と管理(ベストプラクティス). PDF
  • Joint Commission. Quick Safety: Managing medical device-related pressure injuries. PDF

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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