IAD と褥瘡の違い|鑑別フローと記録シート付

臨床手技・プロトコル
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IAD と褥瘡の違い(30 秒早見)|迷わない鑑別フローと記録シート付

判断が揃うと、ケアも揃います。評価は「観察 → 記録 → 解釈 → 次の一手」までが 1 セットです。 理学療法士のキャリアガイドを見る

IAD( Incontinence-Associated Dermatitis :失禁関連皮膚炎)は、尿・便などの失禁曝露で皮膚バリアが崩れて起こる刺激性皮膚炎です。一方、褥瘡(圧迫創傷/ Pressure Injury )は、圧迫・ずれ(せん断)が持続して局所の組織障害が進む病態です。

現場で一番困るのは「どっち?」ではなく、混在( IAD +褥瘡 )が普通に起こる点です。本記事は、混在を前提に仮置きで介入 → 再評価で確定できるように、早見表・ 1 分フロー・最小記録セットを 1 ページで揃えます。

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IAD と褥瘡の違い:早見表(分布・境界・所見)

最初に「必須条件」だけ押さえると迷いが激減します。 IAD は失禁曝露、褥瘡は圧迫・ずれが必須条件です。どちらかが欠けるなら、別要因(真菌、薬疹、摩擦、医療機器圧迫など)も並行で疑います。

IAD と褥瘡の鑑別早見(成人/実務用)
観点 IAD(失禁関連皮膚炎) 褥瘡(圧迫・ずれ)
必須条件 失禁曝露(尿・便・下痢) 圧迫・ずれ(せん断)の持続
分布 会陰〜殿部にびまん性/左右に広がりやすい 仙骨・坐骨・踵など骨突出部に一致
境界 比較的不明瞭(まだら) 比較的明瞭(局所)
所見 発赤・浸軟・びらん/灼熱感・ヒリつき 水疱・壊死・深部損傷を伴い得る/疼痛が強いことも
運用 洗浄 → 保湿 → バリア+曝露時間短縮 除圧・ずれ低減+体位/寝具の再設計
混在 混在はよくある:清潔化+バリア除圧並行開始し、 24–48 時間で比較できるように再評価時間を決める

迷わない 1 分フロー(混在前提)

ポイントは「診断名を当てる」より、次の 1 手がズレないようにすることです。迷ったら仮置きで介入して、比較できる記録を残します。

  1. 失禁曝露はある?(尿・便・下痢、湿潤時間)
  2. 分布はびまん性?(会陰〜殿部に広がる/左右対称に近い)
  3. 骨突出部に一致?(仙骨・坐骨・踵など「点」で一致)
  4. 赤旗はある?(暗紫色/黒色、急速悪化、強い疼痛、悪臭・膿性滲出、発熱)
  5. 機械的負荷は?(圧・ずれ・医療機器の当たり、座位ずれ)
  6. 結論(仮置き): IAD /褥瘡/混在 → 介入して再評価予定を決める

赤旗(迷ったら早めにコンサルト)

  • 暗紫色/黒色、硬結、皮下ポケット(深部損傷疑い)
  • 急速悪化、強い疼痛、悪臭・膿性滲出、発熱
  • 医療機器の圧迫が疑われる( MDRPI )

赤旗があれば、原因が IAD でも褥瘡でも、早期にチームで再評価し、除圧・感染評価・皮膚科/創傷ケアの相談を検討します。

最初の 10 分(やることの優先順位)

ここは「どっちか」にこだわらず、取りこぼしの少ない順で固定すると回ります。

  1. 汚染の迅速除去:洗浄 → 保湿 → バリア
  2. 除圧・ずれ低減:体位/寝具/座位ずれの見直し
  3. 失禁マネジメント:交換条件・便後ケアの標準化(曝露時間を短く)
  4. 再評価の予約: 24–48 時間で比較できるように時間を確保

観察・記録:最小 7 項目(これだけで比較できる)

鑑別でブレる理由は、観察項目が揃っていないことがほとんどです。次の 7 項目を毎回同じ順番で書くと、チーム内の合意が速くなります。

  • 部位(解剖学的位置)
  • 分布(びまん性/骨突出部一致)
  • 境界(明瞭/不明瞭)
  • 所見(発赤/浸軟/びらん/水疱/壊死)
  • 失禁曝露(尿/便/両方、下痢、曝露時間推定)
  • 機械的負荷(圧/ずれ/医療機器/座位ずれ)
  • 介入(実施したもの)+再評価予定

上の「 PDF 2 枚目(観察・記録シート)」をそのまま使うと、記録のフォーマットが固定されます。

現場の詰まりどころ/よくある失敗(対策つき)

IAD と褥瘡で起こりやすい詰まりどころ(原因 → 対策 → 記録ポイント)
詰まりどころ 起こる理由 対策(最小) 記録ポイント
「どっちか」決め打ちする 混在が多いのに単一原因で考える 清潔化+バリア除圧を並行開始し、 24–48 時間で再評価 分布・境界・所見の変化を同一フォーマットで比較
除圧が後手になる IAD っぽく見えても圧迫が残っている 体位・寝具・座位ずれを先に整える(負荷要因を潰す) 「圧・ずれ・医療機器」チェックを必ず残す
失禁ケアが人依存 交換条件・便後ケアが統一されていない 交換条件を短文化し、申し送りに入れる(チームで揃える) 曝露時間の推定(何時間濡れていたか)
ケアの型が回らない 物品・手順・記録がバラバラで再現性がない 「洗浄→保湿→バリア」「除圧・ずれ低減」をセット化して運用 実施チェック+再評価予定を先に書く

なお、ケア手順を整える段階で「資料を揃える」「面談で相談する」などの準備が必要なら、院外の情報収集として マイナビコメディカルの無料ダウンロード(チェックリスト系)を一緒に使うと、申し送りや標準化が進めやすいです。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

IAD と褥瘡は同時に起こりますか?

起こります。混在は珍しくありません。迷ったら「清潔化+バリア」と「除圧・ずれ低減」を並行開始し、 24–48 時間で変化を比較できるように再評価時間を確保します。

びまん性発赤でも褥瘡の可能性はありますか?

あります。骨突出部一致の要素、医療機器の当たり、強い疼痛、暗紫色などがあれば褥瘡(深部損傷)や MDRPI を疑います。分布・境界・所見を「最小 7 項目」で揃えて再評価してください。

再評価はどのくらいの頻度が目安ですか?

状態とリスクによりますが、混在や判断が割れるケースは「 24–48 時間で比較できる」ことを最低ラインにすると運用が回りやすいです。悪化が早い・赤旗がある場合はより短い間隔で見直します。

赤旗があるとき、まず何を優先しますか?

診断名より安全優先です。除圧・ずれ低減を最優先にしつつ、感染所見(悪臭・膿性滲出・発熱)や深部損傷疑い(暗紫色/黒色、硬結、ポケット)なら早めにチームでコンサルトを検討します。

記録が毎回バラバラで、カンファで噛み合いません

「最小 7 項目」を固定してください。特に「分布」「境界」「失禁曝露」「機械的負荷」を揃えると議論が収束します。 PDF の 2 枚目(記録シート)をそのまま運用すると統一しやすいです。

参考文献

  • Doughty D, et al. J Wound Ostomy Continence Nurs. 2012;39(3):303-315. doi: 10.1097/WON.0b013e3182549118 / PubMed: 22572899
  • Edsberg LE, et al. J Wound Ostomy Continence Nurs. 2016;43(6):585-597. doi: 10.1097/WON.0000000000000281 / PubMed: 27749790
  • European Pressure Ulcer Advisory Panel, National Pressure Injury Advisory Panel and Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. The International Guideline. Emily Haesler (Ed.). 2019.(ガイドライン情報)internationalguideline.com

次の一手

  • PDF を現場導入する:まずは「最小 7 項目」だけでも統一して運用する
  • チームで迷いが続く場合:申し送りテンプレを作り、再評価時間( 24–48 時間)を先に確保する
  • 運営への問い合わせ(記事の改善要望・誤記の連絡)

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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