IAD と褥瘡の違い( 30 秒早見 )|迷わない鑑別フローと記録シート PDF
IAD( Incontinence-Associated Dermatitis :失禁関連皮膚炎)は、尿・便などの失禁曝露で起こる皮膚障害です。一方、褥瘡( Pressure Injury )は、圧迫・ずれ(せん断)が持続して生じる局所の組織障害です。現場で大切なのは、診断名を言い当てることより、原因で仮置きし、次の 1 手を外さないことです。
本記事で答えるのは、IAD と褥瘡の見分け方、混在前提の初期対応、比較できる最小 7 項目の記録です。逆に、支持面の細かな選び方や MDRPI の詳細運用までは深掘りしません。早見表・ 1 分フロー・ 1 ページ記録シートで、鑑別に必要な部分だけを 1 ページで揃えます。
PDF( 1 ページ記録シート )を開く・プレビューする
新しい配布物は、IAD と褥瘡の観察・記録を 1 枚で残せる記録シートです。最小 7 項目を同じ順番で書けるので、申し送りと再評価の比較がしやすくなります。
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IAD と褥瘡の違い:早見表(原因・分布・境界)
最初に押さえるのは、原因が違うことです。 IAD は失禁曝露、褥瘡は圧迫・ずれが必須条件です。そこに分布・境界・所見を重ねると、多くの場面で仮置きできます。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 観点 | IAD(失禁関連皮膚炎) | 褥瘡(圧迫・ずれ) |
|---|---|---|
| 必須条件 | 失禁曝露(尿・便・下痢) | 圧迫・ずれ(せん断)の持続 |
| 分布 | 会陰〜殿部にびまん性/左右に広がりやすい | 仙骨・坐骨・踵など骨突出部に一致しやすい |
| 境界 | 比較的不明瞭(まだら) | 比較的明瞭(局所) |
| 所見 | 発赤・浸軟・びらん/ヒリつき・疼痛 | 消えない発赤、水疱、壊死、深部損傷を伴い得る |
| 運用 | 洗浄 → 保湿 → バリア+曝露時間短縮 | 除圧・ずれ低減+体位/寝具の再設計 |
| 混在 | 混在はよくあります。清潔化+バリアと除圧を並行開始し、 24–48 時間で比較できるように再評価時間を先に決めます。 | |
迷わない 1 分フロー(混在前提)
ポイントは「どっちかを決め切る」より、仮置きして外さないことです。迷ったら、 IAD と褥瘡の両方に効く初期対応を先に始め、比較できる記録を残します。
- 失禁曝露はある?(尿・便・下痢、湿潤時間)
- 分布はびまん性?(会陰〜殿部に広がる/左右に広がりやすい)
- 骨突出部に一致する?(仙骨・坐骨・踵など「点」で一致)
- 境界は明瞭?(局所か、まだらか)
- 赤旗はある?(暗赤色・紫色・黒色、急速悪化、強い疼痛、悪臭・膿性滲出、発熱)
- 機械的負荷は?(圧・ずれ・医療機器の当たり、座位前滑り)
- 結論(仮置き): IAD /褥瘡/混在/別要因 → 介入して再評価予定を決める
赤旗(迷ったら早めにコンサルト)
ここでの目的は、病名を細かく分けることではなく、見逃すと悪くなる所見を先に拾うことです。
- 暗赤色・紫色・黒色、硬結、皮下ポケット(深部損傷疑い)
- 急速悪化、強い疼痛、悪臭・膿性滲出、発熱
- 医療機器の圧迫が疑われる( MDRPI )
赤旗があれば、原因が IAD でも褥瘡でも、除圧と再評価を優先し、感染評価や創傷ケア相談を早めに検討します。
最初の 10 分(やることの優先順位)
ここは「どっちか」にこだわらず、取りこぼしが少ない順に固定します。これだけで初動のズレがかなり減ります。
- 汚染の迅速除去:洗浄 → 保湿 → バリア
- 除圧・ずれ低減:体位、寝具、座位前滑りの見直し
- 失禁マネジメント:交換条件・便後ケアの標準化(曝露時間を短く)
- 再評価の予約: 24–48 時間で比較できるように時間を確保
観察・記録:最小 7 項目(これだけで比較できる)
鑑別でブレる理由は、観察項目が揃っていないことが多いからです。次の 7 項目を毎回同じ順番で書くと、チーム内の合意が速くなります。
- 部位(解剖学的位置)
- 分布(びまん性/骨突出部一致)
- 境界(明瞭/不明瞭)
- 所見(発赤/浸軟/びらん/水疱/壊死)
- 失禁曝露(尿/便/両方、下痢、曝露時間推定)
- 機械的負荷(圧/ずれ/医療機器/座位前滑り)
- 介入(実施したもの)+再評価予定
上の PDF は、これらを 1 枚で記録できる運用用シートです。申し送り欄まで含まれているので、鑑別だけで終わらず、次の 1 手までつなげやすくなります。
現場の詰まりどころ/よくある失敗(対策つき)
スマホでは表を横スクロールできます。
| 詰まりどころ | 起こる理由 | 対策(最小) | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 「どっちか」決め打ちする | 混在が多いのに単一原因で考える | 清潔化+バリアと除圧を並行開始し、 24–48 時間で再評価 | 分布・境界・所見の変化を同一フォーマットで比較 |
| 除圧が後手になる | IAD っぽく見えても圧迫が残っている | 体位・寝具・座位ずれを先に整える | 「圧・ずれ・医療機器」チェックを必ず残す |
| 失禁ケアが人依存 | 交換条件・便後ケアが統一されていない | 交換条件を短文化し、申し送りで揃える | 曝露時間の推定(何時間濡れていたか) |
| 記録が毎回バラバラ | 観察項目の順番が人で違う | 最小 7 項目を固定し、共有事項欄まで同じ型で残す | 再評価予定を先に書いて比較の時点を固定する |
保清・保湿・保護の具体手順は、褥瘡予防のスキンケア手順に分けてあります。ここでは、まず鑑別と初動がズレないことを優先してください。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
IAD と褥瘡は同時に起こりますか?
起こります。混在は珍しくありません。迷ったら「清潔化+バリア」と「除圧・ずれ低減」を並行開始し、 24–48 時間で変化を比較できるように再評価時間を確保します。
びまん性発赤でも褥瘡の可能性はありますか?
あります。骨突出部一致、医療機器の当たり、強い疼痛、暗赤色・紫色などがあれば褥瘡(深部損傷)や MDRPI を疑います。分布・境界・所見を最小 7 項目で揃えて再評価してください。
再評価はどのくらいの頻度が目安ですか?
状態とリスクによりますが、混在や判断が割れるケースは「 24–48 時間で比較できる」ことを最低ラインにすると運用が回りやすいです。悪化が早い、赤旗がある場合はより短い間隔で見直します。
赤旗があるとき、まず何を優先しますか?
診断名より安全優先です。除圧・ずれ低減を最優先にしつつ、感染所見(悪臭・膿性滲出・発熱)や深部損傷疑い(暗赤色・紫色・黒色、硬結、ポケット)なら早めにチームでコンサルトを検討します。
記録が毎回バラバラで、カンファで噛み合いません
最小 7 項目を固定してください。特に「分布」「境界」「失禁曝露」「機械的負荷」を揃えると議論が収束します。上の記録シートをそのまま運用すると、申し送りまで同じ型で残しやすくなります。
次の一手
参考文献
- Doughty D, Junkin J, Kurz P, et al. Incontinence-associated dermatitis: consensus statements, evidence-based guidelines for prevention and treatment, and current challenges. J Wound Ostomy Continence Nurs. 2012;39(3):303-315. doi: 10.1097/WON.0b013e3182549118 / PubMed: 22572899
- Edsberg LE, Black JM, Goldberg M, et al. Revised Pressure Injury Staging System. J Wound Ostomy Continence Nurs. 2016;43(6):585-597. doi: 10.1097/WON.0000000000000281 / PubMed: 27749790
- Francis K. Damage control: Differentiating incontinence-associated dermatitis from pressure injury. Nurse Pract. 2019;44(12):12-17. doi: 10.1097/01.NPR.0000586032.38669.63 / PubMed: 31764470
- European Pressure Ulcer Advisory Panel, National Pressure Injury Advisory Panel and Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. Emily Haesler, ed. 2019. internationalguideline.com
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


