褥瘡スキンケアは「保清 → 保湿 → 保護」を 1 枚で回す
結論として、褥瘡予防のスキンケアは「保清(やさしく洗う)→ 乾かす → 保湿 → 保護(バリア)→ 観察」を、毎日 “同じ順番” で回すほど迷いが減ります。ポイントはやり過ぎないことです。こすり洗い・熱いお湯・厚塗りは、バリア機能を落として逆効果になりやすいので避けます。
まずはこれだけ:スキンケア 1 分フロー(タイミング別)
「誰が・いつ・どこまで」を決めないと、現場ではスキンケアが抜け落ちます。ここでは病棟でも在宅でも回しやすい最小セットを、タイミング別に固定します(迷ったらこの形から)。
| タイミング | やること(順番) | 目安 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 毎日(清拭・入浴・陰部洗浄) | 低刺激で洗う → 押さえて乾かす → 保湿 | 短時間で終える | こすらない/熱い湯を避ける |
| 排泄後(失禁・下痢) | 洗う(拭き取りも可)→ 乾かす → バリア(保護) | 毎回 | “気づいた時だけ” をやめる |
| 除圧・体位変換のたび | 骨突出部を観察(発赤・硬結・熱感・痛み) | 10 秒 | 観察で止めず、原因(圧・ずれ・湿潤)を言語化 |
褥瘡予防の全体フロー(評価 → 除圧 → 再評価)を先に押さえると、スキンケアが「単発作業」ではなく “予防の一部” として組み込めます。褥瘡予防の基本フロー(評価 → 除圧 → 再評価)も合わせて使うと、チームでの説明がそろいやすくなります。
スキンケアの目的は「皮膚バリアを守り、摩擦と湿潤の弱点を消す」
褥瘡は圧だけで起きません。現場で崩れやすいのは、湿潤(失禁・発汗)と摩擦・ずれが重なって皮膚が弱くなり、同じ圧でも壊れやすくなるパターンです。だからスキンケアは「きれいにする」より、壊れにくい状態を作ることがゴールです。
発赤・浸軟・乾燥・びらん( IAD )の拾い上げをルーチン化すると、重症化の手前で止めやすくなります。
手順のコツ:保清・保湿・保護を “やさしく・薄く・均一に”
手順はシンプルですが、失敗は「強く」「長く」「厚く」で起きます。以下の 3 原則で固定すると、バラつきが減ります。
- 保清:短時間・低刺激・こすらない(押さえ拭き)
- 保湿:薄く均一(“テカる厚塗り” にしない)
- 保護(バリア):刺激源(尿・便・汗)を遮断する目的で “必要な部位に”
保湿剤・バリア・保護材の使い分け(迷いを減らす早見)
製品名ではなく、「どの問題を消したいか」で選ぶほうが失敗しにくいです。乾燥が強いのか、失禁で刺激が強いのか、テープ固定で皮膚が弱るのかを先に決めます。
| 困りごと | 第一選択 | 使い方の目安 | よくある失敗 |
|---|---|---|---|
| 乾燥(四肢・下腿など) | 保湿剤 | 薄く均一に。毎日同じタイミングで | 厚塗りでベタつき → 摩擦が増える |
| 失禁・下痢(殿部・会陰) | バリア(保護) | 排泄後 “毎回”。洗浄 → 乾燥 → バリア | 気づいた時だけ/塗り残し |
| テープ・デバイスで皮膚が弱る | 皮膚保護(剥離・刺激の低減) | 貼付前後の皮膚観察をセット化 | 剥がし方が強い/同じ場所に貼り続ける |
NG 集:皮膚を弱らせる “やり過ぎ” を止める
褥瘡スキンケアは「丁寧にやるほど良い」ではありません。壊れるのは、だいたい “やり過ぎ” 側です。
| NG | なぜダメ? | 置き換え | 記録に残すなら |
|---|---|---|---|
| こすり洗い | 角質・バリアを削りやすい | 低刺激+押さえ拭き | 洗浄方法(押さえ拭き) |
| 熱いお湯で長く洗う | 乾燥と刺激が増える | ぬるま湯+短時間 | 洗浄時間(短) |
| 保湿の厚塗り | ベタつきで摩擦が増える | 薄く均一に | 塗布量(薄く) |
| テープを勢いよく剥がす | 剥離で皮膚障害( MARSI ) | 皮膚を押さえながらゆっくり | 固定方法・皮膚所見 |
最小記録テンプレ:観察 → 介入 → 再評価が回る 7 点
スキンケアは “やったかどうか” だけだと次に活かせません。最小限、次の 7 点だけ固定すると、チームで再現しやすくなります。
- 部位(仙骨・踵骨・大転子など)
- 所見(発赤・硬結・熱感・びらん・浸軟)
- 原因仮説(圧 / ずれ / 湿潤 / テープ)
- 実施(洗浄 / 保湿 / バリア / 保護)
- 体位・支持面の条件(座位時間やクッション含む)
- 次回チェック時刻(いつ見直すか)
- 反応(改善 / 不変 / 悪化)
配布 PDF(印刷してそのまま使える A4 記録シート)
院内で「誰が・いつ・どこまで」をそろえる用途で、印刷用の A4 記録シート( PDF )を用意しました。まずは 1 枚で回し、必要なら院内ルールに合わせて運用の言い回しを統一すると実装率が上がります。
現場の詰まりどころ(よくある失敗)と直し方
スキンケアの目的は理解できていても、実務では「誰が・いつ・どこまで」で詰まりがちです。特に多いのは、①洗浄時にこすり洗いが残る、②保湿が “塗れば塗るほど良い” になってしまう、③バリアが排泄後の毎回でなく “気づいたときだけ” になる、④保清・保湿・保護と体圧管理が分断され、全体像が見えにくい、の 4 つです。
直し方は、「タイミング別 1 分フロー」を先に固定し、記録は最小 7 点だけに絞ることです。新人教育や観点の統一が必要な場面では、面談準備チェック(ダウンロード)のように “見落としを減らす観点” を 1 つ持っておくと、チーム内で言語化がそろいやすくなります。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1.どの程度まで洗浄すれば「保清」の目標は達成と考えてよいですか?
「においが完全になくなるまで」「皮膚がきしきしするまで」ではなく、見える汚れと明らかな付着物が除去できた時点を目安にします。低刺激洗浄剤+ぬるま湯で短時間に終え、拭き取りは押さえ乾燥にします。必要以上の洗浄はバリア機能を損ね、予防の目的に反します。
Q2.保湿剤はどこに、いつ塗ればいいですか?
乾燥部位には、入浴後や清拭後など “乾いた直後” に薄く均一に塗布します。殿部・会陰は湿潤が続きやすいため、まずは洗浄 → 乾燥を優先し、必要な場合のみバリアで刺激源(尿・便)を遮断します。
Q3. IAD と褥瘡が重なっているとき、何を優先すべきですか?
圧(持続的な荷重)のコントロールと、刺激源(尿・便)のコントロールを同時に進めます。びらん・浸軟が強い部位は洗浄 → 乾燥 → バリアで刺激を遮断しつつ、骨突出部への荷重を減らします。
Q4.リハ中の座位・立位練習で皮膚ダメージを増やさないコツは?
練習時間の延長より、接触面と姿勢の質を優先します。座位ならクッションと座面条件、立位なら荷重部位の確認と休憩設定を先に決めます。スキンケアと一体で褥瘡予防を考えると、安全なリハにつながります。
次の一手(関連:迷ったときの戻り先)
参考文献
- EPUAP/NPIAP/PPPIA. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. 2019. 公式ページ.
- Japanese Society of Pressure Ulcers. JSPU Guidelines for the Prevention and Management of Pressure Ulcers (3rd Ed.). PDF.
- Clinical Excellence Commission (NSW). Incontinence-Associated Dermatitis ( IAD ) Best Practice Principles. 2021. PDF.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


