褥瘡対策に関する診療計画書の書き方と記載例

制度・実務
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褥瘡対策に関する診療計画書とは?(まず結論)

「褥瘡対策に関する診療計画書」は、褥瘡ハイリスク患者や褥瘡を有する入院患者に対して、多職種でリスク評価・対策・再評価の流れを明文化するための計画書です。褥瘡対策の基準 にも位置づけが示されており、入院基本料の施設基準と紐づく書類でもあります。医師・看護師を中心に、リハビリ・栄養・薬剤などが関わる前提で作られており、「誰が・いつ・何をするか」をチーム全体で共有するための土台になります。

本記事のゴールは、「褥瘡の診療計画書を初めて書く医師・看護師・リハ職」が、迷わず記載できる状態になることです。元となる公式様式は厚労省の通知に従いますが、ここで配布するのは rehabiikun blog 独自の「教育用ひな形」です。各施設のローカル様式や最新通知を必ず併せて確認しつつ、チームでの話し合いのたたき台として活用してください。なお、施設基準全体の整理は 褥瘡対策の基準の進め方、加算や報告書とのつながりは 褥瘡対策加算 15 点・5 点の違い褥瘡対策に係る報告書(様式 5 の 4)褥瘡ハイリスク患者ケア加算の報告書(様式 37 の 2) もセットで押さえておくと全体像がつかみやすくなります。

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褥瘡診療計画書のひな形(空欄+記載例付き A4 シート)

まずは、厚生労働省の「褥瘡対策に関する診療計画書(別紙様式)」をベースにした、空欄+記載例付きの A4 シートを用意しました。ブラウザで開いてそのまま印刷することを想定したレイアウトで、 1 ページ目が記入用、 2 ページ目がモデルケースの記載例になっています。施設基準全体の中での位置づけを確認したい場合は、あわせて 褥瘡対策の基準の進め方 も参照してみてください。

下記リンクから rehabiikun blog オリジナルのひな形を開けます。印刷して手書きで使っても良いですし、内容を院内様式に写し取る際の「どこまで書くか」の目安としても使えます。加算や報告書とのつながりを確認したい場合は、褥瘡対策加算褥瘡対策に係る報告書 の記事も参考になります。

褥瘡対策に関する診療計画書(空欄+記載例付き A4 シート)を開く

計画書の構成と「どの欄で何を見るか」

褥瘡診療計画書の構成は、大きく分けると ①患者情報と褥瘡の有無・既往歴、②日常生活自立度と危険因子、③褥瘡の状態評価、④対策計画(看護・リハ・栄養・薬学)、⑤多職種の署名・再評価という流れになっています。まずは「この用紙で何をゴールにしたいのか」を把握しておくと、必要以上に情報を書き込み過ぎず、読み手にも分かりやすい計画になります。

ポイントは、「全入院患者の中からハイリスク者を拾う欄」と、「ハイリスク者に対して具体的な対策を書く欄」を分けて考えることです。前者は日常生活自立度や栄養状態などのリスクスクリーニング、後者はマットレス・体位変換・シーティング・活動量・栄養・薬剤などの具体的な介入を書き分けます。記事後半では、各欄で最低限押さえておきたい書き方のコツを順に解説します。

日常生活自立度・褥瘡危険因子欄の書き方

「日常生活自立度・褥瘡危険因子」のブロックは、「全入院患者の中から褥瘡ハイリスクの患者さんを見つけるスクリーニング欄」です。寝たきり度( J ・ A ・ B ・ C )やベッド上体位変換の可否、座位保持と除圧の可否、病的骨突出、関節拘縮、栄養状態、皮膚の湿潤や脆弱性などをチェックし、褥瘡がなくても「今後できそうかどうか」を見立てておきます。危険因子評価票の回し方は、厚労省「危険因子評価票」の運用プロトコル Braden スコアの実務ガイド に詳しくまとめています。

記載のコツは、「観察事実」+「リスクの意味づけ」を短いフレーズで書くことです。例えば「ベッド上体位変換:自力不可、 2 時間毎の介助で実施」「病的骨突出:仙骨・両踵で顕著」「栄養:体重 5 kg 減・ Alb 2.8 g/dL で低栄養と判断」など、評価の根拠が分かる一言を添えると、後続の褥瘡対策計画につながりやすくなります。褥瘡リスク評価に用いるスケールの全体像は、評価ハブ(リスクスケール一覧)も参考にしてください。

褥瘡の状態評価欄(DESIGN-R 等)の押さえどころ

「褥瘡の状態評価」のブロックでは、「どの部位に」「どの程度の深さと大きさの褥瘡があり」「局所所見がどう変化しているか」を整理します。深さ( Stage )、大きさ(長径×短径、ポケットの有無)、滲出液量、壊死組織や肉芽の状態、周囲皮膚の発赤や浮腫、疼痛などを、 DESIGN-R や NPUAP 分類などの基準に沿って評価します。

ここで重要なのは、「治療前後で比較できる形で書く」ことです。「縦 3.0 cm × 横 4.0 cm、ポケット 1.5 cm」「滲出液:中等量、やや黄白色」「周囲皮膚:発赤と軽度浮腫あり」といった書き方にしておくと、ドレッシング材の選択や体圧分散の効果判定がしやすくなります。また、評価日と体位条件(仰臥位・座位など)は必ず明記し、写真番号があれば一緒に残しておくとカンファレンスで話し合いやすくなります。

褥瘡対策計画欄:看護とリハで何を書くか

「褥瘡対策計画」のブロックは、体圧分散・体位変換・シーティング・スキンケア・活動量・家族指導などを多職種で分担して書く欄です。看護はマットレスや体位変換、排泄ケアやスキンケア、リハ職は離床・歩行・座位耐久・除圧指導、作業療法はポジショニングやシーティング、言語聴覚士は摂食嚥下や栄養摂取状況など、それぞれの専門性を活かして計画を整理します。マットレスやポジショニング、車椅子クッションの具体的な組み立ては、体圧分散マットレス導入・モニタリングプロトコルポジショニング運用プロトコル車椅子クッション適合評価プロトコル もあわせて参照するとイメージしやすくなります。

記載のポイントは、「具体的な頻度・方法・目標」を書くことです。例えば「エアマットレス(中圧)導入、 2 時間毎に 30°側臥位ローテーション」「車椅子クッションをジェル+フォームのハイブリッドに変更し、 30 分ごとに前傾除圧」「週 5 日、起立訓練と平行棒内歩行を実施し、 2 週間後に歩行レベルと褥瘡状態を再評価」のように、誰が見ても同じように実行できるレベルまで言語化しておきましょう。

薬学的管理・栄養管理欄の活かし方

薬学的管理の欄では、鎮静薬・睡眠薬・ステロイド・免疫抑制剤・鎮痛薬など「褥瘡に影響しうる薬剤」の有無と対策を書きます。過鎮静による体動低下や、 NSAIDs 長期使用による創傷治癒への影響など、薬物療法と褥瘡対策の関係を整理し、必要に応じて減量や時間調整、別薬への変更などを検討します。

栄養管理の欄は、体重・ BMI ・ Alb ・摂取量などから栄養状態を評価し、「エネルギー 30 kcal/kg/日・たんぱく質 1.2〜1.5 g/kg/日」といった目標量と具体的な手段を書きます。経口+補助食品で行くのか、経管栄養や静脈栄養を併用するのか、 NST 介入が必要かなどを明確にしておくと、栄養士・医師・リハの間で「誰が何をするのか」が共有しやすくなります。ベースとなる栄養スクリーニングや GLIM とのつなぎ方は、PT の栄養スクリーニング運用プロトコル も参考になります。

入院時から退院までの実務フローと再評価

実務としては、「入院時のリスク評価 → ハイリスク者の診療計画書作成 → 多職種カンファレンス → 定期的な再評価 → 退院支援と情報提供」という流れを回していきます。入院時のリスクスクリーニングで C ランクや低栄養が疑われる患者さんを拾い、褥瘡がなくてもハイリスクと判断した時点で計画書を起こしておくと、予防的な介入がしやすくなります。この一連の流れは、施設全体の体制としては 褥瘡対策の基準の進め方 で整理している内容とも対応します。

再評価のタイミングは、「褥瘡の状態が変化したとき」「マットレスやクッションを変更したとき」「離床レベルや栄養状態が変わったとき」が目安です。計画書を更新したら、カンファレンスや申し送りでチーム全体に共有し、退院時は訪問看護・訪問リハ・施設などにコピーを渡して「病院での対策内容」を引き継ぐと、生活期での褥瘡予防にもつながります。加算算定や報告書作成の観点では、褥瘡対策加算 15 点・5 点の違い褥瘡対策に係る報告書(様式 5 の 4)褥瘡ハイリスク患者ケア加算の報告書(様式 37 の 2) に記載したチェックポイントとも整合を取っておくと安心です。

おわりに:診療計画書を「形だけ」で終わらせないために

褥瘡対策では、「全入院患者のリスク評価 → ハイリスク者の診療計画 → 多職種カンファレンス → 対策の実行と再評価 → 退院後の予防」というリズムで回すことが大切です。診療計画書は単なる書類ではなく、「誰が・どの患者さんに・いつ何をするか」をチームで共通認識にするためのツールとして活用できると、褥瘡の発生・悪化を大きく減らせます。施設基準や加算、報告書との関係は、本稿とあわせて 褥瘡対策の基準の進め方褥瘡対策加算 15 点・5 点の違い褥瘡対策に係る報告書(様式 5 の 4)褥瘡ハイリスク患者ケア加算の報告書(様式 37 の 2) の 4 本をセットで押さえておくと整理しやすくなります。

一方で、現場では人員や時間に限りがあり、褥瘡対策や書類作成が一部のスタッフに偏ってしまうことも少なくありません。負担が偏り過ぎていると感じる場合は、院内での役割分担や教育体制を見直すことはもちろん、ご自身の働き方や職場環境そのものを整理することも大切です。

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よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

診療計画書を書く時間が足りないとき、どこまで必ず書くべき?

理想を言えばすべての欄を丁寧に埋めたいところですが、現場で時間が限られることも多いと思います。その場合は、①ハイリスクと判断した根拠(自立度・危険因子の要約)、②多職種で共有すべき中核介入(マットレス・体位変換・栄養・離床など)、③再評価のタイミングの 3 点だけは必ず記載しておくことをおすすめします。

逆に、個別指導や家族説明などの詳細は、余裕があるときに追記するイメージでも構いません。そもそも慢性的に記載時間が確保できない場合は、業務分担やカンファレンスの持ち方など「体制側の課題」であることも多く、個人の努力だけで抱え込まないことも大切です。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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