急性期→回復期→在宅のリハ引継ぎは「判断・記録・次の条件」の3点をそろえます
急性期→回復期→在宅のリハビリテーションでは、病期ごとの評価項目をすべて同じにする必要はありません。先にそろえたいのは、①開始・保留の判断根拠、②実施内容と反応を残す共通記録、③次病期で再現する実施条件・中止/相談条件・再評価時点の3点です。
本記事の「3点」は厚生労働省が定めた統一様式ではなく、令和8年度診療報酬改定で示された退院時リハビリテーション指導や療法士業務の見直しを踏まえ、病期横断で情報をつなぐために整理した実務フレームです。PT・OT・STが「次の担当者へ何を渡せばよいか」を最短で確認できる形に絞ります。

令和8年度診療報酬改定の全体像を先に確認する
2026改定で変わった制度と、本記事の実務整理は分けて考えます
令和8年度診療報酬改定では、退院時リハビリテーション指導料の対象患者が見直されたほか、疾患別リハビリテーション料の専従療法士や病棟配置療法士が、退院時指導など職務上必要な業務へ関われることが明確化されています。
一方、本記事で示す「開始判断・共通記録・引継ぎ」の3点は、制度上の算定要件をそのまま並べたものではありません。改定内容を院内運用へ落とす際に、次担当者が判断を再現しやすくするための実務上の整理です。
| 区分 | 確認する内容 | この記事での扱い |
|---|---|---|
| 制度上の確認 | 退院時リハ指導料の対象、療法士が従事できる業務など | 厚生労働省資料を根拠に確認する |
| 実務上の共通化 | 開始・保留の根拠、共通記録、次病期へ渡す条件 | 施設内で使いやすい共通骨格として整理する |
病期横断でそろえるのは3点です
共通化するのは評価項目そのものではなく、次担当者が「なぜその判断になったか」「どの条件なら続けられるか」を追える記録の骨格です。病期や疾患で異なる安全基準まで一律化せず、3つの枠だけを共通にします。
1.開始・保留の判断根拠
最初に残すのは、実施できたかどうかだけではなく、その判断根拠です。保留した場合は「保留」で終わらせず、何を確認すれば再評価できるかまで残します。
- 開始できるか、保留するか
- その判断根拠は何か
- 保留した場合、何を確認して再評価するか
- 次の確認時点はいつか
注意:血圧、SpO₂、症状などの具体的な中止基準は、疾患、術式、医師指示、施設基準によって異なります。病期横断で共通化するのは「中止・相談条件を残す枠」であり、すべての患者に同じ数値基準を当てはめることではありません。
2.実施内容と反応を同じ順番で記録する
記録は長文化するより、「実施前の条件→何をしたか→どう反応したか→次回どうするか」の順にそろえる方が、担当者が変わったときに読み返しやすくなります。
- 実施前:開始可否と注意条件
- 実施:実施内容と介助・負荷条件
- 反応:実施中・実施後の変化
- 次回:継続条件、修正点、再評価項目
3.次病期へ「条件」を1行で渡す
引継ぎで重要なのは、評価結果を並べることより、次担当者が同じ条件で介入を再開できることです。そのため、最低限「実施条件・中止/相談条件・再評価時点」の3枠を残します。
引継ぎ1行テンプレ
実施条件:○○ / 中止・相談条件:○○ / 再評価時点:○○
この3枠があれば、「前の病期ではできていた」という結果だけでなく、どの条件で成立していたかまで次担当へ渡せます。
急性期・回復期・在宅では「見る重点」を変え、渡す型はそろえます
病期によって重点は変わります。急性期では安全に開始・継続できる条件、回復期ではADLや退院後生活へつながる条件、在宅では生活の中で継続できる条件が中心です。
一方、次担当へ渡す型は共通化できます。すべての評価結果を申し送るのではなく、次の場面で必要となる情報を優先します。
| 病期 | その場で見る重点 | 次へ渡す内容 |
|---|---|---|
| 急性期 | 開始・保留判断、初回反応、安全に進める条件 | 開始・継続できる条件、保留理由、再評価時点 |
| 回復期 | 負荷進行、ADL、退院後に残る課題 | 生活で再現できる条件、必要な介助、残るリスク |
| 在宅・外来 | 生活への定着、継続可能性、状態変化 | 継続条件、相談が必要な変化、次の再評価時点 |
転棟・転院・退院前は「確認→決定→共有」の順で5分確認します
病期間の接続が崩れやすいのは、情報量が少ないときだけではありません。「誰が次に読むのか」「何を決めてから渡すのか」が曖昧なまま申し送ると、情報が多くても判断をやり直すことになります。
転棟・転院・退院前には、確認、決定、共有の3段階に絞ると整理しやすくなります。
| 段階 | 確認すること | 残すこと |
|---|---|---|
| 確認 | 現在の実施条件、残るリスク、直近の反応 | 何ができ、何が不安定か |
| 決定 | 次病期で継続する条件と再評価項目 | 実施条件、中止・相談条件、再評価時点 |
| 共有 | 次担当者が記録だけで介入を再開できるか | 不足情報と確認担当者 |
よくある失敗は「結果だけ渡す」「基準まで一律化する」「再評価時点を書かない」の3つです
共通フォーマットを作っても、評価結果の羅列だけでは病期横断の引継ぎには不十分です。次担当者が判断を再現できる情報になっているかを確認します。
| NG | なぜ困るか | OK |
|---|---|---|
| 「歩行可能」など結果だけ渡す | 成立していた条件が分からない | 介助量、環境、負荷など実施条件も残す |
| 病期をまたいで同じ中止基準を固定する | 疾患・病態・医師指示の違いを反映できない | 中止・相談条件を書く枠だけ共通化する |
| 「経過観察」で終える | 次に誰がいつ判断するか分からない | 再評価時点と確認する項目を残す |
引継ぎ前は「次担当者が記録だけで動けるか」を確認します
記録を増やすことより、次担当者が判断をやり直さずに済むかを確認してください。最後に以下の4点がそろっていれば、病期横断の共通骨格として使いやすくなります。
- 開始・保留の判断根拠が残っている
- どの条件で実施できたかが分かる
- 中止・相談が必要となる条件が分かる
- いつ、何を再評価するかが分かる
不足がある場合は長い申し送り文を追加するのではなく、欠けている1項目だけ補います。
よくある質問
Q1. 「開始判断・記録・引継ぎ」の3点は2026改定で必須になった項目ですか?
この3点は、厚生労働省が示した統一様式や必須3項目をそのまま示したものではありません。令和8年度改定で確認できる退院時リハビリテーション指導や療法士業務の見直しを踏まえ、病期横断で情報をつなぎやすくするために本記事で整理した実務フレームです。
Q2. 病期ごとに評価項目が違っても共通化できますか?
できます。評価項目や負荷量を統一するのではなく、「判断根拠・実施条件・反応・次の条件」という記録の順番を共通化します。必要な評価項目は病期や疾患に応じて追加します。
Q3. 中止条件も全病期で同じ数値にした方がよいですか?
一律化はしません。具体的な中止基準や相談基準は、疾患、病態、術式、医師指示、施設運用などで異なります。共通化するのは「中止・相談条件を記録する枠」です。
Q4. まず1つだけ直すなら何ですか?
引継ぎ欄に「実施条件/中止・相談条件/再評価時点」の3枠を追加します。評価結果だけでなく、次担当者がどの条件で再開・再評価するかまで残せるようになります。
次の一手
退院時の算定対象や具体的な診療録まで確認する場合は、病期横断の引継ぎとは分けて、退院時リハビリテーション指導料の各論で確認してください。
参考文献
- 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定説明資料等について.2026.厚生労働省
- 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定の概要 13.重点的な対応が求められる分野(医学管理・リハビリテーション).2026.PDF
- 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定の概要 8.質の高い在宅医療の推進.2026.PDF
- 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定について.2026.厚生労働省
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

