2026年診療報酬改定とリハビリ|急性期〜在宅のポイント整理

制度・実務
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2026 年診療報酬改定とリハビリテーションの全体像

2026 年(令和 8 年)診療報酬改定では、「質の高いリハビリテーションの推進」「発症早期からのリハ介入」「土日祝日のリハ実施体制の充実」に加え、栄養・口腔・在宅医療との連携強化や医療 DX 、タスクシフトなどが大きな柱として示されています。ただし、こうした基本方針だけを眺めていても、自分の病棟や事業所で何を準備すればよいかはイメージしにくいのが実情です。

そこで本記事では、急性期・回復期(ポストアキュート)・外来/在宅という「病期別・フィールド別」に、リハが押さえておきたい実務上のポイントを整理します。改定の 4 つの柱や骨子案の読み解き方については、別記事の令和 8 年診療報酬改定の基本方針まとめ( PT 目線 )で扱っていますので、本記事とあわせて「全体像 → 病期別の具体策」という流れで活用していただくイメージです。

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急性期:発症早期リハと土日リハ体制の評価

急性期では、「発症早期からのリハビリテーション介入」と「土日祝日を含むリハ実施体制」が明確なキーワードになっています。2024 年改定で新設された急性期リハ関連加算や「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」は、重症患者への早期集中的介入と、多職種での ADL ・栄養・口腔評価をセットで行うことを評価する仕組みでした。2026 年改定では、これらの運用状況や届け出率を踏まえつつ、要件や評価のメリハリが調整される可能性があります。

現場の PT ・ OT ・ ST にとっては、「どの疾患で、どのタイミングから、どのような内容のリハを開始しているか」をチームで共有し、休日を含めたリハ体制との整合性を取ることが重要です。また、入棟後 48 時間以内の ADL 評価・栄養評価・口腔評価を誰がどのようなツールで行うか、記録様式や情報共有のフローを標準化しておくことで、連携体制加算など今後の評価にも対応しやすくなります。

回復期・ポストアキュート:アウトカムと在宅復帰の質

回復期リハ病棟や地域包括ケア病棟では、従来から「実績指数」「重症患者割合」「在宅復帰率」などの指標が評価の軸となってきました。2026 年改定に向けた議論でも、無理な患者受け入れを求めるのではなく、適切な患者像と在宅復帰支援、日常生活機能のアウトカムに着目した評価が重視される方向性が示されています。単に単位数をこなすだけでなく、「どのような患者に、どのような変化をもたらしたか」が問われやすくなるイメージです。

そのため、 PT ・ OT ・ ST には FIM や BI 、歩行自立度、生活空間( LSA など)といった指標を用いて、入院中の変化と退院時の状態を分かりやすく説明できることが求められます。退院後の通所・訪問・外来リハとの連携も含め、目標設定とアウトカム評価を一貫した流れで整理しておくと、「患者単位」「病棟単位」のどちらでも成果を語りやすくなり、改定後の評価にもつながりやすくなります。

外来・在宅:生活期リハと在宅医療のハブとして

基本方針では、「在宅医療・訪問看護の質の確保」とともに、リハビリテーション・栄養管理・口腔管理による高齢者ケアが重要な柱として示されています。生活期のリハは、単に筋力や関節可動域を維持するだけでなく、フレイル・サルコペニア・栄養状態・口腔機能などを総合的に評価し、医師や看護師、管理栄養士、歯科衛生士、ケアマネジャーと情報を共有する「ハブ」として期待されています。

訪問リハや通所リハでは、 J-CHS 基準や AWGS2019 、 NRS-2002 ・ MST などの栄養・フレイル評価を用いつつ、活動量や生活空間の広がりを定期的にモニタリングすることがポイントです。外来リハでは、急性期や回復期からのフォローアップとして、再発予防や運動習慣の定着を支援する役割が強まると考えられます。退院時共同指導や退院前カンファレンスの段階から「退院後のリハ・栄養・口腔のフォロー体制」をセットで設計しておくと、改定後も途切れにくい在宅支援につなげやすくなります。

タスクシフト・ DX ・アウトカム評価など横断テーマ

2026 年改定の基本方針では、「医療 DX 」「アウトカムに着目した評価」「タスクシフト・タスクシェア」が医療全体の共通テーマとして掲げられています。リハ領域においても、電子カルテやデータベースを活用したアウトカム集計、標準化されたプロトコルに基づく介入、看護・介護職との役割分担の整理などが求められつつあります。「誰が担当しても一定以上の質が担保されるリハ」をつくることが、働き方改革と報酬評価の両方の観点から重要になってきます。

具体的には、疾患別クリニカルパスや病棟別のリハプロトコルを整備し、歩行自立度や転倒件数、褥瘡リスクなどの指標を院内で簡単に集計できるようにしておくことが一例です。また、ポジショニング・基本動作・早期離床など、リハ以外の職種が担える部分をタスクシフトし、 PT ・ OT ・ ST は評価・方針決定・多職種連携・患者教育など「専門性の高い部分」に集中できる体制を目指すことで、限られた人員でも質の高いケアを継続しやすくなります。

現場の詰まりどころと、今からできる準備

改定のたびに問題になるのが、「加算を取りたいが、人員やシフトが追いつかない」「連携体制を整えたいが、カンファレンスの場が足りない」「アウトカム評価をしたいが、記録や集計がバラバラ」といった現場の詰まりどころです。要件を一気にすべて満たそうとすると、 PT ・ OT ・ ST の負担だけが増え、「書類業務ばかり増える改定」という印象になりがちです。

まずは、既に使っている評価指標やカンファレンス様式を見直し、「どの疾患で何を必ず評価するか」「どのタイミングでどの職種が集まるか」をシンプルなフローに落とし込むことから始めてみるのがおすすめです。改定前から小さく試し、自部署での成功例を積み重ねておくと、院内の委員会やプロジェクトで提案しやすくなります。こうした動きは、将来的に評価される働き方やポジションづくりにも直結していきます。

おわりに|改定の波に「振り回されない」ために

診療報酬改定そのものは 3 年ごとに内容が変わりますが、「発症早期からのリハ」「土日祝日も含めた継続的な介入」「栄養・口腔を含めた多職種連携」「在宅を見据えたアウトカム重視」という大きな方向性は、ここ数回の改定で一貫しています。2026 年改定も、この流れをさらに推し進めつつ、医療 DX やタスクシフトを通じて、限られた人員で質を維持していくことが求められる改定と捉えるとイメージしやすいでしょう。

「点数表を追いかける」のではなく、「どんなケアや体制が評価されるのか」という視点から、自分の学び方や働き方を少しずつアップデートしていくことが大切です。制度の変化をきっかけに職場環境やキャリアを見直したいと感じたら、面談準備チェックや職場評価の視点を整理したマイナビコメディカル活用ガイドなども参考にしながら、自分にとって無理のない「働き方のアップデート」を考えてみてください。

参考文献・資料

  • 厚生労働省中央社会保険医療協議会:令和 8 年度診療報酬改定の基本方針(案). 2025 年 10 月公表資料.
  • 厚生労働省保険局医療課:令和 6 年度診療報酬改定の概要(個別改定事項)リハビリテーション関連. 2024 年 3 月.
  • 厚生労働省:入院・外来医療等の調査・評価分科会における検討結果(急性期一般入院料・地域包括ケア病棟等). 2025 年 10 月.
  • 中医協総会資料(令和 8 年改定に向けた急性期・回復期リハビリテーションに関する論点整理). 2025 年 11 月.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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