退院支援の進め方|3日・7日・14日とPTの5ステップ

制度・実務
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退院支援は「制度上の期限」と「5ステップ」を分けると進めやすくなります

退院支援で迷いやすいのは、「いつ動くか」と「何を確認するか」が混ざってしまうことです。結論からいうと、まず入退院支援加算における3日・7日・14日の意味を確認し、そのうえで実務を早期整理 → 選択肢化 → 具体化 → 検証 → 引き継ぎの5ステップで整理すると、次に何をすべきか判断しやすくなります。

本記事は、病棟で退院支援に関わるPT・OT・STなどを対象に、制度上の期限、PTが多職種へ出す情報、退院先を検討するときの順番、家族・地域へ共有する情報の最小型までをまとめます。なお、本記事の5ステップは診療報酬上の公式な手順ではなく、退院支援を実務で進めるための整理方法です。

退院支援の制度上の期限と実務5ステップを整理した図版
退院支援では、制度上の期限を確認したうえで、実務の5ステップを別に整理すると現在地と次の行動が分かりやすくなります。

最初に確認:退院支援の「3日・7日・14日」は何の期限か

3日・7日・14日は、退院支援全体を終える期限ではありません。退院困難要因の抽出、患者・家族との話し合い、退院支援計画への着手、カンファレンスでは、それぞれ扱いが異なります。

令和8年度診療報酬は2026年6月1日から適用されています。入退院支援加算1では原則として入院後3日以内、入退院支援加算2では原則として入院後7日以内に、退院困難な要因を有する患者を抽出します。

スマートフォンでは表を横スクロールして確認できます。

入退院支援加算1・2で確認したい主な期限
確認事項 入退院支援加算1 入退院支援加算2
退院困難要因の抽出 原則、入院後3日以内 原則、入院後7日以内
患者・家族との話し合い 一般病棟等・地域包括医療病棟・回復期リハ病棟・地域包括ケア病棟は原則7日以内。療養病棟等は原則14日以内 できるだけ早期
退院支援計画の作成着手 入院後7日以内 入院後7日以内
カンファレンス 入院後7日以内 できるだけ早期

ここを混同しない:「入院後7日以内」は、すべての病棟で家族との話し合いを終える期限という意味ではありません。入退院支援加算1の療養病棟入院基本料等では、患者・家族との話し合いは原則14日以内です。一方、退院支援計画は入院後7日以内に作成へ着手します。

また、令和8年度改定では、退院困難な要因として患者の意思決定支援や退院後の生活調整を行う際に、家族や親族との連絡が困難であることが追加されました。

家族や親族との連絡が困難な場合でも、状況に応じて家族・親族以外で意思決定や退院支援に関わる者を特定して連絡するなど、必要な支援につなげることが示されています。制度上の期限だけを追うのではなく、患者ごとの退院予定日や課題に合わせて調整を進めることが重要です。

退院支援を5ステップで整理する

制度上の期限を確認したら、実務では①早期整理 ②選択肢化 ③具体化 ④検証 ⑤引き継ぎの順で整理すると、現在地と次の行動が分かりやすくなります。

この5ステップは公式の算定要件ではなく、本記事で退院支援を整理するための実務フローです。情報がそろっていない段階で退院先を決め切らず、誰が・何を・いつまでに確認するかを明確にすることを重視します。

退院支援を進める5ステップ
ステップ 目的 確認すること 残す情報
1. 早期整理 退院困難要因を把握する 患者の能力、生活課題、介護力、住環境、未確認事項 課題と次の確認事項
2. 選択肢化 退院先を条件付きで考える 自宅・施設・転院などの候補と成立条件 候補ごとの条件
3. 具体化 必要な支援を決める 介助、サービス、福祉用具、環境調整、家族支援 優先事項・担当・期限
4. 検証 見立てを実生活に近い条件で確認する 必要に応じて家屋調査、試験外泊、介助指導など できた条件、残った課題
5. 引き継ぎ 退院後へ支援をつなぐ 現状、優先リスク、安全条件、継続・再評価事項 退院時の情報提供

ステップ1:退院先を考える前に「退院困難要因」を整理する

最初に行うのは、退院先を決めることではなく、何が退院の障壁になるのかを整理することです。患者本人の身体機能だけでなく、認知・行動、医療面、栄養、家族・介護力、住環境、利用できる支援などを多職種で確認します。

PTが特に整理しやすいのは、生活場面で介助が増える場所と、その原因です。ただし、PTだけで退院困難要因を判断するのではなく、各職種が持つ情報を集めて全体像を作ります。

退院支援で早期に確認したい情報
領域 確認すること PTから共有しやすい情報例
移動・介助量 移乗、歩行、トイレ、屋内移動など 「移乗は見守り、夜間トイレでは介助が増える」
転倒・安全 いつ・どこで不安定になるか 「立ち上がり初動と方向転換でふらつく」
認知・行動 指示理解、注意、見当識、行動上の課題 「通常は指示理解可能だが、疲労時に注意が低下する」
住環境 段差、手すり、動線、トイレ・浴室 「玄関段差の通過方法が未確認」
介護力 誰が・いつ・どこまで支援できるか 「夜間の見守りが可能か家族へ確認が必要」

PTの役割は「見立て・翻訳・合意形成」の3つで考える

退院支援でPTに求められるのは、評価尺度の点数を伝えることだけではありません。生活場面で何ができるか、どこで介助が必要か、どの条件なら安全に行えるかを、多職種や家族が判断できる言葉へ変換します。

退院支援でPTが担いやすい3つの役割
役割 整理すること 共有する言葉の例
見立て 介助量、転倒リスク、疲労、危険になる生活場面 「夜間トイレでは1人介助が必要」
翻訳 できる条件・介助が増える条件 「手すりがあれば見守りで可能」「段差では介助が必要」
合意形成 優先して調整する課題と未確認事項 「まず夜間の安全条件を確認してから自宅退院の条件を再検討する」

同じ歩行能力でも、手すりの有無、段差、夜間の動線、介護者が対応できる時間帯によって、自宅で必要となる支援は変わります。そのため、「できる・できない」の二択ではなく、「どの条件ならできるか」まで示すことが退院支援では重要です。

ステップ2・3:退院先候補と「成立する条件」をセットで考える

退院先が決まらないときは、自宅か施設かを先に決めるのではなく、それぞれの候補が成立する条件を整理します。

たとえば「自宅退院は難しい」とだけ伝えても、何が解決すれば自宅へ戻れるのか分かりません。「夜間トイレの見守り」「玄関段差への対応」「服薬管理」など、候補ごとの不足条件へ分解すると、次に確認することが明確になります。

退院先候補を条件付きで整理する例
候補 現在の課題 成立に必要な条件 次の確認
自宅 夜間トイレで転倒リスク 動線調整、手すり、見守り方法の確保 住環境と介護可能時間を確認
施設 必要な介助量と受け入れ条件が不明 必要な支援を提供できること 施設側へ介助量・医療面を共有
転院 継続して必要な医療・リハ内容がある 転院目的と必要な支援が一致すること 転院先の機能・受け入れ条件を確認

ここで重要なのは、候補を増やすことではありません。候補・条件・未確認事項を分けておくことで、情報不足による停滞を防ぎます。

ステップ4:必要な患者だけ「検証」へ進む

机上の評価だけでは退院後の生活を判断しにくい場合は、必要に応じて家屋調査、試験外泊、家族への介助指導などで見立てを検証します。すべての患者に一律で行うものではありません。

検証するときは、「自宅退院できるか」を漠然と確認するのではなく、何を確かめるために行うのかを先に決めます。

検証前に決めておきたいこと
確認
確認したい場面 玄関段差、トイレ、ベッド周囲、屋内歩行など
判断したいこと 介助者1人で対応可能か、手すりが必要か
成立条件 福祉用具、動線変更、見守りなど
検証後の判断 そのまま進める、条件を変更する、別候補を再検討する

検証で想定どおりにいかなかった場合も、「退院できない」で終わらせず、どの条件が不足していたのかを5ステップの前段階へ戻して整理します。

家族説明は「結論」より先に最大リスクと安全条件をそろえる

家族との意見が分かれたときは、退院先の結論を押し合うより、最も優先して対策したい場面と、その安全条件へ戻ると論点を整理しやすくなります。

家族説明では、次の4点を順番に共有すると、何が決まっていて何が未確定なのかが伝わりやすくなります。

  1. 現在の退院先候補:どこが候補になっているか
  2. 優先するリスク:退院後に特に注意したい場面は何か
  3. 安全条件:何がそろえば実行可能性が上がるか
  4. 次の確認:誰が・何を・いつまでに確認するか

ここでは説明の考え方だけを扱います。退院前カンファレンスでの具体的な議題や家族説明の台本は、記事末の関連記事へ分けます。

ステップ5:退院時は「現状・リスク・安全条件・依頼」を渡す

退院時の情報提供では、文章量よりも受け手が次に何をすればよいか分かることを優先します。最低限、現状、優先するリスク、安全条件、退院後への依頼・再評価事項をそろえます。

地域へ引き継ぐ情報の最小型
項目 書くこと
現状 移動・移乗・トイレなどの介助量と使用用具 「屋内歩行はT字杖で見守り。移乗は軽介助」
優先するリスク 退院後に特に注意したい場面 「方向転換と立ち上がり初動でふらつき」
安全条件 手すり、動線、見守り、用具など 「トイレ動線では手すりを使用。夜間は見守りが必要」
依頼・再評価 退院後に確認してほしいこと 「屋内動線と手すり位置を再評価してほしい」

なお、ここでいう情報整理は診療報酬上の地域連携診療計画そのものではありません。退院後の支援者へ必要な情報を渡すための実務上の整理です。

退院支援が止まりやすい4つの場面

退院支援が停滞したときは、評価項目を増やす前に、候補・条件・未確認事項・担当が分かれているか確認します。

退院支援で起こりやすいズレと立て直し方
ズレ 起こること 立て直し方
退院先を先に決める 自宅か施設かの意見だけが対立する 候補ごとの安全条件と未確認事項を整理する
リスクが散る 対策の優先順位が決まらない 優先して扱うリスクを1つ明確にし、その他も併記する
未確認事項が残らない 次回も同じ情報収集から始まる 誰が・何を・いつまでに確認するか残す
引き継ぎが抽象的 退院後の支援者が安全条件を再確認する必要がある 現状・リスク・安全条件・依頼をセットで渡す

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

退院支援の「3日以内」と「7日以内」は何が違いますか?

入退院支援加算1では原則として入院後3日以内、入退院支援加算2では原則として入院後7日以内に、退院困難な要因を有する患者を抽出します。患者・家族との話し合いや退院支援計画への着手には別の期限・取扱いがあるため、「3日・7日」を退院支援全体の期限として一括りにしないことが重要です。

療養病棟でも患者・家族との話し合いは7日以内ですか?

入退院支援加算1の療養病棟入院基本料等では、患者・家族との話し合いは原則14日以内です。一般病棟入院基本料等、地域包括医療病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟では原則7日以内です。一方、退院支援計画は入院後7日以内に作成へ着手します。

PTは入退院支援加算のカンファレンスに必ず参加しますか?

すべての患者についてPTの参加が一律に必須とされているわけではありません。入退院支援加算1では、病棟看護師、病棟に専任の入退院支援職員、入退院支援部門の職員等によるカンファレンスを行い、必要に応じてその他の関係職種が参加します。移動・介助量・住環境・福祉用具などが退院条件に影響する場合は、PTからの情報提供が重要になります。

退院先が決まらないとき、PTは何を整理するとよいですか?

自宅か施設かの結論を先に出すより、生活上の優先リスク、介助が必要な場面、安全に実施できる条件、未確認事項を整理します。「できる・できない」ではなく「どの条件ならできるか」まで示すと、多職種や家族が次の調整を判断しやすくなります。

次の一手

退院支援全体の流れを整理したら、次は「会議でどう決めるか」と「退院時に誰へ何を渡すか」へ進みます。


参考文献

  1. 厚生労働省. 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保医発0305第6号). 2026. 厚生労働省資料
  2. 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定 入退院支援加算の見直し. 2026. 厚生労働省資料
  3. 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定に関する疑義解釈資料の送付について. 2026. 厚生労働省資料

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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