集団コミュニケーション療法は「複数患者に意味がある ST 」を評価する項目です
集団コミュニケーション療法は、診療報酬上の H008 集団コミュニケーション療法料 にあたる言語聴覚療法です。医師または医師の指導監督の下で、言語聴覚士が複数の患者に対して訓練を行った場合に算定されます。点数表では 1 単位 50 点 、 患者 1 人につき 1 日 3 単位まで です。
名前だけ見ると「個別 ST をまとめて行うもの」と感じやすいですが、実際はそう単純ではありません。大切なのは、 集団で実施することに意味がある患者か 、そして 個別 ST と目的を分けて運用できているか です。制度全体の流れは、令和 8 年 改定リハ領域ハブ で先に全体像を押さえておくと整理しやすくなります。
集団コミュニケーション療法とは
集団コミュニケーション療法は、 複数患者への言語聴覚療法 を制度上評価する項目です。単に同じ課題を複数人へ一度に行うことが目的ではなく、 他者とのやり取り、順番、参加、反応のやり取り といった集団場面そのものを治療に生かすことに意味があります。
そのため、個別 ST の代わりとして考えるよりも、 個別では詰めにくい参加場面を広げる手段 として理解した方が運用しやすいです。制度の理解はもちろんですが、院内で導入するなら「どの患者に、何を狙って、どのように記録するか」まで先にそろえておくことが重要です。
対象患者
集団コミュニケーション療法料の算定対象となるのは、 脳血管疾患等リハビリテーション料 、 廃用症候群リハビリテーション料 、または 障害児(者)リハビリテーション料 を算定する患者のうち、 1 人の言語聴覚士が複数患者に対して訓練を行える程度の症状 で、 集団で行う言語聴覚療法が有効と期待できる患者 です。
つまり、制度上も「誰でも集団でよい」わけではありません。現場では、個別場面だけでは見えにくい 他者への反応 、 会話への参加 、 集団内での役割 、 順番を待つ といった課題を扱いたい患者で考えると整理しやすいです。反対に、密な cue が必要な時期や、 1 対 1 での評価・訓練を優先したい時期は、個別 ST の方が向いています。
算定要件と運用ルール
点数表で押さえるべき基本は、 1 単位 50 点 、 患者 1 人につき 1 日 3 単位まで です。加えて留意事項では、 集団コミュニケーション療法の実施単位数は ST 1 人当たり 1 日のべ 54 単位を限度 とし、脳血管疾患等リハ、廃用症候群リハ、障害児(者)リハと併せて行う場合は、 集団コミュニケーション療法 3 単位を疾患別リハ 1 単位とみなしたうえで、 1 日おおむね 18 単位、週 108 単位を超えない ことが示されています。
このため、患者 1 人あたりの単位数だけ見ていると、実運用でずれやすくなります。特に、個別 ST と集団コミュニケーション療法を組み合わせる施設では、 患者単位の上限 と 担当 ST 側の 1 日・ 1 週の運用 を分けて管理することが重要です。
施設基準で押さえたいポイント
施設基準では、 専任の常勤医師 1 名以上 、 専従する常勤言語聴覚士 1 名以上 、そして 8 ㎡以上の集団コミュニケーション療法室を 1 室以上 有することが求められています。さらに、簡易聴力スクリーニング検査機器、音声録音再生装置、ビデオ録画システム、各種言語・心理・認知機能検査機器・用具、発声発語検査機器・用具、絵カードなどの診断・治療材料といった、必要な器械・器具の整備も必要です。
もうひとつ見落としやすいのが、 リハビリテーションに関する記録は患者ごとに一元的に保管し、常に医療従事者が閲覧できるようにする という点です。なお、 言語聴覚療法における個別療法室と集団コミュニケーション療法室の共用は可能 とされているため、スペース面で導入を迷っている施設では確認しておきたいポイントです。
個別 ST との違い
個別 ST と集団コミュニケーション療法は、人数の違いだけでなく 目的 と 観察したい場面 が異なります。まずは下図で全体像をつかむと整理しやすいです。
スマートフォンでは、表が画面からはみ出す場合があります。左右にスワイプしてご覧ください。
| 比較項目 | 個別 ST | 集団コミュニケーション療法 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 患者ごとの課題を細かく調整し、機能面や構成要素に集中的に介入する | 他者とのやり取り、参加、順番、反応など、集団場面でのコミュニケーションを広げる |
| 向いている場面 | 密な cue が必要な時期、初期評価、個別課題の整理が必要なとき | 他者との相互作用や参加場面の練習に意味があるとき |
| 観察しやすい点 | 課題達成率、理解、表出、反応速度、 cue 量 | 会話への参加、他者への反応、役割行動、順番待ち、やり取りの継続 |
| 記録の焦点 | 個別課題への反応や到達度 | なぜ集団で実施したか、集団だから見えた反応は何か |
| 考え方 | 1 対 1 で詰める訓練 | 「人数が多い個別」ではなく、目的が異なる訓練 |
大切なのは、個別 ST と集団コミュニケーション療法を対立させないことです。実際の現場では、 個別で評価と課題設定を行い、集団で参加場面を広げる という組み合わせの方が使いやすいことが多いです。制度上の算定要件だけでなく、 どの目標をどの場面で狙うか まで分けて考えると運用が安定します。
実施の流れ
集団コミュニケーション療法の実施に当たっては、医師が 定期的な言語聴覚機能能力に係る検査 をもとに効果判定を行い、 集団コミュニケーション療法の実施計画を作成 する必要があります。さらに、 開始時およびその後 3 か月に 1 回以上 、患者またはその家族に実施計画の内容を説明し、その要点を診療録に 記載または添付 します。
流れを固定するなら、次のように整理すると回しやすいです。
| 段階 | 見る点 | 記録のポイント |
|---|---|---|
| 開始前評価 | 集団で行う意義があるか、個別優先ではないかを確認する | 対象選定の理由を残す |
| 目標設定 | 参加、やり取り、反応など、集団で狙う目標を明確にする | 個別 ST と異なる目標を言語化する |
| セッション実施 | 会話参加、順番、役割、他者への反応を観察する | 集団だから見えた反応を書く |
| 効果判定 | 定期的な検査と日常場面の変化をつなげてみる | 継続・変更・終了の判断材料を残す |
| 説明と共有 | 患者・家族への説明、多職種への共有を行う | 説明日、要点、今後の方針を残す |
現場の詰まりどころ
制度の名前を知っていても、運用は別の難しさがあります。特に止まりやすいのは、 対象患者の選び方 、 個別 ST との役割分担 、 記録の焦点 の 3 点です。
| 詰まりどころ | 起きやすい問題 | 先に決めたい対策 |
|---|---|---|
| 対象選定があいまい | 個別で行うべき患者まで集団に入ってしまう | 「集団で狙う目標」が言える患者だけに絞る |
| 個別 ST の延長になる | 人数が増えただけで目的が変わらない | 個別と集団で目標欄を分ける |
| 記録が弱い | 「実施した」だけで、集団の意味が残らない | 他者への反応、参加、役割行動を必ず書く |
| 単位管理が混ざる | 患者単位と ST 側の上限管理がずれる | 患者上限と担当者上限を別表で管理する |
特に記録は、個別 ST の書き方をそのまま流用すると弱くなりやすいです。集団コミュニケーション療法では、 他者への反応 、 会話の開始・維持 、 集団内での参加の安定性 など、集団場面だから見えた変化を残すことが重要です。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
集団コミュニケーション療法はどんな患者に向いていますか?
制度上は、脳血管疾患等リハ、廃用症候群リハ、障害児(者)リハを算定する患者のうち、複数患者に対して ST が訓練できる程度の症状で、集団での言語聴覚療法が有効と期待できる患者です。現場では、他者とのやり取りや参加場面の練習に意味があるかで考えると整理しやすいです。
個別 ST と同じように考えてよいですか?
同じではありません。個別 ST は 1 対 1 で細かく課題を調整しやすく、集団コミュニケーション療法は他者との相互作用や参加場面を扱いやすいのが特徴です。代替ではなく、目的に応じて使い分ける方が実際には運用しやすいです。
患者 1 人あたりの上限だけ見ていれば大丈夫ですか?
十分ではありません。患者 1 人につき 1 日 3 単位までに加え、 ST 1 人当たり 1 日のべ 54 単位、さらに疾患別リハと併せて行う場合は 3 単位を 1 単位換算したうえで 1 日おおむね 18 単位、週 108 単位を超えない管理が必要です。
施設基準で最低限確認したいことは何ですか?
専任の常勤医師 1 名、専従の常勤 ST 1 名、 8 ㎡以上の専用療法室、必要な器械・器具、そして患者ごとの記録を一元的に保管して常に閲覧できる体制です。届出様式や配置図・平面図の提出も必要なので、最新通知とあわせて確認してください。
次の一手
制度全体の位置づけから整理したい方へ:
令和 8 年 改定リハ領域ハブ|全体像と読む順番
単位管理まで続けて押さえたい方へ:
みなし単位〖2026改定〗対象業務・上限・記録の型〖PDF付〗
制度を整えても運用が回りにくいと感じる方へ:
面談準備チェック&職場評価シート
参考文献
- 厚生労働省.診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和 8 年 3 月 5 日,令和 8 年 6 月 1 日適用).H008 集団コミュニケーション療法料.PDF
- 厚生労働省.特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて.第 47 の 3 集団コミュニケーション療法料.PDF
- 厚生労働省.診療報酬の算定方法(医科点数表).H008 集団コミュニケーション療法料( 1 単位 50 点,患者 1 人につき 1 日 3 単位まで).PDF
- 厚生労働省.令和 8 年度診療報酬改定について.改定通知・施設基準・疑義解釈等の総合ページ.公式ページ
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


