集団コミュニケーション療法とは?対象・算定要件・記録例

制度・実務
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集団コミュニケーション療法は「集団で行う意味」を説明できる患者に使う制度です

集団コミュニケーション療法料は、診療報酬上の H008 集団コミュニケーション療法料 にあたる言語聴覚療法です。この記事では、対象患者、算定要件、施設基準、個別 ST との違い、記録で残すべきポイントを整理します。単なる点数暗記ではなく、現場で「この患者に集団で実施する意味があるか」を判断できることを目的にします。

制度全体の流れを先に確認したい場合は、令和 8 年 改定リハ領域ハブ で全体像を確認してから読むと整理しやすいです。

集団コミュニケーション療法とは

集団コミュニケーション療法は、複数患者に対して行う言語聴覚療法を評価する制度です。

単に「個別 ST をまとめて実施する」ものではありません。他者とのやり取り、順番を待つ、会話へ参加する、他者の反応に合わせるといった、集団場面そのものを治療に生かす点に意味があります。

そのため、個別 ST の代替として考えるよりも、個別では見えにくい参加場面や相互作用を評価・練習する手段として考える方が運用しやすくなります。

対象患者

対象患者は、脳血管疾患等リハビリテーション料、廃用症候群リハビリテーション料、または障害児(者)リハビリテーション料を算定する患者のうち、集団での言語聴覚療法が有効と期待できる患者です。

制度上も、すべての患者を集団に入れてよいわけではありません。1 人の言語聴覚士が複数患者に対して訓練できる程度の症状であり、かつ集団で行うことに意味がある患者が対象になります。

集団コミュニケーション療法の対象判断
判断項目 向いている例 注意したい例
集団参加 他者の発話や反応に注意を向けられる 刺激が多いと混乱し、個別評価を優先したい
目的 会話参加、順番、役割行動を練習したい 発声・構音など個別課題を細かく調整したい
安全性 集団場面でも大きな不穏や離席が少ない 密な cue や見守りが常時必要
記録 集団だから見えた反応を記録できる 「実施した」だけで目的が残らない

算定要件と単位管理

集団コミュニケーション療法料は、1 単位 50 点で、患者 1 人につき 1 日 3 単位まで算定できます。

また、実施単位数は言語聴覚士 1 人当たり 1 日のべ 54 単位が限度です。さらに、脳血管疾患等リハ、廃用症候群リハ、障害児(者)リハと併せて行う従事者では、集団コミュニケーション療法 3 単位を疾患別リハ 1 単位とみなしたうえで、1 日おおむね 18 単位、週 108 単位を超えない管理が必要です。

集団コミュニケーション療法料の単位管理
項目 内容 現場での確認点
点数 1 単位 50 点 点数よりも対象患者と実施目的を先に確認する
患者上限 患者 1 人につき 1 日 3 単位まで 個別 ST との組み合わせを確認する
ST 側の上限 ST 1 人当たり 1 日のべ 54 単位まで 患者単位だけでなく担当者単位で管理する
疾患別リハとの換算 集団 3 単位を疾患別リハ 1 単位とみなす 1 日おおむね 18 単位、週 108 単位と合わせて確認する

単位管理の考え方を続けて確認したい場合は、みなし単位【2026改定】対象業務・上限・記録の型 もあわせて確認すると整理しやすいです。

施設基準で確認すること

施設基準では、専任の常勤医師 1 名以上、専従する常勤言語聴覚士 1 名以上、8 ㎡以上の集団コミュニケーション療法室 1 室以上などを確認します。

必要な器械・器具として、簡易聴力スクリーニング検査機器、音声録音再生装置、ビデオ録画システム、各種言語・心理・認知機能検査機器・用具、発声発語検査機器・用具、絵カードなどの診断・治療材料が求められます。

なお、言語聴覚療法における個別療法室と集団コミュニケーション療法室の共用は可能とされています。スペース面で導入を迷う場合は、部屋の用途、面積、届出書類、配置図・平面図をセットで確認しておくと安全です。

個別 ST との違い

個別 ST と集団コミュニケーション療法は、人数の違いではなく、目的と観察場面が異なります。

個別STと集団コミュニケーション療法の使い分けを比較した図版
個別 ST と集団コミュニケーション療法の使い分け

個別 ST は、患者ごとの課題を細かく調整し、理解、表出、構音、嚥下、cue 量などを 1 対 1 で詰めやすい方法です。一方、集団コミュニケーション療法は、他者への反応、会話への参加、順番、役割行動、やり取りの継続などを見やすい方法です。

個別 ST と集団コミュニケーション療法の違い
比較項目 個別 ST 集団コミュニケーション療法
主な目的 個別課題を細かく調整する 集団場面での参加や相互作用を広げる
向いている場面 初期評価、個別課題の整理、密な cue が必要な時期 他者とのやり取りや参加場面を練習したい時期
観察しやすい点 課題達成率、理解、表出、反応速度、cue 量 会話参加、他者への反応、順番待ち、役割行動
記録の焦点 個別課題への反応や到達度 集団だから見えた反応と実施理由

実際の現場では、個別で評価と課題設定を行い、集団で参加場面を広げる組み合わせが使いやすいです。大切なのは、個別 ST と集団コミュニケーション療法を対立させることではなく、目的を分けて記録できるようにすることです。

実施の流れ

実施前には、医師が定期的な言語聴覚機能能力に係る検査をもとに効果判定を行い、集団コミュニケーション療法の実施計画を作成します。

また、開始時およびその後 3 か月に 1 回以上、患者または家族に実施計画の内容を説明し、その要点を診療録に記載または添付します。

集団コミュニケーション療法の実施フロー
段階 確認すること 記録のポイント
開始前評価 集団で実施する意義があるか 対象選定の理由を残す
目標設定 参加、やり取り、反応など集団で狙う目標 個別 ST と異なる目標を書く
実施 会話参加、順番、他者への反応 集団場面だから見えた行動を書く
効果判定 検査結果と日常場面の変化 継続・変更・終了の判断材料を残す
説明 患者・家族への説明 説明日、要点、今後の方針を残す

記録例

記録では「集団で実施した理由」と「集団だから見えた反応」を残すことが重要です。

たとえば、次のように記録すると、個別 ST との違いが伝わりやすくなります。

集団コミュニケーション療法の記録例
記録項目 記載例
実施理由 個別場面では応答可能だが、他者との会話開始や順番待ちに課題があるため、集団場面での参加練習を目的に実施。
観察内容 他患者の発話後に視線を向け、促しにより自発発話あり。順番待ちは一部 cue を要した。
効果判定 前回より会話参加回数が増加。次回は発話開始の cue 量を減らし、役割行動の安定を確認する。

療養病棟や慢性期の現場では、個別場面では反応が乏しく見えても、他者の発話や場の雰囲気で参加が引き出されることがあります。その一方で、刺激量が増えると混乱する患者もいるため、集団参加を目的化せず、患者ごとに適応を見直す視点が必要です。

現場の詰まりどころ

集団コミュニケーション療法で詰まりやすいのは、対象選定、個別 ST との役割分担、記録の焦点です。

集団コミュニケーション療法で起きやすい失敗
失敗 起きる問題 対策
対象選定があいまい 個別 ST を優先すべき患者まで集団に入る 集団で狙う目標が言える患者に絞る
個別 ST の延長になる 人数が増えただけで目的が変わらない 個別と集団で目標欄を分ける
記録が弱い 「実施した」だけで集団の意味が残らない 他者への反応、参加、役割行動を書く
単位管理が混ざる 患者上限と ST 側の上限がずれる 患者単位と担当者単位を別に管理する

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

集団コミュニケーション療法はどんな患者に向いていますか?

他者とのやり取り、会話参加、順番待ち、役割行動など、集団場面で練習する意味がある患者に向いています。反対に、密な cue が必要な時期や個別評価を優先したい時期は、個別 ST を優先した方がよい場合があります。

個別 ST と同じように考えてよいですか?

同じではありません。個別 ST は 1 対 1 で課題を細かく調整しやすく、集団コミュニケーション療法は他者との相互作用や参加場面を扱いやすい方法です。目的と記録を分けて考えることが重要です。

患者 1 人あたりの上限だけ見ればよいですか?

十分ではありません。患者 1 人につき 1 日 3 単位までに加え、ST 1 人当たり 1 日のべ 54 単位、疾患別リハと併用する場合の 1 日おおむね 18 単位、週 108 単位の管理も確認します。

施設基準で最低限確認することは何ですか?

専任の常勤医師、専従する常勤言語聴覚士、8 ㎡以上の集団コミュニケーション療法室、必要な器械・器具、記録を一元的に保管して閲覧できる体制を確認します。

記録では何を残せばよいですか?

「なぜ集団で実施したか」と「集団だから見えた反応」を残します。他者への反応、会話開始、順番待ち、役割行動、cue 量の変化などを書くと、個別 ST との違いが伝わりやすくなります。

次の一手

制度全体の位置づけから整理したい方へ:
令和 8 年 改定リハ領域ハブ|全体像と読む順番

単位管理まで続けて押さえたい方へ:
みなし単位【2026改定】対象業務・上限・記録の型


参考文献

  1. 厚生労働省.診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和 8 年 3 月 5 日,令和 8 年 6 月 1 日適用).H008 集団コミュニケーション療法料.PDF
  2. 厚生労働省.診療報酬の算定方法(医科点数表).H008 集団コミュニケーション療法料.PDF
  3. 厚生労働省.特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて.第 47 の 3 集団コミュニケーション療法料.公式ページ

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・制度・記録の実務情報を発信しています。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下、医療制度の実務整理

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