LSA と NRADL の違い|退院支援の使い分け

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結論:退院支援では LSA で「外出」、 NRADL で「息切れ込みの ADL 」を分けて見ます

在宅復帰の見立てで迷いやすいのは、「病棟では歩けるのに退院後は外出が減る」「 ADL は保てても、息切れで家事が回らない」といったズレです。ここを 1 つの尺度でまとめず、生活範囲呼吸負荷を分けてみると、家族説明・申し送り・支援設計が通りやすくなります。

このページで決めるのは、退院支援で LSA と NRADL をどう使い分けるかです。採点の細かな手順や全項目の深掘りよりも、どの場面でどちらを先に使うかどう記録して次の一手につなぐかに絞って整理します。

同ジャンル回遊(最短導線)

生活範囲(外出)と社会参加の評価は、ハブで全体像を固定してから読むと「どれを使うか」で迷いにくくなります。

生活範囲・社会参加の評価ハブへ

関連: ADL・IADL 評価ハブ(選び方・運用フロー)LSA の評価方法(各論)NRADL の評価方法(各論)

このページで答えること:退院後に外出が落ちる理由を 2 軸で切り分ける

退院支援で知りたいのは、「歩けるか」だけではありません。実務では、移動能力 × 環境 × 支援 × 疲労・息切れの掛け算で生活が崩れます。ここを 1 つの尺度に押し込むと、退院後に「想定外」が増えやすくなります。

このページで答えるのは、LSA=外出の広がり(どこまで/どの頻度で/どの支援で)と、NRADL=息切れで崩れる ADL(ペース・休憩・酸素条件)を分けて、退院後の支援設計に落とす方法です。反対に、採点の詳細や全項目の解説は各論ページに任せ、このページでは抱え込みすぎません。

先に見る 3 要素:外出は LSA × NRADL × 支援条件で決まります

LSA は「どこまで行けているか」を、到達レベル × 頻度 × 自立度で捉えます。一方で、NRADL は「その生活を息切れ込みで回せるか」を、動作の負荷・ペース・休憩・酸素条件で整理できます。両者に支援条件を重ねると、退院後に外出が落ちる理由を「身体だけ」にしない見方ができます。

※表は横にスクロールできます。

外出が落ちる 3 要素(生活範囲 × 呼吸負荷 × 支援)の関係
要素 ここで見ること(最小セット) ズレが出る典型 対策の方向
生活範囲( LSA ) 「どこまで行くか」「週何回か」「同伴・補助具は必要か」 病棟は自立でも、退院後は外出頻度が急落する 場所+頻度+支援(同伴・移動手段)で目標を固定する
呼吸負荷( NRADL ) 息切れで落ちる工程(歩く・入浴・買い物など)と条件(ペース・休憩・酸素) 「できる」が「続かない」「途中休止が増える」 ペース/休憩/酸素条件を固定し、落ちる工程を先に潰す
支援(環境・資源) 交通・段差・距離・同伴者・サービス(訪問/通所) 体は動いても、環境が原因で外出が成立しない 移動手段・導線・サービス導入で “ 実行可能性 ” を上げる

※表は横にスクロールできます。

簡易マップ:退院後に “ 外出が落ちる ” パターンの読み分け
支援が十分(同伴・移動手段・環境が整う) 支援が不足(同伴なし・交通難・段差など)
NRADL が保てる(息切れで崩れにくい) LSA が伸びやすい:外出 “ 実行 ” を増やす設計へ LSA が伸びにくい:呼吸より “ 環境要因 ” が主因になりやすい
NRADL が低い(息切れで崩れやすい) LSA は条件付き:休憩・ペース・酸素条件で成立させる LSA が落ちやすい:工程分解+支援セットを同時に組む

図解:LSA と NRADL の使い分け

比較表に入る前に、まずは全体像を 1 枚で固定すると読み進めやすくなります。 LSA はどこまで外出できるか、NRADL はどの動作が息切れで崩れるかをみる評価として整理すると、退院支援での役割分担がぶれにくくなります。

LSA と NRADL の使い分けを退院支援向けに整理した比較図版
LSA は外出の広がり、 NRADL は息切れで崩れる動作を整理する評価です。

LSA と NRADL の違い:退院支援で何が決まるか

まずは「見ているもの」をずらさずにそろえることが重要です。両者は競合ではなく、弱点を補完する関係です。 LSA は外出の広がりを決め、NRADL は息切れで崩れる工程を特定します。

※表は横にスクロールできます。

LSA と NRADL の使い分け(退院支援・在宅復帰での実務)
観点 LSA(生活範囲) NRADL(呼吸器 ADL )
主に見るもの 外出の「広がり」+頻度+自立度(同伴・補助具) 息切れで崩れる ADL を「ペース・休憩・酸素条件」で整理する
強い場面 退院後の外出・買い物・受診・社会参加の見立て、生活目標の具体化 COPD など呼吸器疾患、労作時の息切れが強い人の ADL 設計
つまずきやすい点 地域特性(交通・地形)や支援資源で差が出やすい 同じ動作でも条件(酸素・ペース・休憩)で点が動きやすい
併用すると強い組み合わせ FAI / TMIG-IC / LSNS-6(頻度・機能・孤立リスク) 6MWT / mMRC / Borg / SpO₂(運動耐容能・自覚症状・安全)
このページの結論 LSA で「どこへ・どの頻度で・どの支援で」を決め、NRADL で「息切れで崩れる工程」を潰して在宅運用に落とします

退院前に 5 分でそろえる:在宅復帰の見立てフロー

尺度を増やすより先に、条件をそろえると再評価と申し送りが強くなります。退院前は、次の順で情報を集めると回りやすいです。

  1. 参照期間を固定する(例:過去 4 週間)
  2. LSAで、生活範囲(段階)+頻度+自立度(同伴/補助具)をセットで聴取する
  3. NRADLで、ペース・休憩・酸素条件を「同条件」で確認し、崩れる工程を特定する
  4. 工程を言語化する(例:買い物=移動 → 店内歩行 → 荷物保持 → 会計 → 帰宅)
  5. 支援設計を 3 点セットで決める(場所+頻度+必要支援)
  6. 再評価の予定を先に書く( 2 ~ 4 週後、同条件で LSA / NRADL を回す)

記録の型:合計点だけで終わらせず、条件と局面を残します

合計点だけでは、支援設計に必要な情報が抜けやすくなります。退院支援で効くのは、条件介助が増える局面を 1 行で残すことです。これだけで再評価と申し送りが安定します。

※表は横にスクロールできます。

LSA・NRADL を「退院後の運用」に変える記録テンプレ(最小セット)
区分 書くこと(例) コツ
条件 場所、補助具、同伴、時間帯、酸素流量、休憩の取り方 条件が変わると比較不能なので、まず固定して残す
結果 LSA:段階・頻度・自立度/ NRADL:息切れで落ちた工程 合計だけでなく「落ちた工程」をセットで残す
局面 荷物保持、階段、入浴、屋外歩行、屋内家事の「途中休止」 介助が増える “ 瞬間 ” を 1 行で書く
次の一手 代償(道具・サービス)/環境/教育を誰が担当するか 「誰が・どこで・どう補う」を具体化する
再評価 いつ、同条件で、同一指標を回すか 再評価まで書けると説明力が上がる

配布物:LSA と NRADL の比較・記録シート

退院前と退院後で、LSA の外出範囲・頻度・支援と、NRADL の息切れで落ちる工程・条件を並べて残したいときは、配布用の A4 シートを使うと整理しやすくなります。記事の内容に合わせて、比較前にそろえる条件 → 比較記録 → 統合判断 → 再評価予定の順で書ける形にしています。

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現場の詰まりどころ:よくある失敗 → 回避の手順

このゾーンでは、現場で止まりやすい点だけを先に潰します。

よくある失敗(OK / NG 早見)

※表は横にスクロールできます。

LSA・NRADL を退院支援で使うときの詰まりどころ(OK / NG 早見)
場面 NG(起きがち) OK(こう直す) 記録ポイント
外出の見立て 「外出できるか」だけで判断する LSA で「場所+頻度+支援(同伴・補助具)」の 3 点セットにする 同伴の有無、移動手段、頻度(週何回)
息切れの解釈 NRADL を合計点だけで共有する 落ちた工程(例:買い物の店内歩行、入浴)を 1 行で添える 途中休止の局面、休憩の取り方、酸素条件
再評価 毎回条件が違い、前後差が読めない 酸素条件・ペース・補助具・同伴の有無を固定して再評価する 条件テンプレ( 1 行)をカルテに固定する
支援設計 訓練だけで解決しようとする 代償(道具・サービス)/環境/教育を同時に組む 誰が何を担当するか(家族・訪問・地域資源)

回避の手順(チェック)

  • LSA:参照期間を固定し、「場所+頻度+支援」を必ずセットで聴取する
  • NRADL:ペース・休憩・酸素条件を固定し、「落ちた工程」を 1 行で残す
  • 工程分解:買い物・入浴・外来受診など、破綻しやすい活動を工程に分けて詰まりを特定する
  • 3 点セット:場所+頻度+必要支援(同伴・道具・サービス)で目標を書き、再評価を先に決める

ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方や手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。評価・記録・報告の「型」をまとめて整理したい方は、PT キャリアガイドも参考になります。

PT キャリアガイドを見る

症例で確認:LSA は伸びたが、NRADL がボトルネックで “ 買い物 ” が詰まった例

※下記は理解用のモデルケースです(カットオフの提示ではありません)。見るべきは「点数」より、どの工程が詰まり、何を変えたら動いたかです。

※表は横にスクロールできます。

退院前 → 2 週 → 1 か月での変化( LSA / NRADL と支援設計)
時点 LSA(生活範囲) NRADL(呼吸器 ADL ) 詰まった工程 打ち手(支援設計)
退院前 院内中心。外出は家族同伴で月 1 回程度 速歩・荷物保持・連続歩行で息切れが増える 買い物:店内歩行 → 荷物保持 → 会計後の帰宅で途中休止 退院後 2 週は “ 外出を増やす ” より、工程の詰まりを特定して条件を固定する
退院後 2 週 近所の外出が週 1 回へ(同伴あり) 同条件なら家事は回るが、買い物は途中休止が残る 荷物保持+帰宅(ペースが上がる局面) ペース指導、休憩ポイント固定、荷物は分割、必要時は宅配を併用する
退院後 1 か月 受診・買い物が週 1 ~ 2 回(同伴は状況で選択) 連続歩行の余裕が改善し、“ 詰まる工程 ” が減る 階段・段差(天候で悪化) 移動手段の選択肢を追加し、天候不良時の代替手段も先に決める

この症例で重要なのは、LSA を “ 外出を増やす指標 ” として使いながら、NRADL で「どの工程が息切れで崩れるか」を特定し、ペース・休憩・荷物・移動手段をセットで変えた点です。点数は結果であり、実務では「条件が再現できるか」と「詰まる工程が減ったか」を追うと、退院後のズレが減ります。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 退院前にまず 1 つだけ選ぶなら、 LSA と NRADL のどちらを優先しますか?

結論として、外出や受診、買い物まで見たいなら LSA息切れで ADL が崩れるなら NRADLを優先します。迷うときは、退院後に破綻しやすい活動が「外出(範囲・頻度)」か「家の中の家事(呼吸負荷)」かを 1 つ決めると、優先指標がぶれにくくなります。

Q2. LSA が高くても、退院後に外出が減るのはなぜですか?

生活範囲は、移動能力だけでは決まりません。交通・段差・同伴者の都合・不安・疲労・息切れなど、環境と支援で落ちます。LSA は「どこまで行けるか」だけでなく「どの支援があれば行けるか」を整理できるため、同伴の有無、移動手段、頻度をセットで聴取して支援設計に落とすのがコツです。

Q3. NRADL はどう運用すると、退院支援で使いやすくなりますか?

NRADL は、条件(ペース・休憩・酸素設定)で読みが変わりやすい指標です。退院支援では、条件を固定したうえで「落ちた工程(例:入浴、買い物の店内歩行)」を 1 行で残すと、申し送りと指導が通りやすくなります。

Q4. 「できる」と「している」が混ざって、評価がぶれます

混ざりやすいので、意図的に分けるのが安全です。外出の “ 実行(頻度)” は LSA で、息切れで “ できなくなる工程 ” は NRADL で整理します。さらに工程分解(買い物=移動 → 店内 → 荷物 → 会計)を入れると、支援設計が具体になります。

Q5. 家族説明は、どの言い方だと伝わりやすいですか?

おすすめは、場所+頻度+必要支援の 3 点セットです。たとえば「近所のスーパーは週 1 回、見守り同伴があれば可能」「入浴は途中で休憩が必要なので、手すりと動線調整を先に入れる」のように、生活行動に翻訳して共有すると合意形成が速くなります。

次の一手


参考文献

  • Baker PS, Bodner EV, Allman RM. Measuring Life-Space Mobility in Community-Dwelling Older Adults. J Am Geriatr Soc. 2003;51:1610-1614. DOI: 10.1046/j.1532-5415.2003.51512.x
  • Peel C, Baker PS, Roth DL, Brown CJ, Bodner EV, Allman RM. Assessing mobility in older adults: The UAB Study of Aging Life-Space Assessment. Phys Ther. 2005;85(10):1008-1019. DOI: 10.1093/ptj/85.10.1008
  • 松本友子, 田中貴子, 松木八重, 木下めぐみ, 住本恭子, 千住秀明. The Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire:NRADL の反応性の検討. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌. 2008;18(3):227-230. DOI: 10.15032/jsrcr.18.3_227

著者情報

rehabilikun(理学療法士)のアイコン rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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