ADL・IADL 評価ハブ(必要に応じて QOL まで最短で引く)
生活機能アウトカムは「 1〜2 指標を同条件で回す」だけでも、退院支援の説明力が上がります。 評価 → 介入 → 再評価の臨床フローを見る( #flow )
このページは、理学療法で扱う ADL / IADL を「どれを使う? → どう測る? → どう解釈する?」の順で迷いにくく整理した生活機能アウトカムの子ハブです。退院支援やサービス設計に直結するため、初回は 1〜2 指標に絞り、同条件で再評価できる形に整えます。
上位のまとめ(親ハブ):評価ハブ
最短 5 分の使い方(結論)
結論として、生活機能の評価は「介助量の把握( ADL )→ 生活の広がり( IADL )→ 必要時に QOL 」の順で積むと説明が通りやすいです。初回は「点数」だけで終わらせず、介助・環境・見守り条件を固定して、次回の再評価につなげます。
| 順番 | やること | 主な指標 | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| 1 | 介助量をそろえる | FIM / Barthel Index | 「どこで介助が増えるか」を 1 行で残す |
| 2 | 生活の広がりを押さえる | Lawton IADL | 在宅サービスや家族支援の論点を具体化する |
| 3 | 必要時に周辺要因を確認 | KCL / TMIG-IC など | 「介入の優先順位」を説明しやすくする |
| 4 | 必要時に QOL を追加 | SF-36 など | 本人の価値・目標と評価結果を接続する |
使い分け(まずどれを使う?)
迷いの正体は「 ADL と IADL の違い」と「何を結論にしたいか」です。結論として、まず介助量( ADL )を確定し、在宅・地域では生活の広がり( IADL )を追加します。症例や目的に応じて、次の組み合わせが実務的です。
| 目的 | まず選ぶ | 追加で深掘り | メモ |
|---|---|---|---|
| 退院支援で介助量を明確化 | FIM / Barthel Index | Lawton IADL | 「どの動作で介助が増えるか」を説明しやすい |
| 在宅・地域で生活課題を整理 | Lawton IADL | FIM / Barthel Index | 家族支援・福祉用具・サービス設計の論点が出る |
| フレイル・生活機能低下を俯瞰 | KCL / TMIG-IC | ADL / IADL 指標 | 身体・栄養・社会面をまとめやすい |
ADL(介助量と自立度をそろえる)
ADL は「できる/できない」よりも、どれだけ手がかかるか(介助量)を標準化するのが価値です。院内カンファや退院支援では、条件(場所・補助具・見守り)をそろえたうえで、同条件の再評価につなげます。
- FIM (介助量を細かくそろえる)
- Barthel Index (短時間で ADL の全体像をつかむ)
IADL(生活の広がりを言語化する)
IADL は在宅・地域で「生活が回るか」を説明する軸になります。買い物・調理・服薬・交通など、自立に見えて支援が必要な部分を拾えるため、家族支援やサービス設計に直結します。
- Lawton IADL ( IADL の代表指標)
生活機能の周辺スクリーニング(必要時に追加)
ADL / IADL の結果だけでは「なぜ落ちたか」が説明しにくい場合があります。必要時に周辺スクリーニングを足すと、介入の優先順位が決まりやすくなります。
- 基本チェックリスト( KCL )(フレイル・生活機能低下の入口)
- TMIG-IC (生活機能の広がりの俯瞰)
- CNAQ-J(食欲)(栄養リスクの拾い上げ)
- ロコモ評価(移動機能・運動器の入口)
記録テンプレ(再評価につなげる)
ポイントは、スコアを残すだけで終わらせず、条件と介助の増える局面を 1 行で残すことです。これだけで再評価と介入の説明が安定します。
| 区分 | 例 | 記録のコツ |
|---|---|---|
| 条件 | 場所:病棟、補助具:歩行器、介助:見守り〜軽介助、時間帯:午前 | 条件が変わると比較不能になるため、まず固定する |
| O | BI 60 点、 Lawton IADL 3/8(該当項目のみでも可) | 点数+「落ちた項目」をセットで残す |
| 観察 | 更衣で片手操作が遅い/移乗で立位保持が不安定 | 介助が増える局面を 1 行で言語化する |
| A | ADL は移乗と更衣がボトルネック。 IADL は服薬管理と買い物が課題 | 「どこが障害か」を短文でまとめる |
| P | 移乗と更衣の手順練習+環境調整。 2 週後に同条件で BI と該当 IADL を再評価 | 同条件・同指標での再評価を必ず書く |
必要に応じて QOL・PROM(生活の質までつなぐ)
ADL / IADL が整ってきた段階で、「本人にとっての良い生活」を評価に取り込むと、目標設定と介入の納得感が上がります。 QOL は「全員に必須」ではなく、退院後の生活拡大・慢性期の継続支援・外来フォローなどで必要に応じて追加するのが実務的です。
現場の詰まりどころ(よくあるミス)
- 点数だけで結論にする:「落ちた項目」と「介助が増える局面」を 1 行足すと、介入が決まります
- 条件が毎回違う:場所・補助具・見守り条件の差で、スコア変化の意味が薄れます
- 最初から尺度を増やしすぎる:初回は 1〜2 指標で回し、必要になったら追加します
- ADL と IADL の順番が逆転する:まずは ADL で「介助量」を確定し、次に IADL で「在宅で回るか」を言語化します
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
ADL と IADL は、臨床ではどう使い分けますか?
結論として、まず ADL =介助量の標準化で退院支援の土台を作り、そのうえで IADL =生活の広がりを追加して在宅課題を具体化します。 ADL だけだと「家で回るか」が見えにくく、 IADL だけだと「どこにどれだけ手が要るか」が曖昧になりやすいので、順番が重要です。
FIM と Barthel Index はどちらを優先すべきですか?
院内共有で介助量を細かくそろえるなら FIM が有利です。短時間で全体像をつかみ、退院前後の「ざっくりした変化」を追うなら Barthel Index が扱いやすいです。迷ったら、まず 1 つ決めて同条件で再評価できる運用を優先します。
再評価はどのくらいの頻度が実務的ですか?
病棟では、介入量が変わりやすいので「条件が揃うタイミング」で回すのが現実的です。外来・慢性期では、目標と生活状況が動くタイミング(例:サービス導入、環境変更、転倒後)で再評価すると説明が通りやすくなります。
「できる( capacity )」と「している( performance )」はどう書き分けますか?
同じ点数でも意味が変わるので、カルテには「どちらの評価か」を一言添えるとブレが減ります。たとえば病棟での訓練場面は capacity 、病棟生活や自宅での実態は performance になりやすいです。評価の条件(環境・補助具・見守り)も一緒に固定します。
QOL はいつ追加すればいいですか?
ADL / IADL がある程度そろい、「本人の価値・目標の優先順位」を介入に反映したいときに追加します。退院後の生活拡大、慢性期の継続支援、外来フォローなどでは、数値と主観をつなげることで納得感が上がります。
参考文献
- Mahoney FI, Barthel DW. Functional evaluation: the Barthel Index. Md State Med J. 1965;14:61-65. PMID: 14258950.
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- Lawton MP, Brody EM. Assessment of older people: self-maintaining and instrumental activities of daily living. The Gerontologist. 1969;9(3 Part 1):179-186. doi: 10.1093/geront/9.3_Part_1.179. [oai_citation:1‡高齢者評価ツールキット](https://geriatrictoolkit.missouri.edu/funct/Lawton_IADL.pdf?utm_source=chatgpt.com)
- Koyano W, Shibata H, Nakazato K, et al. Measurement of competence: reliability and validity of the TMIG Index of Competence. Arch Gerontol Geriatr. 1991;13(2):103-116. doi: 10.1016/0167-4943(91)90053-S. PMID: 1955804. [oai_citation:2‡PMC](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12719133/)
- Satake S, Arai H. Validation of the Kihon Checklist for assessing frailty status. Geriatr Gerontol Int. 2016;16(6):709-715. doi: 10.1111/ggi.12543. PMID: 26171645. [oai_citation:3‡ウェブサイト](data:text/plain;charset=utf-8,Invalid%20citation)
- Ware JE Jr, Sherbourne CD. The MOS 36-item short-form health survey (SF-36). I. Conceptual framework and item selection. Med Care. 1992;30(6):473-483. PMID: 1593914. [oai_citation:4‡PubMed](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1593914/)
おわりに
生活機能の評価は、条件をそろえる → 介助の増える局面を言語化する → 同条件で再評価するという臨床のリズムで回すほど、退院支援の説明が速くなります。迷ったら「目的を 1 つ」決め、まず 1〜2 指標で回して、必要になった分だけ足していく運用に戻してください。
次の行動を整えるなら、面談準備チェックと職場評価シートも使うと、学びと働き方の見直しが同じ型で進みます(マイナビコメディカル:チェックリスト)。
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
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