BRSとFMAの違い|脳卒中評価の使い分け・併用・換算

評価
記事内に広告が含まれています。

結論:BRSは「回復段階」、FMAは「変化を追う定量評価」です

BRSとFMAの違いは、何を評価結果として残したいかです。BRSは脳卒中後の運動回復をStage I〜VIの段階で捉え、FMAは運動障害を項目ごとの点数で定量します。そのため、現在の回復段階を簡潔に共有したい場面ではBRS、同じStage内を含めて変化を詳しく追いたい場面ではFMAが使いやすくなります。

どちらが優れているという関係ではありません。この記事では、BRSとFMAの違い、どちらを選ぶか、併用するときの役割分担、換算してよいか、記録へどう落とすかに絞って整理します。FMAは運動評価(FMA-UE・FMA-LE)を中心に比較し、各尺度の詳しい判定・採点方法は各論記事へ分けます。

上肢評価の全体像から確認する

上肢機能評価ハブを開く

まずここだけ:BRSは「段階」、FMAは「点数」でみる

BRS(Brunnstrom Recovery Stage)は、脳卒中後の運動回復を共同運動から分離運動へ進む過程として捉え、上肢・手・下肢などをStage I〜VIで表します。現在の回復段階を簡潔に表現できるため、患者の状態を共有するときに使いやすい評価です。

FMA(Fugl-Meyer Assessment)は、脳卒中後の感覚運動障害を標準化して評価する尺度です。運動評価では、上肢のFMA-UEが66点、下肢のFMA-LEが34点で構成され、項目ごとの得点として変化を追えます。

したがって、実務上はBRS=回復段階を捉える軸、FMA=運動障害の変化を定量する軸と整理すると、両者の役割を分けやすくなります。

BRSとFMAの違いを比較

両者はどちらも脳卒中後の運動麻痺を評価しますが、結果の表し方と得意な役割が異なります。まずは次の違いを押さえてください。

BRSとFMAの比較
観点 BRS FMA
結果の表し方 Stage I〜VIの段階 項目ごとの得点
主にみるもの 共同運動から分離運動へ進む回復段階 脳卒中後の感覚運動障害
運動評価 上肢・手・下肢などを段階で整理 FMA-UE 66点、FMA-LE 34点
変化の捉え方 Stageが変わるような段階変化を表しやすい 項目別の得点変化を追いやすい
向く場面 現在の回復段階を簡潔に共有したいとき ベースラインや再評価で変化を定量したいとき
注意点 Stageだけで活動能力や介入内容を決めない 合計点だけで活動能力や介入内容を決めない

どちらを使う?目的で3パターンに分ける

BRSとFMAで迷ったら、先に今回の評価で何を知りたいかを決めます。回復段階を簡潔に共有したいならBRS、運動障害の変化を詳しく追いたいならFMA、両方の情報が必要ならBRSとFMAを併用します。

BRSとFMAの使い分け早見図。回復段階を共有する場合はBRS、運動障害の変化を追う場合はFMA、両方必要な場合は併用し、BRSとFMAは換算しないことを示す
BRSとFMAは目的で使い分けます。両方を使う場合も換算せず、それぞれの結果を分けて記録します。

再評価の頻度に一律の正解があるわけではありません。BRSを日常的な共有に用い、FMAをベースラインや一定期間後の再評価に用いる方法は、実務上の運用例の一つです。病期、患者の変化、評価目的、施設の運用に合わせて設定します。

FMAは評価範囲と実施条件をそろえて比較する

FMAを経時変化の確認に使う場合は、同じ評価範囲と実施条件で比較することが重要です。2026年にはFMAの運動評価について国際合意マニュアルが公開され、FMA-UEとFMA-LEの実施・採点方法を標準化するための共通手順が整理されました。

University of Gothenburgでは、FMA-UE・FMA-LEのプロトコルと国際合意マニュアルに加えて、日本語版FMAも公開されています。上肢の運動障害を追うならFMA-UE、下肢を追うならFMA-LEというように、評価したい領域を決め、同じ方法で繰り返すことが経時比較の基本です。

忙しいからという理由で毎回異なる項目だけを抜き出し、その合計を通常のFMA得点として比較すると、前回と今回で得点の意味がそろわなくなります。通常と異なる条件で実施した場合は、その条件も記録に残します。

併用するときはBRSの「段階」とFMAの「変化」を分けて記録する

BRSとFMAを併用するときは、2つの評価結果を一つの数字へまとめるのではなく、それぞれが示している情報を分けて記録します。これが、両者を併用するうえで重要なポイントです。

BRSの記録例

例:「BRS:上肢 Stage III、手 Stage IV、下肢 Stage IV。上肢は共同運動の影響が強く、手指は一部で分離運動を認める。」

Stageだけで終わらず、判定につながった運動の特徴を短く添えると、次回評価や多職種共有で状態を確認しやすくなります。

FMAの記録例

例:「FMA-UE:前回○/66点→今回○/66点。手関節項目で改善。手指項目は前回と同程度。」

FMAでは合計点だけでなく、どの領域で得点が変化したかを併記すると、変化の内容を介入や再評価へつなげやすくなります。

BRSとFMAを併用するときの記録の分け方
評価 記録する中心情報 追加するとよい情報
BRS 上肢・手・下肢などのStage Stage判定につながった運動の特徴
FMA 評価範囲と得点 前回との差分、変化した領域、実施条件

BRSとFMAは換算しない

BRSのStageからFMAの点数を求めたり、FMAの点数からBRSのStageへ機械的に換算したりはしません。BRSとFMAには関連がありますが、評価構造と得られる情報が異なるためです。

たとえば同じBRS Stageでも、FMAでは各項目の達成状況によって得点が異なり得ます。逆にFMAの合計点が近くても、どの項目で得点しているかによって運動の特徴は異なります。

併用する場合は、「BRS:上肢 Stage III、FMA-UE:○/66点」のようにそれぞれを独立して記録し、回復段階と定量的な変化を別々に解釈します。

BRSとFMAの使い分けでよくある失敗

違いを理解していても、記録や再評価の方法がそろっていないと、次回比較できる情報が残りません。特に次の4つは避けます。

避けたい4つの使い方

  • BRSだけで介入内容を決める:Stageは運動回復の一側面であり、活動能力や患者目標まで示すものではありません。
  • FMAの合計点だけを見る:同じ得点変化でも、どの領域が変化したかによって臨床的な意味は異なります。
  • 毎回FMAの評価範囲が変わる:前回と今回で条件が異なり、経時比較しにくくなります。
  • BRSとFMAを換算する:異なる構造の尺度を一つの対応表として扱うと、それぞれが持つ情報が失われます。

再評価前に確認する5項目

  1. 目的:回復段階を確認するのか、変化を定量するのか
  2. 評価範囲:FMA-UE、FMA-LEなど前回と同じ範囲か
  3. 実施条件:姿勢や通常と異なる条件がないか
  4. 記録:BRSのStageとFMAの得点を別々に残しているか
  5. 解釈:点数だけでなく、変化した運動や活動への影響を確認したか

BRSとFMAでよくある質問

Q1. BRSとFMAは結局どちらを使えばいいですか?

BRSは現在の回復段階を簡潔に表したい場合、FMAは運動障害の変化を点数で詳しく追いたい場合に向きます。段階と定量的な変化の両方が必要なら併用します。

Q2. FMAは毎回すべて実施しないといけませんか?

評価目的に応じてFMA-UEまたはFMA-LEなど対象を決めます。経時比較する場合は、同じ評価範囲と条件で繰り返すことが重要です。任意の項目だけを毎回変えて実施し、通常の合計点として比較することは避けます。

Q3. BRSが変わらなくてもFMAが改善することはありますか?

あります。BRSはStageという段階で表すため、そのStageの範囲内で運動が改善してもStage自体は変わらないことがあります。FMAでは、項目ごとの得点変化として捉えられる場合があります。

Q4. BRSが変わらないのにADLが改善することはありますか?

あります。ADLは運動麻痺だけでなく、代償方法、環境調整、学習、ほかの身体・認知機能などにも影響されます。BRSやFMAだけで生活能力を判断せず、必要に応じてADL評価を組み合わせます。

Q5. BRSとFMAを換算してもいいですか?

換算しません。BRSは回復段階、FMAは項目別の定量評価で構造が異なります。「BRS:上肢 Stage III、FMA-UE:○/66点」のように、それぞれを独立して記録します。

次の一手|各尺度の判定・採点を確認する


参考文献

  1. Brunnstrom S. Motor testing procedures in hemiplegia: based on sequential recovery stages. Phys Ther. 1966;46(4):357-375. doi: 10.1093/ptj/46.4.357 / PubMed
  2. Fugl-Meyer AR, Jääskö L, Leyman I, Olsson S, Steglind S. The post-stroke hemiplegic patient. 1. A method for evaluation of physical performance. Scand J Rehabil Med. 1975;7(1):13-31. PubMed
  3. Hiragami S, Inoue Y, Harada K. Minimal clinically important difference for the Fugl-Meyer assessment of the upper extremity in convalescent stroke patients with moderate to severe hemiparesis. J Phys Ther Sci. 2019;31(11):917-921. doi: 10.1589/jpts.31.917 / PubMed
  4. Hervé-Colas J, Newton SP, Engelter ST, et al. Standardized International Manual of the Fugl-Meyer Assessment of Motor Function After Stroke. Neurorehabil Neural Repair. 2026;40(4):306-319. doi: 10.1177/15459683251412300 / PubMed
  5. Tomoda Y, Nagao T, Uchida T, et al. Cross-cultural adaptation and validation of the Japanese translation of the Fugl-Meyer Assessment for upper and lower extremity sensorimotor function after stroke. J Rehabil Med. 2025;57:jrm43350. doi: 10.2340/jrm.v57.43350 / PubMed
  6. University of Gothenburg. Fugl-Meyer Assessment. Official page

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

運営者プロフィール編集・引用ポリシーお問い合わせ