医療DXとリハビリ|PT・OT・STへの影響と業務の変化

制度・実務
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医療DXでリハビリはどう変わる?まず「国の仕組み」と「院内運用」を分けます

医療DXが進むと、PT・OT・STの業務では、患者情報を「院内だけで確認する」前提から、標準化された情報を医療機関間で共有・活用する仕組みとの接点が増えていきます。ただし、リハビリ記録そのものがすべて全国共有されるわけではなく、院内の記録テンプレート統一も医療DXの公式要件ではありません。

この記事では、厚生労働省が進める医療DXのうち、オンライン資格確認、電子カルテ情報共有サービス、標準型電子カルテ、電子処方箋を中心に、リハビリ部門・PT・OT・STとの関係を整理します。そのうえで、制度として知っておくことと、院内で記録・連携を整えることの境界まで確認します。

先に結論

医療DXで重要なのは、単に紙を電子化することではなく、医療情報を標準化し、必要な場面で共有・活用できる基盤を整えることです。リハ職は「何の情報が共有対象になるのか」「自施設では誰がどこまで閲覧できるのか」「リハ独自の記録はどこに残すのか」を分けて確認すると理解しやすくなります。

医療DXとは?リハ職が押さえたい全体像

厚生労働省は医療DXを、保健・医療・介護の各段階で生じる情報やデータについて、共通化・標準化などを進め、医療やケアの質、業務効率などの向上につなげる取り組みとして整理しています。

国の工程では、大きく「全国医療情報プラットフォーム」「電子カルテ情報の標準化等」「診療報酬改定DX」が柱となっています。したがって、「医療DX=電子カルテを導入すること」「医療DX=2026年度診療報酬改定」と捉えると範囲が狭すぎます。

表:リハビリ職が押さえたい主な医療DX施策
施策 概要 リハ職が確認したい点
オンライン資格確認 マイナンバーカード等を利用し、資格情報や医療情報の活用につなげる医療DXの基盤 自施設でどの情報を確認でき、リハ開始前の情報収集へどうつながるか
電子カルテ情報共有サービス 全国の医療機関等で一定の電子カルテ情報を共有・閲覧するための仕組み 共有対象となる文書・情報と、自施設での閲覧権限
標準型電子カルテ 国の医療DXサービスへ対応する標準型電子カルテの整備 情報の標準化・連携が院内システムへどう反映されるか
電子処方箋 処方箋を電子的に運用し、直近の処方・調剤情報の参照などにつなげる仕組み 薬剤情報をリスク管理や評価条件の確認へどう生かすか

標準型電子カルテ(導入版)は、医科診療所向けに2026年度中の完成を目指して開発が進められています。医療DXは完成した一つのシステムを指すのではなく、複数の施策が段階的に整備されているものとして確認する必要があります。

医療DXとリハビリの関係を1枚で整理

リハビリ職の視点では、医療DXを「新しい入力作業」と考えるより、必要な医療情報を確認し、評価・介入・記録・多職種連携・退院時共有へつなげる基盤として捉えると整理しやすくなります。

医療DXの主な仕組みとリハビリ職が関係する情報、PT・OT・STの実務とのつながりを整理した図版
図:国が進める医療DXと、PT・OT・STの情報確認・評価・記録・多職種連携・退院時共有との関係

※図は医療DXとリハビリ実務の関係を理解するための概念整理です。電子カルテ情報共有サービスで実際に共有される文書・情報の対象範囲は、以下の厚生労働省資料および最新仕様を確認してください。

電子カルテ情報共有サービスでは「3文書・6情報」を確認します

リハビリ職との関係を考えるうえで特に重要なのが、電子カルテ情報共有サービスです。制度資料では、医療機関が3文書と6情報を電子的に共有できる仕組みとして整理されています。

表:電子カルテ情報共有サービスの3文書・6情報
区分 共有対象
3文書 健診結果報告書、診療情報提供書、退院時サマリー
6情報 傷病名、薬剤アレルギー等、その他アレルギー等、感染症、検査、処方

厚生労働省の現在のサービス案内では、診療情報提供書を電子的に共有するサービスの中で、退院時サマリーは診療情報提供書に添付する形として説明されています。また、患者本人による情報閲覧なども含め、複数のサービスで構成されています。

ここが重要:「電子カルテ情報共有サービスの共有対象になっていること」と「PT・OT・STが自施設でその情報を直接閲覧できること」は同じ意味ではありません。実際の閲覧範囲や操作権限は、自施設のシステム構成や権限設定、院内運用を確認してください。

PT・OT・STの業務では何が変わる?3つの接点で考えます

リハビリ業務への影響は、すべての記録方法が一度に変わると考えるより、「介入前の情報確認」「介入中の判断」「退院・転院時の共有」の3つに分けると理解しやすくなります。

1.介入前:必要な医療情報へ到達しやすくなる可能性がある

傷病名、処方、検査、アレルギー、感染症などは、リハビリ開始前のリスク確認や評価条件を整理するうえで重要な情報です。医療機関間で標準化された情報共有が進めば、紹介元の情報や院内にある情報を確認するときの経路が変わる可能性があります。

ただし、医療DXが進んでも、リハ職が「必要な情報を選ぶ」という臨床判断まで自動化されるわけではありません。患者ごとに何を確認する必要があるかを判断する役割は残ります。

2.評価・介入:共有情報を臨床判断の前提として使う

薬剤や検査結果などを確認できる環境では、その情報を単に閲覧するだけでなく、当日の評価・介入条件と結び付けることが重要です。

たとえば、処方変更があった患者であれば当日の状態変化と合わせて確認し、検査情報を利用できる場合も、その結果だけで介入可否を機械的に決めず、医師の指示、症状、バイタルサイン、その他の臨床所見を含めて判断します。

3.退院・転院:次の医療機関へ渡る情報を意識する

電子カルテ情報共有サービスでは、診療情報提供書や退院時サマリーが共有対象に含まれます。リハビリ職にとっては、自職種だけの記録を増やすことより、退院・転院後の支援に必要な情報が院内の文書作成や多職種共有へ適切につながっているかを確認することが重要です。

介助量、移動方法、装具、見守り条件、環境条件など、リハビリ特有の情報をどの文書・どの欄から共有するかは、国の3文書・6情報とは別に院内で整理する必要があります。

「医療DX」と「リハ記録の標準化」は分けて考えます

この記事で最も区別したいのは、国が整備する医療DXの仕組みと、リハビリ部門が院内で行う記録改善は同じものではないという点です。

表:公式の医療DXと院内のリハ記録改善の違い
項目 公式の医療DX 院内のリハ記録・連携改善
中心 医療情報の標準化、共有、システム連携など リハ部門内・多職種間で必要な情報を読み取りやすくする
対象 国が整備するサービス・共有対象情報 介助量、移動方法、装具、環境条件など院内で必要な情報
見出しの統一 リハ記録の共通見出しを全国一律に定めるものではない 院内の情報探索や引き継ぎを整えるための実務上の方法
確認先 厚生労働省などの公式資料 院内規程、電子カルテ仕様、部門ルール

したがって、「介助量」「移動手段」「装具」「環境条件」などを共通見出しで残す方法は、医療DXの公式要件として扱うのではなく、院内で情報を再利用しやすくするための運用改善として位置付けるのが適切です。

リハビリ部門で確認したい5つのポイント

医療DXへの対応を考えるときは、いきなり新しいテンプレートを作るより、まず自施設で「どの情報が利用でき、誰が使い、どこへ記録するか」を確認します。

  1. 閲覧できる情報:傷病名、処方、検査、アレルギー、感染症、紹介文書など、どの情報へアクセスできるか
  2. 閲覧権限:PT・OT・STが直接確認できる範囲と、他職種を介して確認する範囲
  3. 記録場所:リハ独自の評価・介助量・装具・環境条件などをどこへ残すか
  4. 退院・転院時の共有:リハ情報を診療情報提供書や退院時サマリーなどへどう反映するか
  5. 例外時の対応:必要な情報を閲覧できない、内容が更新されていない、院内情報と一致しない場合に誰へ確認するか

この5点が決まっていない状態で入力項目だけ増やすと、「情報はあるのに必要な人へ届かない」という状態が残ります。医療DX対応は、システム導入だけでなく、情報を使う側の運用も合わせて確認することが重要です。

院内のリハ記録は「次の人が判断できる情報」に整えます

国の医療DXと切り分けたうえで、院内の記録改善として有効なのが、判断に必要な情報を探しやすい形へそろえることです。

すべてを細かく項目化する必要はありません。たとえば移動能力を共有するのであれば、「歩行可能」とだけ記録するより、使用する補助具、介助・見守り条件、実施環境など、次の担当者が再現するために必要な条件を残します。

表:院内でリハ記録を共有するときの考え方
場面 情報が不足する記載 共有したい考え方
移動 「歩行可能」だけ 補助具・介助条件・実施環境まで確認できる
装具 「装具使用」だけ 使用場面や装着条件が分かる
安全管理 「注意して実施」だけ 何を確認し、どの条件で対応するか分かる
退院共有 「自宅内移動可能」だけ 退院後に再現するための条件が分かる

記録そのものを整えたい場合は、リハ記録の最小セットで、日々の記録として何を残すかを分けて確認できます。

医療DXをリハ部門へ導入するときは「仕組み」と「運用」を分けます

部門で実際に医療DXへの対応を進めるときは、「新しいシステムが入ったら開始」ではなく、現在の情報取得・記録・共有の流れを先に確認します。

特に、誰が情報を確認するのか、どこを正本として扱うのか、リハ独自の情報をどこへ記録するのか、退院時に誰が集約するのかを明確にしておくと、システム変更後も運用を組み立てやすくなります。

部門単位で導入手順まで具体化したい場合は、医療DXのリハ業務導入フローで、設計・試行・定着の流れを確認してください。

院内の記録・情報共有を確認する補助シート

院内で現在の記録・連携方法を見直すための補助シートを用意しています。これは厚生労働省が定める医療DXの公式チェックシートではありません。部門内で「何を確認するか」「どこで共有が止まっているか」を話し合う際の補助資料として使用してください。

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医療DXとリハビリのよくある質問

医療DXとリハビリの関係で混同しやすい点を整理します。

医療DXとは、電子カルテを導入することですか?

電子カルテは医療DXに関係する重要な要素ですが、医療DX全体と同じ意味ではありません。厚生労働省は、全国医療情報プラットフォーム、電子カルテ情報の標準化等、診療報酬改定DXなどを含む幅広い取り組みとして進めています。

リハビリ記録も全国の医療機関で共有されるようになりますか?

リハビリの日々の記録すべてが、そのまま電子カルテ情報共有サービスの共有対象になるという整理ではありません。同サービスでは3文書・6情報などの対象が定められています。リハ独自の評価や介助条件などを他施設へどう伝えるかは、院内の退院・転院時運用と合わせて確認する必要があります。

PT・OT・STも電子カルテ情報共有サービスの情報を直接見られますか?

共有サービスの対象情報が存在することと、各職種が自施設で直接閲覧できることは分けて考えます。実際の閲覧権限や操作範囲は、自施設の電子カルテ・システム構成、権限設定、院内ルールを確認してください。

リハ記録の見出しを統一することは医療DXの公式要件ですか?

この記事で紹介するリハ記録の共通見出しや項目整理は、医療DXの公式要件として示しているものではありません。院内で情報を探しやすくし、次担当や多職種が判断しやすくするための実務上の運用方法として分けて考えます。

2026年度診療報酬改定と医療DXは同じものですか?

同じものではありません。診療報酬改定DXは医療DXの取り組みの一部ですが、医療DXには電子カルテ情報共有サービス、電子カルテ情報の標準化、オンライン資格確認など、より広い施策が含まれます。

まとめ|リハ職は「共有される情報」と「院内で整える情報」を分けて考える

医療DXがリハビリに与える影響を理解するときは、最初に国の仕組みと院内運用を分けることが重要です。

  • 医療DXは電子カルテ導入だけを意味するものではない
  • 電子カルテ情報共有サービスでは3文書・6情報などが共有対象となる
  • 共有対象の情報と、PT・OT・STが実際に閲覧できる範囲は分けて確認する
  • リハ記録の共通見出しやテンプレート統一は、国の公式要件ではなく院内運用として考える
  • リハ部門では、閲覧権限・記録場所・退院時共有・例外時対応まで確認する

医療DXへの対応は「記録を増やすこと」ではありません。利用できる情報を把握し、必要な情報を臨床判断へつなぎ、リハ独自の情報は次の人が使える形で残すことが、PT・OT・STにとっての実務上の出発点になります。


参考文献

  1. 厚生労働省. 医療DXについて. https://www.mhlw.go.jp/stf/iryoudx.html(2026年9月1日閲覧).
  2. 厚生労働省. 医療DXについて よくあるお問い合わせ. https://www.mhlw.go.jp/stf/iryoudx_faq.html(2026年9月1日閲覧).
  3. 厚生労働省. 医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について(報告). 第115回社会保障審議会医療部会 資料1. 2025. PDF.
  4. Dobrow MJ, Bytautas JP, Tharmalingam S, Hagens S. Interoperable Electronic Health Records and Health Information Exchanges: Systematic Review. JMIR Med Inform. 2019;7(2):e12607. doi: 10.2196/12607.
  5. Li E, Clarke J, Ashrafian H, Darzi A, Neves AL. The Impact of Electronic Health Record Interoperability on Safety and Quality of Care in High-Income Countries: Systematic Review. J Med Internet Res. 2022;24(9):e38144. doi: 10.2196/38144.
  6. Pattar BSB, Ackroyd A, Sevinc E, et al. Electronic Health Record Interventions to Reduce Risk of Hospital Readmissions: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Netw Open. 2025;8(7):e2521785. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2025.21785.

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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