ALS の嚥下スクリーニングは「異常の有無」だけでなく、次の一手まで決める運用が重要です
ALS の嚥下スクリーニングは、誤嚥リスクを見つけること自体が目的ではありません。進行性疾患のため、再評価のタイミングを先に決め、食形態調整と多職種連携まで一体で回すことが実務の要点です。単発評価で「問題なし」と判断すると、変化の見逃しにつながりやすくなります。
本記事は、ALS に特化して「いつ評価するか」「何を観察するか」「異常所見が出たらどう動くか」を、現場で使える順に整理した親記事です。尺度の細部より、安全に食べる条件を更新し続ける運用に焦点を当てます。
5 分で実装する ALS 嚥下スクリーニングの流れ
実装時は、開始条件(むせ増加・食事時間延長・体重低下・咳嗽力低下)を確認し、問診と観察、食事場面の所見を同一フォーマットで記録します。異常所見の程度で分岐し、軽度は条件調整と短期再評価、中等度以上や悪化傾向は ST・医師連携へ進みます。
図の運用ポイントは、よくある失敗と回避のチェック手順で具体化しています。
現場の詰まりどころ
ALS では、評価の実施そのものより「どの変化を悪化サインとして扱うか」で判断が止まりやすいです。次の 3 本を先に固定すると、チームでの判断が揃います。
- よくある失敗を先に確認する
- 回避のチェック手順で運用を固定する
- 関連:嚥下評価ワークフロー(総論)で全体像をそろえる
よくある失敗
| 失敗 | 起こる理由 | 対策 |
|---|---|---|
| 単回評価で「問題なし」と判断する | 進行性変化の前提が抜ける | 再評価間隔を先に設定し、同条件で前回比較する |
| むせの有無だけで判断する | 食事時間・疲労・咳嗽力の変化を見落とす | 観察項目を固定し、複合所見で判定する |
| 記録様式が担当者ごとに異なる | 引き継ぎ時に変化が共有されない | 共通フォーマット化し、前回比の記録を必須にする |
回避のチェック手順
次のチェックを固定すると、評価後のアクションが止まりにくくなります。特に「前回比」の明記を徹底すると、悪化兆候の拾い上げ精度が上がります。
| 観察ポイント | 変化の例 | 次アクション |
|---|---|---|
| 食事時間 | 前回より延長 | 一口量・ペース・姿勢を調整し短期再評価 |
| むせ・湿性嗄声 | 増加/新規出現 | 食形態見直し+必要時に ST 連携 |
| 体重・栄養状態 | 低下傾向 | 栄養介入を含めた多職種カンファレンス |
| 咳嗽力・痰喀出 | 低下傾向 | 呼吸面を含めて評価し医師へ相談 |
よくある質問
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ALS の嚥下スクリーニングは、どのタイミングで再評価すべきですか?
定期評価に加えて、むせ増加、食事時間延長、体重低下、咳嗽力低下など「前回比での変化」が出た時点で前倒し再評価を行います。進行性疾患では、変化が小さい段階での再評価が安全管理に直結します。
ベッドサイド評価だけで運用してよいですか?
初期判断には有用ですが、所見が不安定・悪化傾向・判断困難がある場合は、ST・医師と連携して精査を検討します。評価の目的は「安全に食べる条件の更新」です。
評価のばらつきを減らすコツはありますか?
観察項目、実施条件、記録フォーマットを固定し、前回比を必須で残す運用が有効です。担当者交代時にも判断軸がぶれにくくなります。
次の一手
- 運用を整える:嚥下評価ワークフロー(総論)(全体像)
- 共有の型を作る:質問票スクリーニングの実装例(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Ng L, Khan F, Young CA, et al. Symptom management and end-of-life care in amyotrophic lateral sclerosis. Curr Opin Support Palliat Care. 2017;11(3):169-177. DOI: 10.1097/SPC.0000000000000296
- Miller RG, Jackson CE, Kasarskis EJ, et al. Practice parameter update: The care of the patient with amyotrophic lateral sclerosis. Neurology. 2009;73(15):1227-1233. DOI: 10.1212/WNL.0b013e3181bc0141
- Plowman EK, Tabor LC, Wymer J, et al. Prevalence of dysphagia in ALS and impact on outcomes. Dysphagia. 2016;31(4):508-515. DOI: 10.1007/s00455-016-9711-1
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


