HHD筋力測定の方法|膝伸展のベルト固定・肢位・回数

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HHD筋力測定は「同じ条件を再現できるか」が重要です

HHD(Hand-Held Dynamometer)で膝伸展筋力を測るときは、表示された数値だけでなく、測定肢位、膝関節角度、センサー位置、ベルト固定、試行条件をそろえることが重要です。代表的な方法では、座位・膝関節90°屈曲位で下腿前面遠位にセンサーを置き、ベルトで固定して最大等尺性膝伸展筋力を測定します。

この記事では、HHDを用いた膝伸展筋力測定を「肢位 → センサー位置 → ベルト固定 → 試行条件 → 採用値 → 記録 → 再評価」の順に整理します。何秒・何回という数字だけを覚えるのではなく、採用した測定条件を次回も再現できることを重視します。

膝伸展に限らずMMT・HHD・RM法をどう使い分けるかは、筋力測定の使い分け|MMT・HHD・10RMで整理しています。

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HHDによる膝伸展筋力測定で固定する条件
項目 確認すること 記録のポイント
測定肢位 座位、体幹・上肢の支持条件 前回と同じ支持条件にする
膝関節角度 測定時の屈曲角度 膝90°など採用条件を残す
センサー位置 下腿上の位置 ランドマークや距離まで残す
固定方法 ベルト位置、支点、方向 支点とベルトの条件を残す
試行条件 収縮時間、回数、休息 再評価でも同じ条件にする
採用方法 最大値、平均値など 算出方法を途中で変えない
単位 kgf、N、Nm、体重正規化の有無 同じ指標で比較する

測定前に最大努力が可能かを確認する

HHDによる最大等尺性筋力測定では、数値を取る前に「最大努力を安全に実施できるか」を確認します。疼痛や術後・外傷後の運動制限などがある場合は、通常の最大努力測定をそのまま実施できるとは限りません。

  • 測定肢位で疼痛が増悪しないか
  • 術後・外傷後などで運動方向や最大努力に制限がないか
  • 指示を理解し、数秒間の等尺性収縮を行えるか
  • 強い痙縮や代償によって測定肢位を維持できなくなっていないか
  • 全身状態から最大努力が適切か

測定中に疼痛が出る、固定が外れる、代償を修正できない、最大努力を継続できない場合は、その試行を中止または除外します。測定値だけでなく、中止・除外した理由も記録しておくと次回の評価につながります。

膝伸展のベルト固定は肢位・センサー位置・支点をセットで決める

膝伸展筋力をベルト固定HHDで測定するときは、HHDを下腿へ当てる位置だけでなく、測定肢位、センサー位置、固定点、ベルトの方向までを一体として決めます。ベルト固定を用いることで、検者自身の固定力だけに依存せず測定条件を作りやすくなります。

HHDによる膝伸展筋力測定の肢位・センサー位置・ベルト固定を示す図
図:HHDによる膝伸展筋力測定|肢位・センサー位置・ベルト固定

測定肢位は座位・膝90°屈曲位が代表的

ベルト固定HHDによる膝伸展筋力測定では、座位で膝関節を90°屈曲させた方法が複数の研究で用いられています。ただし、膝関節角度だけをそろえれば同じ測定条件になるわけではありません。

体幹や骨盤の位置、上肢支持、座面高、反対側下肢の支持条件も結果へ影響し得るため、初回に採用した条件を記録し、再評価でもできるだけ同じ条件を再現します。

センサー位置は「下腿遠位」だけで終わらせない

膝伸展では、HHDのセンサーパッドを下腿前面の遠位部へ配置する方法が用いられています。一方で、具体的な配置位置は研究プロトコルによって異なります。

そのため、記録を「下腿遠位」とだけ残すと、次回に同じ位置へ戻せない可能性があります。ランドマークや距離を用いて、センサー中央がどこにあったかまで残すと再現しやすくなります。

  • どのランドマークを基準にしたか
  • 基準点からどの程度離れているか
  • センサーパッド中央の位置
  • 下腿に対するセンサーの向き

センサー位置が変わると、同じ膝伸展トルクでもHHDに表示される力が変わり得ます。膝関節の回転軸から力の作用線までの距離、すなわちモーメントアームが変化するためです。左右比較や経時比較では、同じ位置を再現することが重要です。

ベルトはたわみを減らし、安定した固定点へつなぐ

ベルトはHHDと、ベッド脚や椅子脚などの安定した固定点をつなぎます。固定物そのものが動く、ベルトが伸びる、測定中に支点がずれる条件では比較しにくくなるため、測定前に固定状態を確認します。

ベルトは大きなたわみを取り、膝伸展方向の力に対してHHDを安定して保持できる方向へ調整します。固定点の強度や転倒・移動の危険も確認し、不安定な物品を支点として使用しません。

HHDによる膝伸展筋力測定の手順

実際の測定では、条件設定、練習、本測定、採用試行の確認までを一連の手順にします。担当者が変わっても同じ順番で確認できるようにすると、再評価時の条件差を減らしやすくなります。

  1. 測定可否を確認する:疼痛、医学的制限、理解度、最大努力の可否を確認します。
  2. 肢位を決める:座位、膝関節角度、体幹・上肢・反対側下肢の支持条件を設定します。
  3. センサーを配置する:下腿上の位置を決め、ランドマークや距離を記録します。
  4. ベルトを固定する:支点、方向、たわみを確認します。
  5. 練習試行を行う:力の入れ方、疼痛、代償、固定のずれを確認します。
  6. 決めたプロトコルで本測定する:収縮時間、試行回数、休息時間をそろえます。
  7. 採用値を決める:最大値または平均値など、あらかじめ決めた方法で結果を算出します。
  8. 測定条件と一緒に記録する:次回に同じ測定を再現できる情報を残します。

測定時間・回数・採用値はプロトコルを決めて統一する

「HHDは何秒・何回測ればよいか」に、すべての対象者へ共通する1つの答えがあるわけではありません。膝伸展のベルト固定HHDでは、5秒間の最大等尺性収縮を2回行い、30秒以上の休息を設けて最大値を採用した研究があります。一方で、3回測定する方法や、複数試行の平均値を扱う方法も報告されています。

したがって、臨床では次の4項目をセットで決めます。

  • 1試行の収縮時間
  • 本測定の試行回数
  • 試行間の休息時間
  • 最大値・平均値などの採用方法

たとえば「5秒×2回、休息30秒以上、最大値を採用」と決めた場合は、次回も同じ条件で測定します。初回は2回の最大値、再評価では3回の平均値というように方法を変えると、数値差に測定方法の違いが混ざります。

make testとbreak testを混在させない

HHDでは、被検者が固定されたHHDに対して力を加えるmake testと、検者が抵抗を増やして被検者の保持力を上回るbreak testがあります。両者は同じ測定方法ではなく、得られる値が異なる可能性があります。

ベルト固定HHDによる膝伸展測定では、固定されたHHDに対して被検者が最大等尺性膝伸展を行うmake testが用いられています。どの方法を採用する場合も、経時比較では途中で変更せず、測定方法を記録します。

kgf・N・Nmは何を表しているかを区別する

HHD本体にはkgfやNで力が表示される機種があります。左右差や経時変化を追う場合は、同じ機器、同じ単位、同じ測定条件で継続することが基本です。

kgfとNを換算する場合は、次の式を使用できます。

kgfからNへの換算
換算 式 例
kgf → N N = kgf × 9.80665 30 kgf ≒ 294 N

センサー位置を考慮するとNmで表すこともできる

HHDに表示されるNは、センサーへ加わった「力」です。膝伸展の関節モーメントとして扱う場合は、力に加えて膝関節の回転軸から力の作用線までの垂直距離を考慮します。

膝伸展トルク(Nm)= 力(N)× モーメントアーム(m)

たとえばHHDに200 Nの力が加わり、膝関節の回転軸から力の作用線までの垂直距離が0.30 mであれば、単純化した膝伸展トルクは60 Nmです。

このため、センサー位置が毎回変わると、HHDに表示される力だけでなく算出されるトルクにも影響します。Nmを算出する場合は、センサー位置と距離の測定方法も統一します。

体重で正規化する場合も計算方法を固定する

対象者間の比較や研究値との比較では、N/kg、Nm/kg、kgf/kgなど体重で正規化した指標が使われることがあります。ただし、単純なkgf、N、Nmと体重正規化値は別の指標です。

再評価では、前回はkgf、今回はNm/kgというように途中で指標を変更せず、何を比較しているのかを明確にします。

記録は測定値と再現条件をセットで残す

HHDで「右膝伸展20 kgf」とだけ記録しても、次回に同じ測定を再現できません。測定値と一緒に、肢位、角度、センサー位置、固定方法、試行条件、採用方法を残します。

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HHD膝伸展筋力測定で残したい記録項目
記録項目 記録例
測定部位 右膝伸展
肢位 端座位、上肢支持あり
関節角度 膝関節90°屈曲位
センサー位置 下腿前面遠位、ランドマーク・距離を記載
固定方法 ベルト固定、支点を記載
試行条件 収縮時間、回数、休息時間を記載
測定値 各試行値を記載
採用方法 最大値または平均値などを記載
疼痛・代償 疼痛の有無、体幹・骨盤代償などを記載

カルテへ短く記載する場合でも、最低限「肢位・角度・センサー位置・固定・試行条件・採用方法・単位」が追えるようにします。

記録例:
HHD右膝伸展:端座位、膝90°、下腿前面遠位(ランドマーク・距離を記録)、ベルト固定。5秒×2回、30秒以上休息、最大値採用。試行1:____ N、試行2:____ N、採用値:____ N。疼痛なし、明らかな代償なし。

再評価では前回と同じ条件かを先に確認する

再評価で最初に見るのは「何N増えたか」ではなく、前回と同じ条件で測れているかです。条件が異なる場合は、数値差をそのまま筋力変化と解釈しません。

  1. 使用したHHDが同じか
  2. 測定肢位が同じか
  3. 膝関節角度が同じか
  4. センサー位置が同じか
  5. ベルト固定と支点が同じか
  6. 収縮時間・回数・休息・採用方法が同じか
  7. 疼痛・代償など測定を制限する条件が変化していないか

機器が変わった場合も注意が必要です。ベルト固定HHDでは良好な検者内再現性が報告されていますが、HHDと等速性筋力測定装置など異なる機器間では絶対値が一致しないことがあります。機器を変更した場合の値を、前回値と同じ尺度として単純に比較しないようにします。

SEM(標準誤差)やMDC(最小検出可能変化)も、対象者、機器、肢位、試行方法などによって異なります。別の研究で報告されたMDCを、そのまますべての対象者の改善判定へ当てはめるのではなく、自施設で採用している測定条件との一致を確認することが重要です。

HHD筋力測定で起こりやすい5つの失敗

値が不自然なときは、筋力そのものの変化だけでなく、測定条件の変化も確認します。特にセンサー位置、ベルト、姿勢、代償、測定方法のずれは、再評価時の比較を難しくします。

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HHD膝伸展筋力測定のよくある失敗と対策
失敗 起こる問題 対策
センサー位置がずれる モーメントアームが変わり、前回値と比較しにくい ランドマークや距離で位置を記録する
ベルトがたるむ 力を加える途中で固定条件が変化する 測定前にたわみと支点を確認する
姿勢が変わる 体幹・骨盤の条件差が結果へ混ざる 上肢支持、座面高、膝角度をそろえる
代償を含めて採用する 目的とする膝伸展筋力として解釈しにくくなる 代償が大きい試行は除外し、理由を記録する
測定方法を途中で変える 前回値との比較が難しくなる 機器、回数、時間、採用方法、単位を固定する

HHD筋力測定のよくある質問

Q1. HHDの膝伸展筋力は何回測ればよいですか?

一律に「必ず○回」と決まっているわけではありません。5秒間を2回測定して最大値を採用した研究がある一方、3回測定する方法や複数試行の平均値を用いる方法もあります。採用するプロトコルを決め、再評価でも回数・休息・採用方法をそろえることを優先します。

Q2. HHDは下腿のどこに当てますか?

膝伸展では下腿前面の遠位部へ配置する方法が用いられています。ただし、具体的な位置は測定プロトコルによって異なります。「下腿遠位」とだけ記録せず、ランドマークや距離まで残して同じ位置を再現してください。

Q3. HHDは最大値と平均値のどちらを使いますか?

採用する測定プロトコルによって異なります。最大値を使う方法も平均値を使う方法もあります。試行数と採用方法をあらかじめ決め、経時比較の途中で変更しないことが重要です。

Q4. HHDのkgfをNやNmに変換した方がよいですか?

目的によります。同一条件で経時変化を追う場合は、同じ機器・同じ単位で継続することが基本です。kgfをNへ換算する場合はN=kgf×9.80665、膝伸展トルクを扱う場合は力とモーメントアームからNmを算出します。どの指標を使ったかを記録してください。

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参考文献

  1. Hirano M, Katoh M, Gomi M, Arai S. Validity and reliability of isometric knee extension muscle strength measurements using a belt-stabilized hand-held dynamometer: a comparison with the measurement using an isokinetic dynamometer in a sitting posture. J Phys Ther Sci. 2020;32(2):120-124. DOI / PubMed
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  4. Martins J, da Silva JR, da Silva MRB, Bevilaqua-Grossi D. Reliability and validity of the belt-stabilized handheld dynamometer in hip- and knee-strength tests. J Athl Train. 2017;52(9):809-819. DOI / PubMed
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  6. Stratford PW, Balsor BE. A comparison of make and break tests using a hand-held dynamometer and the Kin-Com. J Orthop Sports Phys Ther. 1994;19(1):28-32. DOI / PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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