HHD 筋力測定の手順|ベルト固定

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HHD(ハンドヘルドダイナモメーター)筋力測定の手順|ベルト固定で再現性を上げる

HHD は「条件を揃える」ほど、筋力の変化が説明しやすくなります。 評価から介入までの流れをまとめて復習する ※ 本稿は HHD の「準備 → 測定 → 記録 → 解釈」を、ベルト固定を前提に現場向けに整理します。

HHD( Hand-Held Dynamometer )は、筋力を数値で扱えるため、経時変化や左右差の説明がしやすい評価です。特に MMT の Grade 4〜5 付近は天井効果が出やすく、「同じ条件で測って、同じ単位で記録する」だけでも再評価の質が上がります。

一方で、HHD は固定が弱いと「被検者の筋力」ではなく「検者の固定力」を測ってしまいがちです。この記事では、ベルト固定を軸に、迷いがちな手順・回数・記録の型をまとめます。関連:筋力測定の全体像( MMT・HHD・1RM の使い分け)は 筋力測定の使い分け記事 に整理しています。

HHD が向いている場面/向かない場面

HHD は「比較」や「変化」を扱うのが得意です。逆に、痛みが強い/代償が大きい/禁忌肢位がある場面では、数値の意味づけが難しくなります。

HHD が向く場面・注意が必要な場面(臨床の判断材料)
分類 具体例 ねらい 注意点
向いている MMT が 4〜5、経時変化を追いたい、左右差を示したい 数値で説明し、目標と介入量を決めやすくする 条件(姿勢・角度・固定・回数)を固定する
注意が必要 強い疼痛、急性炎症、強い痙縮、代償が顕著 安全と再現性を優先して評価設計する 痛みと代償を併記し、数値だけで判断しない

測定の原則:まず「同じ条件」を作る

HHD の成果は、特殊なテクニックより条件の固定で決まります。最低限、次の 4 点をテンプレ化すると、測定のブレが減ります。

  • 姿勢:座位/背もたれの有無/上肢支持の位置
  • 関節角度:膝 90°など、毎回同じ角度
  • 固定:ベルト固定の位置と支点(椅子脚など)
  • 回数:最大努力 3〜5 秒 × 2〜3 回(休憩を固定)

さらに、HHD では make test / break test の違いで値の出方が変わることがあります。臨床で運用を安定させるなら、まずは施設内で方法を統一するのがコツです(この記事では make test を基本運用として説明します)。

ベルト固定のセットアップ(膝伸展)|ここが 9 割

ベルト固定の目的は、検者の負け(固定力不足)を減らして、同じ条件で反復できる状態を作ることです。膝伸展では、座位でベルト固定を用いた測定の妥当性・信頼性が検討されています。

準備物

  • HHD 本体
  • 固定用ベルト(幅があり、伸びにくいもの)
  • 固定点(椅子脚/ベッド脚など)
  • 必要に応じて滑り止め(座面・足元)

膝伸展の基本セット(座位)

膝伸展(座位) HHD ベルト固定:セットアップ早見
項目 おすすめ よくある崩れ 直し方
姿勢 座位で体幹を起こす(必要なら上肢支持) 体幹後傾・骨盤後傾で代償 座面高調整/骨盤が立つ支持を作る
膝角度 膝 90°屈曲位を基本に固定 前回と角度が違う 座面高・下腿位置をメモして統一
センサー位置 下腿遠位(内果近位レベル)を基本 当て位置が毎回ズレる 目印(テープ)で位置を固定
ベルトの支点 椅子脚など硬い固定点に回す 支点が遠く、ベルトがたるむ 支点を近づけ、直線で引ける位置へ
ベルトの張り たわみを最小化(測定前に軽く張る) 測定中にベルトが伸びる 伸びにくいベルトへ変更/巻き直す
代償の監視 体幹回旋・股関節屈曲の代償を観察 「強く出た」が代償の結果 代償が出たら中止して条件を再調整

測定手順(迷わない運用)| 3〜5 秒 × 2〜3 回

現場で一番ブレるのは「回数」と「休憩」です。まずは 3〜5 秒の最大努力を 2〜3 回に固定し、休憩も固定してください。

  1. 説明:「 3〜5 秒だけ全力で押してください。痛みが出たら止めます」
  2. 練習 1 回:最大努力の感覚を合わせる(本番扱いにしない)
  3. 本番:最大努力 3〜5 秒 × 2〜3 回(休憩 30〜60 秒)
  4. 採用:原則は最大値(ただし代償・疼痛が出た試行は除外)

「反復回数を増やすほど誤差( SEM / MDC )が小さくなる」可能性はありますが、まずは運用が回る形で固定するのが優先です。経時比較で大切なのは、回数よりも条件の一致です。

記録の型(これだけ残せば再現できる)

HHD は「数値」より条件が重要です。後から同じ条件で再現できるように、最低限のテンプレを用意します。

HHD 記録テンプレ(コピペ用):条件・回数・単位を固定する
日付 部位 姿勢・角度 固定(ベルト/支点) 単位 試行 1 試行 2 試行 3 採用値 疼痛・代償
____/__/__ 膝伸展(右) 座位、膝 90° ベルト固定あり(椅子脚) kgf / N ____ ____ ____ ____ 疼痛 __ / 10、代償:有/無

単位( kgf と N を混ぜない)

機種により表示単位が異なります。施設内でどちらかに統一すると、経時比較が崩れません。

単位換算(目安): kgf → N
換算
kgf → N N = kgf × 9.80665 30 kgf ≒ 294 N

解釈のコツ:変化を見るなら SEM / MDC を知る

HHD は誤差(測定のブレ)が必ずあります。現場の感覚としては、小さな差に一喜一憂しないことが大切です。SEM(標準誤差)や MDC(最小検出可能変化)は、対象集団や筋群で変わるため、文献の値をそのまま当てはめるより、まずは同一条件での繰り返しを徹底し、記録の質を上げていく方が安全です。

経時評価で使いやすい見方は次の 3 つです。

  • 左右差:同じ筋群を同条件で比較する
  • 体重正規化:可能なら N/kg などで残す
  • 「条件が同じ」前提での変化:姿勢・角度・固定が揃っているかを最優先に確認する

よくある失敗(詰まりどころ)と対策

HHD の失敗は「固定」「条件」「記録」に集約します。チームで共通言語にしておくと、再現性が上がります。

HHD の失敗あるある:原因と対策を固定する
失敗 起きること 対策 記録の一言
固定が弱い 値が伸びない/日によってブレる ベルト固定、支点を近づける、たわみを減らす 「ベルト固定:椅子脚、張り調整済み」
角度がズレる 前回と比較できない 膝 90°など、角度と座面高をテンプレ化 「座位、膝 90°、座面高 ○○」
単位が混在 数値が比較できない kgf か N に統一、換算式を固定 「単位: kgf 」
代償が強い 「強く出た」が代償の結果になる 代償が出た試行は除外し、条件を作り直す 「代償あり:体幹後傾、除外」

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 何回測るのが基本ですか?

実務では「 3〜5 秒 × 2〜3 回」を基本にして、休憩も固定する運用が回しやすいです。大事なのは回数より「条件の一致」です。チーム内で回数と休憩を固定すると、再評価の精度が上がります。

Q2. make test と break test はどちらが良いですか?

値の出方が変わる可能性があるため、施設内で方法を統一するのが最優先です。この記事では運用が安定しやすい make test を基本として説明しています。どちらを採用する場合も、同一方法で継続することが重要です。

Q3. ベルト固定ができない環境ならどうしますか?

まずは「支点を近づける」「肢位と角度を揃える」「代償を抑える」ことを徹底します。固定が弱いと感じたら、数値は“参考値”として扱い、痛みや代償の所見を重視して判断してください。

Q4. kgf と N はどちらが良いですか?

どちらでも構いませんが、混在させないことが最重要です。施設内で統一し、必要なら換算式( N = kgf × 9.80665 )をテンプレに入れてください。

参考文献

  • Martins J, da Silva JR, da Silva MR, et al. Reliability and validity of the belt-stabilized handheld dynamometer in hip- and knee-strength tests. J Athl Train. 2017;52:809-819. DOI / PubMed
  • Hirano M, Gomi M, Katoh M. Validity and reliability of isometric knee extension muscle strength measurements using a belt-stabilized hand-held dynamometer: a comparison with the measurement using an isokinetic dynamometer in a sitting posture. J Phys Ther Sci. 2020;32:120-125. PubMed / PMC
  • Katoh M. Reliability of isometric knee extension muscle strength measurements made by a hand-held dynamometer and a belt: a comparison of two types of device. J Phys Ther Sci. 2015;27:851-854. PubMed / PMC
  • Tokuhisa K, Ikuno K, Tsuruta K, et al. A Clinically Relevant Measurement Number of Times to Measures Knee Extension Strength with Stroke Patients. Physical Therapy Japan. 2010;37(7):460-469. DOI
  • Stratford PW, Balsor BE. A comparison of make and break tests using a hand-held dynamometer and the Kin-Com. J Orthop Sports Phys Ther. 1994;19(1):28-32. DOI / PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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おわりに

HHD は「条件の固定 → ベルト固定 → 3〜5 秒 × 2〜3 回 → 条件込みで記録 → 同条件で再評価」というリズムが作れると、一気に“使える評価”になります。面談前に準備を整えたい方は 面談準備チェック&職場評価シート(ダウンロード) を使うと、次の一手が決めやすいです。

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