下垂足は腓骨神経麻痺?それとも L5?【比較・使い分け】

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下垂足は腓骨神経麻痺?それとも L5?【比較・使い分け】|運動 3 筋+感覚 1 点で 5 分整理

下垂足の鑑別は、検査を増やすより「足背屈・母趾背屈・外反+第 1 趾間感覚」を固定すると早いです。 評価 → 介入 → 再評価の流れを体系で確認する

下垂足は、見た目が同じでも原因が違います。臨床で特に迷いやすいのが腓骨神経麻痺(多くは腓骨頭周囲の圧迫)L5 神経根障害です。ここで判断がブレると、装具選定や歩行練習の焦点がズレやすくなります。

本記事は、運動 3 筋+感覚 1 点で “分布” を作り、そこから追加評価を 2 つだけ足す型でまとめます。脳卒中と紛らわしい末梢神経障害の俯瞰は、まとめ記事に統一しています:脳卒中と間違えやすい末梢神経障害 3 つ(下垂手・鷲手・下垂足)

結論:腓骨神経は「外反」、L5 は「内反」も落ちやすい

下垂足の第一分岐は足関節内反(後脛骨筋=脛骨神経)が保たれるかです。一般に、腓骨神経麻痺では前脛骨筋・長趾伸筋・長腓骨筋などが落ちやすい一方、後脛骨筋(内反)は保たれやすいので “内反は残る” になりやすいです。逆に L5 神経根障害では、前脛骨筋・長母趾伸筋に加えて、L5 が関与する内反(後脛骨筋)まで落ちることがあります。

比較表:腓骨神経麻痺 vs L5 神経根障害(使い分け早見)

下垂足の鑑別|腓骨神経麻痺(腓骨頭)と L5 神経根障害の比較(成人・臨床)
項目 腓骨神経麻痺(腓骨頭が多い) L5 神経根障害 見分けのコツ 記録ポイント
運動(目立つ) 足背屈↓、母趾背屈↓、外反↓ 足背屈↓、母趾背屈↓ + 内反も↓ になりやすい 内反(後脛骨筋)を追加で 1 回みる 背屈 / 母趾 / 外反 / 内反( 4 つ )
感覚(代表) 下腿外側〜足背(± 第 1 趾間) 下腿外側〜足背+範囲が広めになりやすい まず第 1 趾間(深腓骨)を固定 第 1 趾間= ↓ / =
起点(病歴) 脚組み、腓骨頭の圧、ギプス、長時間の同一肢位 腰部〜殿部痛、体幹肢位で増悪(例:咳で響く) まず “圧迫エピソード” の有無 圧迫あり/なし、腰痛あり/なし
所見の並び 腓骨神経の分布で揃いやすい 分布が揃いにくい/近位筋も混ざりやすい 「揃うか」を最初に作る 運動 3+感覚 1 の一致

5〜 8 分で終わる最小セット:運動 3 筋+感覚 1 点+追加 2 つ

下垂足は、まず腓骨神経の “線” を作るのが最短です。 StatPearls でも、下垂足は腓骨神経障害だけでなく腰部神経根など複数の原因があり得るため、局在を意識した評価が重要とされています。

下垂足の最小評価セット(成人・臨床: 5〜 8 分)
順番 みる項目 狙い メモ例
① 病歴 脚組み / 腓骨頭への圧、装具・ギプス、腰部症状 起点を拾う 「脚組み多い」「腰痛あり」
② 運動 3 筋(腓骨) 足背屈( TA )/ 母趾背屈( EHL )/ 外反 腓骨分布で揃うか 「 TA 2 / EHL 2 / 外反 3 」
③ 感覚 1 点 第 1 趾間(深腓骨) 分布の補強 「第 1 趾間 ↓」
④ 追加 1:内反 足関節内反(後脛骨筋) L5 の方向づけ 「内反 5 or 3 」
⑤ 追加 2:SLR/疼痛誘発 下肢伸展挙上での疼痛誘発(可能な範囲) 根性の方向づけ 「 SLR :疼痛あり/なし」

リハの組み立て:①可動域→②装具で歩行成立→③筋再教育→④歩行課題で転移

腓骨神経麻痺でも L5 でも、下垂足は歩行の “つまずき” に直結します。そこで、介入は歩行を成立させて練習量を確保する順に並べると回りやすくなります。

下垂足リハの型(成人・臨床:原因が腓骨でも L5 でも共通する枠組み)
フェーズ 目的 具体例 再評価
① 可動域 底屈拘縮の予防 足関節背屈の ROM、腓腹・ヒラメ筋の短縮チェック 背屈 ROM、歩行時の初期接地
② 装具 足クリアランス確保 AFO、簡易背屈補助(状況に応じて) つまずき頻度、歩行速度
③ 筋再教育 背屈・趾伸展の再獲得 短時間反復、代償(股関節過屈曲)を抑えた課題 TA / EHL の MMT 推移
④ 歩行課題 生活へ転移 段差・方向転換・屋外、疲労条件での再現 主訴場面での達成度

現場の詰まりどころ:よくある失敗(回避表)

下垂足で起こりやすい失敗と対策(成人・臨床)
失敗 起きること 対策 記録ポイント
背屈だけ見て終わる 腓骨か L5 かが曖昧のまま 外反と内反を 1 回ずつ入れる 外反 / 内反をセットで記録
感覚範囲を広く取りすぎる 判断がブレる 第 1 趾間(深腓骨)を固定してから拡張 代表点の結果
装具導入が遅れる 歩行量が落ちて回復が遅れる 歩行を成立させて練習量を確保する 装具あり/なしの歩行差
腰部症状を拾い損ねる 根性の可能性を見落とす 病歴で腰部〜殿部痛と増悪因子を確認 腰痛、疼痛誘発の有無

相談の目安:進行が速い / 疼痛が強い / 排尿排便の変化などは早めに共有

下垂足は、圧迫性の腓骨神経麻痺から腰椎由来まで幅があります。症状の進行が速い、疼痛が強い、感覚障害が広がる、排尿排便の変化があるなどは、経過を待たずに情報共有します。共有時は、運動 3 筋+感覚 1 点+内反を揃えると、次の検査( NCS / EMG など)の相談が進めやすくなります。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 一番早い見分けは何ですか?

外反(腓骨)に加えて、内反(後脛骨筋)を 1 回みることです。内反まで落ちると、根性の方向が見えやすくなります。

Q2. 感覚はどこを触ればいいですか?

まず第 1 趾間(深腓骨)を固定します。そのうえで、必要なら下腿外側〜足背へ範囲を広げます。

Q3. 装具はいつ入れますか?

歩行でつまずきが出るなら早めに検討します。歩行を成立させて練習量を確保したうえで、筋再教育と歩行課題へつなげると回りやすいです。

Q4. 検査( NCS / EMG )はいつ相談しますか?

分布が揃わない、内反まで落ちる、原因(圧迫)がはっきりしない、経過で改善が乏しいなどのときに相談しやすいです。局在と重症度、予後の見通しに使われます。

参考文献

  1. Nori SL, Stretanski MF. Foot Drop. StatPearls. 2024-. NCBI Bookshelf
  2. Lezak B, Massel DH, Varacallo M. Peroneal Nerve Injury. StatPearls. 2024-. NCBI Bookshelf
  3. Marciniak C. Fibular (peroneal) neuropathy: electrodiagnostic features and clinical correlates. PM R. 2013;5(4):e41-e46. doi: 10.1016/j.pmrj.2012.08.016 / PMID: 23177035
  4. Masakado Y. Clinical neurophysiology in the diagnosis of peroneal nerve palsy. Keio J Med. 2008;57(2):84-89. J-STAGE PDF

おわりに

下垂足は、病歴(圧迫/腰部症状)→運動 3 筋→感覚 1 点→内反を追加→装具で歩行成立→課題練習→再評価のリズムにすると、鑑別と介入がつながりやすくなります。まず “分布が揃うか” を作るのが最短ルートです。

次の一手を決めるために、面談前の準備チェックと職場評価シートも手元に置いておくと進めやすいので、面談準備チェック&職場評価シートも活用してください。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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