FES-I・ABC・MFESの比較と使い分け

評価
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FES-I・ABC・MFES をどう使い分ける?(結論:迷ったらこの 3 つで決める)

転倒関連の主観尺度は「どれが正解」ではなく、何を測りたいかで選びます。結論はシンプルで、FES-I=不安(心配)ABC=自信(できると思える度合い)MFES=自信(面接でアンカー付けしやすい)です。

本ページは“比較・使い分けの親記事”として、選ぶ基準最小セット(機能検査+主観尺度)に集中します。各尺度の細かな実施手順は子記事へ分け、カニバリを避けながら回遊しやすい構造にします。

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FES-I・ABC・MFES の使い分け早見図
図:FES-I・ABC・MFES の使い分け早見図(不安と自信の軸で選定)

1 分まとめ(この 3 つで決める)

  • 不安(心配)を測りたいFES-I(転倒への “心配” を拾う)
  • 自信(できると思える)を測りたいABC( 0〜100% で幅広い活動を拾う)
  • 面接でブレなく回したい/アンカー付けしたいMFES( 0〜10 で説明が統一しやすい)

3 尺度の違い(比較表:ここだけ見れば OK)

転倒恐怖・自己効力感の主観尺度(FES-I/ABC/MFES)の比較(運用目安つき)
尺度 主に測るもの ざっくりの得点イメージ 強み 注意点 初回面接時間の目安 欠測時の扱い(推奨)
FES-I 転倒への不安(心配) 高いほど不安が強い “不安” をそのまま拾える。生活影響の把握に強い。 高得点=悪化方向なので、説明と記録の言い換えを固定する。 約 7〜10 分 未経験項目は無理に推定しない。理由(未実施・環境なし)を 1 行記録し、次回の確認場面を設定。
ABC バランス自信度(できる自信) 高いほど自信が高い( 0〜100% ) 自信の “幅” が見える。屋外や段差などで詰まりを拾いやすい。 導入文が揺れるとブレる(基準期間・尺度意味の統一が必須)。 約 8〜12 分 環境依存項目(屋外・人混み等)は「環境要因で未実施」と明記。低値項目 2 つを介入ターゲットに固定。
MFES 転倒自己効力感(自信) 高いほど自信が高い( 0〜10 ) 面接運用で統一しやすい。アンカー( 0/5/10 )を作りやすい。 生活様式と項目の不一致で欠測が出るため、記録ルールを決める。 約 6〜9 分 生活様式に合わない項目は欠測扱いで理由を固定記載。施設内代替課題で再評価可否を決める。

選び方(対象別:おすすめの組み合わせ)

実務では「主観尺度だけ」で結論を出さず、機能検査(歩行・立ち上がり・動的バランス)+主観尺度の最小セットにすると判断が安定します。

対象別の選び方(主観尺度+機能検査の最小セット例)
よくある状況 主観尺度(おすすめ) 機能検査(例) 見るポイント
転倒後に外出が減った/怖くて動けない FES-I TUG、5xSTS、10 m 歩行 機能は保たれるのに不安が高い“ズレ”を拾う
屋外・段差・人混みで自信が崩れる ABC FGA、Mini-BESTest 苦手場面(環境)を特定し、練習を段階づける
説明が難しい/評価者交代でブレる MFES TUG、BBS 面接導入文とアンカーを固定して再現性を上げる

解釈のコツ(数値だけで終わらせない)

3 尺度に共通するコツは、総得点より“どの活動で崩れるか”を 1 行で残すことです。介入は「環境調整 → 成功体験の段階づけ → 同条件で再評価」の順で回すと、主観の変化を説明しやすくなります。

同一患者でも「不安(FES-I)」と「自信(ABC/MFES)」は一致しないことがあります。このズレは、目標設定や説明設計(何が怖いか/何に自信がないか)を具体化する重要な手掛かりです。

運用プロトコル(説明テンプレ:これだけ固定)

  1. 基準期間:最近 1〜2 週の “普段” を想定して回答
  2. 説明の統一:不安(心配)か、自信(できると思える)かを最初に明言
  3. 欠測ルール:未経験・環境がない項目は理由をメモし、扱いを固定
  4. 再評価条件:場所・同席者・誘導文を可能な範囲で同一化

現場の詰まりどころ(回らない原因は “尺度” ではなく “標準化”)

回らない原因は、尺度そのものより「運用のズレ」です。特に次の 3 点で結果の比較可能性が落ちます。

よくある失敗

  • 導入文が評価者ごとに異なり、回答基準が毎回変わる
  • 欠測(未経験項目)の扱いが固定されていない
  • 総得点のみ記録して、低値の活動項目を残していない

回避手順(最小の標準化)

  1. 導入文を 1 文に固定(不安か自信かを明示)
  2. 欠測ルールを記録様式に追記(理由を必ず残す)
  3. 低値 2 項目を次回介入ターゲットとして明文化する

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 迷ったらどれを選べばいいですか?

まず“何を測りたいか”を 1 つに絞ります。不安(心配)なら FES-I、自信(できると思える)なら ABC または MFES。評価者間でブレやすい環境では MFES から始めると運用しやすいです。

Q2. 自己記入と面接、どちらが良いですか?

評価者が複数いる施設では、面接で導入文を統一できる利点があります。自己記入は負担が軽い一方、基準期間や尺度意味の説明が不足するとブレやすくなります。

Q3. 数値が改善しても活動量が増えないのはなぜですか?

主観尺度は心理・環境の影響を受けます。得点が改善しても、屋外・段差・人混みなどの苦手場面が残ると行動変容は進みにくいです。低値項目に対する段階づけと環境調整をセットで実施します。

Q4. FES-I と ABC を同時に使う意味はありますか?

あります。FES-I(不安)と ABC(自信)は別軸のため、両方を見ると「不安は高いが自信は保たれる」などのズレを把握できます。ズレは説明・目標設定の精度向上に有効です。

Q5. 再評価はどのくらいの間隔で、欠測項目はどう扱えばいいですか?

目安は 2〜4 週ごとです。重要なのは「同条件(場所・説明文・同席者)」で繰り返すこと。欠測項目は無理に点数化せず、欠測理由(未経験・環境なし・安全上未実施)を記録し、次回の実施条件を具体化します。環境依存で低値が出た項目は、介入ターゲットとして優先し、次回に同一場面で再確認します。

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参考文献

  1. Yardley L, Beyer N, Hauer K, Kempen G, Piot-Ziegler C, Todd C. Development and initial validation of the Falls Efficacy Scale-International (FES-I). Age Ageing. 2005;34(6):614-619. DOI: 10.1093/ageing/afi196
  2. Powell LE, Myers AM. The Activities-specific Balance Confidence (ABC) Scale. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 1995;50A(1):M28-M34. DOI: 10.1093/gerona/50A.1.M28
  3. Hill KD, Schwarz JA, Kalogeropoulos AJ, Gibson SJ. Fear of falling revisited. Arch Phys Med Rehabil. 1996;77(10):1025-1029. DOI: 10.1016/S0003-9993(96)90063-5
  4. Soh SLH, Peters R, Rahman NNA, de Vries NM. Falls efficacy instruments for community-dwelling older adults: A systematic review. Front Public Health. 2021;8:599835. DOI: 10.3389/fpubh.2020.599835

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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