FES-I・ABC・MFES をどう使い分ける?(結論:迷ったらこの 3 つで決める)
転倒関連の主観尺度は「どれが正解」ではなく、何を測りたいかで選びます。ざっくり言うと、FES-I=不安(心配)、ABC=自信(できると思える度合い)、MFES=自信(面接でアンカー付けしやすい)の立ち位置です。
本ページは “比較・使い分けの親記事” として、選ぶ基準と最小セット(機能検査+主観尺度)の組み方に集中します。各尺度の細かな手順は子記事へ分けて、カニバリを避けます。
1 分まとめ(この 3 つで決める)
- 不安(心配)を測りたい → FES-I(転倒への “心配” を拾う)
- 自信(できると思える)を測りたい → ABC( 0〜100% で幅広い活動を拾う)
- 面接でブレなく回したい/アンカー付けしたい → MFES( 0〜10 で説明が統一しやすい)
3 尺度の違い(比較表:ここだけ見ればOK)
| 尺度 | 主に測るもの | ざっくりの得点イメージ | 強み | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| FES-I | 転倒への不安(心配) | 高いほど不安が強い | “不安” をそのまま拾える。生活影響の把握に強い。 | 不安が強いほど高得点なので、説明と記録の言い換えが必要。 |
| ABC | バランス自信度(できる自信) | 高いほど自信が高い( 0〜100% ) | 自信の “幅” が見える。屋外や段差などで詰まりを拾いやすい。 | 説明が揺れるとブレやすい(基準期間・ 0〜100% の意味づけを固定)。 |
| MFES | 転倒自己効力感(自信) | 高いほど自信が高い( 0〜10 ) | 面接運用で統一しやすい。アンカー( 0/5/10 )を作りやすい。 | 尺度の対象活動が施設や生活様式に合わないと欠測が出る。 |
選び方(対象別:おすすめの組み合わせ)
実務では「主観尺度だけ」で結論を出さず、機能検査(歩行・立ち上がり・動的バランスなど)+主観尺度の “最小セット” にすると判断が安定します。
| よくある状況 | 主観尺度(おすすめ) | 機能検査(例) | 見るポイント |
|---|---|---|---|
| 転倒後に外出が減った/怖くて動けない | FES-I | TUG、5xSTS、10 m 歩行など | 機能はあるのに不安が強い “ズレ” を拾う |
| 屋外・段差・人混みで自信が崩れる | ABC | FGA、Mini-BESTest など | 苦手場面(環境)を特定して練習を段階づけ |
| 説明が難しい/評価者が変わるとブレる | MFES | TUG、BBS など | 面接導入のテンプレ化で “回る仕組み” を作る |
解釈のコツ(数値だけで終わらせない)
3 尺度に共通するコツは、総得点より “どの活動で崩れるか”を 1 行で残すことです。介入は「環境調整 → 成功体験の積み上げ(段階づけ) → 再評価(同条件)」で回すと、主観の変化が追いやすくなります。
また、同じ患者でも「不安(FES-I)」と「自信(ABC/MFES)」は一致しません。ズレが出たときこそ、目標設定や説明(何が怖いのか/何に自信がないのか)に直結します。
運用プロトコル(説明テンプレ:これだけ固定)
- 基準期間:最近 1〜2 週の “普段” を想定して回答
- 説明の統一:不安(心配)か、自信(できると思える)かを最初に明言
- 欠測ルール:未経験・環境がない項目は理由をメモし、扱いを固定
- 再評価条件:場所・同席者・誘導文をできるだけ同じにする
現場の詰まりどころ(回らない原因は “尺度” ではなく “標準化”)
3 尺度の運用で詰まりやすいのは「説明が人によって違う」「欠測の扱いが毎回違う」「記録が数値だけで終わる」の 3 点です。ここをテンプレ化すると、教育コストが一気に下がります。
見学や面談で “教育体制・評価の型・振り返りの仕組み” を確認できるチェックがあると、現場の詰まりが減ります:面談準備チェックを見ておく
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 迷ったらどれを選べばいい?
まず “何を測りたいか” を 1 つに絞ります。不安(心配)なら FES-I、自信(できると思える)なら ABC または MFES。説明がブレやすい環境なら MFES から始めると回しやすいです。
Q2. 自己記入と面接、どちらがいい?
評価者が多い施設では、面接で “導入文” を統一しやすいのが利点です。自己記入は負担が少ない一方、前提(基準期間・尺度の意味)が揺れるとブレやすくなります。
Q3. 数値が改善しても活動が増えないのはなぜ?
主観尺度は “心理” と “環境” の影響を強く受けます。数値が上がっても、屋外・段差・人混みなどの苦手場面が残ると活動は増えません。低値の項目(場面)を特定して、段階づけと環境調整をセットで行います。
次の一手(子記事へ:手順は各論で)
参考文献
- FES-I(公式):Scoring FES-I and Short FES-I. 公式ページ
- Shirley Ryan AbilityLab:Activities-specific Balance Confidence Scale(ABC). Rehabilitation Measures Database
- Shirley Ryan AbilityLab:Modified Falls Efficacy Scale(MFES). 配布 PDF
- Soh SLH, et al. Falls efficacy instruments for community-dwelling older adults. Front Public Health. 2021. PMC
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

