不可避褥瘡( UPI )の記録テンプレ|判定前チェックと PDF 記録用紙

臨床手技・プロトコル
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不可避褥瘡( UPI )は「言葉」より先に“記録の型”を揃える

不可避褥瘡( Unavoidable Pressure Injury: UPI )は、定義を知るだけでは現場で運用できません。大事なのは、①評価 → ②標準的ケア → ③目標と介入 → ④定期的な計画修正の「証跡」を、誰が見ても追える形で残すことです。本記事では、 UPI を検討する前提条件をチェック表に落とし、監査・説明・チーム合意に耐える記録の最小セットと記録用紙( PDF )をまとめます。

関連:褥瘡(市民向け表記の考え方も含む)は 日本褥瘡学会の案内 が一次情報です。

何が変わった?「防ぎきれない」から「不可避褥瘡( UPI )」へ

日本褥瘡学会は、 Unavoidable pressure injury の和訳名称を「不可避褥瘡( UPI )」とし、あわせて解説文(運用上の要件)を示しています。重要なのは、“できることはやった”を口頭で主張するのではなく、評価・標準ケア・介入・計画修正を記録で示すことが前提になった点です。

名称変更の背景には、実態調査や電子カルテ運用で取り扱いを明確にする意図があります。したがって現場では、用語の理解より先に「証跡の型」を揃えることが実務上の近道です。

解説文を“現場の言葉”に翻訳する(丸暗記しない)

解説文は長文のままでは運用しにくいため、次の 4 点に分解して扱うとブレません。

  • 評価:患者の身体状態と褥瘡リスク(危険因子)を評価している
  • 標準的ケア:標準的ケアを踏まえ、必要な予防ケアを実施している
  • 目標と介入:状態・ニーズに合う目標を置き、介入策を試みている
  • 計画修正:定期的に計画を見直し、修正履歴が追える

この 4 点が追える記録になっていれば、チーム内の説明が早くなり、判断の再現性も上がります。

現場の詰まりどころ(先にここを揃える)

UPI で止まりやすいのは「判定の言い回し」ではなく、標準的ケアの具体性と計画修正の履歴です。まずは不足しがちな項目を短文で埋め、次に判定検討へ進む順番にすると、議論が空中戦になりにくくなります。

UPI 判定前チェックの流れ(不足があれば修正を優先)

院内で「 UPI を検討する場面」を固定してください(例:発生時カンファ、週次回診、看護計画評価日)。次の順で確認します。

  1. 発生(または悪化)を確認し、部位・重症度・関連要因を整理する
  2. 直近 1〜2 週間のリスク評価の有無と結果を確認する
  3. 標準的ケア(体位変換・除圧・スキンケア・栄養・用具)の実施記録を確認する
  4. 目標・介入内容が状態に合っていたか、計画修正の履歴を確認する
  5. 不足があれば UPI 判定より先に、計画修正と再発防止を優先する
UPI 判定前チェックの流れ(評価→標準ケア→目標・介入→不足確認→判定・記録)

図で確認:記録の最小セット早見

文章量を増やすより、「何を・いつ・誰が・どう変えたか」が追えるように短文化します。次の図の項目を揃えると、説明と監査が通りやすくなります。

記録の最小セット早見(状態の要点/リスク評価/標準的ケア/目標と介入/修正履歴・説明)

UPI 判定の前提チェック( OK / NG 早見表 )

下表の目的は「 UPI かどうか」の即断ではなく、 UPI を検討するために必要な証跡が揃っているかを同じ目線で確認することです。

不可避褥瘡( UPI )を検討するための前提チェック(院内カンファ用)
領域 OK(証跡がある) NG(不足しがち) 次にやること
リスク評価 直近の評価日・所見・リスク因子が記録されている 評価が古い/評価日が不明/所見が曖昧 評価を更新し、圧・ずれ・湿潤・栄養などの要因を再整理
標準的ケア 体位変換・除圧・皮膚ケア等の実施が具体に残っている 「実施」のみで頻度・手段・担当が不明 頻度・手段・実施者を明記し、用具条件も固定
目標と介入 目標(期限/数値)と介入(担当)が一致している 目標が抽象的/介入が漫然/責任者不明 期限・数値・行動で具体化し、役割分担を記録
計画修正 定期見直しの履歴があり、変更点が追える 見直し日がない/「様子見」だけ/変更点不明 評価日を固定し、変更理由と変更内容を短文で残す
説明と合意 家族・チームへの説明要点が短文で残っている 説明記録がない/誤解を招く表現 説明テンプレを用いて、要点のみ 2 行で記録

記録の最小セット(テンプレ:そのまま転記できる)

UPI 関連の記録は、文章量より「何を・いつ・誰が・どう変えたか」が追えることが重要です。次の項目だけ揃えば、説明コストが下がり、再現性が上がります。

不可避褥瘡( UPI )運用の記録テンプレ(最小セット)
項目 書くこと(短文でOK) 記録例(文の型)
状態の要点 部位・所見・変化・関連因子(圧/ずれ/湿潤等) 「仙骨部に発赤〜びらん。湿潤あり、体位保持困難。」
リスク評価 評価日・結果・主要因子 「 1 / 29 に評価。圧とずれが主因。皮膚脆弱。」
標準的ケア 体位変換、除圧、皮膚ケア、用具等の具体 「 2 時間毎の体位変換、クッション調整、保湿実施。」
目標と介入 目標(期限/数値)+介入(担当) 「 48 時間で湿潤低減。除圧時間延長(看護/ PT )。」
計画修正 修正日・変更点・理由 「 1 / 31:体位と用具変更。体幹保持困難のため。」
判断の整理 UPI を検討した根拠、または不足点 「証跡は揃うが発生。回診で UPI 検討として合意。」
説明の要点 家族説明の要点( 2 行 ) 「予防を実施しつつ計画修正したが発生。今後も最適化。」

記録用紙( PDF )

印刷して使う場合は、まず PDF を開いてください。記入は上の「最小セット」に合わせて短文で揃えると、説明・監査が通りやすくなります。

PDF を開く(印刷用 A4 )

プレビューを表示

PDF が表示できない場合は、上の「 PDF を開く」ボタンからご確認ください。

よくある失敗( UPI を“言い訳”にしない)

  • 評価が古い:「リスク評価 → ケア」の因果が示せない。評価日を固定する。
  • 標準ケアが抽象的:頻度・手段・担当がないと証跡になりにくい。
  • 計画修正の履歴がない:「定期的な修正」の要件を満たしにくい。
  • 説明文が強すぎる:断定ではなく、実施と最適化の継続を短文で示す。

説明の型(家族・チーム向け:短文テンプレ)

説明は長文より、同じ型で短く残す方が誤解が減ります。担当が変わってもブレない文面を院内で統一してください。

  • 家族向け:「褥瘡の危険因子を評価し、予防ケアを継続しながら状態に合わせて計画を見直しましたが、皮膚の状態などの影響で発生しました。今後も最適化して悪化を防ぎます。」
  • チーム向け:「評価・標準ケア・介入・計画修正の証跡は揃う。回診で UPI 検討として合意し、再発防止の修正点を追加する。」

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. いつ「 UPI 」を判断(または検討)しますか?

発生・悪化を確認した時点で、まず前提チェックを行います。証跡不足があれば UPI 判定より、評価更新と計画修正を優先します。回診やカンファなど、院内の判断タイミングを固定するとブレが減ります。

Q2. 終末期だけの概念ですか?

終末期で話題になりやすい一方、実務の中心は「評価・標準ケア・介入・計画修正の証跡」です。終末期に限定せず、要件を満たす記録運用として扱う方が実装しやすくなります。

Q3. 普段の褥瘡記録と何が違いますか?

特別な長文より、評価日・標準ケアの具体・計画修正履歴が追えることが差になります。既存の褥瘡記録に「修正点」と「説明の要点」を足す設計で十分です。

Q4. チーム内で判断が割れたときの優先見直しは?

まず「標準的ケアの具体性」と「計画修正の履歴」を確認してください。頻度・体位・用具・担当・修正理由を埋めるだけで、判断の一致率が上がります。

次の一手(院内で“型”を揃えて再発を減らす)

運用を整えたあとに、職場環境の詰まりも点検しておきましょう

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チェック後の進め方を見る(PT キャリアガイド)


参考文献

  • 日本褥瘡学会.防ぎきれない褥瘡に関する「和訳名称変更」と「解説文」のお知らせ( 2025 年 1 月 6 日 ).PDF
  • 日本褥瘡学会.褥瘡 / MDRPU(「褥瘡(じょくそう)」の市民向け表記について).Web

著者情報

rehabilikun(理学療法士) rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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