心不全の退院指導|何を伝え、どう確認するか
心不全の退院指導では、説明した項目の数よりも、患者・家族が退院後に何を観察し、どの変化で相談し、治療や生活管理をどう続けるかを理解できていることが重要です。この記事では、退院直後の自己管理につながりやすい内容を、体重・症状・受診行動・服薬・食事と水分・活動の6領域に整理します。2025年改訂版心不全診療ガイドラインを踏まえ、増悪時の受診目安、Teach-backによる理解確認、記録・引き継ぎまで実務向けに解説します。
結論|退院指導は「説明」から退院後の行動まで確認する
心不全の退院指導では、患者・家族が退院後にセルフモニタリングを続け、心不全増悪が疑われたときに相談・受診へつなげられる状態を目指します。
2025年改訂版心不全診療ガイドラインでは、心不全に関する教育とともに、症状・徴候を観察するセルフケアモニタリングや、増悪時の対処方法を患者・家族へ伝えることが重視されています。
本記事では、退院前に確認しやすいよう体重・セルフモニタリング、症状、連絡・受診、服薬、食事・水分、活動・運動の6領域に整理します。これはガイドライン上の公式な「6項目」ではなく、退院後の行動へつなげるために当サイトで整理した実務上の分類です。

心不全の退院前に確認する6領域
退院指導では、各項目を単に「説明済み」にするのではなく、患者・家族が退院後に実行できる形へ具体化することが重要です。患者の病状、認知機能、生活環境、支援者の有無などによって必要な内容は追加・調整します。
| 領域 | 退院前に確認すること | 理解確認の例 |
|---|---|---|
| 体重・セルフモニタリング | 体重を継続して記録できるかを確認する。必要に応じて血圧・脈拍・症状も確認する。 | 「退院後、何を測って記録しますか?」 |
| 症状 | 息切れ、浮腫、倦怠感など、本人に生じやすい「いつもと違う変化」を確認する。 | 「どんな変化があったら心不全の悪化を考えますか?」 |
| 連絡・受診 | 悪化が疑われたときに、いつ・誰へ連絡するかを確認する。夜間・休日の対応も共有する。 | 「息苦しさや急な体重増加があったら、まずどうしますか?」 |
| 服薬 | 服薬方法、飲み忘れへの対策を確認し、自己判断で中止しないことを共有する。 | 「薬を続けるうえで困りそうなことはありますか?」 |
| 食事・水分 | 塩分や水分について、患者ごとの指示と退院後に実行できる工夫を確認する。 | 「退院後の食事で、実際に何を変えますか?」 |
| 活動・運動 | 退院後に続ける活動量と、症状が出たときの中断・相談方法を確認する。 | 「どのくらい動き、どんな変化があれば休みますか?」 |
体重は何kg増えたら連絡する?|3日間で2kg以上の位置づけ
2025年改訂版心不全診療ガイドラインの患者・家族・介護者への教育内容では、呼吸困難や3日間で2kg以上の体重増加などを認めた場合について、医療機関を受診する必要性と増悪時の対処方法を説明することが示されています。
ただし、「3日間で2kg以上」をすべての患者へ一律に適用する独立した治療基準として扱うのではなく、患者教育における増悪時の目安の一つとして捉えます。退院時には、患者ごとの病状・通常の体重・治療方針・主治医の指示を確認し、どの変化で、誰へ連絡するのかまで具体化します。
また、体重だけで判断するのではなく、呼吸困難、浮腫、倦怠感などの症状・徴候や経時的な変化と合わせて確認します。
Teach-back|本人・家族の言葉で理解を確認する
退院指導では、「分かりましたか?」と質問するだけでは、実際に理解できているか判断しにくいことがあります。Teach-backでは、説明した内容を患者・家族に自分の言葉で説明してもらい、理解できていない部分を確認します。
たとえば、「私の説明が分かりにくくなかったか確認したいので、退院後に体重が増えたり息苦しくなったりしたとき、どうする予定か教えてください」と確認します。うまく説明できない部分があれば、その部分を再説明して再度確認します。
- 短く説明する:患者に必要な内容を一度に詰め込みすぎない。
- 本人・家族に説明してもらう:退院後に何をするかを自分の言葉で確認する。
- 不足部分を補う:理解できていない部分を再説明する。
- 再確認して記録する:何を説明できたか、何が未確認かを残す。
Teach-backを用いた心不全患者への退院教育では、セルフケアや理解の改善が報告されています。一方、再入院などの臨床転帰への効果は研究によって異なるため、再入院を防ぐ方法と断定するのではなく、患者・家族の理解を確認し、セルフケアにつなげる方法として活用します。
心不全 退院前セルフケア確認シート|Excel・PDF
退院前の最終確認で使いやすいよう、6領域、増悪時の行動、Teach-back、要再確認・引き継ぎをA4・1枚にまとめました。公式様式ではなく、患者ごとの病状・治療方針・主治医の指示・施設基準を優先して使用してください。
Excel版は院内で編集・入力して使用したい場合、PDF版は印刷して手書きで使用したい場合に利用できます。
PDF版をプレビューする
記録は「説明済み」ではなく、できたこと・残った課題を記載する
退院指導の記録では、説明した内容だけでなく、患者・家族が何を説明できたか、何がまだ難しいか、誰へ引き継ぐかを残すと再評価につなげやすくなります。
| 確認場面 | 記録例 |
|---|---|
| セルフモニタリング | 退院後の体重測定・記録方法を説明。本人は測定する時間と記録方法を説明できた。 |
| 増悪時対応 | 呼吸困難・浮腫・急な体重増加時の対応を確認。本人は悪化時の連絡先を説明できた。 |
| 要再確認 | 服薬管理について本人のみでの継続に不安あり。家族と管理方法を再確認予定。 |
| 引き継ぎ | 食事・水分管理について理解確認が不十分。退院後の支援者へ再確認を依頼する。 |
記録例は公式様式ではありません。院内書式や職種ごとの記録基準がある場合は、それらを優先してください。
本人だけで自己管理が難しい場合は支援者まで決める
患者本人が説明内容を理解できていても、退院後にセルフモニタリングや服薬管理を継続できるとは限りません。認知機能、身体機能、生活環境などによって自己管理が難しい場合は、本人だけに管理を求めず、家族・介護者や退院後に関わる医療・介護職と役割を共有します。
特に、誰が体重や症状を確認するのか、異常があった場合に誰が連絡するのか、退院時点で理解が不十分な内容を誰が再確認するのかまで整理しておくと、退院後の支援へつなげやすくなります。
よくある質問
Q1. 心不全の退院指導は6項目だけで十分ですか?
6項目だけをすべての患者に共通する公式の指導項目として扱うものではありません。本記事では、退院後の行動へつながりやすい内容を6領域に整理しています。病状、感染予防、喫煙・飲酒、睡眠、定期受診など、患者ごとに必要な教育内容を追加してください。
Q2. 体重が何kg増えたら受診するよう説明しますか?
2025年改訂版心不全診療ガイドラインでは、患者教育の内容として、呼吸困難や3日間で2kg以上の体重増加などを認めた場合の受診必要性と増悪時の対処方法を説明することが示されています。ただし、一律の独立した治療基準として扱うのではなく、患者ごとの病状・治療方針・主治医の指示を踏まえて連絡・受診方法を具体化します。
Q3. Teach-backは「分かりましたか?」と聞くのと何が違いますか?
Teach-backでは、患者・家族に説明内容を自分の言葉で説明してもらいます。「分かりました」と回答できるかではなく、退院後に何を確認し、悪化したときにどう行動するかを実際に説明できるか確認できる点が異なります。
次の一手
- 制度・院内運用を確認する:心不全再入院予防継続管理料の運用
- リハビリで確認する評価を整理する:心不全リハの評価|最小セットと再評価
参考文献
- 日本循環器学会, 日本心不全学会. 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン. 公式PDF
- Oh S, Choi H, Oh EG, Lee JY. Effectiveness of discharge education using teach-back method on readmission among heart failure patients: a systematic review and meta-analysis. Patient Educ Couns. 2023;107:107559. doi:10.1016/j.pec.2022.11.001. PubMed
- Oh EG, Lee JY, Lee HJ, Oh S. Effects of discharge education using teach-back methods in patients with heart failure: a randomized controlled trial. Int J Nurs Stud. 2023;140:104453. doi:10.1016/j.ijnurstu.2023.104453. PubMed
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

