- 敗血症( J-SSCG 2024 )の早期リハは「開始条件+中止基準+記録」でブレなくなる
- なぜ今: J-SSCG 2024 で「 PICS 予防と早期リハ」が明文化された
- 現場の詰まりどころ(ここで迷う)
- 運用フロー( 1 分で決める):スクリーニング → レベル決定 → 実施 → 修正
- 図表 1|開始条件・中止基準( ICU 早期リハ安全管理 早見表 )
- 図表 2|段階別メニュー(ベッド上 → 端座位 → 立位 → 歩行)
- 図表 3|記録の最小セット(テンプレ)
- 「早期リハ」の根拠を 60 秒で押さえる(患者説明・合意用)
- よくある失敗(やりがち NG )
- よくある質問( FAQ )
- 次の一手(院内で“運用の型”を固定する)
- 参考文献
- 著者情報
敗血症( J-SSCG 2024 )の早期リハは「開始条件+中止基準+記録」でブレなくなる
敗血症の急性期は、「動かしたい」気持ちと「安全管理」の間で迷いが出やすい領域です。 J-SSCG 2024 でも、 PICS の予防として早期リハビリテーションが扱われていますが、現場で重要なのは推奨の暗記ではなく、開始条件と中止基準を共通言語にし、段階別メニューと記録の最小セットで再現性を担保することです。
本記事は、 ICU の敗血症患者で「今日どこまで実施するか」を 1 分で決めるために、①スクリーニング→②実施レベル決定→③実施中の中止→④計画修正を“型”として固定します(図表付き)。
臨床の型(評価・記録)を増やしつつ、キャリアの選択肢も押さえると迷いが減ります。
PT のキャリア設計を 5 分で整理するなぜ今: J-SSCG 2024 で「 PICS 予防と早期リハ」が明文化された
日本集中治療医学会・日本救急医学会の合同委員会は、 J-SSCG 2024 正式版を公開し、 CQ でも PICS 予防としての早期リハビリテーションを扱っています。 “弱い推奨”であっても、院内プロトコルに落とすニーズ(標準化・説明・監査)は高く、運用記事の価値が出やすい領域です。
現場の詰まりどころ(ここで迷う)
- 開始条件が曖昧:「血圧は大丈夫?」の基準が人により違う
- 中止基準が曖昧:実施中に“どこまでなら継続か”で止まる
- 段階付けがない:ベッド上から歩行までの「次の一手」が決められない
- 記録が弱い:実施の根拠(安全確認)と修正履歴が追えない
関連:ベッドサイドの呼吸所見と安全管理の整理は 呼吸評価のまとめ を起点にすると早いです。
運用フロー( 1 分で決める):スクリーニング → レベル決定 → 実施 → 修正
- スクリーニング:循環・呼吸・意識・ライン・禁忌を確認
- 実施レベル決定:ベッド上 / 端座位 / 立位 / 歩行のどこまで可能かを選ぶ
- 実施中の中止:中止基準に該当したら即中止し、バイタル回復と原因評価
- 計画修正: “次回は何を変えるか(頻度・姿勢・補助・用具)”を短文で残す
図表 1|開始条件・中止基準( ICU 早期リハ安全管理 早見表 )
下表は「絶対値で縛る」ためではなく、チームで同じ言葉で安全確認をするための早見です。施設の慣行(鎮静方針・昇圧薬運用・目標 MAP など)に合わせ、数値は“院内ルール”として上書きしてください。
| 領域 | 開始(例:GO) | 中止(例:STOP) | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 循環 | 循環が安定(治療方針に沿って MAP / SBP が維持)/不整脈がコントロール | 低血圧・新規の重篤不整脈・胸痛・失神様症状 | 実施前後の BP / HR と、昇圧薬の有無(増量の有無) |
| 呼吸 | SpO2 が目標範囲で推移/呼吸苦が許容範囲 | SpO2 低下が持続/呼吸困難の増悪/明らかな換気不全兆候 | SpO2 / 呼吸数 / 主観的呼吸困難( Borg など) |
| 意識・協力 | 覚醒が十分で指示理解が可能(鎮静の深さが過度でない) | 意識低下・強い興奮/安全確保困難 | 鎮静状態(例: RASS )とコミュニケーション可否 |
| 出血・侵襲 | 明らかな進行性出血なし/術直後は担当医方針に従う | 出血兆候・循環の急変/禁忌に該当 | 禁忌確認の項目(担当医確認の有無) |
| ライン・デバイス | 固定良好/離床時の管理体制が確保 | 抜去リスクが高い/固定不良/トラブル発生 | ライン本数・注意点・介助者配置 |
図表 2|段階別メニュー(ベッド上 → 端座位 → 立位 → 歩行)
“何をしたか”より、“なぜその段階を選んだか”が説明できると、チームで合意しやすくなります。下表は介入の例です(病棟・ ICU の体制に合わせて入れ替え可)。
| レベル | 目的 | 介入例 | 次に上げる条件(例) |
|---|---|---|---|
| L0 ベッド上 | 循環・呼吸を乱さず負荷に慣れる | 関節可動域/呼吸介助/寝返り練習/ベッドアップ耐性 | ベッドアップで安定し、症状が増悪しない |
| L1 端座位 | 抗重力位の耐性・体幹制御 | 端座位保持/足底荷重/上肢リーチ/座位でのADL要素 | 端座位で BP / SpO2 が安定し、めまいが軽い |
| L2 立位 | 起立耐性・下肢支持 | 立位保持/荷重移動/その場足踏み(最小回数) | 立位で症状が許容、ライン管理が安全にできる |
| L3 歩行 | 機能回復・退院後の活動に繋ぐ | 歩行(距離を短く)/方向転換/休息を挟んで反復 | 負荷後の回復が早く、次回の目標が立てられる |
図表 3|記録の最小セット(テンプレ)
記録は長文化より、安全確認 → 実施レベル → 反応 → 修正が追えることを優先します。下の 6 行が残れば、説明が一気にラクになります。
| 項目 | 書くこと(短文でOK) | 記録例 |
|---|---|---|
| 今日の前提 | 循環・呼吸・意識の要点(開始可否) | 「 MAP 安定、 SpO2 目標内、指示理解可」 |
| 実施レベル | L0〜L3 を選択し理由を 1 行 | 「 L1:端座位まで(起立でめまい既往)」 |
| 実施内容 | メニューと負荷量(時間/回数/距離) | 「端座位 5 分× 2、リーチ 10 回」 |
| 反応 | BP / HR / SpO2 / 症状(呼吸苦・疲労) | 「 SpO2 低下なし、呼吸苦 Borg 2 → 3」 |
| 中止の有無 | 中止理由(該当なしなら“なし”) | 「中止なし」/「立位でめまい増悪のため中止」 |
| 次回修正 | 変える点(介助/用具/姿勢/休息) | 「端座位の休息を増やし、次回は立位 1 分から」 |
「早期リハ」の根拠を 60 秒で押さえる(患者説明・合意用)
ガイドラインでは、早期リハが PICS 予防に関係しうる一方で、エビデンスの確実性は高くありません。だからこそ、運用では安全基準と中止基準を明確にし、実施の妥当性を記録で担保することが重要です。 ICU 早期リハの RCT としては、人工呼吸管理中の患者で鎮静中断と PT / OT を組み合わせ、退院時の機能転帰改善を示した試験が代表的です。
よくある失敗(やりがち NG )
- 数値だけで GO / STOP:患者の目標(蘇生段階・鎮静方針)と整合しない
- “実施しました”だけ:開始判断の根拠(安全確認)と修正点が残らない
- 段階が飛ぶ:端座位耐性がないのに立位を狙い、失敗体験が増える
- 中止=悪:中止は安全管理の成功。中止理由と次回修正が書ければ OK
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 「早期」はいつからですか?
J-SSCG 2024 の CQ では、 ICU 入室から 72 時間以内に開始する介入を「早期リハビリテーション」として扱っています。院内では「 48〜72 時間以内にスクリーニングを完了し、可能なら開始」を目安にルール化すると回りやすいです。
Q2. 昇圧薬があるときは離床できませんか?
一律に禁止すると機会損失になります。ポイントは、循環が安定しているか(増量中か、急変がないか)と、実施レベルを落として安全に進められるかです。院内の目標 MAP と昇圧薬運用に合わせて、開始条件を明文化してください。
Q3. 中止になった日は「やらない方がいい日」ですか?
中止は“安全に止められた”成功です。中止理由(症状・バイタル変化・ライン問題)と、次回の修正(姿勢、休息、補助、用具)を 1 行で残せば、翌日の意思決定が速くなります。
Q4. 何を記録すれば説明に耐えますか?
本文の「記録の最小セット( 6 行 )」が揃えば十分です。特に「開始判断の根拠」「実施レベルの理由」「次回修正」の 3 点が抜けると、説明・合意が難しくなります。
次の一手(院内で“運用の型”を固定する)
- 関連:呼吸評価(ベッドサイド所見)の運用
- 関連:頸静脈評価( JVP )の標準化
- 書類・運用の整備:環境の詰まりも点検(無料チェックシート)
参考文献
- 日本集中治療医学会.「日本版敗血症診療ガイドライン 2024( J-SSCG 2024 )」正式版 公開のお知らせ( 2024 年 12 月 25 日 ).Web
- 日本版敗血症診療ガイドライン 2024( J-SSCG 2024 )本編.PDF
- 日本版敗血症診療ガイドライン 2024 付録( CQ 7-9 ).PDF
- Schweickert WD, Pohlman MC, Pohlman AS, et al. Early physical and occupational therapy in mechanically ventilated, critically ill patients: a randomised controlled trial. Lancet. 2009;373(9678):1874-1882. doi: 10.1016/S0140-6736(09)60658-9
- Conceição TMA, Gonzáles AI, Figueiredo FCXS, et al. Safety criteria to start early mobilization in intensive care units: Systematic review. Rev Bras Ter Intensiva. 2017;29(4):509-519. doi: 10.5935/0103-507X.20170076
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


