敗血症GL2024:早期リハ運用フロー

臨床手技・プロトコル
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敗血症( J-SSCG 2024 )の早期リハは「開始条件+中止基準+記録」でブレなくなる

敗血症の急性期は、「動かしたい」気持ちと「安全管理」の間で迷いが出やすい領域です。 J-SSCG 2024 でも、 PICS の予防として早期リハビリテーションが扱われていますが、現場で重要なのは推奨の暗記ではなく、開始条件中止基準を共通言語にし、段階別メニュー記録の最小セットで再現性を担保することです。

本記事は、 ICU の敗血症患者で「今日どこまで実施するか」を 1 分で決めるために、①スクリーニング②実施レベル決定③実施中の中止④計画修正を“型”として固定します(図表付き)。

臨床の型(評価・記録)を増やしつつ、キャリアの選択肢も押さえると迷いが減ります。

PT のキャリア設計を 5 分で整理する

なぜ今: J-SSCG 2024 で「 PICS 予防と早期リハ」が明文化された

日本集中治療医学会・日本救急医学会の合同委員会は、 J-SSCG 2024 正式版を公開し、 CQ でも PICS 予防としての早期リハビリテーションを扱っています。 “弱い推奨”であっても、院内プロトコルに落とすニーズ(標準化・説明・監査)は高く、運用記事の価値が出やすい領域です。

現場の詰まりどころ(ここで迷う)

  • 開始条件が曖昧:「血圧は大丈夫?」の基準が人により違う
  • 中止基準が曖昧:実施中に“どこまでなら継続か”で止まる
  • 段階付けがない:ベッド上から歩行までの「次の一手」が決められない
  • 記録が弱い:実施の根拠(安全確認)と修正履歴が追えない

関連:ベッドサイドの呼吸所見と安全管理の整理は 呼吸評価のまとめ を起点にすると早いです。

運用フロー( 1 分で決める):スクリーニング → レベル決定 → 実施 → 修正

  1. スクリーニング:循環・呼吸・意識・ライン・禁忌を確認
  2. 実施レベル決定:ベッド上 / 端座位 / 立位 / 歩行のどこまで可能かを選ぶ
  3. 実施中の中止:中止基準に該当したら即中止し、バイタル回復と原因評価
  4. 計画修正: “次回は何を変えるか(頻度・姿勢・補助・用具)”を短文で残す

図表 1|開始条件・中止基準( ICU 早期リハ安全管理 早見表 )

下表は「絶対値で縛る」ためではなく、チームで同じ言葉で安全確認をするための早見です。施設の慣行(鎮静方針・昇圧薬運用・目標 MAP など)に合わせ、数値は“院内ルール”として上書きしてください。

敗血症の早期リハ:開始条件と中止基準(院内で統一するためのたたき台)
領域 開始(例:GO) 中止(例:STOP) 記録ポイント
循環 循環が安定(治療方針に沿って MAP / SBP が維持)/不整脈がコントロール 低血圧・新規の重篤不整脈・胸痛・失神様症状 実施前後の BP / HR と、昇圧薬の有無(増量の有無)
呼吸 SpO2 が目標範囲で推移/呼吸苦が許容範囲 SpO2 低下が持続/呼吸困難の増悪/明らかな換気不全兆候 SpO2 / 呼吸数 / 主観的呼吸困難( Borg など)
意識・協力 覚醒が十分で指示理解が可能(鎮静の深さが過度でない) 意識低下・強い興奮/安全確保困難 鎮静状態(例: RASS )とコミュニケーション可否
出血・侵襲 明らかな進行性出血なし/術直後は担当医方針に従う 出血兆候・循環の急変/禁忌に該当 禁忌確認の項目(担当医確認の有無)
ライン・デバイス 固定良好/離床時の管理体制が確保 抜去リスクが高い/固定不良/トラブル発生 ライン本数・注意点・介助者配置

図表 2|段階別メニュー(ベッド上 → 端座位 → 立位 → 歩行)

“何をしたか”より、“なぜその段階を選んだか”が説明できると、チームで合意しやすくなります。下表は介入の例です(病棟・ ICU の体制に合わせて入れ替え可)。

敗血症の早期リハ:段階別メニューと進め方(例)
レベル 目的 介入例 次に上げる条件(例)
L0 ベッド上 循環・呼吸を乱さず負荷に慣れる 関節可動域/呼吸介助/寝返り練習/ベッドアップ耐性 ベッドアップで安定し、症状が増悪しない
L1 端座位 抗重力位の耐性・体幹制御 端座位保持/足底荷重/上肢リーチ/座位でのADL要素 端座位で BP / SpO2 が安定し、めまいが軽い
L2 立位 起立耐性・下肢支持 立位保持/荷重移動/その場足踏み(最小回数) 立位で症状が許容、ライン管理が安全にできる
L3 歩行 機能回復・退院後の活動に繋ぐ 歩行(距離を短く)/方向転換/休息を挟んで反復 負荷後の回復が早く、次回の目標が立てられる

図表 3|記録の最小セット(テンプレ)

記録は長文化より、安全確認 → 実施レベル → 反応 → 修正が追えることを優先します。下の 6 行が残れば、説明が一気にラクになります。

敗血症 早期リハ:記録テンプレ(最小セット)
項目 書くこと(短文でOK) 記録例
今日の前提 循環・呼吸・意識の要点(開始可否) 「 MAP 安定、 SpO2 目標内、指示理解可」
実施レベル L0〜L3 を選択し理由を 1 行 「 L1:端座位まで(起立でめまい既往)」
実施内容 メニューと負荷量(時間/回数/距離) 「端座位 5 分× 2、リーチ 10 回」
反応 BP / HR / SpO2 / 症状(呼吸苦・疲労) 「 SpO2 低下なし、呼吸苦 Borg 2 → 3」
中止の有無 中止理由(該当なしなら“なし”) 「中止なし」/「立位でめまい増悪のため中止」
次回修正 変える点(介助/用具/姿勢/休息) 「端座位の休息を増やし、次回は立位 1 分から」

「早期リハ」の根拠を 60 秒で押さえる(患者説明・合意用)

ガイドラインでは、早期リハが PICS 予防に関係しうる一方で、エビデンスの確実性は高くありません。だからこそ、運用では安全基準と中止基準を明確にし、実施の妥当性を記録で担保することが重要です。 ICU 早期リハの RCT としては、人工呼吸管理中の患者で鎮静中断と PT / OT を組み合わせ、退院時の機能転帰改善を示した試験が代表的です。

よくある失敗(やりがち NG )

  • 数値だけで GO / STOP:患者の目標(蘇生段階・鎮静方針)と整合しない
  • “実施しました”だけ:開始判断の根拠(安全確認)と修正点が残らない
  • 段階が飛ぶ:端座位耐性がないのに立位を狙い、失敗体験が増える
  • 中止=悪:中止は安全管理の成功。中止理由と次回修正が書ければ OK

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 「早期」はいつからですか?

J-SSCG 2024 の CQ では、 ICU 入室から 72 時間以内に開始する介入を「早期リハビリテーション」として扱っています。院内では「 48〜72 時間以内にスクリーニングを完了し、可能なら開始」を目安にルール化すると回りやすいです。

Q2. 昇圧薬があるときは離床できませんか?

一律に禁止すると機会損失になります。ポイントは、循環が安定しているか(増量中か、急変がないか)と、実施レベルを落として安全に進められるかです。院内の目標 MAP と昇圧薬運用に合わせて、開始条件を明文化してください。

Q3. 中止になった日は「やらない方がいい日」ですか?

中止は“安全に止められた”成功です。中止理由(症状・バイタル変化・ライン問題)と、次回の修正(姿勢、休息、補助、用具)を 1 行で残せば、翌日の意思決定が速くなります。

Q4. 何を記録すれば説明に耐えますか?

本文の「記録の最小セット( 6 行 )」が揃えば十分です。特に「開始判断の根拠」「実施レベルの理由」「次回修正」の 3 点が抜けると、説明・合意が難しくなります。

次の一手(院内で“運用の型”を固定する)

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参考文献

  • 日本集中治療医学会.「日本版敗血症診療ガイドライン 2024( J-SSCG 2024 )」正式版 公開のお知らせ( 2024 年 12 月 25 日 ).Web
  • 日本版敗血症診療ガイドライン 2024( J-SSCG 2024 )本編.PDF
  • 日本版敗血症診療ガイドライン 2024 付録( CQ 7-9 ).PDF
  • Schweickert WD, Pohlman MC, Pohlman AS, et al. Early physical and occupational therapy in mechanically ventilated, critically ill patients: a randomised controlled trial. Lancet. 2009;373(9678):1874-1882. doi: 10.1016/S0140-6736(09)60658-9
  • Conceição TMA, Gonzáles AI, Figueiredo FCXS, et al. Safety criteria to start early mobilization in intensive care units: Systematic review. Rev Bras Ter Intensiva. 2017;29(4):509-519. doi: 10.5935/0103-507X.20170076

著者情報

rehabilikun(理学療法士) rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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