敗血症の早期リハ判断フロー

臨床手技・プロトコル
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敗血症の早期リハは「開始・中止・記録」で判断します

敗血症の急性期リハでは、「今日どこまで動かすか」を安全に決めることが最重要です。J-SSCG 2024 では PICS 予防として早期リハビリテーションが扱われていますが、現場で必要なのは推奨文の暗記ではなく、開始条件・中止基準・記録の型をチームでそろえることです。

この記事では、ICU や急性期病棟で敗血症患者を担当する PT・OT・ST 向けに、実施可否を決める 5 分フロー、段階別メニュー、記録テンプレを整理します。この記事で決まるのは「今日実施できるか」「どのレベルまで進めるか」「中止したときに何を書くか」です。

敗血症の早期リハ判断を、急性期評価の流れの中で確認しておきましょう。

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この記事で答えること:敗血症患者を「今日どこまで動かすか」

この記事で扱う中心は、敗血症患者の早期リハを開始するか、どの段階まで進めるか、中止した場合にどう記録するかです。疾患治療、抗菌薬、循環作動薬の詳細な選択は主題ではありません。

また、職種ごとの詳細な役割分担や申し送りテンプレは、子記事の ICU 早期離床の職種連携プロトコル に分けます。本記事では、担当者が変わっても判断がブレにくい「開始・中止・記録」の共通言語化を優先します。

J-SSCG 2024 では PICS 予防として早期リハが扱われます

J-SSCG 2024 では、PICS 予防として早期リハビリテーションを行うことが弱く推奨されています。エビデンスの確実性が高い領域ではないため、「必ず離床する」ではなく、患者の状態に合わせて安全基準を確認しながら段階的に進める姿勢が重要です。

つまり、現場で標準化すべきなのは「早期リハをするか・しないか」の二択ではありません。循環・呼吸・意識・ライン管理を確認し、L0 ベッド上、L1 端座位、L2 立位、L3 歩行のどこまで可能かを毎回判断することです。

5 分フロー:スクリーニングから次回修正までを固定する

敗血症の早期リハは、スクリーニング、レベル決定、実施、中止判断、次回修正の順で考えると迷いにくくなります。特に大切なのは、実施前に「今日は何を達成する日か」を決めてから介入することです。

敗血症早期リハの5分フロー
敗血症早期リハ:5 分判断フロー
手順 見ること 判断 記録すること
1. スクリーニング 循環、呼吸、意識、出血、ライン 開始できる状態か 開始可否の根拠
2. レベル決定 前回反応、今日の安定性、介助体制 L0〜L3 のどこまで行うか 選んだレベルと理由
3. 実施 BP、HR、SpO2、呼吸苦、疲労、表情 継続できるか 実施内容と反応
4. 中止判断 症状増悪、バイタル変化、ライン不安定 止めるか、負荷を下げるか 中止理由
5. 次回修正 何を変えれば安全に進められるか 姿勢、時間、介助、休息を調整 次回の一手

開始条件と中止基準は「数値+症状+治療段階」で見る

開始条件と中止基準は、数値だけで機械的に決めると危険です。敗血症では治療段階、鎮静、昇圧薬、呼吸管理、感染コントロールの状況によって許容できる負荷が変わるため、チーム内で同じ見方を持つことが重要です。

敗血症早期リハ:開始条件と中止基準の早見表
領域 開始を検討しやすい状態 中止・延期を考える状態 記録ポイント
循環 治療方針に沿って血圧が維持され、急な増悪がない 低血圧の進行、新規の重篤不整脈、胸痛、失神様症状 BP、HR、昇圧薬の有無、増量の有無
呼吸 SpO2 が目標範囲で推移し、呼吸苦が許容範囲 SpO2 低下の持続、呼吸困難の増悪、換気不全兆候 SpO2、呼吸数、Borg、酸素条件
意識・協力 覚醒が得られ、簡単な指示理解が可能 強い興奮、意識低下、安全確保困難 RASS、指示理解、せん妄の有無
出血・侵襲 進行性出血がなく、医師方針と矛盾しない 出血兆候、急な循環変動、明確な禁忌 禁忌確認、医師確認の有無
ライン・デバイス 固定が安定し、介助者配置が確保できる 抜去リスクが高い、固定不良、管理者不足 ライン本数、注意点、介助者数

段階別メニューは L0 から L3 で共有する

早期リハでは、端座位や歩行だけが成果ではありません。状態が不安定な日は、ベッド上での体位変換、呼吸介助、関節可動域練習、ベッドアップ耐性の確認も、次の離床につなげる重要な介入です。

敗血症早期リハ:段階別メニューと進め方
レベル 目的 介入例 次へ進める目安
L0 ベッド上 循環・呼吸を乱さず負荷に慣れる 体位変換、ROM、呼吸介助、ベッドアップ 症状増悪なくベッドアップを保てる
L1 端座位 抗重力位への耐性を確認する 端座位保持、足底接地、座位リーチ めまい・呼吸苦が許容範囲で安定する
L2 立位 起立耐性と下肢支持性を確認する 立位保持、荷重移動、その場足踏み 立位後の回復が速く、ライン管理が安全
L3 歩行 機能回復と ADL 拡大につなげる 短距離歩行、方向転換、休息を挟んだ反復 疲労・呼吸苦が許容され、次回目標を立てられる

記録は「開始根拠・実施レベル・次回修正」を残す

敗血症の早期リハ記録では、長く書くよりも、判断の流れが追えることを優先します。特に「なぜ開始できたか」「なぜそのレベルにしたか」「次回は何を変えるか」が残ると、チーム内の引き継ぎが安定します。

敗血症早期リハ:記録テンプレ最小セット
項目 書くこと 記録例
開始根拠 循環・呼吸・意識の安定性 MAP 維持、SpO2 目標内、指示理解可。
実施レベル L0〜L3 と選択理由 L1:端座位まで。起立時めまい既往あり。
実施内容 姿勢、時間、回数、距離 端座位 5 分×2、座位リーチ 10 回。
反応 BP、HR、SpO2、呼吸苦、疲労 SpO2 低下なし。Borg 2→3。
中止の有無 中止した場合は理由 立位でめまい増悪のため中止。
次回修正 姿勢、休息、介助、用具の変更 次回は端座位休息を増やし、立位 1 分から再開。

現場の詰まりどころは「開始条件」と「中止後の記録」です

敗血症の早期リハで詰まりやすいのは、実施内容そのものよりも、開始してよい根拠が曖昧なまま進めることと、中止した後に次回修正が残らないことです。ここが曖昧だと、担当者が変わるたびに判断がリセットされます。

  • 開始条件が人によって違う:循環・呼吸・意識・ラインの確認順を固定する
  • 中止を失敗と捉える:中止理由と次回修正が書ければ安全管理として成功
  • 段階を飛ばす:L0〜L3 で一段ずつ負荷を上げる

よくある失敗5 分フローを先にそろえると、日々の申し送りが安定します。

ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。

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よくある失敗は「数値だけ判断」と「実施しました記録」です

早期リハの失敗は、離床できなかったことではありません。むしろ問題は、数値だけで GO / STOP を決める、実施内容だけを書いて判断根拠を残さない、段階を飛ばして負荷を上げることです。

敗血症早期リハ:よくある失敗と修正ポイント
よくある失敗 なぜ問題か 修正ポイント
数値だけで GO / STOP 治療段階や症状変化を見落としやすい 数値、症状、治療方針をセットで確認する
「実施しました」だけ書く 次回の判断材料が残らない 開始根拠、反応、次回修正を残す
端座位を飛ばして立位へ進む めまい・呼吸苦・ライン事故のリスクが上がる L0〜L3 の段階で一段ずつ上げる
中止を失敗扱いする 安全に止めた判断が共有されない 中止理由と次回修正を書き、翌日に活かす

根拠は「PICS 予防の可能性」と「安全基準の共有」で押さえる

J-SSCG 2024 では、PICS 予防として早期リハビリテーションを行うことが弱く推奨されています。一方で、敗血症患者に限定した有効性や有害性の評価は定まりきっていないため、現場では安全基準と中止基準を明確にした運用が必要です。

人工呼吸管理中の重症患者を対象にした研究では、鎮静中断と早期 PT / OT の併用が機能転帰の改善と関連しました。ただし、個々の患者では循環・呼吸・意識・ライン管理を確認し、実施可能なレベルを調整することが前提です。

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 敗血症の早期リハはいつから始めますか?

目安は ICU 入室後の早い段階でスクリーニングし、循環・呼吸・意識・ライン管理が許容される範囲で開始を検討します。大切なのは日数だけで決めることではなく、今日の治療段階と安全条件に合わせて L0〜L3 のどこまで可能かを判断することです。

Q2. 昇圧薬を使用していると離床はできませんか?

一律禁止ではありません。昇圧薬の増量中か、血圧が治療目標内で安定しているか、症状や不整脈がないか、医師方針と矛盾しないかを確認します。歩行が難しくても、ベッド上や端座位までなら検討できる場合があります。

Q3. 中止した日はリハをしない方がよかったという意味ですか?

中止は失敗ではなく、安全管理の一部です。めまい、SpO2 低下、呼吸苦、血圧変動、ライン不安定などの理由を残し、次回は姿勢・時間・休息・介助量をどう変えるかまで書ければ、翌日の判断に活かせます。

Q4. 記録はどこまで書けば十分ですか?

最低限、「開始根拠」「実施レベル」「実施内容」「反応」「中止の有無」「次回修正」の 6 点を残します。特に、開始根拠と次回修正が抜けると、チームで判断を引き継ぎにくくなります。

Q5. 歩行まで進めない日は意味がありませんか?

意味はあります。ベッドアップ、体位変換、ROM、呼吸介助、端座位保持も、次の離床につながる重要な介入です。敗血症の急性期では、無理に歩行を狙うより、今日安全にできる負荷を積み上げる方が重要です。

次の一手


参考文献

  • 日本集中治療医学会・日本救急医学会.日本版敗血症診療ガイドライン 2024(J-SSCG 2024)本編.PDF
  • 日本集中治療医学会・日本救急医学会.日本版敗血症診療ガイドライン 2024 付録 CQ7-9.PDF
  • Schweickert WD, Pohlman MC, Pohlman AS, et al. Early physical and occupational therapy in mechanically ventilated, critically ill patients: a randomised controlled trial. Lancet. 2009;373(9678):1874-1882. doi: 10.1016/S0140-6736(09)60658-9
  • Conceição TMA, Gonzáles AI, Figueiredo FCXS, et al. Safety criteria to start early mobilization in intensive care units: Systematic review. Rev Bras Ter Intensiva. 2017;29(4):509-519. doi: 10.5935/0103-507X.20170076

著者情報

rehabilikun(理学療法士) rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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