書類用の評価依頼が来たら| ROM ・ ADL を標準化する

制度・実務
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書類作成のために「 ROM ・ ADL の評価依頼」が来たとき:迷わない最小セット

身体障害者手帳や障害年金、介護保険関連の書類作成では、医師が診断書・意見書を作るために、リハ職へ 関節可動域( ROM )や筋力、 ADL の評価依頼が来ることがあります。難しいのは「何を、どの条件で、どう返せば書類に耐えるか」が現場ごとにブレやすい点です。

本記事では、依頼が来た瞬間に確認するポイント、書類別の 最小セット、返却メモのテンプレ、そして よくある失敗を、忙しい現場でも回る形に落とし込みます。

評価の引き出しを増やしつつ、働き方の選択肢も整理すると迷いが減ります。

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依頼が来やすい書類の全体像:手帳・年金・介護保険

評価依頼の「目的」を外すと、必要な項目が増えたり、逆に足りなくなったりします。まずは、どの書類のためかを押さえます。

  • 障害年金:関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性などを考慮し、日常生活動作の状態から総合認定されます(肢体の機能の障害)。
  • 身体障害者手帳(肢体不自由):自治体様式の注記で、可動域の取り方(例:他動を原則)などが指定されることがあります。
  • 介護保険関連:要介護認定(認定調査票・主治医意見書)や、住宅改修・福祉用具の検討で、生活機能(移動・移乗・排泄・入浴など)を「場面つき」で共有する必要があります。

依頼が来たら最初に確認する 4 点

依頼内容が曖昧でも、この 4 点を押さえるだけで「取り直し」と「無駄な評価」を大幅に減らせます。

  1. 目的:手帳/年金/介護保険/住宅改修・福祉用具/その他
  2. 期限:いつまでに、どの形式で返すか(口頭・メモ・所定欄)
  3. 状態の “時点”:現状なのか、一定期間の安定後なのか(退院時・外来フォロー時など)
  4. 測定条件の制約:疼痛、痙縮、装具、疲労、薬の影響、実施可能な体位

この段階で「測定条件」を一言で書けるようにしておくと、数値が独り歩きしにくくなります。

書類別: ROM ・筋力・ ADL の “最小セット” 早見表

まずは “最小セット” を固定し、必要に応じて上乗せします。評価の粒度を合わせるため、返却時は 数値+場面(できる動作) をセットにします。

書類別に求められやすい評価項目(最小セットの目安)
書類の種類 ROM / 筋力 ADL / 生活機能 返却のコツ
障害年金(肢体) 主要関節の ROM 、運動筋力( MMT 等)、巧緻性・速さ・耐久性の所見 日常生活動作の状態(移動・更衣・排泄・入浴などを “場面つき” で) 数値と ADL の整合を最優先(「動作は自立だが ROM は極端」などの矛盾を残さない)
身体障害者手帳(肢体不自由) 対象部位の ROM (測定条件を明記)、筋力、必要なら周径・拘縮要因 歩行・移乗・巧緻動作など、該当領域の機能(様式に沿う) 自治体様式の注記(測定法・表示法)に合わせ、条件を書き添える
介護保険(主治医意見書・連携) 転倒リスクに関わる筋力・バランス・疼痛の所見(必要最小限) 移動・移乗・排泄・入浴・更衣などの介助量、頻度、見守りの必要性 専門用語より、介護上の注意点(見守り・環境設定)を短文で

ROM を “書類に耐える” 形で取るコツ:条件が 8 割

ROM は「同じ角度でも条件で意味が変わる」ため、測定条件を残すだけで信頼性が上がります。関節可動域表示ならびに測定法は、複数職種で共通言語化する目的で整理されており、公的文書の記載にも広く活用されることが示されています。

評価の全体像(測定の標準化・記録の型)は、評価まとめ(ハブ)に集約しています。

最低限、返却メモに残す “ 5 行テンプレ ”

  • 体位:背臥位/座位/立位 など
  • 運動種別:他動/自動(どちらで測ったか)
  • 制限因子:疼痛、痙縮、拘縮、恐怖、装具、腫脹 など
  • 補助:固定、代償の抑制、介助の有無
  • 再現性:日内変動、疲労、実施回数

測定の “やり直し” が減るポイント

  • 主要関節は「主要な運動(例:肩は屈曲・外転)」を中心に、必要時のみ追加する。
  • 数値だけで返さず、どの動作で困る角度か(例:更衣、整容、立ち上がり)を 1 行添える。
  • 痛みが強い日は、「痛みが出る角度」と「痛みで中止したこと」を書く(数値の解釈が変わる)。

ADL を “文章に落とす” 型:できる/している/させている

書類作成の場面では、尺度がなくても困りません。むしろ大事なのは、 ADL の “場面” と “介助の質” が伝わることです。

短文テンプレ(コピペで返せる)

ADL を短文で返すときの型(例)
項目 書き方(最小)
移動 手段+監視/介助+リスク 屋内は T 字杖で監視、方向転換でふらつきあり(転倒注意)
移乗 介助量+どこが危ないか ベッド↔車椅子は軽介助、立ち上がり初動で膝折れあり
更衣 上衣/下衣で分ける 上衣は自立、下衣は立位保持不安定で見守り必要
入浴 洗体/出入り/更衣の分解 洗体は一部介助、浴槽出入りは手すり必須で監視

医師・ケアマネへ返す「 1 枚メモ」テンプレ

返却は長文よりも「判断できる材料」が優先です。数値( ROM / 筋力)+場面( ADL )+注意点の順に並べると、読み手の負担が下がります。

  • 測定条件:体位/他動・自動/疼痛・痙縮/装具/再現性
  • ROM :主要運動、左右差、制限因子(痛み・拘縮)
  • 筋力:主要筋群( MMT )+動作(立ち上がり・段差)での実用性
  • ADL :介助量+頻度+転倒・誤嚥などのリスク
  • 一言まとめ:書類目的に直結する “困りごと” を 1 行

現場の詰まりどころ:よくある失敗を “ OK / NG ” で潰す

ここが標準化できると、依頼が増えても破綻しにくくなります。

書類用評価で起きやすい失敗( OK / NG 早見)
論点 NG(起きがち) OK(こう直す) ひと言ポイント
ROM の条件 角度だけ返す 体位・他動/自動・疼痛・痙縮を 1 行で付ける 条件がない数値は誤解される
ADL の表現 「自立」だけで返す 手段+介助量+危険場面を添える 介護上の注意点が伝わる
整合性 ROM は重度だが ADL は問題なし、など矛盾が残る 矛盾が出るときは “代償” と “疲労・再現性” を書く 書類審査で詰まりやすい
期限対応 評価が増えすぎて間に合わない 最小セット→必要時のみ追加、の順で回す 増やす前に固定する

忙しい日に回す「 5 分フロー」:依頼→測定→返却

  1. 依頼を 1 分で整形:目的、期限、時点、制約(本記事の 4 点)
  2. 最小セットで測る:主要 ROM +主要筋力+ ADL(移動・移乗・更衣のいずれか)
  3. 条件を 5 行で残す:体位、他動/自動、疼痛・痙縮、装具、再現性
  4. 1 行まとめを作る:目的に直結する “困りごと” を 1 行
  5. 返却:数値+場面+注意点(長文より判断材料)

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. ROM は自動と他動、どちらで返すべきですか?

まずは依頼書類の注記や運用(自治体様式、院内ルール)を優先します。そのうえで、どちらで測ったとしても、他動/自動の別と測定条件を 1 行で残すと、数値が独り歩きしにくくなります。

Q2. ADL 尺度( Barthel / FIM など)がない職場でも大丈夫ですか?

大丈夫です。尺度よりも、手段+介助量+危険場面が伝わることが重要です。「移動:手段+監視」「更衣:上衣/下衣」「入浴:出入り/洗体/更衣」のように分解して、短文で返します。

Q3. 数値と ADL が噛み合わない(矛盾する)ときは?

矛盾が出るときは、代償や環境(手すり、動作手順、見守り)で成立していることが多いです。代償(何で補っているか)と、疲労・日内変動(再現性)を 1 行添えると、整合が取りやすくなります。

Q4. 依頼が曖昧で、何を測ればいいか分かりません。

「目的」「期限」「時点」「制約」の 4 点を聞き返すのが最短です。答えが返らない場合は、書類別の 最小セット(主要 ROM +主要筋力+ ADL の場面)だけ先に押さえ、必要なら追加します。

次の一手:共有の型を作って、依頼対応をラクにする

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参考文献

  1. 日本年金機構.障害認定基準(国民年金・厚生年金保険).2014(参照:肢体の機能の障害).PDF
  2. 日本年金機構.(別紙)肢体の障害関係の測定方法.PDF
  3. 日本リハビリテーション医学会/日本整形外科学会/日本足の外科学会.関節可動域表示ならびに測定法改訂について( 2022 年 4 月改訂).Jpn J Rehabil Med.2021;58:1188-1200.DOI:10.2490/jjrmc.58.1188
  4. 厚生労働省.介護保険最新情報 Vol.1440(主治医意見書記入の手引き等の一部改正).2025-11-20.PDF
  5. 厚生労働省.介護情報の各様式(認定調査票・主治医意見書 等).2023-01-25.PDF
  6. 日本リハビリテーション医学会.関節可動域表示ならびに測定法(告知).Web

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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