- 書類作成のために「 ROM ・ ADL の評価依頼」が来たとき:迷わない最小セット
- 依頼が来やすい書類の全体像:手帳・年金・介護保険
- 依頼が来たら最初に確認する 4 点
- 書類別: ROM ・筋力・ ADL の “最小セット” 早見表
- ROM を “書類に耐える” 形で取るコツ:条件が 8 割
- ADL を “文章に落とす” 型:できる/している/させている
- 医師・ケアマネへ返す「 1 枚メモ」テンプレ
- 現場の詰まりどころ:よくある失敗を “ OK / NG ” で潰す
- 忙しい日に回す「 5 分フロー」:依頼→測定→返却
- よくある質問( FAQ )
- 次の一手:共有の型を作って、依頼対応をラクにする
- 参考文献
- 著者情報
書類作成のために「 ROM ・ ADL の評価依頼」が来たとき:迷わない最小セット
身体障害者手帳や障害年金、介護保険関連の書類作成では、医師が診断書・意見書を作るために、リハ職へ 関節可動域( ROM )や筋力、 ADL の評価依頼が来ることがあります。難しいのは「何を、どの条件で、どう返せば書類に耐えるか」が現場ごとにブレやすい点です。
本記事では、依頼が来た瞬間に確認するポイント、書類別の 最小セット、返却メモのテンプレ、そして よくある失敗を、忙しい現場でも回る形に落とし込みます。
評価の引き出しを増やしつつ、働き方の選択肢も整理すると迷いが減ります。
PT のキャリア設計を 5 分で確認する依頼が来やすい書類の全体像:手帳・年金・介護保険
評価依頼の「目的」を外すと、必要な項目が増えたり、逆に足りなくなったりします。まずは、どの書類のためかを押さえます。
- 障害年金:関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性などを考慮し、日常生活動作の状態から総合認定されます(肢体の機能の障害)。
- 身体障害者手帳(肢体不自由):自治体様式の注記で、可動域の取り方(例:他動を原則)などが指定されることがあります。
- 介護保険関連:要介護認定(認定調査票・主治医意見書)や、住宅改修・福祉用具の検討で、生活機能(移動・移乗・排泄・入浴など)を「場面つき」で共有する必要があります。
依頼が来たら最初に確認する 4 点
依頼内容が曖昧でも、この 4 点を押さえるだけで「取り直し」と「無駄な評価」を大幅に減らせます。
- 目的:手帳/年金/介護保険/住宅改修・福祉用具/その他
- 期限:いつまでに、どの形式で返すか(口頭・メモ・所定欄)
- 状態の “時点”:現状なのか、一定期間の安定後なのか(退院時・外来フォロー時など)
- 測定条件の制約:疼痛、痙縮、装具、疲労、薬の影響、実施可能な体位
この段階で「測定条件」を一言で書けるようにしておくと、数値が独り歩きしにくくなります。
書類別: ROM ・筋力・ ADL の “最小セット” 早見表
まずは “最小セット” を固定し、必要に応じて上乗せします。評価の粒度を合わせるため、返却時は 数値+場面(できる動作) をセットにします。
| 書類の種類 | ROM / 筋力 | ADL / 生活機能 | 返却のコツ |
|---|---|---|---|
| 障害年金(肢体) | 主要関節の ROM 、運動筋力( MMT 等)、巧緻性・速さ・耐久性の所見 | 日常生活動作の状態(移動・更衣・排泄・入浴などを “場面つき” で) | 数値と ADL の整合を最優先(「動作は自立だが ROM は極端」などの矛盾を残さない) |
| 身体障害者手帳(肢体不自由) | 対象部位の ROM (測定条件を明記)、筋力、必要なら周径・拘縮要因 | 歩行・移乗・巧緻動作など、該当領域の機能(様式に沿う) | 自治体様式の注記(測定法・表示法)に合わせ、条件を書き添える |
| 介護保険(主治医意見書・連携) | 転倒リスクに関わる筋力・バランス・疼痛の所見(必要最小限) | 移動・移乗・排泄・入浴・更衣などの介助量、頻度、見守りの必要性 | 専門用語より、介護上の注意点(見守り・環境設定)を短文で |
ROM を “書類に耐える” 形で取るコツ:条件が 8 割
ROM は「同じ角度でも条件で意味が変わる」ため、測定条件を残すだけで信頼性が上がります。関節可動域表示ならびに測定法は、複数職種で共通言語化する目的で整理されており、公的文書の記載にも広く活用されることが示されています。
評価の全体像(測定の標準化・記録の型)は、評価まとめ(ハブ)に集約しています。
最低限、返却メモに残す “ 5 行テンプレ ”
- 体位:背臥位/座位/立位 など
- 運動種別:他動/自動(どちらで測ったか)
- 制限因子:疼痛、痙縮、拘縮、恐怖、装具、腫脹 など
- 補助:固定、代償の抑制、介助の有無
- 再現性:日内変動、疲労、実施回数
測定の “やり直し” が減るポイント
- 主要関節は「主要な運動(例:肩は屈曲・外転)」を中心に、必要時のみ追加する。
- 数値だけで返さず、どの動作で困る角度か(例:更衣、整容、立ち上がり)を 1 行添える。
- 痛みが強い日は、「痛みが出る角度」と「痛みで中止したこと」を書く(数値の解釈が変わる)。
ADL を “文章に落とす” 型:できる/している/させている
書類作成の場面では、尺度がなくても困りません。むしろ大事なのは、 ADL の “場面” と “介助の質” が伝わることです。
短文テンプレ(コピペで返せる)
| 項目 | 書き方(最小) | 例 |
|---|---|---|
| 移動 | 手段+監視/介助+リスク | 屋内は T 字杖で監視、方向転換でふらつきあり(転倒注意) |
| 移乗 | 介助量+どこが危ないか | ベッド↔車椅子は軽介助、立ち上がり初動で膝折れあり |
| 更衣 | 上衣/下衣で分ける | 上衣は自立、下衣は立位保持不安定で見守り必要 |
| 入浴 | 洗体/出入り/更衣の分解 | 洗体は一部介助、浴槽出入りは手すり必須で監視 |
医師・ケアマネへ返す「 1 枚メモ」テンプレ
返却は長文よりも「判断できる材料」が優先です。数値( ROM / 筋力)+場面( ADL )+注意点の順に並べると、読み手の負担が下がります。
- 測定条件:体位/他動・自動/疼痛・痙縮/装具/再現性
- ROM :主要運動、左右差、制限因子(痛み・拘縮)
- 筋力:主要筋群( MMT )+動作(立ち上がり・段差)での実用性
- ADL :介助量+頻度+転倒・誤嚥などのリスク
- 一言まとめ:書類目的に直結する “困りごと” を 1 行
現場の詰まりどころ:よくある失敗を “ OK / NG ” で潰す
ここが標準化できると、依頼が増えても破綻しにくくなります。
| 論点 | NG(起きがち) | OK(こう直す) | ひと言ポイント |
|---|---|---|---|
| ROM の条件 | 角度だけ返す | 体位・他動/自動・疼痛・痙縮を 1 行で付ける | 条件がない数値は誤解される |
| ADL の表現 | 「自立」だけで返す | 手段+介助量+危険場面を添える | 介護上の注意点が伝わる |
| 整合性 | ROM は重度だが ADL は問題なし、など矛盾が残る | 矛盾が出るときは “代償” と “疲労・再現性” を書く | 書類審査で詰まりやすい |
| 期限対応 | 評価が増えすぎて間に合わない | 最小セット→必要時のみ追加、の順で回す | 増やす前に固定する |
忙しい日に回す「 5 分フロー」:依頼→測定→返却
- 依頼を 1 分で整形:目的、期限、時点、制約(本記事の 4 点)
- 最小セットで測る:主要 ROM +主要筋力+ ADL(移動・移乗・更衣のいずれか)
- 条件を 5 行で残す:体位、他動/自動、疼痛・痙縮、装具、再現性
- 1 行まとめを作る:目的に直結する “困りごと” を 1 行
- 返却:数値+場面+注意点(長文より判断材料)
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. ROM は自動と他動、どちらで返すべきですか?
まずは依頼書類の注記や運用(自治体様式、院内ルール)を優先します。そのうえで、どちらで測ったとしても、他動/自動の別と測定条件を 1 行で残すと、数値が独り歩きしにくくなります。
Q2. ADL 尺度( Barthel / FIM など)がない職場でも大丈夫ですか?
大丈夫です。尺度よりも、手段+介助量+危険場面が伝わることが重要です。「移動:手段+監視」「更衣:上衣/下衣」「入浴:出入り/洗体/更衣」のように分解して、短文で返します。
Q3. 数値と ADL が噛み合わない(矛盾する)ときは?
矛盾が出るときは、代償や環境(手すり、動作手順、見守り)で成立していることが多いです。代償(何で補っているか)と、疲労・日内変動(再現性)を 1 行添えると、整合が取りやすくなります。
Q4. 依頼が曖昧で、何を測ればいいか分かりません。
「目的」「期限」「時点」「制約」の 4 点を聞き返すのが最短です。答えが返らない場合は、書類別の 最小セット(主要 ROM +主要筋力+ ADL の場面)だけ先に押さえ、必要なら追加します。
次の一手:共有の型を作って、依頼対応をラクにする
運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検(無料チェックシート)
無料チェックシートを使って環境も点検する参考文献
- 日本年金機構.障害認定基準(国民年金・厚生年金保険).2014(参照:肢体の機能の障害).PDF
- 日本年金機構.(別紙)肢体の障害関係の測定方法.PDF
- 日本リハビリテーション医学会/日本整形外科学会/日本足の外科学会.関節可動域表示ならびに測定法改訂について( 2022 年 4 月改訂).Jpn J Rehabil Med.2021;58:1188-1200.DOI:10.2490/jjrmc.58.1188
- 厚生労働省.介護保険最新情報 Vol.1440(主治医意見書記入の手引き等の一部改正).2025-11-20.PDF
- 厚生労働省.介護情報の各様式(認定調査票・主治医意見書 等).2023-01-25.PDF
- 日本リハビリテーション医学会.関節可動域表示ならびに測定法(告知).Web
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


