回復期リハ病棟のPT業務は「仕事内容→1日の流れ→優先順位」で整理すると分かりやすい
回復期リハ病棟のPT業務は、個別訓練だけで完結しません。運動機能や基本動作への理学療法に加えて、病棟ADLの確認、安全管理、多職種との情報共有、家族への説明、退院後の生活を見据えた支援まで並行して進みます。
結論からいうと、回復期でのPT業務は「何をするか」→「1日のどこで行うか」→「忙しい日に何を優先するか」の順で整理すると理解しやすくなります。この記事では、回復期リハ病棟でPTが担う仕事内容、1日の流れ、そして迷ったときの優先順位を順番にまとめます。

回復期リハ病棟でPTが担う主な仕事内容
回復期リハ病棟でPTが担う業務は、大きく分けるとPTとして専門的に評価・介入することと、多職種と協働して生活・退院につなげることの2つです。まずはこの2つに分けて考えると、仕事の全体像がつかみやすくなります。
PTとして専門的に担うこと
回復期リハビリテーション病棟協会の「PT5か条」では、回復期におけるPTの専門性として、運動機能、疼痛・不動の予防、呼吸・循環機能、基本動作、ADL自立への支援が整理されています。本記事でも、この考え方を土台に仕事内容を整理します。
| 領域 | PTが確認すること | 実際の業務への落とし込み |
|---|---|---|
| 評価 | 筋力、関節可動域、姿勢・バランス、移動能力、疼痛など | 初期評価、経過確認、再評価、プログラム調整 |
| 個別訓練 | 運動機能、基本動作、歩行、持久力、活動量など | 運動療法、動作練習、歩行練習、離床支援 |
| 病棟ADL確認 | 移乗、移動、排泄などが病棟でどこまで再現できるか | 実生活場面での動作確認、介助条件の調整 |
| 安全管理 | 転倒、急変、疼痛増悪、疲労、体調変化など | 危険場面の特定、中止判断、対応方法の共有 |
| 記録・再評価 | 何が変化したか、何を次に確認するか | 記録、多職種共有、翌日の課題整理 |
多職種と協働して担うこと
回復期では、個別訓練でできたことを病棟生活や退院後の生活につなげる必要があります。そのため、看護師、OT、ST、医師、MSW、介護職などと情報をそろえて進める業務も重要です。
- 病棟ADLの共有:訓練室で可能な動作を、病棟でも再現できる条件に落とし込む
- 多職種連携:必要介助、安全条件、変化した点をチームへ共有する
- 家族への説明:退院後に必要となる介助方法や注意点を整理する
- 退院支援:自宅・施設それぞれで必要な移動能力や環境条件を確認する
退院支援全体の流れを整理したい場合は、退院支援の進め方で詳しく確認できます。
回復期PTの1日の流れ
回復期PTの1日は、個別訓練だけではなく、前後の情報収集、病棟ADLの確認、他職種との共有、カンファレンス、記録・再評価まで含めて進みます。施設によって時間割は異なりますが、時刻そのものよりも「何を確認して次へつなぐか」で整理すると応用しやすくなります。
| 場面 | 主な業務 | 確認すること |
|---|---|---|
| 朝 | 情報収集 | 夜間の変化、バイタル、疼痛、転倒の有無、検査や外出予定 |
| 日中 | 個別訓練・病棟確認 | 前回からの変化、その日の課題、病棟での再現性 |
| 会議・共有 | 情報共有・退院検討 | 現在できること、必要介助、安全条件、未確認事項 |
| 終業前 | 記録・再評価 | 何が変わったか、何を共有したか、次に何を確認するか |
重要なのは、個別訓練で終わりにしないことです。訓練で得られた変化を病棟生活で使えるか確認し、必要な条件を多職種と共有するところまでを一連の業務として考えます。
忙しい日の優先順位|安全→意思決定→再現→質
回復期では、個別訓練、病棟ADL、カンファレンス、退院支援が同時並行になりやすく、何から手をつけるか迷うことがあります。そんなときは、業務を「安全→意思決定→再現→質」の順で整理すると進めやすくなります。
この4段フローは公式基準ではなく、rehabilikunが回復期PT業務を実務上整理するためにまとめたフレームです。
| 順番 | 確認すること | 決めること | 例 |
|---|---|---|---|
| 1.安全 | 転倒・急変など今日もっとも危険な場面 | 最優先で避けるリスク | 夜間トイレの立ち上がりで転倒しやすい |
| 2.意思決定 | 退院先や介助方法を判断するために足りない情報 | 次に確認すべき不足情報 | 家族の夜間見守りが可能か確認する |
| 3.再現 | 訓練で可能な動作を病棟でも行えるか | 介助量・環境・手順 | トイレまで歩行見守り、方向転換時は右側から対応 |
| 4.質 | その日の理学療法で変えたい課題 | 訓練の狙いと負荷 | 方向転換時の姿勢制御を重点的に練習する |
すべてを同じ重さで処理しようとすると、かえって優先順位がぼやけます。迷ったときは、まず安全を整え、そのうえで意思決定に必要な情報を確認し、病棟で再現する条件をそろえ、最後に訓練の質を合わせる順で考えると整理しやすくなります。
個別訓練と病棟ADLをどうつなぐか
回復期では、訓練室で「できた」だけでは生活動作の変更につながりません。病棟ADLへ反映するときは、動作能力だけでなく、介助量・環境・手順・危険場面まで具体化して共有することが重要です。
| 確認 | 共有する内容 | 記載例 |
|---|---|---|
| 動作 | どの場面か | ベッドからトイレまでの移動 |
| 介助量 | どこまで介助が必要か | 歩行は見守り、立ち上がりは声かけ |
| 条件 | 道具・環境・立ち位置 | 歩行器使用、方向転換時は右側から見守る |
| 危険点 | 崩れやすい場面 | 着座直前に急いで方向転換するとふらつく |
「歩行見守り」だけでは共有が抽象的です。どの場面で、どの位置から、どこに注意して見守るかまで整理すると、病棟での再現性が高くなります。
多職種連携・カンファ・退院支援でPTが伝えること
カンファレンスでは、評価結果をすべて並べるよりも、チームの意思決定に必要な情報へ変換して伝えることが重要です。PTからは、少なくとも「現在できる動作」「必要な介助」「安全に行える条件」「次に確認したいこと」を整理して共有します。
- 現在できること:どの動作が、どの条件なら可能か
- 必要な介助:見守り・部分介助など、実際に必要な支援
- 安全条件:福祉用具、環境、動作手順、危険場面
- 次に確認すること:家族の介助力、住環境、外泊、退院先の条件など
退院前カンファ当日の議題や進め方を詳しく確認したい場合は、退院前カンファの議題・進め方で整理しています。
PTの役割は、単独で退院先を決めることではありません。身体機能と実際の生活動作から「どの条件なら可能か」を示し、多職種・本人・家族が判断しやすい情報に変換して共有することです。
回復期PT業務で迷ったら「今日何を決めるか」に戻る
回復期リハ病棟のPT業務は、個別訓練だけでなく、病棟ADL、安全管理、多職種連携、家族への説明、退院支援までつながっています。そのため、仕事量が多く見えやすい一方で、順番を整理すると動きやすくなります。
迷ったときは、次の4点へ戻ってください。
- 安全:今日もっとも注意すべき危険場面は何か
- 意思決定:次の判断に足りない情報は何か
- 再現:病棟で再現したい動作と条件は何か
- 質:今日の理学療法で何を変えたいか
仕事内容を知るだけでなく、この4点で整理できるようになると、個別訓練・病棟生活・退院支援を一続きの業務として考えやすくなります。
次の一手
- 困り場面から探す:回復期PT業務のQ&A
- 退院までの流れを整理する:退院支援の進め方
参考文献
- 一般社団法人 回復期リハビリテーション病棟協会. 職種別10か条・5か条.
- 奥山夕子. 回復期リハビリテーション病棟における理学療法士の専門性. Jpn J Rehabil Med. 2025;62(6):552-557. doi:10.2490/jjrmc.62.552.
- 奥山夕子, 坂田祥子, 森田秋子. 回復期リハビリテーション病棟における療法士の協業と分業. Jpn J Rehabil Med. 2025;62(6):547-551. doi:10.2490/jjrmc.62.547.
- Miyai I, Sonoda S, Nagai S, et al. Results of new policies for inpatient rehabilitation coverage in Japan. Neurorehabil Neural Repair. 2011;25(6):540-547. doi:10.1177/1545968311402696.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

