介護予防運動指導員はPTに必要?取得する意味を先に整理
介護予防運動指導員®は、介護予防の現場で必要となる評価、リスク管理、運動、転倒予防、栄養、口腔、フレイルなどを体系的に学ぶ資格です。ただし、理学療法士(PT)が取得すれば新たな医療行為ができる資格ではなく、すべてのPTに必要というわけでもありません。
PTが追加取得する意味が大きいのは、通所・地域活動・介護予防事業などに関わり、介護予防を運動機能だけでなく幅広い視点から学び直したい場合です。この記事では、受講要件、24講座33時間の講習、費用、修了試験、3年ごとの更新まで確認し、自分に必要な資格か判断できるよう整理します。
先に結論
すでにPT免許を持っている場合、介護予防運動指導員®の価値は「新しい業務資格を得ること」よりも、介護予防を老年学・評価・運動・転倒・栄養・口腔・フレイル・社会参加まで含めて体系的に学べる点にあります。今後の仕事で介護予防に関わる予定があるかを基準に考えると判断しやすくなります。

PTが介護予防運動指導員を取る意味があるケース
PTにとって取得の優先度が高くなりやすいのは、介護予防を実際の業務や地域活動で使う機会がある場合です。反対に、資格名を増やすこと自体が目的であれば、33時間の講習や取得後の更新まで含めて考える必要があります。
| 判断する項目 | 取得する意味が大きいケース | 優先度が低くなりやすいケース |
|---|---|---|
| 今後の領域 | 通所、地域活動、介護予防教室、自治体事業などに関わる | 急性期・回復期などが中心で、介護予防との接点がほとんどない |
| 学びたい内容 | 運動だけでなく、栄養、口腔、社会参加、フレイルなども体系的に学びたい | 疾患別理学療法など、別の専門領域を優先して深めたい |
| 役割 | 個別リハだけでなく、集団・地域単位の介護予防にも関わりたい | 現在の業務で資格内容を活用する場面が想定できない |
| 取得目的 | 介護予防の考え方を整理し、現在のPTの専門性と組み合わせたい | 履歴書に資格名を追加することだけが目的になっている |
| 時間・費用 | 33時間の講習、受講費用、取得後の更新を含めても活用機会がある | 勤務調整や費用の負担に対して活用機会が少ない |
※表は横にスクロールできます。
重要なのは、「PTだから取った方がよい」と考えないことです。すでにPTは身体機能評価や運動療法を専門としています。追加取得するなら、既存の専門性と重なる部分ではなく、介護予防という枠組みを体系的に学ぶ必要があるかを確認することが大切です。
介護予防運動指導員とは|PT免許とは別の資格
介護予防運動指導員®養成事業は、東京都健康長寿医療センター研究所の指定を受けた事業者が実施する養成事業です。指定事業者で所定の講習を受講し、修了試験を受ける流れになっています。
講習では、高齢者筋力向上トレーニングだけでなく、老年学、地域づくり、社会参加、介護予防評価、リスクマネジメント、転倒予防、栄養、口腔機能、フレイル・サルコペニア、認知症、孤立・閉じこもりなどを扱います。
そのためPTが取得する場合は、「運動方法を新しく学ぶ資格」というより、PTが持つ評価・運動の知識を、介護予防の制度・地域・生活機能まで広げて整理する学習機会と捉えると位置づけが分かりやすくなります。
受講要件|理学療法士は対象職種に含まれる
理学療法士は、介護予防運動指導員®の受講要件に明記されています。そのため、PT免許を有していれば、受講対象職種として申し込みを検討できます。
公式には、PTのほか、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士、介護福祉士、歯科衛生士、栄養士、介護支援専門員、健康運動指導士など、複数の医療・介護・健康関連資格が受講要件として示されています。
資格取得見込みの養成校卒業見込み者についても条件が示されているため、学生などが受講を検討する場合は、申込時点の要件を公式ページと指定事業者の募集要項で確認してください。
講習内容|全24講座・33時間を受講する
介護予防運動指導員®の養成講習は、全24講座・33時間です。講習後は各指定事業者で修了試験が実施されます。
2026年10月時点の公式カリキュラムでは、主に次の領域を扱います。
- 老年学・老年病学
- 介護予防概論
- 地域づくりと介護予防
- 高齢者の社会参加
- 介護予防・日常生活支援総合事業
- 行動科学
- 介護予防評価・統計
- リスクマネジメント
- 高齢者筋力向上トレーニング
- 転倒予防
- 尿失禁予防
- 高齢者の栄養改善
- 口腔機能向上
- フレイル・サルコペニア予防
- 認知症予防・共生
- うつ・孤立・閉じこもり予防
一部の講義はeラーニングに対応していますが、eラーニングを利用できる範囲や実際の日程は指定事業者によって異なります。実習を含むため、「33時間すべてを自宅で受講できる資格」と考えず、希望する事業者の日程を確認する必要があります。
PTにとって注目したいのは、運動機能以外の科目が多く含まれている点です。病院での個別リハとは異なり、介護予防では栄養、口腔、社会参加、認知機能、地域づくりなども生活機能と関連します。この広がりに学習目的を感じるかどうかが、追加取得を判断する一つの基準になります。
費用はいくら?受講料は指定事業者によって異なる
介護予防運動指導員®には全国一律の受講料が設定されているわけではありません。東京都健康長寿医療センター研究所の公式案内でも、申し込み方法、受講料、テキスト代、修了試験受験料などは、講習を開催する指定事業者へ確認するよう案内されています。
実際に2026年に確認できる指定事業者の掲載例でも、一般向け受講料が77,000円(税込)の講座や88,000円(税込)の講座があり、事業者によって違いがあります。これは全国共通価格ではないため、申込時点の最新料金で比較してください。
| 費用・条件 | 確認すること |
|---|---|
| 受講料 | 指定事業者が提示する最新料金 |
| 教材・試験 | テキスト代や修了試験料が受講料に含まれているか |
| 実習 | 対面実習の日数と会場 |
| 交通・宿泊 | 会場までの移動費や宿泊が必要か |
| 勤務調整 | 実習日や試験日に休暇・勤務変更が必要か |
| 取得後 | 3年ごとの登録更新とフォローアップ研修も考慮する |
※表は横にスクロールできます。
受講料だけで比較すると、遠方の実習や勤務調整によって実際の負担が大きくなることがあります。費用を見るときは、取得までの総負担と、その後に資格を使う機会を合わせて判断するとよいでしょう。
修了試験・合格率・過去問はどう考える?
全24講座・33時間を受講した後、各指定事業者で修了試験が実施されます。一方、東京都健康長寿医療センター研究所の養成事業ページでは、共通の合格率や公開過去問は案内されていません。
そのため、「合格率が何%だから難しい・簡単」と判断するよりも、受講する指定事業者の案内を確認し、講習内容を理解することを基本に考える方が確実です。
PTの場合、筋力トレーニングや転倒予防など馴染みのある内容もありますが、老年学、介護予防・日常生活支援総合事業、行動科学、栄養、口腔、地域づくりなど、日常の臨床だけでは触れる機会が少ない領域もあります。PT国家試験や臨床経験だけで対応できると考えず、講習で扱われた内容を一通り確認することが大切です。
取得後は3年ごとに更新|フォローアップ研修も必要
介護予防運動指導員®は取得して終わりではありません。登録期間は3年間で、継続する場合は更新手続きが必要です。
現在の更新手続きでは、有効期限のおよそ2か月前に東京都健康長寿医療センター研究所から登録更新申請書と更新料の払込用紙が送付され、申請書の返送と更新料の支払いを行います。
さらに、令和7年度(2025年度)の登録更新から、3年間の有効期限までに所定のフォローアップ研修を1回以上受講することが更新要件となっています。
取得前に見落としやすいポイント
受講料と33時間の講習だけでなく、取得後も3年ごとの登録更新とフォローアップ研修があります。「一度取ればそのまま保有し続けられる資格」とは異なるため、長期的に介護予防領域で活用するかも取得判断に含めましょう。
フォローアップ研修の日程、方法、受講料は年度によって変わります。また、指定事業者が独自に開催する研修のすべてが更新要件を満たすわけではありません。更新目的の場合は、東京都健康長寿医療センター研究所が認める研修かを確認してください。
介護予防運動指導員と機能訓練指導員の違い
PTが追加取得を考えるときに混同しやすいのが「機能訓練指導員」です。介護予防運動指導員®と機能訓練指導員は同じものではありません。
| 項目 | 介護予防運動指導員® | 機能訓練指導員 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 東京都健康長寿医療センター研究所の養成事業に基づく資格 | 介護保険サービス等における人員配置上の職種・役割 |
| PTの場合 | 希望する場合に追加で養成講習を受ける | PTは機能訓練指導員となり得る資格職に含まれる |
| 取得の関係 | 24講座・33時間の講習と修了試験がある | PTが機能訓練指導員になるために介護予防運動指導員®の取得が必須という関係ではない |
※表は横にスクロールできます。
つまり、「介護施設で機能訓練指導員として働きたいから、介護予防運動指導員を取らなければならない」というわけではありません。PT免許をすでに持っている人が介護予防運動指導員®を取得する意味は、機能訓練指導員になるための資格要件を満たすことではなく、介護予防に必要な知識を追加で体系化することにあります。
PT資格と内容が重なるのに、あえて取るメリットは?
PTと介護予防運動指導員®では、評価、筋力向上、転倒予防など一部の学習内容が重なります。そのため、PTが取得を考えるときは「知らない運動方法を学べるか」だけで判断しない方がよいでしょう。
追加取得の意味が出やすいのは、次のような場面です。
- 医療機関から通所・介護・地域領域へ活動範囲を広げたい
- 個別リハだけでなく、集団・地域単位での介護予防を学びたい
- 栄養、口腔、社会参加、認知症などを含めて介護予防を整理したい
- 自治体や地域の介護予防事業へ関わるため基礎を整理したい
- 病院で学んだ評価・運動の知識を生活期・予防領域へつなげたい
逆に、現在も今後も介護予防領域との接点がなく、別の専門領域を深める必要性が高いPTでは、取得の優先順位は下がります。
資格の価値は「PTより上位の運動資格かどうか」で決まるものではありません。今後の自分の役割に、33時間の講習と更新をしてまで介護予防の体系的な学習が必要かで判断する方が実務的です。
申し込む前に確認したい5つのポイント
介護予防運動指導員®を取るか迷っているPTは、資格そのものの評価より、取得後にどう使うかを具体化してから申し込むことをおすすめします。
- 今後、介護予防に関わる予定があるか
通所、地域活動、自治体事業など具体的な活用場面があるかを確認します。 - 学びたい内容が講習カリキュラムに含まれているか
運動だけでなく、栄養、口腔、フレイル、社会参加、地域づくりまで学ぶ必要があるか考えます。 - 33時間の講習と実習日程を確保できるか
eラーニングだけではなく実習を含むため、勤務調整も確認します。 - 費用に対して活用機会があるか
受講料だけでなく、交通費、休暇、更新まで含めて考えます。 - 3年後も継続したい資格か
更新手続きとフォローアップ研修が必要なことを理解しておきます。
この5点に具体的に答えられるほど、取得後に「思っていた資格と違った」となる可能性を減らせます。
介護予防運動指導員についてPTが迷いやすい質問
介護予防運動指導員®はPTなら取るべきですか?
すべてのPTに必要な資格ではありません。通所、地域活動、自治体の介護予防事業などに関わる予定があり、介護予防を体系的に学びたい場合は取得を検討しやすくなります。一方、活用する場面がない場合は、他の学習を優先する選択肢もあります。
PTなら介護予防運動指導員®を受講できますか?
はい。理学療法士は東京都健康長寿医療センター研究所が示す受講対象職種に含まれています。実際の申し込みは指定事業者へ行います。
合格率や過去問は公開されていますか?
公式の養成事業ページでは、共通の合格率や公開過去問は案内されていません。全24講座・33時間の講習後に、各指定事業者で修了試験が実施されます。
介護施設で機能訓練指導員になるために必要ですか?
PTが機能訓練指導員として配置されるために、介護予防運動指導員®を追加取得することが必須という関係ではありません。両者は位置づけが異なります。
一度取得すれば更新は不要ですか?
いいえ。登録期間は3年間です。更新手続きに加え、現在は登録期間内に所定のフォローアップ研修を受講することが更新要件になっています。
まとめ|PTは「資格名」ではなく使う場面から判断する
介護予防運動指導員®は、理学療法士が必ず取得しなければならない資格ではありません。PTとしてすでに持っている評価・運動の専門性に加えて、介護予防を老年学、地域、栄養、口腔、フレイル、社会参加などの視点から体系的に学ぶ必要があるかが判断の中心になります。
通所や地域活動、介護予防事業へ関わる予定があるPTでは追加取得の意味を見いだしやすい一方、現在の業務で活用場面がない場合は優先度を下げてもよいでしょう。申し込み前には、指定事業者の費用・日程に加えて、33時間の講習と3年ごとの更新まで確認して判断してください。
資格取得を単独で考えるのではなく、今後どの領域で専門性を伸ばすかから整理したい方は、理学療法士のキャリアガイドも参考にしてください。
参考文献
- 東京都健康長寿医療センター研究所. 介護予防運動指導員®養成事業. https://www.tmig.or.jp/research/training-program/instructor/(参照 2026-10-03)
- 東京都健康長寿医療センター研究所. 指定事業者一覧. https://www.tmig.or.jp/research/training-program/instructor/list.html(参照 2026-10-03)
- 東京都健康長寿医療センター研究所. 各種手続き. https://www.tmig.or.jp/research/training-program/certified-professionals/(参照 2026-10-03)
- 東京都健康長寿医療センター研究所. 介護予防運動指導員®フォローアップ研修. https://www.tmig.or.jp/research/training-program/instructor/follow-up.html(参照 2026-10-03)
- 厚生労働省. 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号). https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82ab4584&dataType=0(参照 2026-10-03)
- 一般社団法人日本音楽レ・クリエーション指導協会. 介護予防運動指導員養成講座. 介護予防運動指導員養成講座(参照 2026-10-03)
- セントラルスポーツ株式会社. 介護予防運動指導員養成講座. 介護予防運動指導員養成講座(参照 2026-10-03)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設しました。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

