BPS疼痛評価|3項目・3〜12点の見方と評価方法

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BPSは3項目・合計3〜12点で疼痛関連行動を評価します

BPS(Behavioral Pain Scale)は、自己申告による疼痛評価が難しく、行動を観察できる成人ICU患者で用いる行動評価尺度です。表情・上肢の動き・人工呼吸器との同調の3項目を各1〜4点で評価し、合計は3〜12点となります。

重要なのは、挿管しているだけでBPSを選ぶのではなく、まず本人が痛みを信頼して自己申告できるかを確認することです。自己申告できる場合はNRSなどを優先し、難しい場合にBPSを検討します。この記事では、BPSの対象、3項目の見方、点数の解釈、BPS>5の扱い、評価タイミング、記録まで整理します。

BPS疼痛評価の対象・3項目・点数の見方を整理した図。自己申告の可否、表情・上肢の動き・人工呼吸器との同調、合計3〜12点、解釈時の注意点を示す
BPSでは、自己申告の可否を確認したうえで、3つの疼痛関連行動を観察します。

BPSを使うかは「挿管の有無」より自己申告できるかで決めます

疼痛評価では、患者本人の自己申告が可能であれば自己申告を優先します。SCCMのPADISガイドラインでは、信頼して痛みを伝えられる成人重症患者では、患者本人の自己申告が疼痛評価の基準とされています。

一方、自己申告が難しく、疼痛に関連する行動を観察できる患者では、BPS、BPS-NI、CPOTなどの行動評価尺度を用います。したがって、「挿管中だからBPS」ではなく、「自己申告できない+行動観察ができるからBPSを検討する」という順番で考えると整理しやすくなります。

BPSを選ぶ前に確認すること
患者の状態 疼痛評価の考え方 ポイント
信頼して自己申告できる NRSなどの自己申告型評価を優先 挿管中でも意思疎通が成立する場合は、可能な範囲で本人の訴えを優先する
自己申告が難しく、挿管・人工呼吸管理中 BPSなどの行動評価を検討 表情・上肢・人工呼吸器との同調を観察する
自己申告が難しい非挿管患者 BPS-NIやCPOTなどを検討 BPS-NIでは人工呼吸器との同調に代えて発声を観察する
行動自体を十分観察できない BPSの解釈に注意 深い鎮静や神経筋遮断などでは行動反応が抑えられる

なお、SCCMが2025年に公表したPADIS focused updateでは、不安、鎮静、せん妄、離床、睡眠などが更新対象となりましたが、疼痛評価尺度について新しい推奨は追加されていません。BPSの位置づけを確認する際は、2018年PADISの疼痛評価に関する記載が引き続き重要です。

BPSの3項目は「表情・上肢・人工呼吸器との同調」です

BPSでは、表情、上肢の動き、人工呼吸器との同調の3項目を観察します。各項目は1〜4点で、疼痛に関連すると考えられる行動が強くなるほど高い点数になります。

尺度の正式な判定文を暗記するより、まず「何を観察する項目なのか」を理解すると、体位変換や吸引、離床などの場面でも評価しやすくなります。

BPSの3項目と観察するポイント
項目 主に観察すること 1点→4点の方向性 解釈時の注意
表情 顔面の緊張、眉・眼周囲の変化、しかめ顔など 落ち着いた表情から、より明瞭な疼痛関連表情へ 不安・恐怖・呼吸苦でも表情は変化する
上肢の動き 上肢の静止、屈曲、防御的・回避的な反応など 反応が乏しい状態から、より強い防御的反応へ 麻痺、拘縮、鎮静深度、神経筋遮断の影響を受ける
人工呼吸器との同調 人工呼吸器を受け入れているか、咳や不同調があるか 良好な同調から、強い不同調・換気困難を示す反応へ 呼吸苦、分泌物、人工呼吸器設定など疼痛以外の原因でも変化する

3項目を各1〜4点で評価するため、BPSの最低点は3点、最高点は12点です。ただし、3点だから「疼痛が絶対にない」、12点だから「痛みの強さが12点」という意味ではありません。BPSが示すのは、観察された疼痛関連行動の程度です。

BPSは各1〜4点、合計3〜12点として読みます

BPSの合計点は、3項目の点数を加算して求めます。点数が高いほど、観察される疼痛関連行動が強い状態を示します。

表情 1〜4点 + 上肢 1〜4点 + 人工呼吸器との同調 1〜4点
= BPS 合計 3〜12点

ただし、BPSをNRSのような「痛みの強さそのものを0〜10で答える尺度」と同じように解釈しないことが重要です。BPSでは、観察された行動の変化から疼痛の可能性や対応の必要性を判断します。

BPS合計点を読むときの考え方
スコア 読み方 注意点
3点 BPSとして取り得る最低点 行動が乏しいだけの場合もあり、疼痛を完全には否定できない
4〜5点 最低点より疼痛関連行動が増えている 安静時からの変化、刺激内容、鎮静深度などを合わせて確認する
5点を超える 疼痛への対応を検討する目安として用いられてきた 点数だけで疼痛を確定せず、疼痛以外の要因も評価する
高値が持続・さらに上昇 疼痛関連行動が強い、または別の苦痛が重なっている可能性 原因を確認し、対応後の再評価につなげる

BPS>5は「疼痛を示唆する目安」であり診断の確定値ではありません

「BPSは何点から痛いのか」は迷いやすいポイントです。日本集中治療医学会のJ-PADガイドラインでは、BPS>5が疼痛の程度が大きい状態を示す目安として提示されています。また、過去のPADガイドラインでも、侵害刺激を伴う処置時の観察結果からBPS>5というカットオフが提案されています。

ただし、BPS>5を「6点以上なら疼痛確定」と読み替えるのは適切ではありません。BPSは表情、上肢、人工呼吸器との同調という行動を評価するため、呼吸苦、不安、恐怖、不穏などでも点数が上がる可能性があります。

BPS>5を見たら:「痛いと確定する」のではなく、疼痛を疑い、何が誘発したかを確認し、必要な対応を行い、その後に再評価するためのきっかけとして扱います。

逆に、BPSが3〜5点であっても、強い鎮静や運動反応を出しにくい病態があれば疼痛を過小評価する可能性があります。点数の閾値だけでなく、患者背景と評価条件を合わせて解釈することが重要です。

評価は「安静時」と「疼痛を伴う可能性のある刺激時」を比較します

BPSは1回だけ測定するより、何もしていない安静時と、疼痛を伴う可能性のある処置・動作時の変化を比較するほうが臨床的に使いやすくなります。

BPSの原著では、安静時と、気管吸引や体動などの侵害刺激を伴う処置時で評価が行われ、疼痛を伴う処置時にBPSが上昇することが示されています。

BPSを評価するタイミング
タイミング 確認すること 記録しておきたい条件
安静時 患者の基準となるBPS 鎮静深度、人工呼吸器管理、体位など
処置・動作時 刺激に伴ってBPSが変化するか 吸引、体位変換、ROM、離床など何を行ったか
対応後 疼痛関連行動が軽減したか 鎮痛、休息、体位調整、刺激量の変更など

現場では「介入後5分」など特定の時間で統一したくなることがありますが、BPSそのものにすべての介入を5分後に再評価するという標準手順があるわけではありません。鎮痛薬、休息、体位調整など、行った対応の効果を判断できる適切なタイミングで再評価します。

BPSが高いときは疼痛・呼吸苦・不穏を分けて考えます

BPSが高くなった場合、まず「どの項目が上がったのか」を確認します。合計点だけを見るより、表情、上肢、人工呼吸器との同調のどこが変化したかを見るほうが、原因を整理しやすくなります。

BPSが上昇したときに確認するポイント
目立つ変化 疼痛以外に考えること 次に確認すること
表情の変化 不安、恐怖、呼吸苦、せん妄 刺激との時間関係、意識・鎮静状態、呼吸状態
上肢の防御反応 不穏、チューブ・ラインへの違和感 刺激部位、姿勢、デバイス位置、意識状態
人工呼吸器との不同調 呼吸苦、分泌物、設定との不一致、咳 呼吸仕事量、換気状態、分泌物、人工呼吸器との同調

たとえば体位変換時にBPSが上昇した場合、体動に伴う疼痛が原因かもしれません。一方、人工呼吸器との不同調だけが強く変化している場合には、疼痛だけでなく呼吸要因を確認する必要があります。

BPSは原因を確定する検査ではなく、「苦痛が増えている可能性があるので原因を評価する」ための入口として使うと、過剰な鎮静や疼痛の見逃しを避けやすくなります。

BPSが低くても疼痛を否定できない場面があります

BPSは「行動」を評価する尺度なので、疼痛があっても行動として表出できない患者では低値になる可能性があります。特に深い鎮静、神経筋遮断、重度の運動障害などがある場合は注意が必要です。

深い鎮静では反応そのものが小さくなる

鎮静が深い患者では、疼痛刺激があっても表情や上肢の動きが十分に現れないことがあります。そのため、BPSが最低点に近いことだけを根拠に「疼痛なし」と判断しません。

神経筋遮断中は通常どおりの行動評価ができません

神経筋遮断薬の使用中は、上肢運動などの行動反応が薬理学的に抑制されます。BPSが前提とする行動観察自体が制限されるため、通常と同じように合計点を解釈することは困難です。

神経学的障害でも行動表出が変わります

脳損傷、重度麻痺、異常筋緊張などがある患者では、上肢運動や表情が一般的な患者とは異なる場合があります。BPSを測定できても、病態による行動特性を踏まえて解釈します。

「BPSが低い=痛くない」ではなく、その患者が疼痛関連行動を表出できる状態なのかを先に確認することが重要です。

バイタルサインは疼痛判定ではなく追加評価のきっかけにします

心拍数、血圧、呼吸数、SpO2などは、疼痛時に変化することがあります。しかし、これらは疼痛以外の原因でも変動するため、成人重症患者の疼痛を判定する有効な指標として単独では使用できません。

PADISガイドラインでも、バイタルサインは疼痛の有効な指標とはせず、疼痛について追加評価を行うきっかけとして使用する位置づけになっています。

たとえば体位変換後に頻脈と血圧上昇が出た場合、「バイタルが上がったから痛い」と決めるのではなく、自己申告が可能なら本人へ確認し、自己申告できなければBPSなどの妥当性が確認された方法で疼痛を評価します。

非挿管患者ではBPS-NIという選択肢があります

通常のBPSは、3項目のうち1つに「人工呼吸器との同調」が含まれるため、主に挿管・人工呼吸管理中の患者を対象とします。

一方、非挿管で自己申告できない重症患者を評価するために、BPS-NI(Behavioral Pain Scale–Non-Intubated)が開発されています。BPS-NIでは、人工呼吸器との同調に代えて発声に関する行動を観察し、合計点はBPSと同じ3〜12点です。

ただし、非挿管だから最初からBPS-NIを使うわけではありません。非挿管患者でも信頼して自己申告できるのであれば、自己申告による疼痛評価を優先します。

BPSとBPS-NIの基本的な違い
項目 BPS BPS-NI
主な対象 自己申告困難な挿管・人工呼吸管理患者 自己申告困難な非挿管患者
共通する観察 表情、上肢の動き 表情、上肢の動き
3つ目の項目 人工呼吸器との同調 発声に関する行動
合計点 3〜12点 3〜12点

PT・OT・STはBPSをリハ中止基準ではなく負荷調整の情報として使います

リハビリテーション場面では、体位変換、関節運動、排痰介助、端座位、移乗などに伴ってBPSが変化することがあります。この変化は、患者にとって何らかの苦痛が増えていることを考えるきっかけになります。

ただし、BPSの点数だけをリハビリテーションの一律の中止基準として使用するのは適切ではありません。疼痛への対応が必要かという判断と、呼吸・循環・意識などから離床や運動を安全に継続できるかという判断は分けて考えます。

たとえば離床時にBPSが上昇した場合は、次のように整理します。

  1. どの項目が変化したか:表情、上肢、人工呼吸器同調のどこが上がったかを確認する
  2. 何が誘発したか:関節運動、起き上がり、体位、荷重、吸引など刺激との関係を確認する
  3. 疼痛以外の原因はないか:呼吸苦、不安、不穏、デバイス違和感などを確認する
  4. 調整できるか:負荷量、動作速度、体位、休息などを調整する
  5. 対応後に再評価する:BPSと患者反応がどう変化したかを確認する

疼痛が疑われる状態が続く場合は、誘発動作とBPSの変化を具体的にして、医師・看護師と共有すると次の対応につながりやすくなります。

記録は「点数・条件・変化・対応」を残します

BPSを継続評価に使う場合は、合計点だけでなく、どの条件で評価したかを残すことが重要です。同じ6点でも、安静時6点と体位変換時だけ6点では意味が異なります。

BPS記録で残しておきたい情報
記録項目 記載する内容
BPS 合計点。必要に応じてどの項目が上昇したかも記録する
評価条件 安静時、吸引時、体位変換時、ROM時、離床時など
患者背景 鎮静深度、意識状態、人工呼吸器管理など解釈に影響する情報
対応 休息、体位調整、負荷量変更、鎮痛に関する共有など
再評価 対応後のBPSと行動変化

記録例

たとえば、「BPS 6点」とだけ記載するより、以下のように条件と変化を加えると、次回の介入や多職種共有に使いやすくなります。

記録例:安静時BPS 3点。右側臥位への体位変換時に表情・上肢反応が増加しBPS 6点。動作速度を下げ、ポジショニングを調整。対応後はBPS 4点へ低下。次回も右側臥位への移行時の反応を確認する。

このように、BPSは「その日の点数」を残すより、何をしたときに変化し、何をすると改善したかまで記録することで臨床的な意味が大きくなります。

BPSで迷いやすい5つのポイント

BPS評価でよくある誤解
よくある判断 整理しておきたいこと
挿管しているからBPSを使う 最初に自己申告が可能かを確認する
BPS 3点なら痛くない 最低点であっても、行動表出できない状態では疼痛を否定できない
BPS 6点なら疼痛確定 BPS>5は目安。疼痛以外の原因も確認する
人工呼吸器不同調=疼痛 呼吸苦、分泌物、設定、不穏なども鑑別する
バイタル上昇=疼痛 バイタルは追加の疼痛評価を始めるきっかけとして使う

BPS疼痛評価のよくある質問

Q1. BPSは何点から疼痛ありと判断しますか?

日本版J-PADでは、BPS>5が疼痛の程度が大きい状態を示す目安として提示されています。ただし、6点以上なら疼痛が確定するという診断閾値ではありません。刺激内容、どの項目が上昇したか、鎮静深度、呼吸苦や不穏などの影響も確認し、対応後に再評価します。

Q2. BPSが3点なら疼痛はないと考えてよいですか?

3点はBPSとして取り得る最低点ですが、疼痛を完全に否定する値ではありません。深い鎮静、神経筋遮断、重度の運動障害などで疼痛関連行動を表出しにくい場合は、疼痛があっても低値になる可能性があります。

Q3. BPSはいつ評価しますか?

安静時の状態を確認し、吸引、体位変換、ROM、離床など疼痛を伴う可能性のある処置・動作時の変化を比較します。疼痛への対応を行った場合は、その対応の効果を確認できる適切なタイミングで再評価します。すべての介入を一律に「5分後」と固定する必要はありません。

Q4. 非挿管患者にもBPSを使えますか?

通常のBPSには人工呼吸器との同調を評価する項目があります。非挿管で自己申告できない患者には、発声に関する観察へ置き換えたBPS-NIという尺度があります。ただし、本人が信頼して自己申告できる場合は、まず自己申告型の疼痛評価を優先します。

次に確認したいICU疼痛評価

BPSだけでなく、自己申告、NRS、CPOTを含めて「どの患者に何を使うか」から整理したい場合は、ICUの疼痛評価|NRS・CPOT・BPSの使い分けで全体像を確認できます。

BPSとCPOTのどちらを選ぶか迷う場合は、CPOTとBPSの違い|評価項目と使い分けで、項目構成と対象の違いを整理してください。

参考文献

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  5. 日本集中治療医学会J-PADガイドライン作成委員会. 日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン. 日本集中治療医学会雑誌. 2014. 日本集中治療医学会

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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