訪問リハの処遇改善加算|周知・賃金改善・実績報告の運用

制度・実務
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訪問リハの処遇改善加算は「周知・賃金改善・変更対応・実績報告」で運用します

2026年6月から、訪問リハビリテーションにも介護職員等処遇改善加算が新設され、加算率は1.5%となりました。算定開始後に重要なのは、届出を終えて安心するのではなく、計画に沿った賃金改善を実施し、必要な要件を履行し、変更時の届出と年度後の実績報告までつなげることです。

この記事では、制度の全体像や「誰へ配分できるか」ではなく、訪問リハで処遇改善加算を算定した後に、職員周知・賃金改善・変更届・実績報告・根拠資料保存をどう管理するかに絞って整理します。制度の基本要件と、実務上の管理例を分けて確認していきます。

まず押さえるポイント:訪問リハでは「加算を取った後」も、賃金改善の実施、届出時に選択した要件の履行、変更の確認、実績報告、根拠資料の保存までが一連の運用です。月次チェック表の提出が制度上義務付けられているわけではありません。

算定後に確認するのは4つです

算定開始後は、毎月すべての制度要件を最初から確認するのではなく、「賃金改善」「届出時の要件」「変更の有無」「実績報告に残す資料」の4点を継続して確認すると整理しやすくなります。

訪問リハの処遇改善加算|算定後に確認する4項目
確認項目 確認すること 実務上の対応
賃金改善 加算額に相当する賃金改善を実施できているか 計画と給与実績のずれを確認する
届出時の要件 特例要件または処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件を履行できているか 誓約した取組の期限を確認する
変更 計画書提出後に変更届の対象となる変更がないか 変更内容と提出時期を確認する
実績・保存 実績報告に必要な数値・根拠を追える状態か 計画書、実績報告書、根拠資料を整理する

なお、訪問リハの1.5%という加算率や取得要件、対象職種・配分の考え方そのものは親記事で扱います。本記事では、算定開始後の運用に範囲を限定します。

最初に「どの要件で算定したか」を確認します

2026年6月から新たに処遇改善加算の対象となった訪問リハでは、賃金改善の実施に加えて、厚生労働省通知で示された2つのルートのいずれかを満たします。

訪問リハで確認する算定要件の2ルート
ルート 主な内容 算定後の確認
令和8年度特例要件 ケアプランデータ連携システムの利用、または所属法人が社会福祉連携推進法人に所属 誓約で算定した場合は期限までの実施と実績報告を確認
処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件 キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ、職場環境等要件を満たす 規程、研修、職場環境等の取組を確認

特例要件としてケアプランデータ連携システムの利用を誓約して算定した場合は、令和9年3月末までに利用し、実績報告書で利用実績を報告します。

一方、処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件を選択した場合、キャリアパス要件Ⅰでは任用要件・賃金体系等を規程として整備し、全職員へ周知すること、キャリアパス要件Ⅱでは研修計画等を全職員へ周知することが示されています。2026年度の経過的な取扱いとして、一定の事項について令和9年3月末までの整備・実施を誓約して算定できる場合があるため、申請時に何を誓約したかを確認しておくことが重要です。

算定後は5ステップで運用を整理します

制度の運用は、計画・届出から実績報告までを一続きで管理すると、年度末に「何を報告するのか分からない」という状態を避けやすくなります。

訪問リハの処遇改善加算について、計画書の作成・届出、職員への周知、賃金改善、変更時対応、実績報告と根拠資料保存までを示した運用フロー
図.訪問リハの処遇改善加算|算定後の基本的な運用フロー

図の下段に示した「担当者と締切を決める」「変更点を履歴で残す」「年度ごとに資料を整理する」といった方法は、厚生労働省が指定する月次様式ではありません。実績報告や変更対応を行いやすくするための実務上の整理例です。

賃金改善は「加算額を受け取ったか」ではなく実際の改善まで確認します

処遇改善加算では、事業者は加算の算定額に相当する賃金改善を実施する必要があります。対象となる賃金は基本給、手当、賞与等で、賃金改善に伴って増加する法定福利費等の事業主負担分を含めることもできます。

賃金改善を行う際は、基本給・手当・賞与等のうち、どの項目を改善対象とするかを特定します。原則として賃金水準を低下させず、安定的な処遇改善の観点からは基本給による改善が望ましいとされています。

特に訪問リハは2026年6月から新たに処遇改善加算の対象となったため、令和7年度と比べて新たに増加した加算額については、過去に法人独自で行ってきた賃上げとは別に、新たに増加した加算額に相当する賃金改善を実施することが求められます。

実務で確認するなら

「今月の加算額はいくらだったか」だけでなく、計画した賃金改善と実際の給与・手当・賞与への反映を年度単位で追える状態にしておくと、実績報告時に確認しやすくなります。

配分ルールは固定比率ではなく、説明できる状態にします

処遇改善加算を原資とする職種間の配分については、事業所内で柔軟な配分が認められています。一方で、一部の職員や一部の事業所だけへ、職務内容や勤務実態に見合わない形で著しく偏らせる配分は避ける必要があります。

そのため、運用上は「PTへ何%、OTへ何%」という固定比率を作ることよりも、誰を対象とし、どの賃金項目で、どのような考え方で改善したのかを説明できることが重要です。

職種ごとの対象範囲や配分の基本的な考え方については、本記事で重複して広げず、親記事へ役割を分けます。

職員周知は「どの要件を選んだか」で確認します

「処遇改善加算を取得したら、すべての内容を毎月全職員へ説明しなければならない」という一律の月次ルールがあるわけではありません。

一方で、訪問リハが処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件で算定する場合は、キャリアパス要件Ⅰの任用要件・賃金体系等について明確な根拠規程を整備し、全職員に周知することが示されています。キャリアパス要件Ⅱについても、資質向上の計画や研修等の内容を全職員へ周知します。

制度上の周知要件と、事業所が独自に行う説明会・メール・会議記録などを混同せず、「何を周知することが要件なのか」「事業所として何を追加共有するのか」を分けて管理すると整理しやすくなります。

変更が生じたら、まず変更届の対象かを確認します

計画書を提出した後に変更が生じても、すべての変更について直ちに変更届を提出するわけではありません。厚生労働省通知で変更届の対象として示された事項に該当するかを確認します。

たとえば、計画書を法人単位で一括作成している場合の事業所の増減、計画書の作成単位が変わる合併等、新規算定などが変更届の対象として示されています。

居宅系サービスで、変更後の処遇改善加算の算定に関係する変更届を提出する場合は、原則として変更後の算定を開始する月の前月15日が届出期限です。

一方、処遇に関係する就業規則の改訂だけが生じた場合は、通知上、実績報告書を提出する際に変更届出書をあわせて届け出る取扱いとなっています。

注意:「何か変更した=前月15日までに必ず変更届」と一律に扱わず、変更内容が通知で定める届出対象のどこに該当するかを確認してください。自治体が独自に案内を出している場合は、指定権者の最新案内も確認します。

実績報告は「最終の加算支払月の翌々月末」までです

処遇改善加算を算定した事業者は、別紙様式3による実績報告を行います。提出期限は、各事業年度における最終の加算の支払があった月の翌々月の末日です。

令和8年度については、令和9年3月分の加算が令和9年5月に支払われる通常のケースでは、令和9年7月31日が実績報告書の提出期限となります。

令和8年度の訪問リハ処遇改善加算|主な時期の整理
項目 時期・期限 確認ポイント
加算新設 2026年6月 訪問リハは1.5%
誓約した要件の履行 原則 2027年3月末まで 誓約内容によって必要な取組を実施
実績報告 通常 2027年7月31日 最終支払月によって期限を確認

なお、年度途中から算定した場合や事業を廃止した場合などは、最終の加算支払月が異なる可能性があります。実績報告の締切は「毎年7月31日」とだけ覚えるのではなく、最終の加算支払月から逆算するのが安全です。

計画書・実績報告書・根拠資料は2年間保存します

厚生労働省通知では、処遇改善計画書は根拠資料とあわせて2年間保存し、実績報告書についても根拠資料とあわせて2年間保存することが示されています。

制度上、一律の「監査フォルダ名」や「月次チェック表」が指定されているわけではありません。そのため、保存方法そのものを要件として扱うのではなく、必要な資料へ後からたどれるように整理しておくことが実務上重要です。

たとえば、以下のように年度単位で整理すると確認しやすくなります。

  • 計画・届出:処遇改善計画書、体制届出等
  • 要件:選択した算定要件を確認できる資料
  • 賃金改善:計画した改善と実績を確認できる資料
  • 変更:変更届出書、就業規則の変更履歴など
  • 実績報告:実績報告書と算定根拠を確認できる資料

これは厚生労働省が指定するフォルダ構成ではなく、根拠資料を年度末に探し直さないための整理例です。

月次管理を行うなら「実績・変更・期限」だけを追います

処遇改善加算について、厚生労働省が訪問リハ専用の月次チェックシートを定めているわけではありません。それでも、年度末にまとめて確認すると賃金改善や変更経過を追いにくくなるため、事業所独自に月次確認を行う方法は実務上選択肢になります。

任意で行う月次確認の例
確認項目 見ること
加算・賃金改善 加算実績と賃金改善の実施状況を追えるか
人員・事業所 届出内容に影響する変更がなかったか
規程・運用 就業規則や処遇に関係する変更がなかったか
期限 誓約した要件や変更届、実績報告の期限が近づいていないか
資料 根拠資料を後から確認できる状態か

重要なのは、月次点検そのものを制度要件にしないことです。制度上必要な対応を漏らさないための内部管理として位置づけます。

訪問リハで混同しやすい3つのポイント

月次チェックを「公式要件」にしない

毎月の内部確認は管理方法の一例です。公式通知で求められている計画書、賃金改善、算定要件、変更届、実績報告、根拠資料保存と、事業所独自の管理方法を分けます。

既存サービスの加算区分をそのまま当てはめない

訪問リハは、2026年6月から新たに設けられた処遇改善加算として1.5%が設定されています。訪問介護などに設定されているⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳの区分選択を、そのまま訪問リハへ当てはめる構造ではありません。

実績報告の期限を固定日だけで覚えない

令和8年度は通常2027年7月31日ですが、制度上の基準は最終の加算支払月の翌々月末です。年度途中の廃止などがある場合は、実際の最終支払月を確認します。

よくある質問

訪問リハの処遇改善加算は毎月チェック表を作る必要がありますか?

厚生労働省が訪問リハ専用の月次チェック表を提出するよう定めているわけではありません。月次確認を行う場合は、賃金改善や変更、期限、根拠資料を漏らさないための事業所独自の管理方法として扱います。

処遇改善計画書や実績報告書は何年間保存しますか?

処遇改善計画書と実績報告書は、それぞれ根拠資料とあわせて2年間保存します。提出して終わりにせず、算定や賃金改善の根拠を後から確認できる状態にしておきます。

就業規則を変更したら、すぐ変更届が必要ですか?

処遇に関係する就業規則の改訂のみである場合は、令和8年度通知では、実績報告書を提出する際に変更届出書をあわせて提出する取扱いが示されています。ほかの変更を伴う場合は、それぞれの変更届要件と期限を確認してください。

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参考文献

  1. 厚生労働省老健局長. 介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分). 老発0313第6号. 2026年3月13日. 厚生労働省 PDF
  2. 厚生労働省. 令和8年度介護報酬改定について. 厚生労働省
  3. 厚生労働省. 介護職員の処遇改善:TOP・制度概要. 厚生労働省
  4. 厚生労働省. 介護職員の処遇改善:加算の申請方法・申請様式. 厚生労働省

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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