リンパ浮腫のISL病期分類|Stage 0〜IIIとII期後期の違い

評価
記事内に広告が含まれています。

ISL病期は「戻りやすさ→圧痕→線維化→皮膚変化」で整理する

リンパ浮腫のISL病期分類は、腫脹の大きさだけでStageを決める分類ではありません。Stage IとIIでは「挙上で軽減するか」、Stage IIとII期後期では「圧痕が残るか、脂肪・線維化が進んでいるか」、II期後期とIIIでは「皮膚変化が明らかか」が重要な境界になります。

本記事では、2023年のInternational Society of Lymphology(ISL)Consensus Documentをもとに、Stage 0・I・II・II期後期・IIIの特徴と迷いやすい境界を整理します。あわせて、ISL病期と周径・体積などの量的評価を別々に記録する考え方まで解説します。

ISL病期分類|Stage 0・I・II・II期後期・IIIの違い

ISL 2023では、末梢リンパ浮腫の身体的状態をStage I〜IIIで分類し、明らかな腫脹が出る前のStage 0も位置づけています。また、Stage IIでは進行に伴って脂肪・線維化が増え、圧痕がみられにくくなる「II期後期」の特徴が示されています。

ISL病期分類の特徴と判定で見るポイント
病期 主な特徴 判定で見るポイント
Stage 0 リンパ輸送障害や組織液の変化などがある一方、明らかな腫脹はまだみられない潜在性・無症状の状態 「腫れていない」だけでStage 0とは決めず、背景やリンパ系の異常を含めて判断する
Stage I 比較的早期の体液貯留があり、患肢を挙上すると軽減しやすい。圧痕を認めることがある 挙上によって軽減するかがStage IIとの重要な境界
Stage II 脂肪や蛋白などの固形成分が持続的に蓄積し、患肢の挙上だけでは軽減しにくい。圧痕が明らか 挙上で戻りにくい+圧痕がある状態を確認する
Stage II後期 皮下脂肪の増加や線維化が進み、圧痕が乏しい、またはみられなくなることがある 圧痕がなくてもStage IIIとは限らない。脂肪・線維化と皮膚変化を分けて見る
Stage III 皮膚の性状・厚さの変化、脂肪沈着・線維化、疣贅状過形成などが明らかになる 皮膚・軟部組織の変化が明確かをII期後期との境界として確認する

II期後期は独立した新しいStage番号ではなく、Stage IIが進行した状態として理解するのがポイントです。単純に「0・I・II・IIIの4種類」と覚えるだけでは、圧痕が消失してきた症例でStage II後期とIIIの境界が曖昧になります。

図で見る|ISL病期の見分け方

病期を整理するときは、明らかな腫脹→挙上による軽減→圧痕→脂肪・線維化→皮膚変化の順に所見を確認すると、Stage I・II・II期後期・IIIの違いを整理しやすくなります。

リンパ浮腫のISL病期を、明らかな腫脹、挙上による軽減、圧痕、線維化、皮膚変化の順に整理した図
図:ISL病期の特徴を読む順番。II期後期はStage IIの後期像です。図は病期の特徴を理解するために簡略化したもので、リンパ浮腫そのものの診断や原因鑑別を代替するものではありません。

迷いやすい境界|I期・II期・II期後期・III期をどう分けるか

病期判定で特に迷いやすいのは、Stage IとII、Stage IIとII期後期、II期後期とIIIの3か所です。圧痕の有無だけで決めず、挙上への反応、脂肪・線維化、皮膚変化を順番に確認します。

Stage IとII|圧痕より「挙上で戻るか」を見る

Stage Iでも圧痕を認めることがあるため、圧痕がある=Stage IIではありません。Stage Iでは患肢の挙上によって腫脹が軽減しやすいのに対し、Stage IIでは挙上のみでの軽減が乏しくなります。

したがって、I期とII期の境界では「圧痕があるか」だけではなく、挙上や休息後にどの程度戻るのかを併せて記録すると判断根拠が明確になります。

Stage IIとII期後期|圧痕が乏しくなった理由を見る

Stage IIでは圧痕が明らかですが、進行すると皮下脂肪の増加や線維化により、圧痕が乏しい、またはみられなくなることがあります。これがII期後期を理解する重要なポイントです。

そのため、「圧痕がなくなったからStage III」と判断するのは早すぎます。圧痕が目立たない場合は、脂肪・線維化による組織の硬さと、Stage IIIでみられる明らかな皮膚変化を分けて確認します。

圧痕そのものの評価方法や記録については、圧痕性浮腫の評価方法とStemmer徴候で詳しく解説しています。

II期後期とStage III|皮膚変化が明確かを見る

II期後期とStage IIIは、どちらも線維化や脂肪増加を伴い、圧痕が乏しくなることがあります。両者を分けるときは、皮膚の性状や厚さの変化、疣贅状過形成などの栄養性皮膚変化が明らかになっているかを確認します。

つまり、「硬い」「圧痕がない」という所見だけではStage IIIとは限りません。皮下組織の変化だけなのか、皮膚そのものの変化まで明らかなのかを分けて観察します。

判断のポイント:圧痕の消失は「III期になったサイン」ではありません。II期後期でも脂肪・線維化によって圧痕がみられなくなることがあります。

ISL病期と重症度は別の軸で記録する

Stageが高い=必ず腫脹量が大きい、ではありません。ISL病期は主に患肢の身体的状態を表し、挙上による可逆性、圧痕、脂肪・線維化、皮膚変化などを整理する軸です。一方、周径や体積は「どの程度腫れているか」という量的変化を追うために使います。

ISL病期と量的評価の役割の違い
評価軸 主に見るもの 記録する意味
ISL病期 挙上への反応、圧痕、脂肪・線維化、皮膚変化 組織の状態や病期の特徴を共有する
周径・体積 患肢の大きさ、左右差、前回からの量的変化 腫脹量の変化を経時的に比較する

ISL 2023では、各Stage内での簡便な重症度評価として、患肢の過剰体積差をminimal:5%超〜20%未満、moderate:20〜40%、severe:40%超とする例が示されています。一方で、別の区切りを用いる施設があることも併記されています。

したがって、重症度を扱うときは数値だけを切り取らず、どの測定方法・基準・計算方法で評価した値なのかを明確にしておくことが重要です。ISL病期と量的評価は同じ欄へまとめず、それぞれ分けて記録すると再評価しやすくなります。

ISL病期はリンパ浮腫の原因を診断する分類ではない

ISL病期分類は、リンパ浮腫の身体的状態を整理するための分類であり、浮腫の原因を鑑別するための分類ではありません。心・腎・肝疾患、静脈疾患、低栄養、薬剤、感染など、ほかの原因による浮腫を病期分類だけで区別することはできません。

また、急な腫脹の増悪、強い疼痛、発赤・熱感、発熱など、通常の経過と異なる変化がある場合は、Stageを決めることよりも原因の確認を優先します。

ISLは、一つの患肢でもリンパ領域によって複数のStageの特徴を示すことがあるとしています。患肢全体を無理に一つの所見へ当てはめず、部位ごとの違いがある場合はその内容も記録します。

記録は「病期・根拠・量」を分ける

再評価につながる記録にするには、Stageだけを書いて終わらず、なぜその病期と判断したのかを残します。病期の根拠と周径・体積などの量的評価を分けると、後から「組織の状態が変わったのか」「腫脹量だけが変わったのか」を確認できます。

ISL病期を記録するときに分けて残す項目
記録項目 残す内容
ISL病期 Stage 0・I・II・II期後期・IIIのどの特徴に該当するか
病期の根拠 挙上による軽減、圧痕、脂肪・線維化、皮膚変化
量的評価 周径、推定体積などを病期とは別に記録する
測定条件 測定部位、体位、時間帯など、前回と比較するための条件
部位差 同じ患肢内で所見が異なる場合は、部位ごとの特徴を残す

たとえば「ISL Stage II後期相当」とだけ記載するよりも、「挙上での軽減乏しい/圧痕乏しい/硬さあり/Stage IIIに特徴的な明らかな皮膚変化は認めない」のように判断根拠を添えると、次回の再評価につながります。

周径が減少していても線維化や皮膚変化が残っていれば、量的には改善していても病期の特徴が同じことがあります。反対に、測定条件が違えば周径差そのものを比較しにくいため、「Stage」と「測定値」を別々に追うことが重要です。

ISL病期分類でよくある間違い

病期判定で混同しやすい所見と考え方
よくある判断 実際の考え方
圧痕があるからStage II Stage Iでも圧痕を認めることがあります。IとIIでは挙上による軽減も確認します。
圧痕がないからStage III II期後期でも脂肪・線維化によって圧痕が乏しくなることがあります。
周径が大きいからStage III 病期と腫脹量は別の軸です。周径の大きさだけでStageは決まりません。
周径が減ったからStageも下がる 量が改善しても、線維化や皮膚変化など病期を構成する所見が残ることがあります。
患肢全体は必ず同じStage 同じ患肢でもリンパ領域によって異なるStageの特徴を示す場合があります。

よくある質問

Stage Iでも圧痕はありますか?

あります。ISL 2023ではStage Iでも圧痕が生じることがあるとされています。そのため、圧痕の有無だけでStage IとIIを分けず、患肢を挙上したときに腫脹が軽減するかも確認します。

圧痕がなくなったらStage IIIですか?

必ずしもStage IIIではありません。Stage IIが進行すると、皮下脂肪の増加や線維化によって圧痕が乏しい、またはみられなくなることがあります。これがII期後期です。Stage IIIでは、さらに皮膚の性状・厚さの変化や疣贅状過形成などを確認します。

Stage 0は「むくみがない人」という意味ですか?

いいえ。単に腫脹が見えないだけではStage 0とは判断できません。Stage 0は、リンパ輸送障害や組織液の微妙な変化、自覚症状の変化などがある一方で、明らかな腫脹がまだみられない潜在性・無症状の状態を指します。

周径や体積が改善すればISL病期も下がりますか?

自動的に下がるわけではありません。周径・体積は腫脹の量を表す一方、ISL病期は挙上への反応、圧痕、脂肪・線維化、皮膚変化などの身体的状態を表します。量的改善と病期の変化は分けて再評価します。

同じ患肢の中でStageが違うことはありますか?

あります。ISL 2023では、一つの患肢が複数のStageを示す場合があり、異なるリンパ領域の変化を反映している可能性があるとされています。部位差がある場合は、Stageだけでなく具体的な所見と部位を記録します。

次の一手


参考文献

  1. International Society of Lymphology. The Diagnosis and Treatment of Peripheral Lymphedema: 2023 Consensus Document of the International Society of Lymphology. Lymphology. 2023;56(4):133-151. PMID: 39207406. PubMed / ISL本文
  2. 一般財団法人ライフ・プランニング・センター. リンパ浮腫研修 E-LEARN:国際リンパ学会(ISL)による病期分類(2023 Consensus Document of the International Society of Lymphology 和訳). 公式ページ. Accessed 2026 Sep 5.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

運営者プロフィール / 編集・引用ポリシー / お問い合わせ